読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

3月中旬~月末までにレンタルで見た映画のメモ書きです。

書くことも無いというか、俺の前頭葉はもうとっくの昔に死んだので最近見た映画の簡単なメモ書きです。

 

特捜部Q キジ殺し

f:id:askicks1248:20170331024726p:plain

解説

デンマークの人気作家ユッシ・エーズラ・オールスンによる世界的ベストセラー「特捜部Q」シリーズの映画化第2弾。コペンハーゲン警察署の未解決事件捜査班「特捜部Q」に配属された個性的な刑事たちの活躍を描く。特捜部Qの刑事カールのデスクに、なぜか20年前に捜査終了したはずの双子惨殺事件のファイルが置かれていた。何者かの意図を感じたメンバーたちは再捜査に乗り出し、事件当時に重要情報を知る少女キミーが失踪していた事実にたどり着く。すぐにキミーの行方を追いはじめる一同だったが、キミーを探し続けている人物は他にもいた……。ミケル・ノルガード監督をはじめ前作のスタッフ・キャストが再結集し、「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニコライ・アーセル&ラスムス・ハイスタバーグが脚本に参加。「天使と悪魔」のニコライ・リー・カースが主人公カール役を、「ゼロ・ダーク・サーティ」のファレス・ファレスが相棒アサド役を引き続き演じた。

(映画.comより)

 

55点

 

「特捜部Q キジ殺し」と言いたいが為だけに借りた様な感じだったんですけど。何たって「キジ殺し」で、そこに「特捜部Q」と来てますからね。映画のパッと見のルックがそこそこ良いだけにメチャメチャな違和感っていう。本編にキジ殺す描写もそんな無いんですけどね。

本国デンマークでは国民的ベストセラーにもなった「特捜部Q」っていうシリーズの小説があるらしくて。で、その2作目に当たる原作の映画化が、今作「特捜部Q キジ殺し」です。

 

f:id:askicks1248:20170331033846p:plain

 

脚本のラスムス・ハイスタバーグとニコライ・アーセル、撮影のエリック・クルスは「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のスタッフでもあったりします。同じく北欧のベストセラー小説の映画化という事で、相当力を入れていたのが分かります。(因みに「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」はスウェーデンの小説です)画面の空気が何となく乾いて見えるような所とか「あっ北欧」感、結構ありましたね。

特捜部Qの捜査官2人がこの映画の主役なんですか、この2人のバディ感が結構特殊な関係性にあって、個人的には好きでした。 「相棒」っていうかは「お守り」っていう感じなんですよ。一方が一方を「やれやれ…」って付いていく感じって、最近でいえば『ローグ・ワン』のドニー・イェンチアン・ウェンの関係性に近いんですけど、特捜部Qの振り回す方はドニー・イェンほど強くはないっていうか、多分作品中でも最弱クラスの戦闘力で。でも頭の回転は飛び抜けて速くて…っていう訳でもないっていう。で、メチャメチャ強くて社交性もある相棒が「なんか本当スイマセン、ウチの者が…」って方々に頭下げて回っていく感じで。この2人の歪なバディ感が逆にしっくり来る感じで、結構面白く見れましたね。

ただそれがサスペンスラインのストーリーと組み合わさった時に「イヤこいつらに未解決事件任せちゃって大丈夫!?」みたいな所が浮き上がって来ちゃうっていう事は置いておいて…っていう所はあるんですけど。

 

f:id:askicks1248:20170331034033p:plain

 

トーリーの感想を先に書いちゃうと「なんか事件の真相の周りをウロチョロしてたらいつの間にか全部終わってた!!」って感じで。ちょっとモヤモヤした所が多いんですよ。

基本的にこの映画の主役ってメチャメチャ優秀な捜査官っていう訳では無いんで、事件のかなり大事な所で失敗ばっかりしてるんですね。取り逃がすし、ブン殴られるし、逃げ切れなくて捕まるし。「そんなの無茶だと言ってるだろう!」つって止めてるのに突っ込んだら…やっぱり失敗するし

