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「何者」っていう映画を見たんですけど

「何者」っていう映画を見ました。

 

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解説
桐島、部活やめるってよ」の原作者として知られる朝井リョウが、平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した「何者」を映画化。就職活動を通して自分が「何者」であるかを模索する若者たちの姿を、佐藤健有村架純二階堂ふみ菅田将暉岡田将生山田孝之という豪華キャストの共演で描いた。監督・脚本は、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「愛の渦」といった映画でも高い評価を得ている演劇界の鬼才・三浦大輔。演劇サークルで脚本を書き、人を分析するのが得意な拓人。何も考えていないように見えて、着実に内定に近づいていく光太郎。光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せる実直な瑞月。「意識高い系」だが、なかなか結果が出ない理香。就活は決められたルールに乗るだけだと言いながら、焦りを隠せない隆良。22歳・大学生の5人は、それぞれの思いや悩みをSNSに吐き出しながら就職活動に励むが、人間関係は徐々に変化していく。(映画.comより)

 

 

多分見ない映画だったと思うんですよ。

今人気の若手俳優大集合のキャスト、就活を舞台とした群像劇、Twitterでのやり取りを大っぴらげにお互い見せ合う感じ、主人公が就活で都内までの交通費とリボ払いで買い物をし過ぎたせいでだんだんロクな物が食えなくなっていく描写が予告編で見られるなどなどで、好みとは全く違うジャンルの作品なので(最後のは佐藤健でなく俺の就活です)コレだったら「ハドソン川の奇跡」とか「ジェイソン・ボーン」とかの方が優先度高くてそっち行ってると思うんですけど。団地暮らしの二階堂ふみが火炎瓶投げつけられたり、山田孝之リーアム・ニーソンに拷問されたりとかも無いっぽいんで。(多分コレでも見ないな、俺)

ただ毎週聞いてる「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」でのムービーウォッチメンのガチャガチャに当たってんで、「こういう機会でないと見ないし行くか!」っていう事で。
車で40分かけて近場の映画館にまで車でタヌキとか轢き殺しながら無理矢理に足を運びました。っていうか俺の地元、マジでこの季節になると、タヌキの死骸が毎日の様に道端に転がってるんですよ。朝になるとカラスがイヤっていうほど死骸に群がっていて、毎朝毎朝その光景を見る度に憂鬱な気分になるんです。この前なんて夜勤で帰ってきて夜の3時くらいに寝ようと思ったら、家の前でキツネが鳴き出して…この話続けてもいいですか?

 

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ここに2度と戻りたくねえ…

 

で、結論から言うと…今年の邦画ベストが決まってしまったかもしれないです。

簡単にあらすじを書くと、佐藤健扮する主人公の拓人は就活中。同級生でルームシェアしてる元バンドマンの光太郎と、留学から帰ってきた瑞月と共に就活を始めた所、なんだかんだあって拓人たちが暮らすマンションの上の階に住んでいた里香とその彼氏、隆良も仲間に加わり、この5人で情報交換しながら、就職活動という荒波に挑んでいきます。
この5人の中で、片想いがあったり、嫉妬があったりっていうのでお話は進んでいくんですが、普通の青春映画とはちょっと変わってるのが、基本的に主人公である拓人が「蚊帳の外」なんです。ここの演出も上手くて、わざわざ拓人のバイト先で光太郎のファンを登場させたり、会話の中心には決してさせなかたったりで、佐藤健をいてもいなくてもいい存在に徹底させています。

 

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二階堂ふみのボディラインが犯罪なんですよね…

 


片想いしている相手は全く違う人間の事を想い続けてたり、大学時代に熱中していた演劇も、ある理由で遠ざける様になっていて、これは拓人が主人公である物語のはずなのに、彼が何を考えているのか、序盤では分かりにくくしているんです。うまく唯一分かるのは「コイツは多分ロクな奴じゃない」っていうので、それが佐藤健のちょっとした表情の演技で分かっては来るんですけど。


ちょっとしたネタバレをすると、主人公に終盤で誰にも見られたくなかった秘密が暴かれてしまう展開になるんですが、その正体って「行き場の無くなった承認欲求」以外の何者でも無いんです。
10代20代の思春期の人間であれば、自分が何者かにならなければならない「焦り」ってずっと感じ続けている物だと思うんですよね。

もしかしたらそれは大人になっても延々に続くものなのかもしれないんですけど*1、このままでは駄目だっていう漠然とした日々の中に感じる焦りとか逃避って、普遍的なテーマだったりする訳じゃないですか。
「見て欲しい」「認めてほしい」から延々に生まれ続ける「妬み恨み」を、就職活動と若者同士のコミュニケーションっていう2つのステージで並列に見せていく作劇が本当に身に迫ってくる様に感じたし、佐藤健は俺だったんだ…と思わずにはいられないんです。

