2016年新作映画ベスト50プラスワースト1 ③

今更何言ってんの…死ねばいいのに…っていう感じなんですけど、性懲りもなく2016年の新作映画の感想記事、今回が最終回です。前回、前々回と、3回に分けて今年俺が見た映画を紹介させてもらった訳ですけど、最終回はベスト10の最高映画とワースト3の最低映画の紹介とさせて頂きます。

 

askicks1248.hatenablog.com

 

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やっとここでまで来れたって感じなんですけど、ただ辛いことは先に片づけてしまおうって事で、ワースト3は先にやっちゃう感じです。もう本当に見なくても読まなくても全然いいんで。この辺は。

俺はもう「俺だけこんな嫌な想いしたのはおかしいでしょ」以外の気持ちは全くないです。ワースト作品の感想が一番長かったりするんですけど、もうそっちは読んでも読まなくてもマジでどっちでも良いので。ゲロに自分から鼻近付けていって「クッサ!!」って喜んでるみたいなもんですから。こんなのは。

 

49位 エクストラクション

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もうこの辺のはアレなんですよ。「俺が悪かったのか?」って見ててなるんですよ。もう話が進んでるのか戻ってるのかさえ分からなくて。意味が分からないから、終始狐につままれたような気分になって。で、見始めて数十分経つじゃないですか。「イヤこれ狐近くにいるわ!蟲師でこんなん見たわ!」って人ならざるもの達への疑念が確信に変わって、外に出ようとするじゃないですか。お団子かな?お団子渡せばいいのかな?つって。そしたら丁度エンドロールになってるくらいな、そんな感じです。

 

何を考えてるのか全く分からない主人公と、「デッドプールに出てきた中ボスの骨の太い女優が何考えてるか全く分からないヒロインが出てくる普通のD級アクション映画でした。
一応ブルース・ウィリスがキャストの2番目か3番目くらいにクレジットされてて、レンタルショップでも「ダイ・ハードを匂わせるPOPが出てたりして、パッと見の映画のルックは良いんですけど、本当にそれだけです。詐欺と言われても仕方ないくらい。

 

誰に感情移入したらいいのか、全く分からないんですよ。そもそも演出がド下手なんで「俺が何か見落としてるのか…?」となって見返してみたりするんですけど、何故コイツは今ここにいるのか、何故コイツはこんなことをしたのか、もうさっぱり分からなくて。
国の在り方を変えてしまうくらいの重要機密をブルース・ウィリスひとりに運ばせて当然テロリストに捕まるっていう物語の導入とか、どう見ても肩幅がレスラーくらいあるヒロインが敵に捕まっても、どう見ても手下よりヒロインの方が強そうだから安心とか、事務員だった主人公が表に出た途端に何の前触れもなく見ず知らずの人間を顔色一つ変えずに拷問していく感じとか、違和感しか無い脚本でもう足の踏み場が無いんですけど「ああ、俺はF級を見てる」っていう不思議な高揚感がありました。これぞ!みたいな。後味もメチャメチャ悪いし。ブルース・ウィリスは好きな俳優なんで、マジでこういう小銭稼ぎするだけみたいなゴミ映画には出てほしくないっていう気持ちは少しあるんですけどね。
ただ、この映画メチャメチャ良い所が一つだけあって、上映時間が80分しか無いんですよ。1週間後には見た事も忘れる様な中身の無さも相まって、ここだけは本当に良かったです。携帯を弄って5分映像を見ていなくても、物語に置いてけぼりになる事に変わりは無いんで。

 

 

50位 シーズンズ 2万年の地球旅行

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確か映画館で上映されたのが2月とかだったと思うんですけど、もう「今年のワースト映画決まった…」と鑑賞直後は確信していました。


この映画って作り手側の演出が凄く感じられるドキュメンタリーなんですよ。それがもうとにかく不自然で、しかも説教臭くてとにかく嫌でした。
嫌だったのが、終盤に人間の少女が出て来て「人間の手によってドンドン自然は消えていく、なんと愚かなことよ…」みたいな感じで森の木々を悲しげに見やるっていうシーンがあるんですけど、映画中盤くらいに人間たちが登場してきた時代の再現があるんです。で、その少女がそこに出てくる原始時代の人間の少女にメチャメチャ似てるんですよね。

もう一つ挙げると、人間たちが段々と「道具を使う」っていう事を覚えだして、家屋を作る為に森の木々を倒し始めた時期があるんですね。そこで熊が映って「人間たちが木々を倒して餌が取れなくなった為に、熊は不慣れな山での生活を余儀なくされました」って、アルプスみたいな山地で熊がウロウロしてる映像が長回しされるんですよ。


これらって完全に人間の手が加わった演出じゃないですか。っていうか、動物たちは必死に暮らしてるのかもしれないですけど、人間だって同じ様に、自分たちがよりよい生活が出来るようにって、それこそとんでもない時間をかけてとんでもない数の人間の労力が払われてきた訳じゃないですか。

それに全く目に向けずに、自分たちの思想に現実味を持たせる為だけにこういう他人をバカにしたとしか思えない演出を何故選択出来てしまうのか、マジで理解できないんですよ。とんでもない山地でウロウロしてる熊とか、何なんですか?数千年前からずっとこの地域の熊は「餌がない餌がない」って、代々に渡って山でうろついてるって事ですか?っていうか、完全に人間の脚本があるのに「野生の動物たちを追ったドキュメンタリー」って銘打ってるんですよ。もう前提からしてメチャメチャなんですよね。