最善手を打てないままのテンションで最終盤まで来たその結末も、ちょっとご都合主義が強すぎるというか、登場人物の行動に無理があった気がします。序盤から中盤にかけての事件の概要を1つ1つ明かしていくその過程は回想を交えながら結構丁寧な作りで良かったんですけどね。劇中の節目節目に事件の核心に迫っていく様なカタルシスがあまり無いっていうのが結構な問題になってる気がします。

 

 

まあそれと、この事件の犯人たちってマジでどうしようもないクズばっかりな訳ですよ。学生時代の頃から結託してて当時からリンチ、レイプは日常茶飯事だったっぽくて、回想シーンでもう何度もその過程を見せられる訳ですよ。こっちは「学生時代の記憶」がオークションでにも掛けられたら参加者全員スマホで下向いてNetflixに加入し出すような15〜22歳期を過ごしてきた様な人間な訳じゃないですか。そんな俺がこの映画のああいう結末を見てもどうしても乗れない部分が大きくて。

「ああ…そうでしょうね…」「まあ…自業自得ですよね…」っていう。アンチ・カタルシス的な話の作品は嫌いではないんですけど、「作品としての完成度」ってよりかは「振り回された末の徒労感」の方が強く感じてしまいました。

あとは、主演のひとりがファレス・ファレスっていう名前の役者さんなんですよね。メチャメチャエモくないですか。名前。俺が来世外国人で役者だったら苗字も名前も同じにしたい…っていう。ミガキ・ミガキみたいな。ゴシ・ゴシだとちょっとアジア系要素強めになっちゃうんで。

 

 

 

 

ドント・ブリーズ

f:id:askicks1248:20170331025506p:plain

解説

サム・ライミ製作、リメイク版「死霊のはらわた」のフェデ・アルバレス監督による、全米でスマッシュヒットを記録したショッキングスリラー。強盗を企てた若者3人が、裕福な盲目の老人の家に押し入ったことから、思いがけない恐怖に陥る様を描く。親元を離れ、街から逃げ出すための資金が必要なロッキーは、恋人のマニーと友人のアレックスとともに、地下に大金を隠し持っていると噂される盲目の老人の家に強盗に入る。しかし、その老人は目が見えないかわりに、どんな音も聴き逃さない超人的な聴覚をもち、さらには想像を絶する異常な本性を隠し持つ人物だった。暗闇に包まれた家の中で追い詰められたロッキーたちは、地下室にたどり着くが、そこで恐るべき光景を目の当たりにする。

(映画.comより)

 

80点

 

前評判も良かったんで、相当に期待して見た1本でした。監督はウルグアイ人のフェデ・アルバレス。製作にはサム・ライミって事で完全にリメイク版『死霊のはらわた』ラインなんですけど、ホラーがマジでダメな俺はオリジナルもリメイクも見られていません…。特に2013年のリメイク版はあまりにえげつないスプラッター描写もあって、あまり評判が良くないって事でもあるらしいんですね。主演のジェーン・レヴィもそのラインですし。

 

 

で、本編なんですけど…最高に面白いサスペンス・スリラーでした!!とにかく面白い!盲目の老人という設定で、ここまでビジュアル的にあっと言わせる物が作れるのか!と、とにかく関心しきりでした。今までに見た事がない画作りが完成させてしまっているという点で、ワン・シチュエーションスリラーの枠をはみだして、何なら美術的な美しさをも感じてしまう程の傑作になっていると思います。

 

まず、エンタメとして凄く親切に設計された作品であると思うんですよ。舞台となる盲目の老人が暮らす家に侵入するパートで、間取り説明と共に意味ありげ~な感じでちょっとした小道具やギミックになりそうなアレコレを1つ1つカメラに映していくっていうパートがあるんですけど、ここだけでも「何が…何が起きるんだ…」ってテンション上げさせてくれるし。

で、実際にそこで起きるアレコレがそこで想像させた物より「えっ!そんな使い方すんの!?」みたいな斜め上の使い方をするんで、もう最高のヤツなんですよ。どこの家庭にもありそうなアレコレでここまで面白くエンタメしてくれるのか…っていう感じで。

