SING シング

CGアニメってちょっと昔の作品見ると、結構違和感ありますよね。なんかジャギジャギしてるっていうか。それだけ今のCG技術がとんでもないスピードで発展していってるっていう事だと思うんですけど、いざ映画館で作品を見てみると、じゃあ「アナと雪の女王」と「ズートピア」では劇的な変化に気付けたのかって聞かれると、そういう風には感じられる訳ではなくて。何故かアハ体験みたいな事にはなってます。「超 痴女メイド!2」の動画初めて見た時は「スゴッ!」って声は出ましたけど。

 

 

という事で(という事で?)今回は、良作を連発してきたアニメスタジオの最新作です。

 

 

SING シング

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解説
ミニオンズ」「ペット」などのヒット作を手がけるイルミネーション・スタジオによる長編アニメーション。マシュー・マコノヒーリース・ウィザースプーンセス・マクファーレンスカーレット・ヨハンソンジョン・C・ライリータロン・エガートン、トリー・ケリーら豪華キャストが声優として出演し、レディー・ガガビートルズフランク・シナトラなど誰もが知る新旧ヒット曲を劇中で披露する。人間世界とよく似た、動物だけが暮らす世界。コアラのバスターが劇場支配人を務める劇場は、かつての栄光は過去のものとなり、取り壊し寸前の状況にあった。バスターは劇場の再起を賭け、世界最高の歌のオーディションの開催を企画する。極度のアガリ症のゾウ、ギャングの世界から足を洗い歌手を夢見るゴリラ、我が道を貫くパンクロックなハリネズミなどなど、個性的なメンバーが人生を変えるチャンスをつかむため、5つの候補枠をめぐってオーディションに参加する。監督は「銀河ヒッチハイク・ガイド」のガース・ジェニングス。

スタッフ

監督ガース・ジェニングス

製作クリス・メレダンドリ ジャネット・ヒーリー

脚本ガース・ジェニングス (映画.comより)

 


映画『SING/シング』 吹替版特別予告編

 

75点

 

新作のレンタルDVDをPS4に突っ込む度に黄色い物体の茶番を見せられるでお馴染み(アレあってもいいけど、せめて定期的にアニメーションを新作に変えてくとかしてほしくないですか)の「ミニオンズ」や「ペット」を手掛けた、イルミネーション・スタジオによる長編アニメーションの最新作です。

 

ある一点に向かってテンションがドンドン高まっていってクライマックスで爆発する音楽モノ、劇場モノって聞くと、もうそれだけで一定の面白さは保証されてる様な気さえするんですよね。「今宵、フィッツジェラルド劇場で」っていうメリル・ストリープがヤバイ映画があって、コレも歌モノ劇場モノって感じなんですけど、歌と劇場要素が魅力的過ぎて、ドラマ部分が「なんかあんまり関係ない人が可哀そうな死に方をしてた気がする…」くらいにしか印象にないっていう作品もあるくらいなんで。

 

 

要はこの2つの要素って老若男女問わず結構好き、っていうのはあると思うんです。勿論、例にもれず、この『SING』も歌と劇場が肝の作品です。

地元で吹き替えの上映しかやってなかった事もあって、字幕は見る事が出来なかったんですが、正直、作品自体が持つ魅力も去ることながら、吹き替え用のセリフ、演技共にメチャクチャ完成度が高くて驚きました。声優畑ではない役者や芸能人を主要キャストに起用してるアニメ作品で、声の演技で感動したのってちょっと今まで記憶に無かったんですけど、ヤバイですね。トレンディエンジェルの斎藤さんの演技で泣きそうになるなんて見る前は想像もしてなかったんです。マジで。山寺宏一坂本真綾はもう勿論って感じなんですけど、引っ込み思案だけど歌がメチャクチャ上手い象の女の子の役、声聞いた時は「なんか10代くらいの声した女の子だな…」と思ったらMISIAだったっていうのもありましたね…。

 

 

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群像劇っぽく見せていく作品なんですけど、この登場人物それぞれにスポットを当てたドラマも作りが丁寧で、かなり胸を打たれてしまいました。