こういう動物たちの生態を追っていくドキュメンタリーで「動物は必死に生きてるのに現代人が彼らの生活を脅かしている!」みたいな落とし所にするのって、それこそ人間のエゴの塊をぶつけられた気がして、凄く嫌な気持ちになりました。イヤ、お前らがそういう風に考えるのは別にいいけど、それを動物たちの生態を自分たちの思想の為のプロモーション映像に使ったり、脚本が当たり前の様に存在する演出で『ドキュメンタリー映画』を謳うんじゃねえよっていう、そういう感じです。個人的にはメチャメチャ嫌いな映画です。

 

一応こっちでも感想を書いています。

 

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51位 エクスポーズ 暗闇の迷宮

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確実に誰も見てない映画なんですよ。みんな大好きキアヌ・リーブスが一応出てはいるんで、レンタルショップで手に取ってはみたんですけど。人生で見てきた映画の中でも1、2を争うくらいの駄作でした。


コレはあんまり映画本編とは関係ない話なんですけど、ちゃんと定期的に映画館に通う様になったのがここ数年で、最近は面白くない映画なんてこの世には存在しないんじゃないか?って本当に思うんですよ。「インデペンデンス・デイ リサージェンス」とか、俺の去年のワーストにした「96時間 レクイエム」とか、好きとは死んでも言えない映画って沢山あるんですけど、例えば誰かと見に行ったりTwitterで感想書いたりして「ココがダメ、あそこがダメ」って言い合ったり思ったりするのって、それ自体が結構楽しかったりするじゃないですか。
1つの話題で他人の意思と触れたり、自分の考えを整理したりすると、自分がどういうジャンルが好きで、どういう描写が苦手なのかってのが理解できたりして、それって凄く貴重な事だなって今更ながらに思うんですよ。高校生みたいな事言ってますけど、最近本当に面白い映画だけ選んで、面白い映画だけ見て、趣味の範囲ですら自分のテリトリーから出ようとしないのって、貧しい考えなのかもなってマジで思うんですよね。だからどんな映画だって価値はあるし、時間の無駄、金の無駄なんて事は無いんじゃないかって考えるようにしてるんです。どんな事があっても。


で、この「エクスポーズ 暗闇の迷宮」なんですけど。
マジで時間の無駄以外の何者でもねえよ!オイ!!最悪の映画だったよ!!見てなんの得もねえよ!!!どうなってんだコレ!!!!!殺すぞ!???


前振りはこんなんなんですけど、本当に、本当に、イヤ本当に駄作でした。「駄作」っていうのが他のちゃんとした駄作(ちゃんとした駄作?)に申し訳ないくらいの完成度の低さ。今年見た旧作も含めてもう文句なしで2016年の個人的ワースト映画です。
イヤ、もうね、一応刑事物っていうかミステリーなんですけど、そもそもミステリーとしても成り立ってないんですよ。もうどうせ誰も見ないと思うんで、これから思いっきり、いつも以上にネタバレします。っていうか全部書きます。どうせ誰も見ないと思うんで。


主人公は20代くらいのメキシコ系なのかな?のアメリカ人で、パーティ終わった~つって地下鉄で帰ろうとして駅に向かうんですね。で、そこで彼女が目にしたのは、駅のホームで宙に浮かぶ男だったんです。
家に帰ってから「昨日駅のホームで浮いてる男がいたのよ!」「アレは天使かも!」って女は騒ぎ出すんで、「何を言ってんだコイツはもう…」みたいなテンションで嫁に入った家族に呆れられるわ笑われるわって感じなんですけど。なんかこの女の様子が変だぞ?っていう描写だけは途中途中で入って。なんかよく分からないドレス着た白塗りの怪物?を街中で見たりとか。そしてどうやらその怪物は主人公の女にしか見えてないぽかったりとか。


「駅のホームで宙に浮いていたの男は一体何者なのか?」っていうのは映画の最終盤で明らかになります。もうコレこの映画の核心部分なんですけど、主人公の女は、実は地下鉄のホームで男にトイレに連れ込まれてレイプされてたんですよ。で、主人公は男が隙を見せた一瞬を狙ってナイフで背中を刺して、駅のホームに突き落とすんです。それからちょうどやってきた列車にその男は轢き殺されるんですね。レイプされたショックでもう始めっから主人公は精神に異常を来していた!っていうのが物語のオチなんですよ。だから「宙に浮いた男」なんてのを見ていたんですね…。イヤ、「はあ?」って感じでしょ?俺の説明読んでて。でも大丈夫。書いてる俺も文字に起こしてまた「はあ?」ってなってます。


物語の流れとしては、列車に轢き殺された男っていうのは実は停職中の刑事で、その元相棒だったキアヌ・リーブス役の刑事が事件を追って行くのと、もう頭おかしくなってる女に起きる不可解な出来事を交互に見せてくっていう感じなんです。で、この映画110分くらいあるんですけど、110分の内に犯人を追う側であるはずのキアヌが持ちうる手がかりが「男が死ぬ直前に何故か隠し撮りしてた2枚の写真」しか無いんですよ。


