2016年新作映画ベスト50プラスワースト1 ①

本当にマジで嘘でしょ…っていうくらいにクソ遅いんですけど、2016年に見た新作映画のまとめを書こうとしています。今。
去年は一応ベスト10だけ書いたんですけど、結構こういう映画の感想ってよっぽどの事が無いとすぐ忘れちゃうんですよね。なんで多分50本くらいしか新作見てないだろうっていうんで、「全部書けるっしょ!」つってクリスマスあたりからから書き始めたはいいんですけど、もう今2月になろうとしています。誰が今更読むんだこんなの。
もうアレですからね。最早「読者の皆さんにいい映画の情報を少しでもお届けしたい!」とか一切無いですからね。俺の中で。「勿体無い」と「供養したい」以外の感情がない。
そんなんでも「仕方ない、日本語覚えたての黒人が相手みたいな文章を読んであげよう」っていう方。もしいれば、このまま下に進んで読んで頂ければと思います。「20代後半にもなってど田舎で非正規雇用で働いてる映画の知ったかぶりでしか話せる事の無い人間の感想なんて目に入れたくもないんですけど。脳が腐るし。」っていう方。もしいれば「…うるせえよ!!」しか言い返せません。もう言い訳です。全部俺が悪い。はいはい俺が死ねば全部解決するんでしょ。


今年見た映画は新作53本、旧作85本の計138本でした。150本は見たかったんですけど、ペルソナ5が出たあたりで鑑賞本数がガクッと下がって、若干足りない感じです。
それと、年内中で公開された前後編モノ、見たのは「ちはやふると「傷物語」だったんですけど、こちらはそれぞれ纏めて1本っていう換算で感想を書いています。なので今回はベスト50プラスワーストっていう感じになってます。かなりの長文になった物もあれば、一言でサッと終わらせている物もあるんですけど、量が量なので、前編、中編、後編の3回に分けて掲載するつもりです。

ワースト3作品は後編で発表するという事で(っていうかワースト作品の感想が一番長いです)今回は48位から31位を一気に供養します。では早速。

 

 

48位 僕だけがいない街

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つまんなかったですね。
年末に深夜の地上波で「カイジ」やってたんで見てたんですけど、見た後だと藤原竜也って映画向きでない役者の様な気がメチャメチャするんですよね。それこそ「るろうに剣心の志々雄真実くらいに見た目からして強烈にデフォルメされたキャラクターじゃないとしっくり来ない様な感じがして。刺された石田ゆり子を抱いて泣くシーンとか完全にEカードやってるときの「ア"~~」だったし。これで笑うなっていう方が難しいんだけど…みたいな。


あと、やっぱり子役って難しいですよね。やけに小慣れた演技演技してる子供って、なんか鼻に付くっていうか、撮る側の力量が如実に現れちゃうと思うんですよ。子供が主役の映画って。そもそもあんまり実写化に向いてない作品だったのかもな…と見た後になって思いました。心が大人の子供を小学生が演じるのって、今回に関しては無理があったのかな、と。
2時間で纏める為に中盤以降は映画オリジナル展開になるんですけど、ここも本当に酷くて。オリジナル展開になった途端に大失速してく感じが「あっ作者変わった」っていうのが手に取る様に分かるんですよ。時間跳躍モノ的なSF設定のある話じゃないですか。この話って。原作ではリバイバルって呼ばれてましたけど、その時間の行き来をどうやって物語の辻褄と合わせるかっていうのを、原作ではかなり気を使っていたと思うんですよ。違和感を感じる感じないは置いておいて。


時間跳躍モノって、現実の時間軸で何かしらの事件がまずあって、それから過去や未来に時間跳躍して事件を解決もしくは解決の糸口を見つけた後、必ず最後には現実に戻ってくる事で物語が収束していくのがお約束じゃないですか。原作でもここの辻褄合わせにはかなり苦労していたと思うんです。かなりご都合主義的すぎる展開も多かったと思うし。
ただ、それでも原作がメチャメチャ面白かったのは、単純にクリフハンガー的な「次どうなる!?」が続いて、物語自体に魅力が凄くあったからだと思うんです。最初に「最悪な未来」像としての現実を見せているから、そこを回避しながら行動しなければならないっていう一番重要なルール設定がわかりやすく提示されているし、そこが最後まで緊迫感を持続させていて、テレビドラマ的な面白さがあったと思うんです。


