2020年新作映画ワースト5

うっせーな、なんなんだよお前。マジで。うっせーなつってんだよこっちは。何か言ってみろよオイ。俺がお前何か言ってみろつってんの、今。もう完全に顔が喧嘩売ってる顔じゃん、1800円も払わせておいてさ。自分が悪かったって顔じゃないじゃん。イヤ完全に、イヤもうバカにしてんだろお前。俺の事をさ。謝ればいいんでしょ?って顔じゃん完全に。お前分かってんの?何が悪かったのかじゃあ今言ってみろよオイ。言えつってんだよ今。マジでいい加減にしとけよオイ。いい加減にしとけよつってんだよ俺は。オイ!!!!

 

2020年の新作映画ワースト5を発表していきます。

 

5位 屍人荘の殺人

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公開日は2019年の12月なんですが、2020年に映画館でかかってたという事でランキングに入れました。ジャンルムービーとジャンルムービーを掛け合わせたら面白くなるんじゃね?という試み自体はチャレンジングですし、好きになれそうな要素はある作品だったと思うんですが、そのジャンルムービーへの愛着が全く感じられなくて退屈でした。アクションっぽい何かとホラーっぽい何かと推理モノっぽい何かが集まって「映画っぽい何か」が出来た。

この映画ゾンビ出てくるんですけど、ゾンビが何をすると感染させられるのかが1本の映画の中で統一されてないのがマジで嫌いでした。アクションシーンは「このセリフが出たらこう動く!」みたいな段取り臭さが酷かった。ゾンビたちが誰かのセリフ終わるまでウーつって2mの距離で待ち続けてるのおかしいだろ。

 

4位 ドクター・ドリトル

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まあ、やっぱ「こんだけメチャ金かかってるぽくてこんなんですか…」ってのが2020年の新作映画の中では一番強かった。この作品の肝ってロバート・ダウニーJr扮するドリトルが旅を通して最愛の人を亡くしたっていう自身の傷を癒しつつ人間的に成長していく、って所だと思うんですけど、物語が始まって5分とかで部屋には引きこもりつつなんですけどコイツお気楽で明るい動物たちと結構楽しく喋りながら暮らしてるんですよ。

どう見ても充実した生活を送れてる人間が同行者の子供に毒づきながら嫌々冒険の旅に出かけてく感じのトーンにあまり乗れなかったし、「あ~アイアンマンのイメージをずっと引っ張ってやっていくんだな~」って俺の感想が最初から最後まで邪魔してきた。あと俺ゴリラの内面的な成長とかマジでどうでもいいんだよ。ゴリラだし。

 

3位 カイジ ファイナルゲーム

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そういうシリーズなんで、エグいゲームが沢山出てきて、その中で主人公カイジがどう切り抜けていくか?ってのが楽しい所のはずなんですが、この映画に出てくるゲームって全部マジで面白くないんですよ。劇中でメチャ流行ってるのが、高所に10人の人間が立っててその中で1人だけ命綱を持ってるから、全員飛び降りて生き残った人間を当てる事ができたら配当金2倍!ヒントは一切なし!ってゲームなんですよ。FGOの無料10連ガチャ回して種火出てくるの待ってた方がまだ楽しいよ。

で、カイジが実際にそのゲームをやる事になった時の解決法が「相方の女の口癖が『キュー!』だから9番が命綱だー!」って…マジでチップスター食いながら脚本書くの辞めろよ。ゲームがなんも面白くなくて、ゲームの解決法もなんも面白くなかったら何を取っ掛かりにこの映画見たらいいんだよ。藤原竜也の歯並びの悪さくらいしか面白かった所なんてないよ。

 

2位 ヲタクに恋は難しい

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これ2時間の映画ってよりかは、ショートコントみたいなのがいくつか続いてくだけなんで、話の連続性があんまりないんです。『オタク同士で付き合えばオタク趣味を隠さずに済むし楽なんじゃない?』って所から始まった話のはずなのに、この映画が見せるのは「オタク用語が出たら罰金1000円ゲームしながらデート」とか「彼くんにコミケの売り子任せたら腐女子たちがメロメロで行列になっちゃってもう大変!」とか、マジでどうでもいいエピソードが大体なんです。急にFGOのキャラのコスプレした女が出てきてゲーム内のセリフ絶叫するショートコントを15回くらいやったと思ったら、主人公2人が夜の街で「なんか浮気かと思って勘違いしてたわ、ごめんね」「いいよ〜」つってこの映画マジでそれだけで終わるんですよ。

イヤ、俺思ったんですけど、マジで福田雄一って凄いわ。『さっさとこの案件終わらせて次の映画の製作に当たります、スケジュールがあるんで』ってのが本当にメチャメチャ伝わってくる映画なんて今まで見た事なかったから、いい経験になりました。映画に主人公の成長とか、制作側の伝えたいメッセージとか、そんな物は要らないんですよ。変な人が変なセリフを大声で叫ぶ面白いシーンがたくさんあって、佐藤二郎とムロツヨシがベロベロバー!つって変な顔して変なアドリブすれば映画って成り立つしヒットするんだよな。

 

1位 STAND BY ME ドラえもん2

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まあ共同監督ですけど、日本を代表する映画監督つって紹介される人がこういう映画を作ってるって事ですよね。前作からも共通してる所ですけど、この映画ってどこに向かって話が進んでるのかマジで途中で見失うんです。『おばあちゃんに未来の花嫁を見せる』から始まって『未来ののび太を探す』『結婚式を成立させる』ってどんどん問題が発生していって解決に当たる割には、さっきの問題には一切手を付けずに話が進んでいくんです。クリアしないとならない条件がドンドン山積みになっていきながら進んでいく物語だから「えーと、コレは一体なんでこんな事になってるんだっけ…」と脳が思考を諦める所がまあまあありました。