こういうのって数珠繋ぎで、最初の手がかりを探していったら次の手がかりが見つかって、その次の手がかりを見つけたらその次の…って感じで物語が進むじゃないですか。
この映画にはそういうの一切ないです。列車の運転手に話を聞くとか、駅にいた目撃者を探すとか、駅に監視カメラは無かったのかとか、2枚の写真以外に手掛かりを探したり、男の死因をしっかり調べる事もないし、交友関係をもう少し洗ってみたりとかもないです。手掛かりがメチャメチャ少ないんで、当然捜査も行き詰まります。「この写真に映ったヤツに見覚えはあるか?」って聞くだけなんですよ、コイツの捜査。で、「………無いですね~」「うーん、行き詰まった…」つってるんですよ。お前マジか!??って俺が何回言ったと思います?もうなんなんだよコイツ。辞めちまえ。退職金放棄しろ。寄付して過ごせ。

 


一応、頭のヤバくなった女に「コイツなんか掴んでそうだから聴取してえ~」みたいなシーンはあるんですけど、何故接触しないかというと「前に同じように話を聞いたヤツがその直後に地元のギャングに殺されたから危ない」っていうクソ理由で。
で、最終的にキアヌはどうするかというと、コイツ諦めるんですよ。上司に「あの死んだお前の元相棒だけど、なんかアイツ実はレイプもしててヤバイ奴だったっぽいからこのまま無かった事にしてくれや」って言われて「わかりました…」つってもう捜査側の人間の話はマジで終わるんですよ。死ね。マジで全員死んでくれ。もう終わりにしてくれ。終わりだよ終わり。意味がねえよこんなの。


追われる側の立場であるはずの主人公のパートも、追う側がマジで機能してないんで、っていうか追ってないんで一切緊迫感が無いんです。ただただ精神に異常を来してる女の身に起こる不可解な出来事を並列に見せてくだけなんで、何を見せたいのか一切分からない。
どうせマジで誰も見ないし見る事もないだろうから、全部書きます。もうね、終わり方とか最悪の最悪ですよ。主人公の女が働いてる保育園?なのかな?で、ネグレクトされてるっぽい女の子がいたんですね。で、なんか家から逃げてきたって言うんで、実家で保護したんです。そしたらね、同居してる主人公の父親にその女の子がレイプされそうになったから、女の子守る為に父親殺したら女の子は主人公にしか見えない架空の存在だった!!っていうのが最後のオチなんです。
あのさ、もうコレさ、序盤から続いてきた事件と一切関係ない話ですよね??俺がこれまで頑張って見てきた110分は何だったんだよ。っていうかなんで主人公の女パートとキアヌのパートを交互に見せる作劇なのに物語の最後の最後までこいつら一切交わらないんだよ。このお腹の子どもだけでも祝福してあげて!!じゃねえんだよボケ。もうさ、もう、楽しい事だけ考えて生きていこうよ。みんなでさ。苦しいのとか辛いのとか、もういいじゃんか。俺たち頑張ったよ。な?もういいじゃんか?な。


テーマが不快!とかカメラワークが不親切!とか位置関係がわかりにくい!とか、そういう以前の問題の映画ってあるんだなと、本当にタメになる1本でした。
良かったのが、事件が起きた地下鉄のホームまで続くトンネルですね。地獄への入り口って感じで、良いロケハンが出来ていたんじゃないですかね。
主人公パートの日常が崩れてく展開もまあそんなに悪くは無かったんで、もっと早めに「キアヌが主人公の女に目を付けて事情聴取しに行く」とか「地下鉄の駅のトイレに被害者の体液が発見された」「男の死体の肉片から指紋付きのナイフが見つかった!」とか、俺みたいな素人でも辻褄が合う様な展開が思い付くんだから、もっと何とか出来たと思うんです。普通に役者陣は良いんだから、サスペンスとスリラーをやっておけばいいのに何か深淵なテーマを含ませようとして失敗してしまった感じなんですよね。開脚前転しか出来ないのに何故か前方倒立回転飛びやろうとして普通に首の骨折ってるんですよコイツ。一生見学してろバカ。

 

 

 

あっ、スイマセン。じゃあやっとここからが本番みたいな物なので。お辛い気持ちにさせてしまって申し訳ありませんでした。

 

では、今年のベスト10の発表です。

 

 

10位 ヘイトフル・エイト

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タランティーノの新作って聞いて映画館に行かない映画ファンはいないと思うんですけど、タランティーノの新作です。
この人の映画って、とにかく喋るヤツが劇中で最強っていうよく分からないルールがあって、今作も例に漏れず喋れば喋るほど生存率が高まってくサミュエル・L・ジャクソンが主演なんですけど。とにかく今更ながらこの人の芸達者ぶりに驚くし、それを堪能する3時間でもあったと思います。俺はサミュエルを全部の映画でファックファック連発して喋りまくる屈強な偏屈黒人の役やっててほしいってマジで思ってるんで、100パーセントの濃度の「俺が見たかったサミュエル」がしっかりファックファック連発してくれます。人もバンバン殺すし。