実際、劇中のオーディションに合格して主要メンバーになっていく5人(もしくは5匹)の作中における悩みって、結構似通ってる所があったと思うんですよ。要は「他者からの解放」であったり「自身の願望や夢が、日々に忙殺される事でいつの間にか消えてしまうのではないかっていう恐ろしさ」だったりする訳じゃないですか。基本的には。

ハリネズミが針飛ばしながら「あぶなーい!」なんてやってる映画ですけど、コレって結構普遍的なテーマだと思うんですよ。毎日の出来事に疲れ、日々に埋もれていって「自分が本当にやりたかったこと」から少しずつ遠のいてしまっている気がする、もしかしたら、いつの日か本当にそれを忘れてしまう日が来るかもしれない…そんな予感だけはする…って、結構皆が共感できる事だったりする訳じゃないですか?

 

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この映画の優れている点は、語られるテーマは普遍的でも、登場人物それぞれは「自分だけのドラマ」を生きてるっていう風にしっかり演出している所にあると思うんです。それぞれに用意されたドラマを、場所を変え、視点を変え、語り口を変え、移動手段を変えっていう風に見せ方をドンドン変えていくんです。

群像劇として、実は似通っているはずの各キャラクターが抱える問題を、各キャラクターでしか成しえない方法でしっかりと解決させていくし(ちょっと強引なやり方もありましたけど)それがあるからこそ「皆それぞれに何かを克服しようと努力してるし、そして最後に、本当にその夢の入り口に過ぎないかもしれないけど、それを叶えてみせる」っていうのに凄く説得力があったと思うんですよね。そしてそれがしっかりしているからこそ、最後の展開に向かって、否が応でも盛り上がっていくし…。

 

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ただ、合わない人にはとことん合わないだろうなっていう要素もある作品で。まずもう開始5分で主人公のコアラがマジのクズだっていうのが分かるっていうのがあるんですよね。スタッフに給料も払わずに、自分は結構な人込みの中を自転車で「しっつれー!」なんて言いながら上機嫌で逃げていったり。この映画を結構面白く見れた俺でも、未だに「イヤでもお前あそこちゃんと謝れや!」ってなってる部分は多々あります。

「いやー感動した…やっぱり歌っていうのはいいね…象の女の子に『SING...』って語りかける所とかね…あと豚のお母さんの『イヤそっちの道で食っていった方がやりようあるんじゃないの!?』ってなる所とかね…笑える所いっぱいあったね感動もしたね…………………………イヤでもやっぱりお前あそこちゃんと全員に謝れや!!!菓子折り持っていけや!!!!!オイ!!!!!!笑うな!!!!!!!!!!」みたいなね。

 

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まあでも、中盤、コアラが何とか資金集めをする為に身体張るシーンの下りは本当に好きで。もうマジで「俺は今一体何を見てるんだ…??」って自分の目を疑いたくなる様なシーンなんですけど。もう基本狂人なんですよね、このコアラって。ここまで死ぬほど前向きだったりすると、逆に清々しく思える部分もあったりして。

終盤の盛り上がりに向かえば向かうほど、そのコアラのテンションに付き合うかの様に「なんじゃそりゃ!?」っていう展開も多くなったりしていくんですけど。細田守映画の終盤によくある「倫理的にどうとかは一先ず置いておいて…」みたいなのが人数分ある終盤の感じ、その狂った勢い含めて、個人的には楽しく見られた1本でした。

 

 

どうでもいいんですけど、ゴリラが出てきた瞬間に後ろの席のカップルが「全力少年の人だ!」って結構デカめの声で叫んだんですよね…。

シング-オリジナル・サウンドトラック

シング-オリジナル・サウンドトラック

 

 

 SING繋がりで…

 

くすぐり/ Tickled

イヤ、なんかアレですね。映画の感想ばっかり書いてますね。前頭葉が壊死しちゃったんでもう何でもいいんですけど。

コレ以降から、多分映画の感想が多くなってくるかもしれなくて。やっぱり、何というかもうマジで書くことが無いんですね。今そうなってるだけなのかもしれないんですけど、数年前みたいな自己卑下120%の日記書くみたいなモチベーションもそんなに無くなってしまって。この先、また書きたくなる様な時もあるかもしれないし、もう無いかもしれないし。前の鉄板を磨く会社を辞める理由だった「小説家を目指していて…」の小説もここで見てもらう感じでも無いんで。っていうか出来てないんで。全く。