ただ、今作ではあまりにも原作の展開をそのままやってしまってるんで、危ういバランスの部分だけが目立ってしまってるんですよ。犯人が上手く立ち回り過ぎてて違和感しかなかったり、警察が全然機能していなかっかり、その癖捕まりそうになると都合よくリバイバルが起きたり。30分の連続ドラマであればまだ何となく誤魔化せていたかもしれない部分が、2時間で連続して何度も見せられてると、ノイズが大き過ぎて物語に付いていけないっていうか。
しかも、作中で起こる事件って、死者が何人も出ていて、しかもその全員が子どもっていうメチャメチャ残虐な、恐らく日本の犯罪史に残る様な大事件じゃないですか。更に終盤のオリジナル展開では主要人物が死ぬっていうか展開になっていくんですけど、感動気な音楽と感動気な説明口調のモノローグで、何故か良い話っぽい締め方で終わってるんですよ。劇中で起きた事と登場人物たちとの心情がまたご都合主義的に片付けられていて、本当に典型的なダメ邦画見たな~~っていう感じで。


ご都合主義といえば、犯人が主人公の前で「自分がこの事件の犯人だ」ってハッキリ自供するシーンがあるんですけど、主人公は犯人が運転する車の助手席に座ってるんですね。で、喋ってる内に犯人が自供しながら人気の無い橋の上まで来て、なんか知らねえけど不穏な事喋りながら車停めて降りたと思ったら、主人公も一緒になって車を降りるんですよ。誰に促される訳でもなく。で、逃げる訳でも無く、抵抗する訳でも無く、犯人の正面にいて棒立ちなんですよ。


あのさ、主人公って身体は小学生の子どもなんだよね?相手は道中で自身が連続殺人犯だと明かした上で、恐らくここで自分を殺そうとしてる訳なんだよね?なんで犯人と一緒になってシートベルト外してゆっくりゆっくり車を降りて犯人と対面してんの?「アレ、主人公って確か丸腰だったと思うし、何か算段があるのか…?ここでかなり思い切ったオリジナル展開があるのか…?」と思ったら、当然の様に主人公は犯人に橋の上から突き落とされてんですよ。あっバカだった!っていう。どこも「身体は子ども、頭脳は大人!」じゃなかった。
多分「夜の橋で真犯人と遂に対面!」っていうシーンが撮りたかったからだと思うんですけど、撮りたいシーンありきで作ってるから、こういう意味わからない事になってると思うんですよね。この角度だと超エモいシーンになるし、ちょっとくらい不自然な行動取っても気付かないっしょ!忘れるっしょ!みたいな。


で、橋に落とされた!死んだ!と思ったら、何故かリバイバルが終わって身体は藤原竜也に戻ってて、病院にいるんですよ。
その事については特に説明も無くドンドン物語が進むんですけど、アレ?俺って何か見落としたか?って思うじゃないですか。「死んだら強制的にリバイバル終わるとかってルールあったっけ?」とか「原作みたいに植物状態にされて目覚めたっていう事にされてるって事か?」って思うんですけど、なんか藤原竜也も小綺麗な格好して普通にシャツ着てるんで植物状態だった訳では無いっぽいし、横にはすっかりオバさんになった妊婦の雛月いるし、石田ゆり子生きてるし、何事も無かった様に同じ時間軸の十数年後にいるみたいなんですよ。そこに対する説明は、結局最後までほったらかしなんです。


なんていうか、バカっていうか、ふざけてるっていうか、これまで原作が何とか気を使ってきた箇所全部すっ飛ばしてるんですよ。時間跳躍モノなんてもう珍しい題材じゃ全部ないし、その分観客のリテラシーも上がってる訳じゃないですか。だからこそ、こういう過去と未来の関係性における辻褄合わせって絶対やっておかないといけないし、そもそもそういう所が時間跳躍モノの醍醐味だったりって思うんです。
でも、もう辻褄合う合わない以前の問題ですよ、コレって。何と無くて作って適当にやっておいて纏めて感動気な音楽とモノローグ言わせておけば、なんとかなるっしょ!忘れるっしょ!みたいなのが透けて見えるんですよ。もうマジで「不誠実」以外に無いんです。この映画。特に後半。
主人公の母親役で出てきた石田ゆり子も酷かったんです。もう「ちょっとした方言を喋る石田ゆり子」でしかないんですよ。それを藤原竜也がア"~~母!つって呼ぶんだから、もうなんか笑っちゃって。石田ゆり子石田ゆり子素材のまま出てくるんで、何だコイツ…っていう感じでしたね。及川光博は完全に100点の配役だったと思うんですけど。