この映画、好きな所沢山あるんですけど、やっぱり序盤数分が好きで。「ズートピアの序盤もメチャメチャ好きなんですけど、この映画の序盤の凄い所は「何も起きてない」所なんですよ。もうRPGだったら中盤で絶対死ぬ、元々は歴戦の戦士だったけど年取って指揮官側に回ったプレイヤー父親の親友のおじさん的な「生ける伝説」みたいな称号が与えられてても全然おかしくない巨匠エンニオ・モリコーネの、重低音効かせた、体の芯から震えさせる劇盤がかかる中で少しずつ遠くから馬車がゆったりゆったり画面のこちら側に向かってくる、っていうだけの序盤なんですけど、もうコレがたまらなく好きで。
「これから俺は一体どんなとんでもない物を見るんだろう…」というか、怖いだけどその分楽しみ!っていう映画を初めて見た時の子どもみたいな気持ちに戻る序盤数分だったんですよ。物語の進行上においては、「馬車で移動してる」ていうだけなんですけど、この序盤があるから、これから向かう事になる山小屋がパッとスクリーンに映るだけでとんでもなくゾクゾクするし、「何も起きてない」っていうのを強烈な演出にまで昇華させてしまってるこの序盤数分が、この映画のテンションを最後まで高く引っ張っていってくれてると思います。


あまりネタバレしない様に書きたいんですけど、宣伝で「タランティーノ初のミステリー!」みたいな文句がありますけど、コレ全然ミステリーじゃないんですよ。フィルモグラフィー的にいえば初監督作品の「レザボア・ドッグス」が近いと思うんですけど、レザボアがミステリかって聞かれたら全然そんな要素無い訳じゃないですか。単純に「バイオレンス」と「みんな早口で字幕に追いつけない」と「タランティーノっていうジャンルで見た方が腑に落ちるかとは思います。自分の正義に最後の最後まで忠実だった人間が、死ぬ間際にちょっとしたご褒美を貰えたっていう、メチャメチャ後味の悪くてバカな映画っていえば映画なんですけど
何か深淵なテーマがありそうでそんなに無いっていうのもいつも通りのタランティーノではあるんですけど(そんなの狙ってもないんでしょうけど)一見バカがバカ乗されて計算結果とんでもない数のバカになった!っていう話のツイストに次ぐツイストの果てに、ああいう本当にささやかなご褒美で満面の笑みを浮かべるサミュエルを見ると、何故か「俺はいい映画を見ている」って心から信じられるんですよね。

 

 

 

9位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー

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面白かったっすね~~。この前WOWOWで「モンスターズ」見たばっかりだったんですけど、この後にゴジラ撮ってスターウォーズ撮ってますからね。ギャレス・エドワーズ高橋由伸みたいな出世街道ですよね。
欠点の全くない完璧な映画っていう訳ではないんですよ。登場人物一人一人の掘り下げも薄かったりするし、彼らがチームとなっていく共通の体験とかも特にないまま、最終決戦まで行ったりするんで。事態が特に動かないまま同じ所を行ったりきたりしていて、なんか重たいテンポで序盤は進むんですけど。


ただやっぱりこの映画の醍醐味っていったら、終盤の最終決戦シーンからラストシーンまでの熱さですよ。最終決戦っていうか本筋はまだ始まってもないんですけど。
とにかくもう泥臭いんですよね。一人一人が死力を振り絞って、それぞれは小さな力だけどその小さな力が受け継がれて受け継がれていった先に大きな勝利があるはずだ!っていうのを、台詞だけでなくて、彼らの命の灯火その物が「受け継がれていく」っていうのを体現していくんです。スター・ウォーズって、アナキンの話であり、ルークの話な訳じゃないですか。そういうヒーローたちの物語においては語られる事の無い、「持たざる者」たちの戦いって、つまり俺の事ですからね。ドニー・イェンも俺だったんですね。実はね。
序盤はあんまり…って書いたんですけど、好きなシーンはいっぱいあるんですよ。主人公が幼少期の頃に、家にやってきたクレニックとストームトルーパーが横一列になって家囲むシーンとか、「ああ…」って感じですよね。とんでもない2時間が始まるぞ…みたいな。あと俺ことドニー・イェンね。最高。シネマハスラー宇多丸が「あんな強いジェダイはいねえ」って言ってたのには笑っちゃいましたけど。

 

 

 

8位 シン・ゴジラ

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まさかこんな面白い映画になるなんてって感じですよね。多分特報が出た時点でこの映画を信じてた人間って日本で15人くらいしかいなかったんじゃないかと思うんですけど。
東京の破壊シーンとか、会議シーンの気持ちいいテンポの良さとか、見所が沢山ある映画でした。個人的に好きなのがゴジラの東京破壊シーン後の「日本の意地見せたるわ!!」の流れなんですけど、あそこから一気に「こうでありたい俺たち」みたいな感じになっていくじゃないか。2部構成の後半って言ってもいいと思うし、コピーの「現実対虚構」っていうのもここの構成の事を指しているんでしょうけど。

 


前半部分は3・11のオマージュが凄く多くて、ゴジラっていう存在自体が理不尽な災害そのものであって。俺たちが暮らす現実っていうのは、ゴジラが破壊の限りを尽くして後に眠り着いたあの瞬間で立ち止まっている訳じゃないですか。そこから、せめてフィクションの中だけでもその理不尽さに打ち勝とうとするし、そしてその理不尽さに実際に勝利してみせるっていう流れになっていくんですよね。トラウマに虚構の中だけでも完勝するっていう。3・11を体験した日本人でしか作り得ない作品になっていて、「怪獣映画」の枠の向こう側を見た様なそんな作品だったと思います。怖いし、でもしっかり娯楽作品としてエンタメしてるし。

 

 

 