 

 

書きたいけど何を書けばいいのかさっぱり分からない、っていう感じが長らく続いて、ブログを更新する機会もいつも以上にグッと減っていた時期がもう何年も続いているような状況で。っていっても、やっぱり俺は書く事が好きだし、少ないながらもこの半分死んでるようなブログを見に来てくれてる人もいてくれていて。このままTwitterでどうでもいいような文字列をちょっとずつ書いて、またそっちでもフェードアウトしていって…っていうのでは、ちょっと寂しすぎるかな…みたいな所もあって。どんな形であっても、今自分が書ける事を続けていこうと、そういう気持ちでいます。

なので、全国で多分8人くらいいた今までのブログのスタイルを気に入って見に来てくれた人には申し訳ないんですけど、これからは映画の感想を主体にしていきたいな…という所存です。

まあこんなの所詮俺なんで。2週間後には映画の感想すら全く書かなくなってるかもしれないし、また別にブログ作るかもしれないし。っていうか俺明日死ぬかもしれないし。ただ、まあ映画の感想になっても自己卑下120%みたいな所は変わらないかも…みたいな予感だけはしてます。何とか頑張って書いてみますので…。

 

 

で、前置きはここまでにしておいて。何ならもう一切上のヤツ見なくてもいいですから。「なんか文字いっぱい書いてあるし、読み飛ばしてここから読も…」ってなって、とりあえずここまで来た人。

…正解!本題はここから…という感じなんで。はい。

基本的にその年に公開された新作映画を記事にしつつ、旧作は2,3本でまとめて「レンタルで見た映画」っていう感じでまた別に記事にしていきたいと思っています。

ということで、新作1本目はこちらです。出来るだけネタバレはしない様に書いていきたいと思います…。

 

 

くすぐり/ Tickled

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あらすじ: くすぐりに耐える行為が競技として撮られた動画を、ジャーナリストのデヴィッドが発見する。そこから若い青年を陥れる悪徳事業の存在が明らかになっていく。(Netflixより)

監督 デイビット・ファリアー ディラン・リーヴ

出演 デイビット・ファリアー ディラン・リーヴ デイビット・スター

 

80点

 

Netfilxで配信されているドキュメンタリー映画です。twitterでかなり話題になっている事もあって、これが見たいが為にNetfilxに加入してしまいました。いつレンタルショップに行ってもレンタルされててずっと見られなかった「ハウス・オブ・ガード」とかも全話視聴できるみたいで、マジで便利ですね。こういうのは。1カ月無料ですし、ソフトバンクの支払いと合算できるし。

 

お話はニュージーランド在住のとあるジャーナリストが「くすぐり我慢競技」なる動画をYouTubeか何かで見つけるんですね。クッションに横たわる男性が、縛られ、数人の男にくすぐられ我慢する…という『だけ』のくすぐり我慢競技なる動画に「なんやコレ」と興味を持ち、この競技の主催者に取材のアポを取ろうと連絡のメールを送ります。すると、何故か返信されたメールには主催者からの罵詈雑言が書かれており、「は?」と困惑してる間に脅迫、訴訟と、どんどんとエスカレートしていき…という所から物語は始まります。

 

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とにかく不気味な映画です。だんだんと物語の発端となった「くすぐり動画」の真相を知れば知るほど、その深すぎる闇に少しずつこちら側も飲まれていき、気が付いたらとんでもない所まで来てしまった…という様な、「直に触れられる狂気」がこの映画では体感できます。事実は小説より奇なりという言葉はありますけど、正にこの映画はそれを地で行く話で、「ぼくのかんがえたさいきょうのサイコパスがマジで実在していて、マジで今まさにこの瞬間も赤の他人の人生を奪っていくんですね。しかも「もう終わった話」ではなく、今もまだこの話、事件は続いているっていう終わり方も何とも後味の悪い着地をしていて。

 