今年の邦画って凄く良作揃いで、特に漫画原作のサスペンス映画で面白いヤツがメチャメチャ多かったんですよ。「ヒメアノ~ル」とか「アイアム・ア・ヒーロー」とか。それだけに今になって振り返ってみると逆に目立ってる感じがしますね。

 

 

 

47位 X-ミッション

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面白いとか面白くないとかっていうか、意味が分からないんですよ。面白くはないんですけど。


詳しいレビューはこちらで書いているんですけど、やっぱり物語の推進力にスピリチュアル的な要素を持ってこられると俺は全然乗れないんですよ。「地球が持つ根源的な大いなる力と一体化するため」がゴールになってる映画を2時間見せられても困るっていうか。そうやって信者たちを騙して本当は金を巻き上げていた…とかなら全然腑に落ちるんですけど。っていうか、こういう『もっと具体的な目的を劇中で作ってくれよ!』って言ってる俺も作品内の登場人物にしてみれば「俗世に染まった愚かな人間」みたいな感じになるのが腹立つっていうか。


CG一切使ってません!とか前文句で散々言ってたと思うんですけど、アクションシーンに「メチャメチャ身体張ってます!」っていう所での物語的なカタルシスは一切無くて、ミュージックビデオにマジで余計なストーリーの要素が加わったみたいな感じでしかないんですよ。本当にただの羅列でしかなくて。まだ黙っててくれてた方がマシで。
まあでも、「父は捕鯨を守る為に捕鯨船の前に立ちはだかってそのまま巻き込まれて死んだの」→「お父さんは自分の意思を曲げない強い人間だったんだね」→「捕鯨船の方が強いわ」っていうシリアスシーンは最高の下りだったと思うんで、ここを見るだけでも価値ある映画だとは思います。

 

 詳しい感想はこっちにも書いています。もし興味があれば…。

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

 

46位 その女諜報員 アレック

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この順位辺りのものは本当に死屍累々って感じなんですけど、映画のルックだけは良い物が多い気がします。「話が進む」っていうのが唯一の救いっていうか。「終わりには向かっていってる」みたいなのがギリ分かるだけでもマシっていうか。なんか疲れが溜まってたりすると、相手が喋ってることが頭に入ってこない、ってことあるじゃないですか。「コイツの言ってる事はよく分からないけど、ネガティブな事は言ってるんだな…」しか脳が疲弊しきって理解してくれない、っていうのって誰にでも経験あると思うんです。それです。この映画。

一応アクション映画なんですけど、戦闘シーンの見せ方が「誰かが銃を構えながら移動している → 横から不意打ちする → 倒す」で8割くらい占めているっていうキツいヤツでした。もう主人公が銃構えて室内を歩いてるだけで俺の目はドンドン死んでいくんですよ。
主役のオルガ・キュレリンコってボンドガール張っただけあって綺麗だしアクションも頑張ってはいるんですけど、見せ方でメチャメチャに損させてると思います。解錠のプロで超優秀!っていう設定の割には3600個くらいヘマしてるし、っていうか解錠シーン無かった気がするんですけど。この映画で起こった出来事を120分の映画の序盤15分くらいに纏めてくれれば面白くなったんじゃないでしょうか。

 

 

45位 傷物語Ⅰ鉄血篇、Ⅱ 熱血篇

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良い所もあるんですよ。阿良々木と忍野とキスショットがチーム結成したシーンになると3人の姿を陰の中に入れて見せたシーンとか。映画的な演出をしているシーンも少しはあって。


ただ、別に俺は「シャフトっぽい演出」を見たいが為に金を払って見た訳で無くて、今作はもう作り手側が面白さとか見やすさとか、そういうのを作劇する事を選択してないんですよ。
とにかくその中身は空っぽであってもいいから「シャフトっぽい演出」を挿入すれば物語として成立すると思ってるみたいで。神谷浩史は俺超好きだし、そもそも物語シリーズが大好きでアニメを見だした様になったんですけど、スクリーンに大写しになった阿良々木と神谷浩史の吐息音を数分間ぶっ続けで聞き続けるのは、いくら何でも面白いとは思えなかったし、何の意図も感じ取れなかったです。

 