7位 ヒメアノ~ル

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非常にキツい(良い意味でですけど)映画でした。
何と言っても森田役の森田剛が凄まじかった。段々と日常がこの森田に侵食されていく様子が本当にイヤでショッキングで、ちょっと長い間引きずってしまいました。結構バイオレンス色強めなサスペンス映画に分類されると思うんですけど、学生時代に裏切ってしまったり、疎遠になってしまった友達を連想させる映画なんですよ、コレ。


例えば、一体俺は学生時代に何人のクラスメイトとすれ違って傷付けてここまで大人になってしまったのだろうか、なんて事を考えれば、多分途方もない数の人間たちが浮かんでは消えていくんですけど。
でもそれは俺がマジでクズな人間なんじゃないかっていうのっは置いておいて、「学生時代の忘れたい思い出と罪悪感」なんて誰しもが持ってる訳じゃないですか。でも、数十人数百人の不特定多数の人間と、何千時間も「学校」っていう同じ空間で過ごしてきた事を考えれば、それって凄く普遍的な罪の意識だとも思うんですよ。「あの時こうしていれば、ああしていれば」なんて子供だった頃から皆が感じていたと思うし、ずっとずっと後悔してたんだと思うんですよ、今も昔も。


俺が過ごしたあの3年A組の教室の中にも、森田が生まれていたかもしれない。場当たり的に何の感情も無く淡々と殺人が犯せる森田の様な人間が生まれる土壌で、俺は育って、それで大人になっていったのかもしれないと考えると、本当にゾッとするんです。サスペンス映画なんですけど、後味が本当に悲しくて、10代の自分について、学校っていう空間について考えさせられて。こういう視点があったか!っていう、一括りに残酷映画とは言えない凄みのある1本でした。
映画本編については、序盤とそれ以降のメリハリの効きがマジで凄まじいですね。濱田岳ムロツヨシを中心としたコメディタッチで中盤辺りまでは進むんですけど、このコメディタッチの柔らかい展開の中でも、やっぱり明らかに異質な存在として出てくる森田剛の「コイツ、マジで関わらない方がいい」っていうイヤな感じが緊張感を保たせてて見応えがありました。
こういうヤツ、高校にいましたもん。話が通じないっていうか、もう人の話を言語として認識してないし、する気もない感じ。それ以降のバイオレンス描写も、なんというか、俺の部屋の隣で起きてそうな感じっていうか、俺の日常の延長線上に殺人がありそうな感じっていうか。撮り方がマジで嫌な感じなんですよね…。イヤ、最高なんですけど。

 

 

6位 COP CAR コップ・カー

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ケビン・ベーコン最高ですよねマジで。死体を引きづるベーコン、呆然と佇むベーコン、物に当たるベーコン、色んな角度から色んなベーコンが楽しめるってだけで大変価値のある映画です。


見る前のイメージとは全然違った映画でもありました。ジュブナイルなんですよ。この映画。「スタンド・バイ・ミーって映画ありましたけど、アレって子供たちが「死」その物を至近距離で見てしまったが故に、生にはいつか終わりが必ずやってくるっていう事を頭ではなく心で理解してしまった事で大人に成らざるを得なくなった、っていうジュブナイルであり結構悲しくて辛い話って思ったんですけど、それに近い物をこの作品では感じました。


「コップ・カー」、つまりパトカーですよね。その正しさの象徴を劇中で追うのは、自身の「正しくなさ」なんて全く信じてもいない人間で、相対するのは自身の「正しさ」が何なのかもまだ理解していない人間で。
またこの正しくない人間が世間的には上手い事やってて、良き人間として過ごしてるっていう描写が嫌な所なんですけど。
俺たちが信じてきた「正しさ」を簡単に揺るがせてしまう日々が、また俺たちの生活のすぐ近くにあるのかも…っていう怖さを、凄く端的に描写しながらも、それをジュブナイルと絡ませていて、今まで見た事がない映画を作ってしまってるんですよ。
そして死や痛みを覚えて子どもたちは行って帰ってきた」っていう爽やかウィゴ映画ではあるんだけど、多分こいつら生涯に渡ってケビン・ベーコンのどうかしてる表情がメチャメチャちらつく」っていう。リドリー・スコットの「悪の法則」っていう映画がありましたけど、少しそこにスタンド・バイミーのエッセンスを注入した感じというか。


自分がどういう風にスクリーンに映っているのか、それを完全に理解しながら、作り手としてこういう今までにあまり無かった物を作っていくっていう映画人として凄く優れてる人間なんだなあ…と改めて思いました。ケビン・ベーコン
この世の理不尽さをその出で立ちだけで描写してしまってるんで、このベーコンが。この男が。この映画のラストシーンも凄く好きなんですよ。真っ暗闇の中を朧げだけども何とかライトを照らしながら…。マジで好き。ベーコンに理不尽な事されてベーコンが理不尽な目に合う新作が毎年見たい。

 

 

 

5位 太陽

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入江悠監督の最新作ですね。
邦画で近未来SFって、まあ安藤ロイドくらいしか思い浮かばないし上手く行くようなイメージが全く無かったんですけど、こういう撮り方があるのか…と、すごく感心しました。
「かつては存在していたが今や廃れてしまった風習」を描く事で、逆に未来感の演出として機能させているんですよね。街ではなく「集落」と化してしまった人間の暮らす地域に、ほんのちょっとした近未来的なガジェットであったり、文化的な違和感を抱かせるキャラクターを配置するというだけで、とにかく今では無い「いつか」の演出になっていたりして。スパイク・ジョーンズの「her 世界でひとつの彼女」っていう大好きな映画があるんですけど、ちょっとそれを連想しました。ちょっとしたアイテムで「今でなさ」の演出をバッチリ決めちゃってる感じというか。