まああとやっぱ、登場人物たちが何を言ってるのかマジで分からない。未来ののび太は結婚式の当日に式から過去にタイムマシンで逃げて「こんな僕じゃしずかさんを幸せにできない…ぼくはダメなヤツだ…」とかカスみたいな事言ってんですけど、その5分後に過去の世界でメチャメチャ楽しそうにジャイアンたちと野球してんですよね。最終的にのび太が自信を取り戻すきっかけは「しずかちゃんたちを中学生とのケンカに巻き込んだけどみんなが守ってくれたから」なんですけど、なんでそれで『自分に自信が出てきた!未来に帰ってしずかちゃんとの結婚式をちゃんとするよ!』になるんだよ。このシーンの合間にお前の脳内で何と何のシナプスが繋がったんだよ。逆に今年一番難解な映画が今作でした。

で、コレで「いや~いい話でしたね!」みたいな感じで菅田将暉のエンディング流れて『ドラ泣き……2』とか自分で言ってんですよ。やっぱここが2020年のワーストって所ですよね。泣かせまっせ~~~~~!!フゥ~~~~~!!ってやってんのは国民的キャラクラーを使った異常者たちのじゃれ合いとクソ男とクソ女の馴れ初めのご紹介なんですよ。もうコレ見て泣くなら角膜にボールペン突っ込んで泣いてた方がまだ有意義だったろ。そいつらドラ泣き2見なくて済むし。

 

 

という事で2020年ワースト映画は「STAND BY ME ドラえもん2」でした。なんで映画館に早送りの機能ないんだよ。2021年も見ていきましょう。

 

askicks1248.hatenablog.com

 

 

2020年新作映画ベスト10

こんにちは、エスキです。もういつの間にかこの季節がやってきたという事で、2020年の新作映画のベスト10を書いていきたいと思います。もう俺がちゃんと主語と動詞を守ってる文字列はここでしか書いていないので、個人的には挑戦でもあります。とにかく日本語覚えたての黒人である事がバレない様に頑張ります。この綿毛ってもう収穫していいヤツですか?

 

2020年はやはりコロナウィルスの影響で映画館に行く回数がめっきり減った、というか公開してる映画そのものが少なかったですね。なので、discordでチャットをしながら自宅のテレビやPCモニターで、古い映画や一度見た映画を見返す事が多かったです。本数でいえば2020年に見た新作映画は43本、旧作映画は100本の合計143本でした。結果的には2019年より見た本数は多くはなりましたが、新作映画は半分程度になったといった感じです。

因みに2019年の新作映画ベスト10です。1位はマジで鬼滅の刃です。

 

まあ映画が見られていない、プラス識字率が8%の新潟県っていうそもそも映画館が少ない地方に住んでいる関係で、このベスト10も首都圏や映画館の多い都会に住んでる映画好きの方の趣味とはかなり違う感じになってるかもしれません。なので色んな声であったり「は?なんでチョロポッペ・アースホール監督の『ボロボロ・ヌルヌル・オベテンチョの涙』すら見てねえんだよ!殺すぞ!」「あのSNSでも話題になったクリストルファー・ノーラーン?の『何回も見ないと意味がわからない凄い映画』がなんで1位じゃない訳!?殺すわよ!」「映画は知らんし興味もないけどとにかくお前は殺す」などなどの不満が上がる事も全然あり得るんですが、これは俺個人の”俺の好きな映画の羅列”でしかないという事をご考慮頂ければ幸いです。最後の声の方は後で通報もします。

 

という事で、さっそくベスト10から。

 

 

10位 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

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京都アニメーションという会社そのものの存在が危うくなった痛ましい事件を経て、この映画が体現しているのは「生を全うする事の美しさと、その責任」でした。過去、現在、未来という3つの異なる視点から語られるのが今作ですが、その語り口が人間の営みをより多角的に描写していると共に、時代が移り変わる事で生じる『廃れていく技術』や『変わっていく文化』を、今作では肯定的に描写しています。ヴァイオレットは自動手記人形と呼ばれる代筆業を生業としていましたが、この手紙という伝達方法もいつかは廃れていくだろう、という目線も今作には盛り込まれています。ただ、そこに悲観さはありません。時代が過ぎゆく事は避けられない、だけど、そこに人の意思や想いがあって、それが受け継がれていくなら、きっとどんな時代であっても何とかなるんじゃないか?というメッセージを俺は感じたし、泣いてしまった所です。

そして、そういう『変わっていく事』を主題とした映画を、京都アニメーションが完成させたという事そのものに価値があると思います。ヴァイオレットは誰かの気持ちを代弁して手紙として届けるのを職業としていますから、この映画そのものが『作り手からの観客への手紙』になのではないでしょうか。年月は過ぎていく、人も変わっていく、別れもある、それでも素晴らしい作品を作り続ける責任が我々にはある。そういう宣言のような映画でした。

 

9位 アルプススタンドのはしの方

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全国高校演劇大会で最優秀賞を受賞した作品の映像化が今作です。映像化に当たっては、何を写し、何を写さないかの取捨選択が適格だったというのが個人的な印象です。今作では舞台となっているはずの『甲子園での試合風景』は一切映していません。

