2019年新作映画(ワースト編)

2019年に見た映画は123本、新作映画はその内84本でした。去年と比べてかなり減ってしまった。11月以降は何故か片道1時間程度かけて映画館まで行くのが急に億劫になった。体力の衰えか単純に映画へのモチベーションが本当に下がっているのか、それとも正気に戻ったのか…?

 

今年も新作映画のベスト20とワースト5を書いていきたいと思います。まずはワーストの方から。毎年ワーストは「なんで俺だけがこんな思いをしないといけないんだ?」がまずあって、最悪のおすそ分けという趣旨で書いています。面白くない映画は面白くない事が分かるので見た方がいいんだよ。

 

終わってても見た方がいいんだよ

 

では早速5位から。

 

5位 ぼくらの7日間戦争

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映画「ぼくらの7日間戦争」本編映像一部公開【大ヒット上映中】

 

12月13日に公開されたばかりの映画です。この映画の印象を一言で表すなら「ウケそうな要素の寄せ集め」だけの映画って感じでした。特に序盤の”主題歌をバックに流しながら、シーンを断続的にドンドン見せていくことで、物語が動き出した躍動感と共に話を盛り上げていく”っていう演出が、完全に「君の名は。」の瀧と三葉が入れ変わってお互いの生活を楽しんでいく過程をそっくりそのまま模範していて、ここまで隠す気がないと逆に清々しいや!という感じがありました。RADWIMPSさんに憧れて音楽始めました!みたいな声と曲調の挿入歌が流れた時はちょっと笑いそうになってしまった。キャラデザも細田守作品の時の貞本義行っぽいし。

 

新海誠とか細田守っぽい演出で、SNSLGBTとか外国人の労働問題とか組み込んでちょっと昔の青春映画をリメイクしとけば結構いい線いくんじゃない?みたいな狙いは分かるんですけど、正直この映画からはそれ以上の物語の厚みを感じなかったんですよね。序盤に籠城してる建物に大人たちが進攻してくる様子を動画に撮ってネットに流す事で、逆に自分たちの身を守るっていう展開があるんですけど、その動画のクオリティがマジでウソみたいに低くて、「よく分からないけど何か起きてるみたい」っていうだけで日本中を巻き込んでいく騒動に発展していくっていう天下に説得力がまるで無かったり、LGBTっぽい展開も本当にちょっとだけかじってみました!ってだけだったり。インターネットの描写も凄く不満で、作り手側が「SNSをやってる人間は全員悪意を持ってネット上の”祭り”に参加したがる」と信じ込んでる様にしか見えなかった。

 

この映画って機械が作った感じがするんですよ。"ウケる要素"をデータベースから算出して、今の流行りを1位から5位くらいまで挙げて、それを2割ずつ入れて自動生成された脚本の映画って感じで。せめて『流行ってる要素を1個だけ+チーム物で籠城戦』くらいにしてもっとシンプルな映画にしておけば面白くなったと思うんですけど…。逆に邦画界は何がウケる要素だと感じているのかが分かる映画という事でもあるので、そういうのを確認したい方にはオススメです。

 

 

4位 3人の信長

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MAN WITH A MISSIONが主題歌担当!『3人の信長』本予告

 

HiGH&LOWシリーズはマジで好きなんですけど、ハイローシリーズの共同監督のひとりに密室での騙し合いを主にした時代劇エンタメって本当に大丈夫!?ってハイロー見た人なら思うじゃないですか。大丈夫じゃありませんでした!っていうのが今作です。

 

織田信長を捕らえたはずが、集まってみたら自称・織田信長が3人も同時に捕らえられていて「一体誰が本当の織田信長なんだ!」というミステリーから始まる話なんですが、今作一番の問題は終盤での「織田信長は誰なのか?」という種明かしが、それまでの劇中で描かれた要素以外の所で完結される仕組みになっている点です。ほぼ”後出しジャンケン”と”登場人物のセリフのみの説明”だけで構成されてる話がミステリーっていうのは、ちょっと無理がありました。役者陣が豪華なんですけど、市原隼人岡田義徳の横に並ぶと、どうしてもTAKAHIROの軽さが目立つんですよね。「こいつだけは信長じゃないでしょ!」ってどうしてもなる。