個人的にはこの映画は「肉体と精神、どちらが人間が人間である為に必要な器官であるのか」っていう所の話だと思っていて。人間が人間である以上、この肉体と精神っていう檻の中から人間はいつまで経っても出る事が出来ない訳じゃないですか、当たり前の事言ってますけど。
肉体と精神の檻の中にいる以上、人間である事は証明できるが、人間でいる事のまず大前提として、最後には「死」は待っているし、そこまでにはいくつもの「理不尽な不幸」は必ず存在していて。ただ、それでも何とかして生きていかなければならない、この肉体と精神の檻の中にいる限りは永遠に耐えていかなければならない、っていう大変辛い物語でもあるんですけれど。この「太陽」っていう作品は。


ただ、そんな中で「誰かを守りたい気持ち」であるとか「誰かを心の底から愛する気持ち」とか、そういう凄く単純で真っ当な誰かへの愛情みたいな物が、貴重で、尊くて、本当に儚くて小さい小さい今にも消えてしまいそうな灯りだけれども、それでもこの灯りを頼りに生きて行くしかないじゃんか…っていう凄く弱くて強い希望の話にもなっていると思うんですよね
この映画のラストシーンが本当に好きなんです。「太陽」っていう物に永遠に縛られながら、今にも終わりを迎えそうな旅路の中でも、ここではない何処かへ行きたい、いや、行かなければならないんだ今すぐにっていう、凄く爽やかなラストショットがずっと心の中に残っています。「SRサイタマノラッパー」も好きですけど、こっちもメチャメチャ好きです。

 

 

 

 

4位 永い言い訳

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辛みと笑みの豪華2本立てみたいな感じでした。
本編はかなり重いテーマから始まるんですけど、主人公がとにかくクズなんですよね。主人公は小説家で、本業は落ち目な感じなんですけど、テレビにはそこそこ出てるみたいで。物語は奥さんが不慮の事故で亡くなる所から始まるんですが、コイツ奥さんが亡くなった時は別の女と自宅で寝てたっていうだけでもアレなんですけど、奥さんの葬式でテレビカメラの前で嘘泣きしつつ、車の中では即鏡で自分の髪型気にして、それから「自分の名前 可哀想」とかでグーグル検索してる描写が入ったりして。思い付く限りの「人間が取れるクズ行動」が山盛りなんですよ、マジで。


セリフも心にグサッと来るのが多くて。
主人公は奥さんを亡くした時に初めて「俺ってもしかして誰も愛せない人間なんじゃねえの?」って自覚するんです。で、奥さんはどうやら地元の友達と旅行の道中にバスの事故で亡くなった、と。まあなんやかんやあって、そのお友達には遺された旦那さんと子供がいて、旦那さんはトラックの運転手やってるから子供の面倒がなかなか見れない。そこで主人公は変わりに子供の面倒を見てあげるって事になるんです。
台詞には無いんですけど、明らかに主人公は子供の面倒を見るっていう事で、自分の中に今まで無かった「愛情」を見出そうとするんですね。しかもそれは他人の子供を使って。「ありがとう!」「マジで良いヤツだよ!」なんて旦那さんにベタ褒めされて「そう?」「困った時はお互い様だよ?」なんてツーブロックの本木雅弘が得意気になって言うんですよ。なんかお前よく分かんねえけどどうしようもねえクズだな!ってなるんですけど、後にこの人がマネージャーに浴びせられる言葉が本当に辛辣で。

 


「どんなに人間のクズみたいなヤツでも子どもを作ると、それを忘れさせてくれるし、それを分からなくさせてくれるし、最高の逃避ですよね。逃げる事は悪い事じゃないですよ」みたいな事を言うんですよ。お前、そんな事を例え思っても言うなよ!っていうか言語化すんじゃねえよ!ってもう映画館で笑いそうになっちゃったんですよね。
なんで俺からすごく遠い位置にあるこの映画がこんなにも面白く感じたのか、また俺の話になるんですけど、俺に子どもなんていないし、結婚なんか多分しないで死ぬんだろうなっていう予感だけはメチャメチャあるんです。20代後半にもなって人を心から愛した事が無いんです、多分。アトリエかぐやと裸足少女があればもういいや、っていう感じで。

そういう、自分の中にある「愛情」の存在すら自分で疑ってかかってるような人間にとって、自分の分身である「子ども」っていう存在ならば、どこからともなく「愛情」っていうヤツが、空から美少女が降ってきた!的なイメージでやってくるかもしれないじゃないですか。そこをさ、俺の唯一の拠り所を「無条件の愛情があるから自分のどうしようもなさを見ないで済む」なんて説明されたら、俺もう膝とか曲げられそうにないんですけど。もう生きていけないでしょ。無理だよ無理。本木雅弘偉いよ。あんな事、年下の男に言われても膝曲げて自転車漕いでんだから。歩行補助車でも俺無理だよ。