 

f:id:askicks1248:20170331033426p:plain

 

舞台もほぼほぼ屋内だけなんで同じところを行ったり来たりしてるだけのはずなですけど、メチャメチャ広い所で右往左往してる様にも思えたりして。登場人物がいる所なんて数部屋プラスそこそこ広い地下室プラスαだけなのに、終わった時には「いつの間にか遠い所まで来ちゃったな...」ってグッタリしてしまうような。撮影が本当に神がかっていた様にも思えますね…。

まあでも細かい所も本当に好きで。亡くなった娘の写真が入った写真立てが逆さにして置いてあるのも、一人取り残される事でいつしか狂気に変わってしまっていた愛情の成れの果てみたいな表現があったりだとか、まあ、なんかいいんですよ。いちいち。

f:id:askicks1248:20170331033521p:plain

 

まあ、観客が感情移入できるようなヒーロー、ヒロイン然としてキャラクターが不在だったりだとか、「そいつがある日突然いなくなったりしたら結構キツめな感じで警察に疑われるのはどう考えてもお前なんじゃないの…?」的な、ちょっと違和感を感じる点がない訳ではないんですけど、まだそこは好みの問題くらいな感じに収まる違和感ではあるんで。個人的には。88分しかないっていう所も含めて、すごく楽しめた1本でした。

あとは、意外にジョン・ウィッグばりの犬映画っていう側面もあったりするんですよね。俺はもうこの世にいる全ての犬は人間の太ももに噛みつくタイミングを伺っていると信じてやまない程度には犬苦手なんで。その疑念が確信に変わる1本でもありました。犬はヤバイ。

 

 

 

ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ

f:id:askicks1248:20170331034400p:plain

解説

スリーパーズ」に続き、バリー・レビンソン監督がロバート・デ・ニーロダスティン・ホフマンの2大スターを迎えて放つブラック・コメディ。次期大統領選挙を目前にして発覚した、現大統領のセックス・スキャンダル。大統領直属の“もみ消し屋”ブリーンは、大衆の目をこのスキャンダルからそらすため、ある計画を思いつく。それは、ハリウッドの大物プロデューサーを雇い、架空の戦争をでっちあげるというものだった……。

(映画.comより)

 

70点

 

いやまあ、俺みたいなのが何をホフマン先生出てる映画に得点を付けてるんじゃボケ的な所は自分でも重々承知なんですけど。しかも70点なんか付けてね。ホフマン先生、もしコレ見てたら連絡下さい。すぐ俺のムーヴカスタムのマフラーにガムテープぐるぐる巻きで封して中で8時間くらい寝るんで。

 

現職大統領が大統領選挙中に起こしたスキャンダルを国民の関心からそらす為に「戦争しかけっか!!」つってマジでアルバニアとドンパチやっちゃうっていう、とんでもない映画です。架空の戦争、架空の部隊、架空の映像を駆使して、アメリカ大統領一人の都合に国と世界がメチャメチャに動いていく様をコメディチックに見せていくのが何とも独特な軽やかさがあって、なかなか楽しめた1本でもありました。

f:id:askicks1248:20170331040837p:plain

 

ダスティン・ホフマンとデ・ニーロの共演っていうだけで、2017年の今でも結構テンション上がる作品ですね。プロット的にはホフマンの役柄が物語をグイグイ引っ張っていくんですけど、デ・ニーロの基本人任せで終始敵・味方含めて全員の様子を伺ってる嫌な感じの演技とか、パッと見るとこの2人って同じような人物像に思えるんですけど、実はしっかり相対的に配置されていたりして、アン・ヘッチ含めて良いアンサンブルというか、チーム感の凄くある主演キャスト陣だったと思います。そこそこ大事な役でウディ・ハレルソンが出てたりしてて、今ちょうど『トゥルー・ディテクティブ』見てる途中だったんで、少し嬉しくなったりもしてました。

f:id:askicks1248:20170331041230p:plain

 