ある種の虚構に向かって劇中の登場人物たちが「がんばれ!」と声を張り上げる姿が、『「がんばれ!」と声を張り上げる彼ら彼女らを応援したい!』という我々観客の姿と重なる作りになっているのが、この映画の肝なのではないでしょうか。映画という虚構に向かって観客は感情移入することのおかしさというか。いわば『結末はどう頑張っても変えることのできない枠組み』に向かって、我々は登場人物である彼ら彼女らの幸せを願うし、よりよい人生を送ってほしい事を願います。この作品を楽しく見られた、キャラクターに感情移入できたという事それ自体が、我々はこの映画を「アルプススタンドのはしの方」で見ている人間であり、ふとしたきっけけで人生は変えられるという事が、この映画を通してより身近なメッセージとして受け止める事が出来るんです。

 

8位 ジョジョ・ラビット

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いや~マジでタイカ・ワイティティ最高だよ。『マイティ・ソー ラグナロク』もメチャ面白かったけどマジでコレも最高でした。ナチスドイツの下に生きる人々をこんなにも愛らしくユーモラスに描きつつ、最後はしっかりと「イヤ、つってもナチスヒトラーもクソに決まってんじゃん」とオチもしっかり付ける。

俺はこの映画のラストが本当に好きで、コレくらいはネタバレじゃないと思うんで書くんですけど、最後踊るんですよ。大切な人もいなくなった、この国もこれからどうなるか分からない。でも、踊ろう、きっとそんなに世界は悪いもんじゃないから…っていうメッセージが、ここまでのメチャクチャにキャラ立った登場人物たちがこの世界で生きることの楽しさを体現してくれている分、突き刺さるんですよね。映像的にも靴ひもを結びシーンからの伏線回収とか、映画撮るの上手すぎ夫じゃん、こんなん。なんか知らんけど、戦争?ってヤツ?って無いほうがいいらしいですね。

 

7位 羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来

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いやもうここまで来たら全部1位でもいいんですけど、もうほぼぼぼ羅小黒戦記も1位です。7位と書いてあるんですけど1位と読んでもらっても構いません。

例えばジブリドラゴンボールNARUTOといった日本のアニメーションから、マーベルのMCUといった超大作実写映画まで、昨今の映像技術における「見てて気持ちのいい描写」を沢山のオマージュ元から取り入れつつ、そこにこの映画独自のアイデアを盛り込む事で、全く新しい新時代のアニメーションとして成立させているのが本当に素晴らしかったです。

物語においても、主人公である小黒に人間の世界と妖精の世界のどちらが彼にとって住み心地のいい世界なのか、最後まで彼に自発的に考えさせる展開が好みでした。例えば最後の最後に千と千尋湯屋を完全にオマージュした妖精の館が出てきますけど、アレをもし中盤とかで出していたら「こんなに素敵なロケーションの建物に住んでる妖精なら正しい事を言うだろう」っていうバイアスがかかってたと思うんですよ。そうではなくて、あくまで小黒には街に暮らす人々の暮らしであったり、旅の道中でのムゲンとの触れあいで最後まで彼に何が善で何が悪なのかを考えさせるのか、ここが凄くフェアだったと思います。2020年の劇場版アニメ1位は今作です。

 

6位 透明人間

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女性主人公が抑圧的なパートナーに精神的に抑圧され続け、そこからの脱却の試みるも、更に精神的にも社会地位的にも透明人間によって更なる窮地に追い込まれていく…という、2020年の今に公開されるべきトレンド的な要素を盛り込みながら、透明人間といういわば”モンスター”に襲われるB級ジャンルムービー的な要素もあるのが今作なんですが、これらが”本当に面白い映画になるための大事な要素になっている”というだけで、2020年を代表する1本として絶対に挙げたい映画でした。『ジェンダー映画が今ウケる』からの1個も2個も先を行ってるのがマジで偉い。

個人的には透明人間といえばケヴィン・ベーコンの「インビジブル」が印象的には強いんですが、今作は透明人間によって襲われる被害者目線の話になっています。CGを使って透明なのを表現するのではなく、何もないはずの空間を抜群のカメラワークと演出で捉えることで、透明人間の恐ろしさがこの映画を通して初めて身に迫ってきた感がありました。同時に全てのちょっとした空間にも敏感に捉えてしまう女性主人公の怯えもここに内包されている。少し舐められがちの映画かもしれないんですが、今作は2020年がジェンダー的な要素と、映画的なエンターテイメントとの両立を模索している時代であったこそ、本当に見るべき価値のある映画だと思います。

 

5位 佐々木、イン、マイマイ

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正直言って、この映画をどうやって言語化すればいいのか、未だに整理が付いていません。この咀嚼の難しさがどこに起因するのかといえば、この映画が作り手側による作り手側のための映画だったからだと思うんですよ。佐々木を演じた細川岳が脚本を担当してるんですが、自分の中にあった佐々木との思い出を昇華させるためだけにこの映画があったんじゃないか?と本気で思わせるのが、この「佐々木、イン、マイマイン」だと思うんです。

主人公にとって佐々木は自身の人生において掛け替えのない存在だったから、彼は青春そのものだし、いつまでも子供みたいだし、神そのものでもある。学生時代に物凄く影響を受けた友達ってのは、やっぱり俺にもいて。10代の頃に憧れた同世代の人間ってのは、大人になってもいつまでも象徴的な存在であり続けると思うんですよ。この映画の佐々木へのちょっとやりすぎな演出も、主人公から見た佐々木、という所で物凄く納得してしまった。