「愛情って何処からやってきて、どうやって見つければいいんだ?」っていう映画だと思うんです。ある日突然自分の中に芽生える物なのか、自分の心の中で少しずつ育てていく物なのか。
主人公は妻っていう存在を喪失して初めて、自分の心には欠落があるっていう事を知るんです。その欠落はどうすれば塞がるのか全く検討も付かないまま、なんとか他人の子どもで埋め合わせしようとする姿が可哀想ではあるんだけど、可愛らしいみたいな部分もあって。主人公は結婚もしてて不倫もしてて、っていう俺自身とは凄く遠い位置にいる人間のはずなのに、凄く身近に感じてしまう部分が多々あって。「失う」っていう事を通してでないと愛情って分からなかったり、忘れてしまったりっていう事だと思うんですよ。
あらすじだけ読むと、正直物語にどれだけ乗っていけるか不安だったんです。前評判も良かっただけに。だけど、この映画は愛情だとか自身の才能だとか、そういう「今までの人生で積み上げてきた物を取り戻す話」では無かったように思えるんです。逆に自分の中の喪失とか欠落に自覚を持って、そしてもう取り戻せない物がある事を知って、人生の中で愛情を実感できる回数には必ず限りがある事を知る映画だったっていうか。自分の中の欠落した部分をちゃんと見ようとするっていう、凄く普遍的で、特に俺みたいな貯金8万の人間にはメチャメチャ刺さる話だったんですよね。

 

 

 

3位 この世界の片隅に

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最高アンド最高。もう最高以外の最高が無い。
スクリーンの向こう側にね、生活があるんですよ。生きている人たちがいて、暮らしがあって、感情があって。っていうか俺が見てたのはスクリーンでは無かった気がします。なんか特殊な、4次元的なアレです。
良い映画って、映画館に入った時と出てきた時で今まで見ていた景色を全く別物にさせてくれるじゃないですか。俺の好きな映画って今パッと思い浮かぶのは「グラン・トリノと「ダークナイト」なんですけど、この2本を見終わった時も映画終わって街に出ると、世界が全然変わってしまった気がして。この世界には星の数ほどに「理不尽な悪」っていうのは人間が生きる限り絶対に存在するって映画じゃないですか。2本とも。
今この瞬間にもこの世界のどこかには、その悪に屈しようとしてる人間もいるけれども、自分が出来る事なんてごくごく限られてはいるけれども、それでも自分が信じる正義を糧にしてこの世界を生きていくしかないし、そうやって必死に抗ってるアンタの姿はこの世で一番美しくて尊いんだよ!っていうのをガツンと見せられて。もう俺は見終わった時にグラッグラ来てたんですけど。今作「この世界の片隅に」を見た時も、それと同じくらいの衝撃があって。


好きなシーンは山程あるんですけど。この映画も。
序盤から中盤にかけて日常描写の積み重ねを沢山見せているから、いよいよ戦火が広島にも、っていう下りがよりショッキングに感じてしまったりとか。
ほのぼのとした日々の中でも、俺たち現代人にしてみればいつ何が起きるかを知っているから、「◯◯年、◯月」っていう字幕表記1個で緊張感が序盤からずっとキープされてたりとか。
一見4コマ漫画の登場人物みたいな、デフォルメされたデザインに見えるんですけど、肌や髪の質感が凄くリアルだからメチャメチャ色気がある様に見えたりとか。
能年玲奈マジで最高だとか。「ここ教科書で見たぞ!っていうか教科書で見た景色がアニメーションになってるぞ!!」とか。
空襲警報が日常的に鳴る様になってから、すずの指差し点検が見るからに早くなっていく描写とか。
あるシーンで、すずが空に絵の具を頭の中で散らして「ああ…今、この景色を書けたならな…」って呆然と空中を見やる所とか。
アニメでしか出来ない描写が山ほどあったんですよね。


終盤の終盤に戦争が終わって、呉の街に少しずつ少しずつ明かりが再び灯されていくっていう描写があるんですけど、そこが俺一番好きで。主人公のすずは、もうそれは壮絶な体験をしてきた訳じゃないですか。家族も亡くなった、自身の生きがいも無くした。好きだった幼馴染に会う事ももうきっと無い。
でも、その民家に灯されていく明かりを見た時にハッと気付いたのが、「この灯一つ一つの下全部に、人は確かに生きていたんだよな」っていう事で。勿論コレは映画だから、浦野すずっていう主人公がいて、彼女とその家族が生きてきた日々を観客は追体験する訳なんですけど、彼女たち家族だけが特別に壮絶だったっていう事ではなかったはずなんですよ。
この灯りの下にも別の家族があって、戦争を体験していて、生活はメチャメチャに振り回されてっていうのが、無数に存在していた訳じゃないですか。だからその瞬間に、この映画は浦野すずっていう主人公がいる映画ではあるけれど、本質的には全ての灯りの下にいた家族の話だったと思うんですよね
こういうドラマが全ての家族の下に、無数に存在していたんだろうと考えると、もうね、俺は死んじゃうんだよな。果てしなさもあるし、人間の強さも感じるし、あの時統計取ってたらいくつの理不尽な悲劇があったんだって考えたりすると、もう俺は遠くに行ってしまう。果てしない。この映画は果てしない。

 

 

 

2位 オデッセイ

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イヤもう最高ですよ。コレ。もう最高以外の言葉が無い。最高ばっかり言ってますけど、この辺。でももうマジで最高。