個人的に好きなのは、とにかく軽い所なんですよね。それはコメディ色強めの作風でもあるし、人死にすらもさっさと済ませている点でもあって。

 

 

架空の戦争といったって、実際、軍は出動してるっぽいし、マジで何千人という人間が死んでるはずなんですけど、この作中では「自分たちの責任による他人の生き死に」をメチャメチャ軽く扱ってるんですよ。「人が死ぬ」というシーンを直接的に映さないどころか、戦争でコレコレこういう被害が出て何人が死にました的なニュースが入るシーンも劇中には一切無くて。こいつらの人を人とは思ってない感じが、もうここまで徹底されると、逆に清々しさをも感じるレベルになっていて。「コメディとして」と「外道ぶりとして」というダブルミーニングで『軽さ』を成立させているのが、なんか見ていて得した気分になる1本でしたね

 

 

という事で、今月中盤から月末にかけてDVDで見た映画の感想でした。3月は特に『ドント・ブリーズ』が抜群なので、何が何でも皆さん見ておきましょう。本当に。

 吹き替えが水樹奈々梶裕貴の主演で結構豪華だったりします。

 

 特捜部Qシリーズ、ダメって感じでは全然無くて、主演2人のバディ感はメチャメチャ好きになってしまったので、チャンスあれば今出てるシリーズは見ておきたいですね…。

 

ウワサの真相。RHYMESTERのアルバムだったりします。

ウワサの真相

ウワサの真相

 

 

 

 

この生活のどこかに非日常へと繋がる入り口が必ずあるはずだと、私はかなり長い間信じていたし、未だに心のどこかでは諦めていない様な気もする。

来店する度に「店内お客様キモい人ランキング」の電光掲示板に『NEW!』の文字と共にレジ会計時の私の顔写真が上位に掲載される事でお馴染みのスターバックスにまた来てしまった。閉店まで粘るつもりでいたが、昨日の寝不足のせいか睡魔に勝てず、いつの間にか壁に寄りかかって少しだけ眠ってしまっていた。

 

 

冷たくなったチャイティーラテを喉に通すと、喉の少し内側がギュっと絞られる様な感覚がある。 独特の後味があるチャイだが、週5のパートタイムで働いたり、足の親指の爪を巻き爪防止に四角に切り揃えるくらいしか日々に刺激がない様な毎日の中では、この違和感7不快感3の何ともいえない喉の感覚は、私に小指の爪レベルの非日常感を演出してくれる。

それが「その非日常感と、スターバックスまでの車で片道40分のガソリン代+グランデサイズ496円の出費とを比べた時に、コストパフォーマンスは釣り合っているのか」が頭をよぎったりしない事も無いけれど、もう慣れてしまった、というか考えるのに飽きたので、私は喜んで週2ペースで昭和シェルでガソリンを満タンに給油した後に喉を違和感でいっぱいにしていく。

 

 

 子どもの頃から、積極的に自分から非日常感を探していた。大好きだった戦隊モノに出てくるヒーローも怪人も、少なくともテレ朝の朝8時半から9時まで映る映像の中では、週5で朝6時40分に起きて小学校に通ったり風呂上がりに母に怒られる前に爪を切り揃えたりするだけの生活を送ってはいない。「自分はいつもの生活を送っているだけで損をしている」という感覚が強かった。

 

 

この生活のどこかに非日常へと繋がる入り口が必ずあるはずだと、私はかなり長い間信じていたし、未だに心のどこかでは諦めていない様な気もする。

小学生だった私が非日常との邂逅のため、確率的に高いと踏んだのが、「登下校の際にふとした思い付きでいつもと違う帰り道を選んだが故に怪人、もしくはそれに準じた何かしらと出逢う」だった。『ふとした思い付きで違う道で帰り、そのせいで怪人に襲われよう』となってる時点で「ふとした思い付き」もクソも無いのだが、今思うとアニメでも映画でも、そういうキッカケで主人公が事件に巻き込まれていく話が多かった事に無意識ながらも気付いていたのかもしれない。