実際に起こっている事件、そして現在進行形の事件を取り扱った映画といえば、「スポットライト  世紀のスクープ」が思い浮かびます。

askicks1248.hatenablog.com

 (以前感想を書いた記事では、2016年新作映画ランキングの29位にさせてもらいました)

 

 

これも凄く面白くて、映画にした意義のある作品だったと思うんですが、当然こちらは役者を起用していて、なんか凄いバカな言い方ですけど「人の手」が加えられている感じにはなっている訳じゃないですか。実際あった事件として勿論リスペクトはしつつも、2時間で纏められるエンタメ作品として仕上がっていたと思うんです。

 

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で、まあドキュメンタリーなんで当然といえばそうなんですけど、「くすぐり」では、そういう「人の手」が加えられた感じがあんまりしないんですよね。主人公であるジャーナリストが、事件に首を突っ込んでいき、概要を知り、後戻りできない所まで来てしまった、っていうのを時系列順に、そして凄く丁寧に見せていくんで、観客と作り手側を同一化させて、徐々に徐々にこの「くすぐり動画」が孕んでいた狂気に飲み込まれていくっていう過程が、凄く身に迫って来るんです。「カメラ」と「俺」の間を感じさせる物が無くて、終始緊迫感が続きっぱなしなんですよ。アポなしでカメラ持って突撃取材しにいく所とか「イヤ、俺も行くの!?」って見ててなってましたもん。俺。

 

この映画が何故「遠く離れた外国のサイコパスが起こした変わった事件」ではなく、実在感がある話に感じられるのかというと、この「くすぐり動画」に纏わるアレコレっていうのが、「俺でもできそう」っていう所な気がするんです。この事件ほど組織化されたシステムは実現できないにしても、ちょっとのお金と、インターネット設備と、撮影機材さえあれば…ホラ!他人の人生破滅、一丁上がり!!みたいな。

 

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「言葉」とか「文化」ではなくて、「悪意」っていう万国共通のものさえあれば、フィラデルフィアに住む黒人でも、新潟に住む俺の人生を破滅する事なんてマジで簡単なんだよな…っていうのを、1から10までちゃんと説明されたみたいな実感だけが残るんですよ。この映画って。そういう意味で今までにない映画体験が出来た作品でもあったし、「上手い話なんてこの世にはないんだな…」っていう当たり前の事実を突きつけられた気もします。中学高校の修学旅行に向かうバス車内とかで流してほしいんですよねコレ。イヤマジで。

 

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キャラクターもみんな立っていて、良いんですよ。主人公が序盤で空港に行くシーンがあるんですけど、主人公がかなり相手を小馬鹿にしてるのがあるアイテムで分かるんで、笑えたり。また中盤ではある登場人物がインタビューで「性的な要素は無いよ。もちろん。」つってドヤ顔した数分後に完全に屈強な男性の乳首触り始めた時の主人公の表情で笑っちゃったり。(ここはマジで必見です)そういう序盤から、終盤の「狂気」が正に目の前に現れた時の戦慄とのギャップも、またこの映画の魅力でもあったり。

 

この映画が公開された数か月後の今年の3月に、映画内の登場人物がちょっとした目に逢ったりしてるのがまたゾワゾワ~~~~!!って来たりするんですけど、ちょっとマジであんまり調べずに見てほしい作品なんで、何も知らないままにNetfilxに加入するのが最善なんですよ。本当に。「くすぐり動画?そんなバカな動画が題材のドキュメンタリーとか…」となってる人こそがこの世で一番この映画を楽しめる立場にいる人なんで。

 

最早恐ろしいアイテムにしか見えねえ…

 

 

3月中旬~月末までにレンタルで見た映画のメモ書きです。

書くことも無いというか、俺の前頭葉はもうとっくの昔に死んだので最近見た映画の簡単なメモ書きです。

 