もうね、底抜けに人間賛歌なんですよ、この映画。火星に一人取り残された主人公がそれでも何とか生き抜く為に知恵を振り絞る!っていうのが本筋なんですけど、俺が胸を打たれたのが「一人一人が出来る事をしっかりやる」っていう、凄く当たり前の事なんです。
主人公の身に降りかかるのは、本当にキツくていつ心が折れてもおかしくないって感じなんですけど、そういう時に彼が心の拠り所にするのは、あくまでそれまで自分自身が暮らしの中で積み上げて来た知識であったり、ユーモアであったりっていう、俺たちの生活の中にでもそこら辺に落ちてる様な物なんですよ。神や奇跡っていうあやふやな存在ではなく、人間自身が持ちうる力だけで苦難を乗り切っていくっていうその過程がたまらなく好きだったりするんですけど、それより何よりこの映画では、主人公が火星で生活する描写と並行して、地球で主人公を救う為に日夜開発を続けている職員の姿を見せていくんですね。


俺は個人的にはこういう描写を地球と火星とで並行に見せていく過程こそがこの映画の肝だと思っていて、つまり「今日出来る事をそれぞれが一生懸命やる」っていう当たり前の事を当たり前にやって事の偉大さがここにあるんだと思うんですよ。
残業で日中働き詰めだったり、一見何に繋がっているのか分からない作業でもあっても、それが積み重なって積み重なって、いつかは宇宙をも超えて火星にいる人間と確実に繋がっていくんだっていう所が、人間ひとりの小ささ非力さを、貶める事は決してしないし、人間ひとりの小ささ非力さを、神の存在をも超えた物として力強く描いてるのが本当にたまらなく好きなんです。ラストのあの生徒が一斉に手を挙げるあのシーンとかメチャメチャ感動して。一人ひとりの力はこうやって受け継がれ、人間にしか持ち得ない力として、また継承されていくんだなあ…っていう、最高のシーンだったと思います。正直、この作品を映画館で見た直後は「今年の1位出たな…」っていう感じでした。

 

 以前のレビューです。一応参考までに。

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

 

1位 何者

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もう文句なしの1位だと思います。
ちょっと前に詳しい感想は別に記事にして書かせてもらったんですけど、やっぱり未だに印象的なシーンはふとした時に思い返してしまいますね。
SNSが凄く重要なファクターになっている作品です。
また自分の話になってしまうんですけど、俺にとってSNSっていうのは心の拠り所でもあるし、人生の汚点でもあるし、でももう無くてはならない物になってしまっていて。それは良い意味でも悪い意味でもあるんですけど。
己の中にある嫌な部分を隠すんじゃなくて、吐き出せる場所があったって気付いてしまったら、もうそこから抜け出す事は簡単な事ではなくて。だから主人公のあの行動は自分の事の様にわかるし、同時にそういう嫌な自分の視線みたいな物って自分にも向けられる物だから、もうぜ全然身動き取れなくなってしまうのもメチャメチャ分かるんですよ。多分主人公が演劇から離れてしまったのも、自分が自分に向ける目線に耐えられなくなったからだと思ってるんですけど。


だから、自分で自分をずっと縛りつけている主人公に、終盤の有村架純が「演劇、面白かったよ」ってやっと言ってくれるじゃないですか。あの瞬間に彼を縛ってた視線は若干和らいだんじゃないかと思っていて。何千何万っていう言葉を使って自分を縛り付けて、それで自分を守ってきた言葉より、たった数文字の台詞だけで彼の心は少し解放されたんだなと考えると、自分の事の様に涙がボロッボロ流れてしまったんですよね。
やっぱり俺がこの映画好きなのは、凄く厳しくて辛い自意識についての話なのに、その目線がメチャメチャ優しい所なんですよ。主人公はSNSに書いてきた文字ではなく、凄く凄く遠回りしたけれど、やっと自分の言葉で自分の人生を語り初めて、自分の言葉で生き始めるんだろうなっていう。それも「語る」じゃなくて「語り始める」っていう所が本当に涙が出るくらい優しくて。スタートラインに立つ覚悟を決める人間の話にしているのが、本当に大好きです。もう生涯オールベストとか選ぶんなら絶対入れる作品になったと思います。もう俺の一部です。この映画は。

 

 

こっちでも感想書いてます。

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

 

という事で2016年の年間俺大好き映画第1位は「何者」でした。山田孝之になりたい。

今年は邦画に面白い物が多くて、豊作だったと思います。特にやっぱりサスペンス、暴力映画がメチャメチャ良かったですね。「ヒメアノ~ル」も「ケンとカズ」も。「クリーピー 偽りの隣人」や「ディストラクション・ベイビーズ」とかも凄く良かったんですけど、見たのが今年入ってからだったので。っていうかベスト10とか20とか言ってますけど、全部1位なんですよ。本当は。全部最高。

では、上位20本の順位だけ改めて書かさせてもらって、2016年の映画感想記事は終わりとさせていただきます。終わりとさせていただきますって、2016年はとっくの昔に終わってるんですけどね。タハハ。はい。もう二度とやらねえ。

 

優勝   何者
2位   オデッセイ
3位   この世界の片隅に
4位   永い言い訳
5位   太陽
6位 COP CAR コップ・カー
7位 ヒメアノ~ル
8位 シン・ゴジラ
9位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー
10位 ヘイトフル・エイト
11位 シング・ストリート 未来へのうた
12位 ケンとカズ
13位 ハドソン川の奇跡
14位 ズートピア
15位 映画 聲の形
16位 ちはやふる 上の句、下の句
17位 ルーム
18位 デッドプール
19位 SPY/スパイ
20位 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ

 

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)