3部作なんだから見せ場は次作以降にあるから仕方ないのかもしれないですけど、じゃあもうコレ劇場版にする必要なんか全然無くないですか?お金払って、座席に座って、スクリーンで上映する以上はその作品内で完結する様な落とし所を設定するべきじゃないですか?会話シーンも上映時間を少しでも埋め合わせる様にしか思えないくらい間延びしたテンポの悪さで、見てて全然気持ちよくない。正直、物語シリーズの中でもシナリオがちゃんとある部類に入る原作だっただけに、こういう作りになってしまったのが残念でした。コレであれば8話くらいでTVシリーズで普通に放映していた方がずっと楽しめた様に思えます。

 

 

 

44位 インデペンデンス・デイ リサージェンス

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「大作映画っぽさ」があるだけで、中身とか全然無かった映画でしたね。嫌いではないんですけど。「ペットボトルの水を飲もうとするんだけど、横に置いたフタが肘に当たってテーブルから落ちそう!落ちるのか?落ちないのか?…やっぱり落ちるのか!?落ち…???…落ちませんでした~!」の連続だけが延々と続くんですよコレ。


イヤ、アクション映画とかって大体がこういう緊張と緩和の連続だっていうのは分かりますよ。ただ、それって当然ながら物語の根幹としっかり関わり合いがあるからこそのモノじゃないですか。今作はもうとにかく、「男の子ってこういうのが好きなんでしょ?」つってペットボトルの蓋が落ちる?落ちない?の1ピコも面白くないスペクタクルがかなり多めなんすよね。「どうせ上手くいくんだろ?」って思ってると…まあ全部上手くいくし。「なんかヤバそうだけど結局誰かが助けに来てくれるんだろ?」って思ってると...まあ誰か来てくれるし。とりあえず120分埋めあわせる為に味の濃い調味料ぶっ込んでみました!みたいなね。


何度も言いますけど、嫌い!ってテンションではないんですよ。敵戦艦が地球に始めて攻撃する場面とか迫力あったし、各登場人物のキャラが立ちそうで立たない感じとか、全面的に嫌い!とは言い難くて、なんとも言えない魅力はあるんです。「ダメな子ほど可愛い」と言えるくらいの何かしらはあるっていうか。
ただ、「人間の実力を示す時が来たんだ!」つって演説する割には前作で敵側のエイリアンから奪った兵器でドンパチやってたり、地球覆うくらいのメチャメチャデカイ敵戦艦はやっつけても墜落せずにしっかり撤退してくれたりとか、気持ちよくないご都合主義な展開がアーって感じでしたね。オチもさあ…なんか気持ち悪いっていうかさ…。

 

 

他のキャストが全員揃った中でウィル・スミスとの出演交渉にかなりギリギリまで手間取ったらしいんですよ。で、結局ウィル・スミスが出演しなかった方の脚本B案を採用せざるを得なかった、っていう時間的な厳しい制約もあったらしくて。ウィル・スミスが出てたらどうなっていたかって感じはありますけど。まあでも、俺ウィル・スミスあんまり好きじゃないし…。「スーサイド・スクワッド」もあんなんだったしな…。出てもいないのに俺の中のウィル・スミス株はまた少し下がったっていう、そんな感じです。

 

 

43位 ブラック・スキャンダル

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最近WOWOWで放映してるんでまた見たんですけど、もっと話し合った方がいいよと思いました。奥さんともっと話し合ってほしい。


正直やっぱり面白みに欠ける映画だと思いました。ジョニー・デップの裏社会での成り上がり映画かと思いきや、そういう描写は何故か台詞だったりモノローグで語られるだけで済まされていて。前半部分は田舎のチンピラの泥臭い犯罪が楽しかったりするんですけど、後半部分からはジョニー・デップの殺人シーンくらいしか見所が無かったんですよね。主演3人が結託してっていう直接的な描写もやっぱり台詞だけで済ませてたり、カンバーバッチとかちょっと出てるだけで。っていうかカンバーバッチ、座ってたり電話取り次いだり飯食ったりしてる以外に特に何もしてないですからね。何なんだオイ。俺はカンバーバッチ目当てで行ったんだぞオイ。

 

 

 

42位 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

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なんか、本当にガッカリしたんですよね。コレ。見た直後はそんなでも無かったんですけど、思い返せば思い返す程「アレ?」ってなっていって。