特捜部Q キジ殺し

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解説

デンマークの人気作家ユッシ・エーズラ・オールスンによる世界的ベストセラー「特捜部Q」シリーズの映画化第2弾。コペンハーゲン警察署の未解決事件捜査班「特捜部Q」に配属された個性的な刑事たちの活躍を描く。特捜部Qの刑事カールのデスクに、なぜか20年前に捜査終了したはずの双子惨殺事件のファイルが置かれていた。何者かの意図を感じたメンバーたちは再捜査に乗り出し、事件当時に重要情報を知る少女キミーが失踪していた事実にたどり着く。すぐにキミーの行方を追いはじめる一同だったが、キミーを探し続けている人物は他にもいた……。ミケル・ノルガード監督をはじめ前作のスタッフ・キャストが再結集し、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニコライ・アーセル&ラスムス・ハイスタバーグが脚本に参加。「天使と悪魔」のニコライ・リー・カースが主人公カール役を、「ゼロ・ダーク・サーティ」のファレス・ファレスが相棒アサド役を引き続き演じた。

(映画.comより)

 

55点

 

「特捜部Q キジ殺し」と言いたいが為だけに借りた様な感じだったんですけど。何たって「キジ殺し」で、そこに「特捜部Q」と来てますからね。映画のパッと見のルックがそこそこ良いだけにメチャメチャな違和感っていう。本編にキジ殺す描写もそんな無いんですけどね。

本国デンマークでは国民的ベストセラーにもなった「特捜部Q」っていうシリーズの小説があるらしくて。で、その2作目に当たる原作の映画化が、今作「特捜部Q キジ殺し」です。

 

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脚本のラスムス・ハイスタバーグとニコライ・アーセル、撮影のエリック・クルスは「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のスタッフでもあったりします。同じく北欧のベストセラー小説の映画化という事で、相当力を入れていたのが分かります。(因みに「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」はスウェーデンの小説です)画面の空気が何となく乾いて見えるような所とか「あっ北欧」感、結構ありましたね。

特捜部Qの捜査官2人がこの映画の主役なんですか、この2人のバディ感が結構特殊な関係性にあって、個人的には好きでした。 「相棒」っていうかは「お守り」っていう感じなんですよ。一方が一方を「やれやれ…」って付いていく感じって、最近でいえば『ローグ・ワン』のドニー・イェンチアン・ウェンの関係性に近いんですけど、特捜部Qの振り回す方はドニー・イェンほど強くはないっていうか、多分作品中でも最弱クラスの戦闘力で。でも頭の回転は飛び抜けて速くて…っていう訳でもないっていう。で、メチャメチャ強くて社交性もある相棒が「なんか本当スイマセン、ウチの者が…」って方々に頭下げて回っていく感じで。この2人の歪なバディ感が逆にしっくり来る感じで、結構面白く見れましたね。

ただそれがサスペンスラインのストーリーと組み合わさった時に「イヤこいつらに未解決事件任せちゃって大丈夫!?」みたいな所が浮き上がって来ちゃうっていう事は置いておいて…っていう所はあるんですけど。

 

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トーリーの感想を先に書いちゃうと「なんか事件の真相の周りをウロチョロしてたらいつの間にか全部終わってた!!」って感じで。ちょっとモヤモヤした所が多いんですよ。

基本的にこの映画の主役ってメチャメチャ優秀な捜査官っていう訳では無いんで、事件のかなり大事な所で失敗ばっかりしてるんですね。取り逃がすし、ブン殴られるし、逃げ切れなくて捕まるし。「そんなの無茶だと言ってるだろう!」つって止めてるのに突っ込んだら…やっぱり失敗するし

最善手を打てないままのテンションで最終盤まで来たその結末も、ちょっとご都合主義が強すぎるというか、登場人物の行動に無理があった気がします。序盤から中盤にかけての事件の概要を1つ1つ明かしていくその過程は回想を交えながら結構丁寧な作りで良かったんですけどね。劇中の節目節目に事件の核心に迫っていく様なカタルシスがあまり無いっていうのが結構な問題になってる気がします。

 

 

まあそれと、この事件の犯人たちってマジでどうしようもないクズばっかりな訳ですよ。学生時代の頃から結託してて当時からリンチ、レイプは日常茶飯事だったっぽくて、回想シーンでもう何度もその過程を見せられる訳ですよ。こっちは「学生時代の記憶」がオークションでにも掛けられたら参加者全員スマホで下向いてNetflixに加入し出すような15〜22歳期を過ごしてきた様な人間な訳じゃないですか。そんな俺がこの映画のああいう結末を見てもどうしても乗れない部分が大きくて。