ただ私の実家は小学校から徒歩5分で着くような立地であった為、怪人いそうルートの探索は非常に困難を極めた。なんせすぐ家に着いてしまうのである。「ちょっと道を外れて…」をやろうとしても、どんなルートを選んでも数十秒もすれば視界の向こう側にはもうすでに実家がチラチラと見えてしまっている。大声を出せば多分家まで声は届く。初めから分が悪い勝負だったのである。

 

 

それでも…と諦めきれなかった私は、学校の正門から少し外れた所に、昔図書館として使われていた廃墟があるのを知り、そしてその廃墟の裏側には獣道があるのを見つけ、更にその獣道が実家のすぐ近くの神社に繋がっている事を遂に発見した。「廃墟」「獣道」「神社」と、何かが起こりそうな予感をビンビンと感じる『ふとした時にいつもの道を外れたら…」のルートを確保する事に成功したのである。入学してから数年。私はすでに小学生高学年になっていた。

 

 

そこから、獣道の斜面がぬかるむ雨の日以外はその道を通って下校をしていたが、残念ながら誘拐され怪人に改造される事もなく*1、私が小学校卒業までにその怪人いそうルートで出逢ったのは、神社の階段下で手押し車に座って休憩しているおばあさんただ一人だった。

散歩の時間が被っていたのだろうか、私の下校時にはほぼ必ずと決まって、そのおばあさんは神社の階段下で手押し車に座り、私を笑顔で見やっていた。「こんにちは」「さようなら」くらいの挨拶をする内に、お菓子を貰った事もあった。私も小さい頃は祖母が「こんなに可愛い子は誘拐されるかもしれないからタクシーで送り迎えさせた方がいいんじゃない?」と母に相談するほどに可愛らしい子どもだったのである。こんな事は朝飯前だ。

ただ、お菓子を貰った時は、母にどう説明したものか凄く悩んだ。帰るまでに全部食べてしまおうかと思ったが、かなり早い時間から封を開けて待っていてくれていた様で、私が受け取った時にはもうすでにお菓子は全部湿気ていてた。とてもじゃないが、食べられる代物ではなくなっていた。結局家に持って帰り、母にバレないようにこっそりゴミ箱に捨ててしまった。

それから2,3か月ほど経ったころ、いつものように下校中に神社の前で手押し車に座るおばあさんに「こんにちは」と挨拶すると、珍しくこっちこっちと手招きをしてくる。近寄ってみると、手押し車から徐に立ち上がる老婆。そして私が見たのは、今の今までケツの下にしていたビニール入りの白い物体だった。よく見ると『10kg』と表記された業務用の塩。しかも×2で20kgもある大荷物。「?」が頭に浮かぶ私。すると老婆。「重くて運べんから家まで持ってくれや」。「???」が230個頭に浮かぶ私。何かしらが書かれた紙を見せながら「ここオレの住所だがら、持っていってくれや、この前お菓子やったんだから」と老婆。

 

 

パッと住所を見ても、全く見た事がない地域名で、恐らく市内なんだろうけど、どの辺の土地なのかも検討すら付かなかった。

行けない事は無いのかもしれないけど、いつ目的地に着くのかも分からないまま20kgの荷物を抱えてこのおばあさんと一緒に歩いて行くのか?でも、捨てたとしてもお菓子を貰ったことは事実で、手伝えるなら手伝いたいけど、っていうかこの人誰だ?名前も知らない人のために、自分はそこまでするのか?当時はそこまでハッキリと文にして考えていた訳ではなかったが、「人としての正しさ」と「小学生の自分にできること」と「面倒くささ」で、混乱して目の前が真っ暗になる、というのを私は小学生にして体験してしまった。

 

 