ただ、この映画の醍醐味は、その青春時代に感じてた想いを”捨てる”って所にあると思うんです。自身にとって大事な人、人生を変えてくれた人でも、結局のところ誰がいてもいなくても当然全く別の誰かの命は失わてるし、誰かの命は産まれている。誰が泣いたって誰が笑ったって、何の変わりもなく世界は回り続けてる。俺はこの映画はそういう映画だと思うんです。青春はあったけど、でも生きるためにはそれは絶対に捨てて生きていかなかればならないものだし、皆そうやって生きてきてる。だってそれはこの世界には一切関係ない事だから。でもいつか、この人生であと1回だけ「佐々木!佐々木!」のコールが出来る日がやってきてくれと、いつでも願っている。

っていうか俺まだ今でもふとした時に佐々木の事を思い出してますよ。彼は何を思ってあの人生を生きていたのか。部屋汚いんだよなアイツ。でも絵も描くし本も読むし、意外に文学青年なんだよな、アイツ。おい佐々木、コレ見てたら連絡しろよ。マジで。多分俺の事は知らんと思うけど。

 

4位 罪の声

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今年の邦画は佐々木と今作でメチャメチャ迷ったんですが、やっぱ個人的にはこういう実録的なサスペンスが好きなのでこっちが1位になりました。もうすでに時効になっているグリコ・森永事件を現代においてもう一度取り上げ、記者と事件関係者の2つの視点を入り混じて進んでいくサスペンス小説の映像化が今作です。実在した事件を取り扱うスリラー映画はこれまでは韓国映画がメチャ強かった印象なんですが、この1本で「イヤ!邦画も負けてないぞ!!」と胸を張って言える感じが出てきたんじゃないでしょうか。小栗旬星野源も豪華ですが、脇役の俳優がマジで邦画脇役オールスターって感じで素晴らしい。新解釈三国志より2000倍豪華な俳優たちが200000倍実力を発揮させてます。

中盤、「すでに時効が成立になった事件をもう一度記事にするのは利益を求めた自己満足だけなんじゃないか?」と小栗旬扮する記者が思い悩むシーンがあるんですが、それってこの映像化にも言えることだと思うんですよ。”実際あった事件をなぜ映像としてもう一度記録に残すのか?”っていう問いかけがこの映画自身にも掛かってる。

で、この映画はその問いに”怒り”で100%の力で打ち返してんすよね。こんな事件が起こってしまったことへの”怒り”と、誰ががこの事件によって直接的に殺されたりがあった訳ではないにしろ、確実に人生を狂わされたであろう人間の声なき声を代弁した”怒り”。終盤、この映画は少しフィクション寄りというか、少しウェットな展開になっていくんですが、それこそがこの映画が訴えたかった事だと思うんです。映画のバランスを少し狂わせてでも、確かにいたであろう被害者の姿を鮮明に映像に残そうとするその姿勢が、”この事件が映像化される意味”になっていたと思うんですよね。

それプラス、記者ともう一人の主人公の職業が昔ながらのテーラーっていうのがやっぱメチャ良かったです。やっぱオチというか、最後の記者とテーラーの会話がね。未来に繋いでいこう、みたいなさ。イヤ、この映画は本当に脚本がよく出来てる作品なので、そこがまず最高に好きでしたし、「何故この話を今映画にしたか?」という所があると、やっぱ俺は更にメチャメチャ好きになってしまいますね。

 

3位 パラサイト 半地下の家族

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ウワ、もう今年色々ありすぎて2020年の映画って感じ全然しないわ。

イヤ~、別に俺がなんか言わないでもコレはもう良くないすか?アカデミー賞取ったし、俺以外の1000万人が「面白かった!」って言ってるし、ゲオのパラサイトのレンタル売場の前で「なんか~コレって地下になんか行ってなんかなんかあるらしいよ!」ってネタバレを大声で披露する女が10000万人いるし。え?お前今ネタバレみたいな事言ってんじゃん俺まだ見てないのにひど過ぎるだろって?パラサイトを公開1年経ってまだ見てないお前の方が悪いに決まってんだろボケ。見ろ。数百円払って今すぐ全員見ろ!!ちゃんとした感想が読みたい人は「パラサイト ちゃんとした感想 タダ」で検索しろ。っていうか誰なんだよお前。

 

2位 はちどり

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いや、まあこの映画もね、簡単な感想でなんか言うのがメチャ難しい感じではあるんですけど、とにかくこのキム・ボラって監督はもう確実に10年後に世界を代表する映画監督になってる事は間違いないです。脚本も素晴らしい、演者も素晴らしい、カメラワークも素晴らしい、音楽も素晴らしい、ただ”具体的に何が素晴らしかった?”と聞かれるとメチャ困るのがこの映画で、とにかくその時代っぽさの空気感が身に染みたってくらいしか言語化はちょっとまだ出来ないんすよ。

舞台は韓国の団地に住む少女が生きた90年代って感じなんですが、とにかくメチャメチャな男社会で、家庭の男をいい大学に行かせる為なら女はどんなに犠牲になっても仕方がないってのが当たり前になってる社会で。女は親にも”どうでもいい”と思われるし、”どうでもいい”と思われても私は別にいい、だってそういうのが当たり前だから、と受け入れられてしまってんのがこの時代だったんですよね。しかもそこを特にことさら事件として取り扱ってないのがこの映画で。その中で主人公は青春を送っている。