登場人物がみんなちょっとバカなんですかね?機密データを何とかして盗むんだ!って言ってパーティに潜入するんですけど、そのデータのある部屋が喫煙室みたいなメチャメチャ目立つ所にあったり、その機密データが見れなかったら「見れないし返すわ!」つって手元に戻ってきたり。
ストーリーも前作の街破壊シークエンスを市民目線で見せていくのはまあ良かったとしても、いつまで経っても何を見ても「全部スーパーマンが悪い!」って取り憑かれた様に言い続けるバットマンにはちょっともう付いていけなかったです。その癖ほんのちょっとした事で「私はスーパーマンさんの味方です」つってコイツ即共闘してますからね、お前らもうマジで塾とか行っててくれよ、本当に。次作以降の伏線なのか知らないですけど、ヒーロー達がちょっと出てくる唐突なフラッシュバックも強引過ぎて何が起きてるのか理解できなかったですし。


逆に、バットマンが下向いた時にベン・アフレックの顎肉がダブッ~ってなった所は「何がしたいんだから分からない情けないバットマン像がくっきり浮かび上がったんで良かったりしましたけどね。ワンダーウーマンは結構良かったんじゃないですかね。登場シーン含め。ただワンダーウーマンもスーパーマンも神様みたいな物なんで、出てきた瞬間にバットマンはワイヤーですぐ回避おじさんになってましたけど。存在意義がもうない。

 

 

41位 スーサイド・スクワッド

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なんか凄く大人しいんですよね。
もう悪党たちが暴れまくって映画っていう枠組み自体をメチャメチャにぶっ壊してくれる様な作品を期待していたんで、結構見る前からハードル高めだったっていうのもあるんですけど、それにしたって見所が少ない。ハーレイ・クインは良かったって皆言いますし、マジでビジュアルは良かったと思いますけど、でも本当にそれだけで、物語を引っ張る要素も特に無かったと思いますね。


作劇もちょっと問題があったと思います。序盤数十分使って各キャラクターの説明が入るんですけど、戦闘をしながら各キャラクターにどんな特殊能力があるのかを説明をしていけば良い物を、わざわざ同じキャラの説明を何度も何度も見せるんで話が動かないし、テンポがとにかく悪い。終盤ちょっと手前で、デッドショット達に隠していた事件の真相が明らかになるんですけど、「一方そのころ…」みたいな感じで観客たちに真相の8割くらいは予め見せてるんで、デッドショットがいくら憤っても「いや、俺は知ってるけど…」っていう感じになるし。ちょっと最後のラスボス戦に向けて乗り切れない展開がありました。あと俺はウィル・スミス嫌いだな…っていうのを改めて確認した作品でもあって。DCユニバースの3作目っていう位置付けですけど、次に向けての布石にすらなれていなくてやっぱり期待感はドンドン削がれていきますよね。

 


ダークナイト」は俺メチャメチャ好きだし、バットマンシリーズで一番好きなんですけど「ダークナイトがメチャメチャ良かったんで、それに引っ張られる様に後の「マン・オブ・スティール」以降のDC作品もシリアス路線にドンドン傾いてしまってるじゃないですか。しかも全部あんまり面白くないっていうんで、「ダークナイト」にはちょっとした功罪みたいなのはあるな~って感じで。

 

 

40位 ゴーストバスターズ

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最後の最後までテンポが悪かった印象がありますね。
ガジェットもイマイチときめかない上に性能説明でグダグダ時間かけるし。生涯をかけて信じようとしたけど、結局は最後まで信じきる事が出来なかった物、っていうのが序盤における幽霊の立ち位置なんですけど、「オイマジで幽霊いたぞ!!!」っていう対面シーンは結構個人的には好きなんですけど。監督と主演が同じの「スパイ」とかテンポ重視で気持ちよく見られたんですけどね。正直、あまり印象に残らない作品でもありました。

 

 

39位 エージェント・ウルトラ

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ソーシャル・ネットワーク」が好きで、アイセンバーグがザッカーバーグ役だったのかザッカーバーグがアイセンバーグ役だったのかだったのか、ちょっともう分からなくなってます。
イコライザー」とか「96時間」みたいな、舐めてた人間が実は殺人サイボーグだった!的な感じかと思っていたんですけど、そういうジャンル映画としては見所が少なかったかな…って気はします。
そこら辺にある物を次々と手に取って取っ替え引っ替え武器にしていく感じとか、「イコライザーには無かった武器使用のスピード感とか結構好きなシーンはあるんですけど。続編を匂わせる終わり方ではあったんですが、終盤にあった続編への導入部の方が面白くなりそうだったんで、シリーズ化になる際のエピソード0的な作品になっていくのであれば好意的に受け取れる映画だったと思います。

 

 