「ああ…そうでしょうね…」「まあ…自業自得ですよね…」っていう。アンチ・カタルシス的な話の作品は嫌いではないんですけど、「作品としての完成度」ってよりかは「振り回された末の徒労感」の方が強く感じてしまいました。

あとは、主演のひとりがファレス・ファレスっていう名前の役者さんなんですよね。メチャメチャエモくないですか。名前。俺が来世外国人で役者だったら苗字も名前も同じにしたい…っていう。ミガキ・ミガキみたいな。ゴシ・ゴシだとちょっとアジア系要素強めになっちゃうんで。

 

 

 

 

ドント・ブリーズ

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解説

サム・ライミ製作、リメイク版「死霊のはらわた」のフェデ・アルバレス監督による、全米でスマッシュヒットを記録したショッキングスリラー。強盗を企てた若者3人が、裕福な盲目の老人の家に押し入ったことから、思いがけない恐怖に陥る様を描く。親元を離れ、街から逃げ出すための資金が必要なロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスとともに、地下に大金を隠し持っていると噂される盲目の老人の家に強盗に入る。しかし、その老人は目が見えないかわりに、どんな音も聴き逃さない超人的な聴覚をもち、さらには想像を絶する異常な本性を隠し持つ人物だった。暗闇に包まれた家の中で追い詰められたロッキーたちは、地下室にたどり着くが、そこで恐るべき光景を目の当たりにする。

(映画.comより)

 

80点

 

前評判も良かったんで、相当に期待して見た1本でした。監督はウルグアイ人のフェデ・アルバレス。製作にはサム・ライミって事で完全にリメイク版『死霊のはらわた』ラインなんですけど、ホラーがマジでダメな俺はオリジナルもリメイクも見られていません…。特に2013年のリメイク版はあまりにえげつないスプラッター描写もあって、あまり評判が良くないって事でもあるらしいんですね。主演のジェーン・レヴィもそのラインですし。

 

 

で、本編なんですけど…最高に面白いサスペンス・スリラーでした!!とにかく面白い!盲目の老人という設定で、ここまでビジュアル的にあっと言わせる物が作れるのか!と、とにかく関心しきりでした。今までに見た事がない画作りが完成させてしまっているという点で、ワン・シチュエーションスリラーの枠をはみだして、何なら美術的な美しさをも感じてしまう程の傑作になっていると思います。

 

まず、エンタメとして凄く親切に設計された作品であると思うんですよ。舞台となる盲目の老人が暮らす家に侵入するパートで、間取り説明と共に意味ありげ~な感じでちょっとした小道具やギミックになりそうなアレコレを1つ1つカメラに映していくっていうパートがあるんですけど、ここだけでも「何が…何が起きるんだ…」ってテンション上げさせてくれるし。

で、実際にそこで起きるアレコレがそこで想像させた物より「えっ!そんな使い方すんの!?」みたいな斜め上の使い方をするんで、もう最高のヤツなんですよ。どこの家庭にもありそうなアレコレでここまで面白くエンタメしてくれるのか…っていう感じで。

 

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舞台もほぼほぼ屋内だけなんで同じところを行ったり来たりしてるだけのはずなですけど、メチャメチャ広い所で右往左往してる様にも思えたりして。登場人物がいる所なんて数部屋プラスそこそこ広い地下室プラスαだけなのに、終わった時には「いつの間にか遠い所まで来ちゃったな...」ってグッタリしてしまうような。撮影が本当に神がかっていた様にも思えますね…。

まあでも細かい所も本当に好きで。亡くなった娘の写真が入った写真立てが逆さにして置いてあるのも、一人取り残される事でいつしか狂気に変わってしまっていた愛情の成れの果てみたいな表現があったりだとか、まあ、なんかいいんですよ。いちいち。

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まあ、観客が感情移入できるようなヒーロー、ヒロイン然としてキャラクターが不在だったりだとか、「そいつがある日突然いなくなったりしたら結構キツめな感じで警察に疑われるのはどう考えてもお前なんじゃないの…?」的な、ちょっと違和感を感じる点がない訳ではないんですけど、まだそこは好みの問題くらいな感じに収まる違和感ではあるんで。個人的には。88分しかないっていう所も含めて、すごく楽しめた1本でした。