ただ、この映画に起きた事件って全部メチャ悲しいし、なんでそうなるんだよ!?って憤る事なんて沢山出てくるんですけど、全部話が終わった後は何故かこの世界への肯定感が残るんですよね。それはこの映画に起きた事そのものと、韓国って国がここからどんどん発展していって、例えばポップカルチャーにおいては世界に誇れる文化になったって所で、「とある少女と一家に起きたこと」と「軍事政権から民主政治へと移行していく国に起きていくこと」がメチャ上手くシンクロさせてるって感じもこの映画にはあるんです。「この時代はこの時代だから、生きていくしかない」っていうこの映画のトーンが全く悲壮感がなく、それでいて特に何が大きな事件がないまま進むのに、心に残る何かがある。家族なんて嫌いだけど、ここにいるしかないし、でも好きだと思える瞬間もあって嫌いじゃないかもしれない…けどやっぱこんな所いたくないわ!みたいな感じ、その言語化しにくいそれを映像化してくれただけでまあ50億点って感じしますけどね。

 

1位 フェアウェル

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毎年1位は迷うんですが、今年は結構「コレが1位以外ないだろ!」って感じでした。個人的にはもう早い段階で1位がコレって決めてた感じです。

中国人の両親の元に生まれたアメリカ在住の女性が、とあるきっかけで中国に住む大好きな祖母に余命宣告をされたのを知るんですが、実は祖母が住む中国には『死期が迫った人にはそれを絶対に本人には伝えてはいけない』という昔からの風習がありました。祖母には何も伝えられない、だけど最後に一目会いたい、という理由で、親族総出で祖母が住む中国へと向かっていくが…というのがこの映画の簡単なあらすじです。

まあマジで超良いコメディ映画なんで全編通して無限に笑ってられるんですが、今作の醍醐味としては勿論「死期が迫っているにも関わらずいつも通りにパワフルに生きてる祖母」と「それを見て何も言えずに更に涙腺が緩みまくる家族」のような、嚙み合わない”悲しいけど笑える”のシチュエーションが最高に楽しい所もありつつ、『価値観や死生観の違い』を語るのと同時に『価値観や死生観はいつかは変容していく』という事についての話をしている点だと思うんです。

主人公は中国からアメリカに移り住んだ両親から生まれた子供なので、ルーツである中国よりアメリカの方が断然馴染み深いというキャラクターですし、彼女の母も中国での暮らしが本当に窮屈でアメリカに出られて本当に幸せだと吐露するシーンもある。または親族の1人である主人公の叔父も、今は中国を離れて日本に住みながら楽しく仕事を続けてるっぽいし、叔父の息子は日本人の女性と国際結婚している。つまり国籍も文化も、物凄く入り乱れている彼ら彼女らが『中国の昔からの風習』の元に祖母の元に集結させられている。コレって凄く今っぽい話ですよね。祖母以外の”今っぽい人々”たちが、古い風習について、自分たちはどう立ち向かったらいいのか、悩みながら悩みながら、最後に答えを見出していく。

コレってつまりはドンドン文化も国籍も入り混じる事で、いわゆる『昔ながらの風習』はいつか消えていく事を暗示しているし、それに取り残されてしまう人も絶対いるって事だと思うんですよ。凄く良い人だし、チャーミングで大好きな祖母だけど、でもこの時代に取り残されていく事は多分もう決まってるし、それでもこの時代を生きていく責任は若者である私たちに確実にある。終盤に中国系の主人公がアメリカの街並みの中でデカイ声を出して気合いを入れるシーンがあるんですけど、わざとその街並みの中にいる人間が白人しかいない中で撮ってるんですよね。このシーンが俺は本当に忘れられないし、2020年ベストショットつったら俺は迷わずこの映画の終盤のこのシーンを挙げます。どんなにこの世界が変容を遂げてもこの時代を生きていく責任は私にはあるんだから、という主人公の覚悟のシーン。イヤ、マジで本当に素晴らしい。この映画って俺の理想形みたいな感じあるんですよ。根っこは重い題材を扱いつつも、全編通してバカみたいな展開が延々と続いてるっていうこのバランスが本当に好きです。

ただまあ、あの、この映画で本当に一番笑ってしまったのは最後の最後の大オチなんです。マジで本当に、俺コレで映画館で「え!!???」って声出してしまいました。それくらい衝撃的な。マジでね、この映画は最後の最後まで見てからこそだと思うんで。なんか見る機会があったら是非最後まで見てみてください。イヤ~もう本当にね。いい加減にしろよマジで。1位です。

 

 

 

という事で2020年の新作映画1位はフェアウェルでした。まあ~ね。やっぱあんまみんな見てないっぽい映画を見てほしいんでね。そういうのも含めての1位って感じです。全員見ろ。ナイナイ!

 

まあ今年はあんま映画見られてないんですが、とりあえずTOP20くらいまでざっと書いて今年のランキングは終わりにしたいと思います。面白い映画は面白いので見た方がいいんだよな。

1 フェアウェル

2 はちどり

3 パラサイト 半地下の住人

4 罪の声

5 佐々木、イン、マイマイ

6 透明人間

7 羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来

8 ジョジョ・ラビット

9 アルプススタンドのはしの方

10   劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

 

元スタッフが教える!「映画館」バイトの職場環境とその魅力|DOMO+(ドーモプラス)

 

 11 彼らは生きていた

12 1917 命をかけた伝令

13 ミッドサマー

14    囚われた国家

15 フォードvsフェラーリ

16 ソニック・ザ・ムービー

17 魔女見習いをさがして

18    ラストレター

19 ソワレ

20 TENET テネット

 

2021年はまた映画館で大作映画が見られる環境に戻る年であってほしいですね。まあ人はいつか死ぬのですが…。

 