 

3位 かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳

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『かぐや様は告らせたい~ 天才たちの恋愛頭脳戦~』予告①

 

「邦画だから」「漫画原作だから」っていう理由だけでこの手の映画を見る前から舐めてかかるのは本当に辞めようと思ってるんですけど、今作はまず映画としての完成度がかなり低かったです。原作の方は基本的には1話完結型のラブコメディという形式なので、2時間の映画として作るには工夫しないと難しいかも…という所はあるんですが、この映画はマジで本当にそっくりそのまんま原作の漫画通りに進んでいくので、単純な見にくさを感じました。「序盤にあったエピソードで面白かったヤツ」だけを抽出して数珠繋ぎにした、っていう以上の物を感じ取る事ができなくて。

 

中盤で主人公たちが属する生徒会が解散になって、終盤以降は映画オリジナルの展開として”勘違いの末に白銀とかぐやが生徒会長に立候補して選挙で争っていく”という展開になるんですが、基本的にこの映画も原作も「告らせあい」っていう(身も蓋もない言い方すると)”茶番”な訳じゃないですか。その上にもう1個「かぐやは心臓の病気らしいから生徒会長になって休ませてあげたい」っていう勘違いの茶番劇が重なると、マジで急にどうでもよくなってしまったんですよね。白銀とかぐやが”凄く好きなキャラクター”であり続けているから、茶番を茶番として微笑ましく見られるんだな…っていう、物凄く当たり前の事を映画を見て気づけた感じがあります。生徒会メンバーの絆を強固にさせる夏休みのエピソードをやってから、直後に仲違いさせる展開に入っていく構成も、メチャクチャ鈍臭くてキツかった。

 

あと、映画のキャストに佐藤二郎が入っているとマジで警戒してしまう。佐藤二郎自身に罪はなくて、”佐藤二郎をコントロールせずに好き勝手やらせる事”を”物語の世界観を守る事”よりも優先させてる映画がもう本当に許せなくて。そっちの方が面白いと思う神経って、マジでどうなってんですかね?1本の映画として、原作を知っている人も知らない人にも普通に不親切で不誠実な漫画実写化映画だったと思います。

 

2位 パラレルワールド・ラブストーリー

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映画『パラレルワールド・ラブストーリー』予告篇 5月31日(金)全国ロードショー

 

パラレルワールド」っていう意味ありげなタイトルなんでSFとか時間軸を移動したりするタイムループ物なのかな?と思って見に行ったんですよ。SFっていうか、昼ドラっぽいメロドラマな展開の方が主で、”時間軸”っていうよりかは”主人公の混乱”だった。

 

主人公は脳科学の研究所に働いてて、主人公は好きな女と付き合ってる記憶と、好きな女が親友と付き合ってる記憶が同時にあって、主人公と付き合ってる記憶の中の女はたまに凄く悲しそうな表情をして、親友とはなぜか全く連絡が付かなくて…っていうあらすじだけ聞くと「大体こういう話かな」って想像できるじゃないですか。その想像から1歩も外に出てくれないのがこの映画です。1個も裏切ってくれないサスペンスって何?