38位 THE WAVE ザ・ウェイブ

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ノルウェーの映画です。ジャンルとしてはディザスタームービーになると思います。


津波がドカン系の作品なんですけど、俺がこの映画見て良かったなって思えたのが、日本とノルウェーって凄く似た環境にあるっていう事を映画を通してですけど知れたっていう事なんですよ。
ノルウェーって国土の殆どが山と湖で出来てるらしくて、その山から巨大な岩盤が崩れでもしたらいつでも大津波の可能性があるっていう導入からこの映画は始まるんですけど、この時点でいつどこにでも地震の起きる可能性のある日本と、メチャメチャ似てるじゃないですか。
ノルウェーがそもそもどういう国なのかなんて今まで知りようも無かったし、知ろうとも思わないじゃないですか、普通に生活していれば。でもこういう映画を見る事で、日本に住む俺が多分生涯で行く事も無いだろう土地に親近感を抱くって、何だか凄く貴重な体験をした気になるんですよね。それだけでも価値があるっていうか。


劇中では事が起きる前と後って感じで2部構成の様な作劇をしているんですけど、この映画の見所って事が起きる前にあると思うです。
「主人公だけが不審な点に気付く」っていうお決まりのパターンではあるんですけど、その中で見せていくのがノルウェーの雄大で静謐な情景をゆっくりゆっくり、凄く静かに見せていくっていう所の中にあるんで、もうその時点でこれまでディザスタームービーとしてはあまり見た事がない導入部の演出をしてるんです。
自然の雄大さの中にある不気味さが違和感から確信へと変わっていくその過程が本当に恐ろしくて、アメリカとかでは絶対に作れないであろう作品になっていると思います。後半パートからはよくあるジャンル物っていう印象はあるんですけど、前半部で見せた景観とのギャップで、よりショッキングに見える様に作劇していて、ここも凄く良かった。
何故か消防や警察が主人公が現場に辿り着いた後でも一人も姿を見せていなかったり、主人公のルックスが若干小物っぽい割には、劇中段々とヒーロー然っていうかもう神様みたいになっていて、ちょっとやり過ぎてる感は後半部あるんですけど、全体を通してみれば結構満足できる作品でした。

 

 

37位 ディーパンの闘い

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今年何回目かの団地ムービーでした。
結構重い話というか、シリアスな展開が多いんですけど、団地の中で主人公が少しずつ居場所を見つけていく描写が好きなんですよ。
アパートの屋上で主人公含めたおじさん方がビール飲みながら喋ってるんですけど、主人公がその会話に全然付いていけないっていうシーンがあるんですね。その夜に奥さん(奥さんではないんだけど)に「なんか皆が喋ってる事が全然理解できないんだけど、俺ってどこか変なのか…?」と相談に乗ってもらう下りとか、微笑ましくて好きでした。
コミュニティを築くこと、他者を知ろうとすることを通じて「自分自身が一体どういう人間であるのか」を知っていくっていう過程に、他者とコミュニケーションを取るっていう事の根源みたいな物を見る事が出来たと思うし、髭面で傭兵上がりのおじさんがそこでウンウン悩んでる姿を見ると、なんかちょっと感動するんですよね。

 

 

36位 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

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エディ・レッドメイン、やっぱりメチャメチャ好きですね。序盤からエディ・レッドメイン扮する主人公が一体どういう人間でどういう目的を持って動いているのか、ちょっとキャラクターが見えてこなかったりするんですけど、彼の持ってるカバンの中の動物たちとの触れ合いを描いた瞬間にこの映画は動き出すんですね。

 


それってやっぱり主人公が人間の世界ではなく、動物たちとの世界で生きている側の人間だからであるし、そういうのをエディ・レッドメインは表情一発で決めてるし、魅力ある動物たちを作り手側がしっかり描いているからで、ここがクリア出来ているだけでスクリーンの向こう側にある世界の現実感がグッと強くなってるんです。「ハリーポッターシリーズに結局最後まで残ったダイジェスト感もそんなに感じなかったし、5部作という事ですけど、かなり期待できるシリーズになりそうですよね。

 

 

 

