最近見た映画の話 (新作・1月編)②

1月に見た映画のまとめ、その2です。

前回紹介しきれなかった新作映画と、レンタルで見た中で気になった旧作も1本紹介したいと思います。
 
 

ブラック・スキャンダル

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あらすじ
ジョニー・デップがFBI史上最高の懸賞金をかけられた実在の凶悪犯ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを演じたクライムドラマ。1970年代、サウス・ボストン。FBI捜査官コナリーはアイルランド系マフィアのボスであるホワイティに、共通の敵であるイタリア系マフィアを協力して排除しようと持ちかける。しかし歯止めのきかなくなったホワイティは法の網をかいくぐって絶大な権力を握るようになり、ボストンで最も危険なギャングへとのし上がっていく。これまでも作品ごとに全く異なる顔を見せてきたデップが、本作では薄毛オールバックに革ジャン姿で冷酷なギャングを怪演。共演にも「華麗なるギャツビー」のジョエル・エドガートン、「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のベネディクト・カンバーバッチら豪華キャストがそろう。監督は「クレイジー・ハート」「ファーナス 訣別の朝」のスコット・クーパー。
  
 
3人が結託してFBI史上最大の汚職事件が…っていうCMがよく流れてますけど、カンバーバッチの出番は結構少なくて、ジョニーデップよりカンバーバッチ目当てで行った自分にとっては少し「アレ?」って感じでした。「裏切りのサーカスのカンバーバッチ良かった…」が一番の感想です。ゲイだし。皆さん裏切りのサーカスを見ましょう。
 
 
実際あった話を元にしているという事なんですけど、やっぱり映画なんですから物語上の起伏があってしかるべきじゃないですか。こう、起承転結がのっぺりとしてる様な印象がありました。ジョニーデップ演じた主人公が地方のチンピラからFBIを裏で操る程のマフィアの大ボスとしてドンドンのし上がって行く、という話になるのかと思いきや、そういう「マフィア界での成り上がりストーリー」っていう所の描写はあまり無いんです。
 
どちらかといえば、彼が大物になるに連れて神経質に、自身の感情すらも持て余してしまう様な歪な人間になっていくまでの内面の変化の描写が多いんです。犯罪映画の側面は「暗殺」とか「仲間内での密告」くらいしかハッキリと見せてなくて、結果的にカタルシスが得られる様な場面も少ないんです。「FBIに実力を見せなくちゃならない」っていう場面とか、盛り上げられそうな展開は結構あるんですけど何故かスルーしてしまっていて、凄く勿体無い。後半は段々と組織が破綻していった結果、殺人シーンがただただ多くなるっていうマンネリな展開の連続を招いてしまっています。
 
 
ただ、ダラっとなりそうな所でビシッとさせてくれるのが俳優陣の演技でした。やっぱりといえばやっぱりなんですけど、やっぱりジョニー・デップが良かった。
「いつものジョニーデップがやってる役」が少し見え隠れする様な場面もあって過剰過ぎるんじゃないのかって一瞬思うんですけど、彼だけが別の映画からやって来たっていう感じが破綻しつつある物語の中で彼だけが登場人物の中でどこも見てないし何も信じてないっていう立場を考えると、それもしっくり来る。ただ、ここ数年で演じてきた役柄からジャンルも大きく変えて挑んだ割には、「この映画の一番の見どころはジョニーデップの演技」に結局なってしまっていて、これまでジョニーデップが主演してきた映画とはあまり大差無い出来で少し残念です。
 
 
 
 
 
 
 

ブリッジ・オブ・スパイ

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あらすじ
スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、ジョエル&イーサン・コーエン脚本と、いずれもアカデミー賞受賞歴のあるハリウッド最高峰の才能が結集し、1950~60年代の米ソ冷戦下で起こった実話を描いたサスペンスドラマ。保険の分野で着実にキャリアを積み重ねてきた弁護士ジェームズ・ドノバンは、ソ連のスパイとしてFBIに逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を依頼される。敵国の人間を弁護することに周囲から非難を浴びせられても、弁護士としての職務を果たそうとするドノバンと、祖国への忠義を貫くアベル。2人の間には、次第に互いに対する理解や尊敬の念が芽生えていく。死刑が確実と思われたアベルは、ドノバンの弁護で懲役30年となり、裁判は終わるが、それから5年後、ソ連を偵察飛行中だったアメリカ人パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが、ソ連に捕らえられる事態が発生。両国はアベルとパワーズの交換を画策し、ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。
 