 

2019年新作映画ベスト20 (1位から10位)

ということで、2019年の新作映画ベスト10です。なんでこんな事になってしまったのかはよく分かりません。まあでも2019年も2020年もほぼ一緒ですからね。すいませんでした。はてなブログの使い方も忘れちゃったよ。

 

 

11位から20位の記事です。

 

早速いきましょう。人はいつ死ぬか分かりませんからね。

 

10位 キングダム

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個人的には「キングダム」は2019年の映画を語る上では絶対に欠かせない作品でした。なんといっても、邦画にしてはかなりの予算をかけて、漫画原作で、アクション映画で、旬の若手俳優を揃えて、海外ロケに行って…ってひと昔前だったらコケる要素が全部揃ってる訳じゃないですか。でも今作は、ちゃんとお金をかけた分だけ、しっかり面白くなっていて、続編を匂わすような終わり方でも全く気にならない。コレは皮肉でもなんでもなく、”キングダムがちゃんと面白かった”という事実そのものが、原作ありきの作品が多いフォーマットの中でも、それでも日本映画が”面白いモノを作る”という所に向けて、着実に進歩できている何よりの証拠なんだと思います。

 

 

9位 アベンジャーズ/エンドゲーム

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『アベンジャーズ/エンドゲーム』 予告編 (2019年)

 

エンドゲームに関しては「ありがとう!」っていう気持ちしかない。今年のMCU作品だけ見ても、「キャプテン・マーベル」で更なる強キャラの掘り下げをしつつ、エンドゲームの次には「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」で膝カックンをしつつ新しい世代の台頭を予感させて次のフェーズにバトンを渡していく、っていう完璧すぎる流れ。

しかもそれが2019年内だけで完結されているんだから、本当に「…ありがとう!」という感じです。「俺たち観客の事をたくさん考えてくれてありがとう!」「映画館で絶対見たい作品をハイペースで作り続けてくれてありがとう!」「俺が生きてる時代にこの映画たちを映画館で見せてくれて本当にありがとう!」

 

 

8位 凪待ち

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主演の香取慎吾が素晴らしかったです。彼って個人的にテレビで見ていた時はいつもここではないどこかを見ている様な、ある種の空虚さを感じる人だったんですけど、それが今作の主人公である郁男とどこかマッチしていて、彼以外にこの映画の主演は無理だったなと鑑賞後は強く感じました。物語は郁男を中心とした人生に失敗した人間たちの陰惨な話ですが、舞台となる石巻市の震災後の様子を同時に描写することが「人生をもう一度やり直そうとしている人たち」と「震災から少しずつ立ち直ろうとしている街」を重ねて描写している点が印象的でした。

「人間は誰にだって人生をやり直すチャンスがある」と優しい視点を盛り込みつつ、同時に「人間はいつでもやり直しが利くからこそ、堕ちる所まで堕ちるのも容易にできてしまう」という真逆のメッセージが同時に内包されて映画でもあって、人間の再生をテーマに描きつつも、どことなくドライに終わっていく終盤の展開も好みでした。

 

 

7位 蜜蜂と遠雷

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映画『蜜蜂と遠雷』予告【10月4日(金)公開】

 

音楽映画で”音楽”だけにフォーカスを当てた映画って今まで見た事がなかったかもしれない。邦画で音楽映画って、3割音楽4割恋愛3割モラトリアムだったりするじゃないですか。この映画は本当に気持ちがいいくらい”音楽!”の一点突破で、『どうしたら良い演奏ができるのか?』っていう苦悩が真ん中にドスンとあり続けていて、意外にそういう日本映画って今まで見た事がなかっただけに新鮮でした。

”音楽”ともう一つ、今作の主題を挙げるとするなら、それは”死者”です。「なぜ人はいつか死んでしまうのに、誰かとコミュニケーションを保とうとするのか」というテーマもあって、松岡茉優が演じた主人公・亜夜がコンテストを通して、音楽を奏でる楽しさや、彼女自身から放たれる躍動感、そしてコレ以外には考えられない!と唸らされるほどにバッチリだったキャスト達との強烈なアンサンブルが、”死者への弔い”と共に”生を全うする事の素晴らしさ”という所に収束されていく終盤の展開は、非常に胸を打たれました。

楽曲的にも”このキャラクターならこういう曲を弾くだろう”という所で、作り手側が脚本を鑑みた弾き手を連れてきて演奏させたという拘りぶりもあり、音楽に素養のない俺でも物語にとにかく没頭してしまった1本でした。最後のコンテスト、みんな1位になってほしかったんだよな…キャラクターにとにかく感情移入してしまって「もうコンテストとか辞めてみんな1位でいいじゃん!もう解散しようよ!終わり!!!!」と叫びそうになってしまった。なんで順位とか付ける?そんなの不毛じゃね?

 

6位 スパイダーマン: スパイダーバース

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スパイダーマン、死す!『スパイダーマン:スパイダーバース』日本版予告

 

これからの3Dアニメは「スパイダーバース以前」と「スパイダーバース以降」で語られていきそうな、確実に歴史に残っていきそうな1本になりました。

細かいアニメーション技術に関しては分からないですけど、とにかく”今まで見たことのない映像”が2時間ずっと流れ続けてる映画で、今思い出しても「コレ見てるときは脳が幸せだったな…」って意識がフワッとしてしまう。2019年のベスト吹替映画も今作です。こういうレビューを書いていると段々ともう1回見たい欲が高まっていくものなんですけど、今スパイダーバースの予告編見たら超Blu-ray買いたくなってきた。処方箋とかでスパイダーバース出してくれないかな。ロキソニンとスパイダーバース7日分出しておきますね~みたいな感じ。それなら大抵の辛いことはなんとかなる気がする。OK!じゃあもう一度だけお薬手帳出しておくね!