35位 ザ・ウォーク

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コレ映画館で上映してる時ってたしか「ブリッジ・オブ・スパイスピルバーグと「白鯨との闘い」のロン・ハワードが同時に公開されてて、何気にメチャメチャ豪華だったんですよ。ロン・ハワード、「ラッシュ プライドと友情」とかメチャメチャ好きでしたね。
この映画っていい意味で「空っぽ」なんですよ。主人公が超高層ビルとビルの間に綱かけて渡るっていう過程で、綱渡りでの高所シーンが一番の見所ではあるんですけど、この映画の語り口が結構好きで。
この映画の序盤って、主人公が神の視点っぽい位置から物語を振り返っていくっていう導入なんですよね。だから現在から「過去」を振り返りながら物語を語るのかと思うんですけど、そうではなくて、この映画では主人公の青春は終えたけど、それでも彼の人生は続いていくんだ、っていう「未来」を語る映画だったっていうのが分かるんです。


何故そんな綱渡りなんて危ない事をするんだ!?っていう問いに、この映画は「だって渡りたいと思ったから…」しか答えを用意してないんですよ。俺が渡るべきだと思ったから、一目見た時にそう決めたから、っていう1ピコも具体的でない理由でどんどん物語は進むんですけど、そういう所って映画的にするにあたっては何かとそれっぽい理由を付けたがるじゃないですか。
でもそこを敢えて手を付けないでおくっていう所に、この映画の意味はあると思っていて。目的に向かう為に理由はあるんじゃなくて、理由が後から付いてくる目的があってもいいんじゃないかっていう、そういう青臭くて爽やかな映画にしているのが、作家性というか、やっぱり巨匠のお仕事だけあるなっていうか。綱渡りシーンだけの映画では全然なくて、凄く後味の良い爽やかな青春映画だったと思います。

 

 

34位 リリーのすべて

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美術も構図も俳優も全部が全部美しいんですよね、この映画。女性として生きたかった、女性として美しくありたかった主人公が目にしていた世界を描く為の細部までの徹底した拘りが感じられて、トム・フーパーっぽかったですね。レミゼっぽいっていうか。

 

 

33位 ブルックリン

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「田舎で暮らしてた女が都会で自分の場所を見つけて、良い男と出会えて、その後田舎に帰ったら綺麗になった自分に、昔憧れだった男が言い寄ってきて、そして…」っていう一見すると如何にも女が好きそうな映画に思えるんですけど、後味はかなり俺好みでした。


芋っぽかった女が都会から洗練されたオシャレウーマンになって帰ってきて地元の田舎で無双する感じとか、まあ見る人が見れば多分鼻に付くし描写多いし、結末も当たり前じゃバーカ!って感じなんですけど、思い返せば俺も大学通ってた時とか、正月に地元に帰ってきて「電車1時間に1本なの!?」とかわざわざ駅でデカイ声出してたりしてたんで、「これまで散々損な想いしてきたんだかたちょっとくらい楽しませてあげて…」って、少し庇いたくなったし。
ただ、この映画って単なる働く女性応援ラブコメみたいな話ではなく、女にとって「故郷を離れる」っていうのはどういう事なのかみたいな、凄く痛くてきつい話を描いていたりしてるんで、そういうパッと見の映画の佇まいだけで見てると、結構最後は心にズシンと来てしまう様な映画だったと思います。
主演のシアーシャ・ローナもアカデミー賞ノミネートだけあって凄く良かったですし。結構俺は前半の芋っぽい感じの方が好きだったりしますね。

 

 

32位 海よりもまだ深く

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テーマ自体は是枝監督がこれまでの作品で描いてる事と同じではあるんです。子どもの頃に想像していた「立派な大人」になれなかった大人の話と、その周囲の家族の話って感じで。キャストも常連が多いですし、息子夫婦が親の住まいに一泊するっていうのも「歩いても歩いても」そのまんまですしね。
ただ、「歩いても歩いても」では、主人公の亡くなった兄の影を踏まない様に踏まない様にって何とか気を使いながらも、ふとした会話の拍子にその影をいつの間にか踏んでいたみたいな、ちょっとしたサスペンス色のある物語だったんですけど、今作は結構コメディ色強い様な感じがしました。描いてる事は殆ど一緒のはずなんですけど。
樹木希林が「なんでこう、人生上手くいなかいかねえ…」みたいな事言いながら泣くシーンとか、なんかつい笑っちゃうんですよね。
人生思った様にいかんわな…みたいな所を、今作では主人公の情けなさをとことん描写する過程で描いてるんで、アプローチの仕方が全然違うっていう所もあるんですけど、テーマは同じなのにここまで印象が違うのかっていう驚きがありました。