 

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やっぱり山田孝之が最高だったので山田孝之になりたかったんですけど、無理でした

 


だから、大学生だった時に下に見てた人間がドンドン内定を取っていった時に完全に引きこもりになったり、俺が不採用になった会社に直後に合格した新入社員や、「数珠を10万で買った!」って初対面で自慢してきた就職訓練学校にいた同期とかのアカウントを必死でTwitterで検索して監視しながら悪口言ってるように俺みたいな人間にはメチャメチャに刺さる映画だったんですよ!
劇中ではその承認欲求の暴走をまざまざと見せつけられるんです。それが俺の一番見られて欲しくない部分が映画館の大スクリーンで上映される様にしか思えないので「やめて!!!!!!上映とめて!!!!!!」ってマジで叫びそうになるんですけど。コレが多分マジの4D映画だと思いました。俺が佐藤健と同化して痛い人間の権化みたいになってましたから。

 

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俺の大学時代はこういう飲み会があったらトイレにこもって将棋しながら時間潰してる人間しかいませんでした


主人公が10代20代で青春風味の群像劇だと、テーマは恋愛だったり夢だったりだと思うんですけど、この映画って始めから終わりまで「自意識」と戦い続ける話なんです。自意識との戦いなんて、いつ終わるのかも分からない、というか勝てるのかすら分からない、長くて果てしない過程になるに決まってるじゃないですか。

 


でも、俺がマジで泣いてしまったこの映画の終盤では、主人公がその戦いに自分なりに「決着を付けようとする事を始める」んです。
本当に最終盤、とある会社での企業面接で主人公は「1分間で自分自身を表現して下さい」と質問されるんですけど、ここで初めて主人公は嘘偽りのない、だけどたどたどしい自分の言葉で、静かに語ります。自分は何を今まで積み上げてきたのか、自分はどう生きたいのか、自分は何者でありたいのか。

佐藤健の存在感を極力まで無くす様にここまで演出してきたのが、終盤の「初めて自分が見ない様にしていた物と向き合い始めた」という展開にメチャメチャ生きてきているんです。

ただ、自分自身と向き合ったという描き方ではなく、あくまで自分自身と向き合おうとする事を始めたっていう着地点に留めているのが、本当に優しくて愛情があって、死ぬほど泣いてしまったんすよね…。

 

 

もっと個人的な話をすると、正社員を辞めて非正規雇用で働いてる俺にとっては、毎日が焦りみたいな物なんですよ。もう20代も後半だし、特にコレといって資格も技能もないし、若干鉄板磨くのが上手いだけで。

しかも毎日の様にTwitterで他人の悪口書いてるっていう最悪の人間なんで、主人公が自意識を拗らせるのも嫌っていう程分かるし、コイツみたいな人間が近くにいたら俺だって真っ先にコイツのTwitterアカウント探してニヤニヤしてると思うんですよ。それだからこそ、そんな自分が本当に嫌いだし、自分の弱い所なんて絶対に見せたくないと思ってるし。このブログだって頭の良い人に「そこの描写は◯◯◯◯だから全然検討違いですよ」なんて言われたらスマブラのハンマー取れた時みたいな挙動に多分なるし。

 


でも、開き直るじゃないですけど、この先タイムトラベルに巻き込まれる事も、空から青髪で自分の胸の小ささを気にしている美少女も降ってくる事も無いっぽいし、なんかこの先、どこまで行っても俺は俺でしかないっぽいんで、今持ってる物だけでなんとか生きていくしかないじゃないですか。だからこそ、この映画の「誰もが人生をもう1度始められる」っていうメチャメチャ優しい視点が堪らなく胸を打ったんですよね。

もう本当に大学時代に何も残せなかったり、後悔していたり、昼休みに図書室に篭ってfav貰おうと必死にネタ考えてた人間にとっては頭ねじ切れるんじゃないかっていう描写が山盛りなんですけど、俺にとってはかけがえの無い大切な1本になったので。マジで辛くてマジで優しい青春映画だったと思います。10代の思い出なんて辛い事しか無かった人にこそ見て欲しいですね。っていうかお前なんですけど。

 

 

 原作。買って読みます。

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

 前田!また俺たちのゾンビ映画撮ってくれ!!前田!!!!!

桐島、部活やめるってよ
 

 劇中の佐藤健がマジで良くて、この映画のオスカー・アイザックを少し連想しました。肉体一応はあるんだけど精神がそれを持て余している感じとか。

 

 

*1:俺が大人だった時は工場勤めで毎日10時間鉄板を磨き続けていた時しか無いので分からないんですけど