あとは、意外にジョン・ウィッグばりの犬映画っていう側面もあったりするんですよね。俺はもうこの世にいる全ての犬は人間の太ももに噛みつくタイミングを伺っていると信じてやまない程度には犬苦手なんで。その疑念が確信に変わる1本でもありました。犬はヤバイ。

 

 

 

ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ

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解説

スリーパーズ」に続き、バリー・レビンソン監督がロバート・デ・ニーロダスティン・ホフマンの2大スターを迎えて放つブラック・コメディ。次期大統領選挙を目前にして発覚した、現大統領のセックス・スキャンダル。大統領直属の“もみ消し屋”ブリーンは、大衆の目をこのスキャンダルからそらすため、ある計画を思いつく。それは、ハリウッドの大物プロデューサーを雇い、架空の戦争をでっちあげるというものだった……。

(映画.comより)

 

70点

 

いやまあ、俺みたいなのが何をホフマン先生出てる映画に得点を付けてるんじゃボケ的な所は自分でも重々承知なんですけど。しかも70点なんか付けてね。ホフマン先生、もしコレ見てたら連絡下さい。すぐ俺のムーヴカスタムのマフラーにガムテープぐるぐる巻きで封して中で8時間くらい寝るんで。

 

現職大統領が大統領選挙中に起こしたスキャンダルを国民の関心からそらす為に「戦争しかけっか!!」つってマジでアルバニアとドンパチやっちゃうっていう、とんでもない映画です。架空の戦争、架空の部隊、架空の映像を駆使して、アメリカ大統領一人の都合に国と世界がメチャメチャに動いていく様をコメディチックに見せていくのが何とも独特な軽やかさがあって、なかなか楽しめた1本でもありました。

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ダスティン・ホフマンとデ・ニーロの共演っていうだけで、2017年の今でも結構テンション上がる作品ですね。プロット的にはホフマンの役柄が物語をグイグイ引っ張っていくんですけど、デ・ニーロの基本人任せで終始敵・味方含めて全員の様子を伺ってる嫌な感じの演技とか、パッと見るとこの2人って同じような人物像に思えるんですけど、実はしっかり相対的に配置されていたりして、アン・ヘッチ含めて良いアンサンブルというか、チーム感の凄くある主演キャスト陣だったと思います。そこそこ大事な役でウディ・ハレルソンが出てたりしてて、今ちょうど『トゥルー・ディテクティブ』見てる途中だったんで、少し嬉しくなったりもしてました。

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個人的に好きなのは、とにかく軽い所なんですよね。それはコメディ色強めの作風でもあるし、人死にすらもさっさと済ませている点でもあって。

 

 

架空の戦争といったって、実際、軍は出動してるっぽいし、マジで何千人という人間が死んでるはずなんですけど、この作中では「自分たちの責任による他人の生き死に」をメチャメチャ軽く扱ってるんですよ。「人が死ぬ」というシーンを直接的に映さないどころか、戦争でコレコレこういう被害が出て何人が死にました的なニュースが入るシーンも劇中には一切無くて。こいつらの人を人とは思ってない感じが、もうここまで徹底されると、逆に清々しさをも感じるレベルになっていて。「コメディとして」と「外道ぶりとして」というダブルミーニングで『軽さ』を成立させているのが、なんか見ていて得した気分になる1本でしたね

 

 

という事で、今月中盤から月末にかけてDVDで見た映画の感想でした。3月は特に『ドント・ブリーズ』が抜群なので、何が何でも皆さん見ておきましょう。本当に。

 吹き替えが水樹奈々梶裕貴の主演で結構豪華だったりします。

 

 特捜部Qシリーズ、ダメって感じでは全然無くて、主演2人のバディ感はメチャメチャ好きになってしまったので、チャンスあれば今出てるシリーズは見ておきたいですね…。

 

ウワサの真相。RHYMESTERのアルバムだったりします。

ウワサの真相

ウワサの真相