好きなシーンもたくさんある映画で。台風の中で家族みんなで宝くじを拾い上げるシーンとかね。所謂「団地映画」なんですけど、今年見た団地が舞台の映画って本当に殺伐とした作品が多かったんですよ。「ディーパンの闘い」とか「狼たちの処刑台」とか。団地を舞台として描く時に選択するのが「貧困」とか「若者たちの理不尽な暴力」ではなく「人生の上手くいかなさ」だったるする所が、邦画だし、俺の邦画の好きな所だったりします。

 

 

31位 疑惑のチャンピオン

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世界で一番有名な自転車レースっていったらツール・ド・フランスだと思うし、10年は自転車に乗ってない俺でも知ってるんで多分そうなんだと思うんですけど、このツール・ド・フランスで前人未到の7連覇を達成した後にドーピング使用疑惑が持ち上がって、結局タイトルの剥奪と自転車レース界から永久追放されたランス・アームストロングっていう人がいて、この人の半生を追ったのがこの映画「疑惑のチャンピオン」です。


「疑惑」ってタイトルに書いてはあるんですけど、この映画ではアームストロングのドーピング摂取描写は映画始まって5分くらいでもうやっちゃってるんですね。
実際にアームストロング本人も後にテレビでドーピングの使用をインタビューで認めて(このシーンも映画で再現されてます)いるんで、彼は本当にドーピングを使用したのか?を追っていく映画ではないんです。どこも「疑惑」感は無くて。どちらかといえば、彼がドーピングに手を出してから自転車レース界のヒーローとなり、そこからの破滅までを淡々と描いていくっていう感じの映画で。


色んな語り口ができる強度を持った映画だと思うんですよね。
アームストロングが長年に渡るドーピングで自転車レースの価値を下げたっていう見方でこの映画を語る事も勿論出来るんですけど、アームストロングっていう最強の広告塔を守る為の協会による談合っていう所で「巨大すぎる力を持ってしまった競技者と協会との関係」っていう点で見る事も出来るし、ドーピングを告発した記者がドンドン業界内での立場を失っていく描写が入る事で、ジャーナリズムでさえも意のままに操れていた「スポーツとジャーナリズムとの関係」っていう点でとか、単純にアームストロングを告発するだけの映画にはなっていないんです。徹底した取材で、色んな人間の立場に立ってこの映画、この事件を語る事の出来る強度を持った映画になってると思います


そもそもアームストロング個人が一番の悪者っていう描き方にもしていないんですよ。
何が彼をそうさせたのか、彼は一体何を考えていたのかは、結構グレーな描写で進める事が多々あって。アームストロングがガン患者の病棟を訪れるシーンなんかは本当に優しさを持って患者と接している様に見えるし、ガン患者への寄付を自分から提案するシーンもあったりして。でも、かと思えばドーピング使用を告発された後の記者会見で「恵まれないガン患者の為に頑張ってレースしてきたのにその俺を訴えるのか!?」って、かなり唐突な所でガン患者の為っていう耳障りの良い言葉を言わせていたりとか。


彼がドーピングを使用していたのって、一番デカイ理由は勿論レースに勝つためじゃないですか。でも、「彼はレースでドーピングを使用した悪人だった」と表面だけを切り取って判断するのは簡単だけど、たったそれだけの事でこの事件を語り切るのは間違ってるんじゃないのか?っていうのを、一定の距離を保ちながら語ろうとしていると思うんですよね。どんな人間にも二面性はあるし、どんな人間の優しさも狡さも一定はしないっていう、実際の事件を題材にした映画ではあるんですけど、テーマは凄く普遍的な気がして。イヤ、マジで1位でもいいんですよ。34位とか35位でもこの辺のは全然好きだし全然面白かったし。本当にたまたまなんです、1位でもいいんです。

 

 

 

という事で、48位から31位まででした。一応、補足を入れておくと、「エージェント・ウルトラ」より上のヤツは全然面白かったし、好きな部類に入るんですよ。ただ、今年は面白い映画が本当に多くて、どうしてもこの順位にせざるを得なかったっていうか。20代後半の山暮らし非正規雇用オタクが何を言ってんだって感じではあるんですけど、とにかく「ザ・ウェイブ」とかがつまんなくてあの順位ってことは全然ないんです。「エージェント・ウルトラ」と「ゴースト・バスターズ」の間に若干開きがあって、「インデペンデンス・デイ リサージェンス」と「傷物語」の間に若干開きがあって、「僕だけがいない街」とワースト3の間には深い深い谷があるっていう、そういう感じなんです。本当に。

では続きはまた次回。俺が生きていればですけど。

 

  

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