 

5位 きみと、波にのれたら

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映画『きみと、波にのれたら』予告【6月21日(金)公開】

 

個人的な2019年ベストアニメは「きみと、波にのれたら」です。「スパイダーバース」が”見たことのない映像の連続”なら、「きみと、波にのれたら」は”生活の中にある身近な描写の連続”です。火や水といった自然描写、食事や調理といった生活描写のひとつひとつが繊細なアニメーションとして表現される事への感動は、今でも忘れる事ができません。

細田守監督が「我々が暮らす現実の中にあるリアリティを、アニメーションの中でも同じように感じることが『アニメーションでしか得られない感動』なんじゃないか」ということを言っているんですけど、正にこの映画は”アニメならではの”が詰まった1本になっています。特に主人公のひな子と港が出会い、お互いが惹かれながら、色んな所に2人で出かけ絆を深めていく…というシーンを主題歌と共に次々と見せていく一連の展開には本当に感動しました。何か特別な事件が起きる訳じゃない。人と人とが分かり合うだけのシーンの連続が何故ここまで感動的なのか。今作でも白眉となるシーンだと思います。

中盤以降はSF的な要素が組み込まれていくのですが、終盤に向かっていくとそれが物語のテンポを上げていく為に必要なシークエンスだったというのが分かる作りになっているのも憎い所です。タイトルの「波にのる」というのが、ひな子が”趣味のサーフィンで波に乗る”と”もう一度人生という波に立ち向かっていく”の二重の意味になっているのも凄く良かった。最終話のタイトルがアニメのタイトルその物になってるのが大好きなオタクに是非オススメしたいです。いろいろぶっ飛んだ設定を盛り込みながらも、採取的に”日々を丁寧に生きることって、楽しいよね”っていうすごく普遍的な所に着地する点は、湯浅監督作品全てに共通するポイントですよね。

この映画っていわゆる”案件”的な作品だと思うんですよ。主人公が声優初挑戦のEXILE TRIBEのメンバーだったり、主題歌もEXILE TRIBEの楽曲だし、主要キャストには一人も本職の声優はいないんです。それでも、見終わった後にはキャストも主題歌も大好きになってしまう映画って、本当に今まで出会ったことがない。職場の有線でこの主題歌が流れる度にかなり涙目になっていました。ただ一つ不満があるとすれば、この映画全然ウケなかったんですよ。その影響なのか、映像特典が「キャストが舞台になった喫茶店に行ってみました!」みたいなEXILEファンに向けたモノしかなくて、監督のインタビューとかメイキングは一切収録されていないんです。おいオタク、何とかしてくれ。

 

4位 ホテル・ムンバイ

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ポスターとか宣伝だと「一人の勇敢な人物が多くの人を救った感動ドラマ」みたいな感じですけど、この映画は”救えない”という事の焦点を絞った映画でした。『ザ・バニシング』とテーマは似ていて、悪意や暴力が突然、私たちの日常に現れたらどうするのか?という問いに、この映画は「何もできない」と答えているんですよね。明らかにあなたに殺意を持った人間が急に現れたらどうするのか?死ぬしかない。私には妻もいて子供もいて、仕事にも真面目に毎日励んでいたが銃を構えた見ず知らずの人間に撃たれたらどうなるのか?うーん、やっぱり死ぬしかない。俺らの生活のずっと近くに死はいつでもいる。

この映画ではどんな人間にもランダムに”死”が降りかかってきます。よい人間もわるい人間も、テロリストに見つかったら関係なく殺される。この映画では殺人の描写が”平等”なんですね。誰かが死ぬときに感動的な音楽が鳴ったりとか一切ない。この映画が素晴らしいのはそこで、日常はいついかなる時でも少しの悪意で壊される可能性があること、そして明らかな悪意に我々が立ち向かうことは難しい、っていう実は当たり前なことに、ちゃんと向き合ってると思うんですよね。

ただ俺の一番好きなシーンは、劇中で唯一希望を見出せる所で。中盤で主人公が「実はテロリストのスパイなんじゃないのか?」と疑われるシーンがあるんですが、彼は自身の生い立ちをすごく真摯に語って、最後にただただ「信じてください」と訴えるんです。仮初の日常の中に我々は生きているけど、でもちゃんと誰かと向き合うこと、対話することが、悪意を打ち砕く強烈な一手になりうるんじゃないのか?というメッセージのあるこのシーンが、本当にたまらなく好きです。

 

3位 バーニング 劇場版

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解釈が難しい映画ではあるんですが…メチャメチャ面白かったです。

生きることの辛さ、虚しさ、それでもそんな世の中で轢かれ合う主人公とヒロインがやっと都会の片隅で出会えた…と思いきや、そんな希望めいた光もほんの一瞬刺しただけで、あっという間に暗闇に堕ちてしまう…というのが大まかなストーリーですが、この感じも序盤でヒロインの部屋に主人公が初めて訪れた時の「日当たりの凄く悪い彼女の部屋」から始まる下りだけでこの映画の全体のトーンをすでに物語っています。このシーンに代表されるように、「バーニング 劇場版」ではあらゆるシーンが後々に繋がっていく展開の伏線であったり、導入であったりするのが本当に素晴らしい。編集がマジで神ががってます、この映画。主人公も最初の最初でタバコを吸うんですが、変にその”煙”をフォーカスしたりしますね。