 
 
メチャクチャ面白かったです。なんかこう、エンターテイメントのお手本みたいな映画でした。中学受験して、私立中学に入学できて、付属の高校にエスカレーターで入って、国立大学入って、公務員になって2つ年下の同じ職場の女と正常位でセックスして子どもできて今凄い幸せです!みたいな。最初から最後まで一個も隙がないっていう事を言いたかったんですけど、伝わってますか?伝わってない?スイマセンでした死にます
 
 
【特別でない人間が命をかけて誰かの為に奔放する×トム・ハンクス】ってだけで、200乗くらい映画の完成度が跳ね上がってる様に感じます。最初から最後まで自分の意思を貫き通せる人間こそ英雄なんだ、っていう凄く普遍的なテーマの映画で、終始移動したり喋ったり説得したりっていうだけで、アクションなんてほぼ皆無なんですけど、何故これ程までに面白い作品になってしまうのか。スピルバーグヤバい。スピルバーグは「橋の上でボウッと浮き上がる人影」に特許取った方が良いんじゃないでしょうか。
 
 
脚本は「ファーゴ」「ノーカントリー」のコーエン兄弟です。
僕は「バーン・アフター・リーディング」って映画が凄く好きなんですけど、シリアスな中で急に2分くらいで終わるショートコントを入れてくるのがホント最高なんですよ。今作でも明らかに嘘臭い家族が部屋から出ていく時の顔ちゃんと見せてくれたりとか、ホテルでCIAとトムハンクスが飯食ってる時にトムハンクスが出ていくのを止めようとするんだけど朝飯がメチャクチャ運ばれてきて「えっ、えっ、飯、えっ」ってなる所とか。
冷戦下っていう今でもまだ描くのに困難な題材でしっかりエンターテイメントやって、笑える所もあって、それでいて「国の在り方」「人としての在り方」っていう所にもちゃんと言及して、で家族みんなで見られる、っていう果てしない程の志の高い立派な映画です。公務員だった両親のフェラと正常位だけの「お手本みたいなセックス」で生まれた子どもが小6までっていう母との約束を守って少年野球を辞めて中学に入学してから「お父さんみたいな立派な人になる」って言いながら塾に週3で通うみたいな、志の高い一家みたいな作品です。伝わってます?伝わってないですか?
 
 
 
 
 

フレンチアルプスで起きたこと

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1月に見た旧作の中でも抜群に面白かったのがこの「フレンチアルプスでおきたこと」です。
 
見た人によって捉え方がかなり変わる映画だと思うんですが、僕は「自分の価値っていつどんな時に問われる事になるのかマジで分からないしそれってメチャクチャ怖いよね」っていう映画なのかなと思いました。
父親として、母親として、恋人として、家族として、そして人間として『するべき行為』っていうのは必ずあるじゃないですか。人に優しくしろとか、電車でおじいさんがいたら席譲れとか。そうあるべき、って言われて僕らは大人になってしまった訳ですけど、そういうモラルみたいな物って、果たしてどこまで信じていいのか。「そうあるべき」と自分は思い込んでるだけで、突発的に起きる事故みたいな出来事に直面した時は、人はそういうの全部忘れてしまうんじゃないか?と思うんです。僕もインターネットのやり取りで得た色んな人の住所1つ100円で売ってくれって言われたら「50円でもOK!」ってすぐ売りますし。
 
 
そういう誰かへの信頼も自分への信頼も「全てが変わってしまった瞬間」を目の当たりしてしまった家族が、それを見なかった事にしようとしたり、何とか乗り越えようとしたりと奮闘する姿を、コミカルにそれでいてサスペンスフルに撮りきっていて、最高に面白かったです。
 
 
特にラストシーンが凄く好きです。「コレで少し家族の絆は深まったのか…?」と思わせといて、いかにも大事件が起きそうなシチュエーションの中で、辞めていたタバコを薦められて1度断るんだけど、やっぱり「辞めてたけど吸うわ」って受け取る父親。それを横からチラッと見る息子。「人生の中で何度も自分の価値が疑われるシチュエーションって何百回とやってくるからね」っていうメッセージとその見せ方に、心底ブルッと来ました。
 


『フレンチアルプスで起きたこと』映画オリジナル予告編

 

 

 

 

 コーエン兄弟はコレも好きです。

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 直近で見たスピルバーグ映画はコレでした。

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 最高。

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