 

要は主人公が親友の女を好きになっちゃって寝取ってしまう話なんですけど、映画が終わるまで特にこの寝取り野郎には罰的なことは起きないんですよね。それをジャニーズの顔がいいアイドルが演じてて、親友は染谷将太ADHDっぽいオタクで、特に恨まれることもなく女も「実はオタクよりジャニーズ顔に強引に抱かれたらなんだか…」みたいな感じで終わってく映画って、マジで誰が共感できる映画なんだ?って話なんですよ。この映画を見て面白がれる人ってジャニーズファンか、それか橘さん家ノ男性事情に出てきた女に薬盛ってハメ撮りする3人組のクズ男のどっちかなんでしょうね。ミステリー部分も面白くないのでヌルっと不快な映画だった。

 

1位 二ノ国

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映画『二ノ国』本予告【HD】2019年8月23日(金)公開

 

twitterでバズられ音頭を踊りたいだけの人間たちの標的になった事もあって、なんとか良い所を思い出してみようと頑張ったんですけど、無理だった。「脚本の練り込み不足」っていう言葉があるじゃないですか。この映画は北極の氷塊みたいなカッチンコッチンの物体がドン!!!!と落ちてきた。

 

話を簡単にまとめると、主人公のユウとハルは親友同士なんですが、共通の女友達コトナが通り魔に襲われて大ケガするんですね。その騒動に巻き込まれて主人公2人はトラックに轢かれてしまうんですけど、もうダメだ!と思った瞬間、不思議な力で何故か彼らは”二ノ国”と言われる別世界に立っていた…みたいな感じだったと思います。

 

話が進んでいくと、どうやら”一ノ国(現実世界)”の住人と”二ノ国異世界)”の住人は実は同一人物で、片方の世界で命を落とすと、もう片方の世界の人もなにかしらの理由で命を落とすみたいだ…という推論を立てるんです。道中でコトナそっくりのアーシャという姫にかかっていた呪いを解くと、現実世界にいるコトナが通り魔に襲われた事実自体が無くなっていたり。

 

ただ、それは主人公のひとり、ユウの推論であって「まだ検証しないと…」っていう立ち位置なんです。だけどもうひとりの主人公、ハルは最後の20分くらいまでずっと「コレは夢」と信じ込んでるキャラクターなので(夢だと信じてる理由は特にないです)、もうどうでもいい、現実世界ではまたコトナが病気になってしまったので、とにかくアーシャを殺して夢から覚めたい。彼は敵軍にスカウトされて将軍の地位を得てアーシャのいる国を侵攻するんですけど、だからまだアーシャとコトナの魂が繋がっているのかどうかよく分からないってずっとユウは言ってるんですよね。「正義vsもう一方の正義」みたいな構図かと思ったら「話を聞いてほしい人vs話をちゃんと聞かない人」がこの映画の対立構造。マジで?お前らマジで言ってんの?で、最終的にコトナの病気が治っても特に理由もなくアーシャは元気なまま話は終わるんですよ。何?俺いるんだよ?俺がイスに座って見てたの見えてる?

 

アニメとしても酷い出来で、終盤の盛り上がり所になるはずの合戦シーンも、何万人vs何万人の戦いのはずが、出てくるのは3,4人が小競り合いしてるシーンのみ。その後はあるキャラクターが「勝負がついたから全軍撤退した」という台詞がだけで何事も無かったかのように終わっていくので、迫力あるシーンは1個も出てきません。死体どころか戦争が行われていた痕跡すらもない。

一番気になったのは、この合戦のせいで現実世界ではビルが火事に見舞われて大惨事になった!っていうニュースが劇中に流れてくるんですよ。この映画8月公開なんですけど、その時期にどういうニュースがあったか配給会社は把握してないって事ですか?しかもその原因が「話を聞かないガキが『コレは夢なんだ!』とか独り言を叫びながら建物とかぶっ壊した結果」とかマジで最悪じゃないですか?公開直前になって急に脚本を変えるのは難しいですけど、この描写は特にカットしても本筋にはそれほど関係ないはず(この映画に最早本筋も何も無いんですけど)で、マジで腹立たしかったです。この辺のことはインターネットサロンに月3万払ってるSNSのバズられ音頭を踊りたいショートボブor丸メガネ人間たちも一切触れてないって所もマジでムカつきました。

 

この体制で5秒くらい止まるのおかしいだろ

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という事で今年のワースト映画は「二ノ国」でした。声優さんはずっと叫んでて大変そうだった。

 

ベスト20は年明けくらいに更新するつもりです。