社会的な弱者は強者に抗うことは一生許されない、というのがこの映画のテーマではありますが、個人的には”遺伝”というテーマも感じた所です。主人公の父が暴行罪で訴えられるシーンが所々で挟まれますが、父が持っていた”怒り”と、その怒りを誰かに暴力という形で実践してしまう”思慮のなさ”を受け継いでしまった事を主人公も自覚してしまう、というのがこの映画の肝だったと思います。その父の遺伝子さえも服と共に全部燃え尽きてしまえ…!という主人公の願いが爆発する最後の展開こそが、主導線的に語られていた「弱者は何があっても強者を上回ることは一生叶わない」というテーマに全て集約されていく。とてつもないラストシーンであり、とてつもない映画です。登場人物はほぼほぼ3人だけで進む映画なんですが、役者陣も本当に素晴らしいです。隙が全くない映画なんで、2時間半強あるのも本当に気にならなかった。

 

2位 ミスター・ガラス

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琥珀さん、やっぱ俺シャマラン好きだわ…って感じの1本です。「アンブレイカブル」「スプリット」からなる『シャマラン・ユニバース』3部作の完結が今作「ミスター・ガラス」です。

シャマランらしい”笑っていいのか怖がっていいのかよく分からんぞ!”みたいな独特な画作りは今作でも健在で、それだけで「あ~俺はシャマランの映画を観てる…」と嬉しくなってしまう。話としてはヒーロー映画(のような何か)という感じですが、彼の映画で一貫してるのは「登場人物たちが自身の役割に気付く、もしくは思い出す」という点です。それが今作においては、観客に矢印が向いてる傾向が強いです。「コレを見ているお前たち、俺の映画が好きっていう絶対にマジョリティなお前たち、このラストを見てどう思う?」っていう、強烈すぎるシャマランの自分語りが存分に入った投げかけに俺はもうクラックラしてしまった。

この映画の主人公は今作の中にはいないんですよ。見てる俺が主人公であり、そして敵はこれを見て気付いた俺を取り囲む世界なんだと。作るのに数十億とか普通にかかってる映画でも、こういうメチャメチャ個人的なことをやるのがシャマランなんだよな。最高の映画監督です。

 

1位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

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今年はミスターガラスとどちらを1位にしようか迷ったんですが、こちらかなと。

個人的にはタランティーノは「過去」と「未来」の臨界点になる映画を撮り続けていると思っています。彼の映画が明らかに変わったように感じたのは「デス・プルーフ in グラインドハウス」で、この映画は前半がモノクロ、後半ではカラーっていうはっきりした作りをしているんですが、話自体は同じような話をしているんです。前半は過去にあったグラインドハウスっていう映画群にリスペクトを捧げただけのパートで、ぶっちゃけ退屈なんですよ。女が死ぬ所とおっぱいさえ出てれば金出すよ!っていうZ級映画がメチャメチャ作られた時代の映画を模範したような映画に、タランティーノっぽさがほんの1滴加えられただけの映画が「デス・プルーフ」の前半パート。でも、後半は完全にタランティーノの映画になってるんですね。で、しかも現代の観客が見てもちゃんと面白どころがハッキリ分かる映画にもなってる。俺はここにタランティーノが大物監督になるまでの人生を見たような気がするんです。ビデオ屋で世界中の名作映画からクソ映画まで見まくった映画オタクでしかなかった彼が、映画を撮るに当たって「面白くなかった映画」もちゃんと血肉としていて、そしてリスペクトを向けている。クソ映画はこの世に捨てるほどある、けど、その積み重ねが今俺たちが見ている超大作映画なんだと。物凄いざっくりした言い方ですけど”映画を観ること”の価値と尊さを、「デスプルーフ」で俺は見た気がするんです。

この映画のエンドロールって前半パートで死んだ女だったり、いかにもZ級映画でおっぱい出しながら死んだ感のある女優が次々と出てくるんですけど、俺ここで泣いちゃったんですよ。Z級映画の魂を受け継ぎつつも、これからも俺らしい映画を撮っていくぞ!みたいなタランティーノの宣言って感じがして。本当にこの人、映画が好きなんだな~っていうのがなんか泣けてきた。タランティーノって俺マジで熱い男だと思うんですよ。オシャレでバイオレントな映画を撮る監督っていうより、熱い男っていう印象が本当にある。

今作「ワンス・アポン~」は彼の集大成という感じがします。これまでは歴史上で実際にあった事件、対立、差別を元に描いた作品がここ近年は多かった。でも、今作は何が違うって「過去にあった悲惨な事件を”実名を出して描いている”」って所です。シャロン・テートという人が過去に本当に生きていて、何を楽しいと感じていたか、これからの人生で何を成し遂げようとしていたか。そして、ここにディカプリオとブラット・ピットのフィクションの人物を絡ませる事が、逆に「絶対に覆すことのできない過去」を描写している。この映画の結末に”傲慢すぎる”っていう声もチラホラ聞くんですけど、あれは未来をこれからも生きていくしかない俺たち観客に向けたエールなんですよ。過去に起きた出来事は変えられない、でも未来を生きていく俺たちなら、もっといい現実にしていく事はきっとできるじゃん、っていう火炎放射器だったんですよ。

 

ということで2019年の1位は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でした。まあ2020年も半分終わってるんですけど。

 

最近discordグループの「インターネットの悪いシネマ」で映画をよく見ているので、興味がある方は一緒に見ていきましょう。

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