結局は、本当に偶々、実家の近所に住んでて子供会でよくしてもらっていた陸川のおじさんがそこを丁度通りかかり、藁にも縋る思いで助けを乞いた。事情を察してくれたのか、その住所に何となく当たりが付いたおじさんが、その日の内におばあさんと一緒に家まで車で届ける、という事で何とかその場は落ち着いた。陸川のおじさんには今でも迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだが、それ以来、何となくおばあさんと顔を合わせる事に気まずさを感じてしまい、その神社の抜け道を通る事は二度と無かった。一度だけ、友達との下校中に件のおばあさんを見かけ、また手招きされた事もあったが、また何か届けてくれと言われるかもしれなかったのと、友達が見ていた中での恥ずかしさもあり、気付かなかったフリをした事があった。それ以来そのおばあさんを見かける事は無かった。

 

 

何となく嫌なエピソードというか、「果たしてあれで良かったのか?」とボーっとしてしまう思い出の一つだが、あんなにも憧れていた非日常への入り口があのおばあさんの存在だったとも今となっては思える訳である。怪人に誘拐こそされなかったが、心の中の無意識の部分が、おばあさんとの会合で改造されてしまった様にも思えてしまう。

おばあさんに『この前お菓子あげたんだから』と言われた時の、「善意」と「建前」の間に挟まれ、身体が動かなくなってしまったあの瞬間を、私は大人になった今でも忘れる事が出来ないでいる。

 

 

デンデラ (新潮文庫)

デンデラ (新潮文庫)

 

 

*1:読者のみなさんの「そんな!」という顔が目に浮かぶ

履歴書をもう書きたくないという気持ち

「年相応」という言葉がある。

曲がりなりにも28年生きてきて、その積み上げてきた年月に相応しい振る舞いという物が私にも備わってしかるべきなのだが、私自身が積み上げてきた物とは一体なんであったのか、正直検討が付かないまま毎月毎週毎日と時間だけが過ぎていく。

 

 

真っ白な履歴書の片隅から、名前と、年齢と、生年月日とを、順々に書いていく。

前の職場を辞めてから、とりあえず…と就いたレンタルショップのバイトもそろそろ10ヶ月になろうかという所で、人件費の大幅なコスト削減が決まり、働ける時間が目に見えて減り出した。何でもグループ全体で見た所の営業利益が去年比で5割ほどになっただとか、その原因は本社で調査中で不明だがとりあえずすぐに結果が出る人件費から削っていくとか、店長から何かしらの説明があった気がしたが、所詮アルバイトである私にとってはどうでもいい事で、まず大事なのは貰える金が減る事であり、そして実家にいる時間が今以上に増えてしまう事だ。母と顔を合わせるのがなんとなく気まずく、休みの日はどんなに持ち合わせが無くても家で一番近い本屋と喫茶店まで車で40分かけて時間を潰しながら何とか誤魔化してきた。

だが、これ以上は私の財布も、大学卒業時に母に65万で買ってもらった14万キロ走行済みのダイハツムーブも限界が近いうちに必ずやってくる。早急な履歴書の作成が、私にとっての急務であった。

 

 

1988年11月25日生。もう人生で何度書いたか分からない数字と漢字の組み合わせを、美白、というよりかは「洗う」という概念を知らない哺乳類の毛色の様な顔色をした自身の顔写真の下に今日も記していくと、恥ずかしい様な居心地の悪い様な、そんな気分になる。

私という人間は変わらずここにあるのに、携帯のバッテリーは減っていくし、モスでは蛍の光が流れだすし、2時間前に自慰した私のおちんちんはグッタリとうな垂れたままでいる。顔写真と生年月日の記された私と、今ここにいる私とでは、一体何が違うのか。自分はもしかしたら瞬間ごとに年を重ねているのでは?と錯覚を覚えたりもするが、残念なことにそれは現実に起きている出来事である。実際の28歳は、履歴書を書く度に、自身の年齢と自身に流れる時間とのバランスが決壊した瞬間を実感として感じたりするのだろうか。その体験を「年相応」と呼ぶのかは分からないが、多分違うという事は何と無く分かる。

 

2016年新作映画ベスト50プラスワースト1 ③

今更何言ってんの…死ねばいいのに…っていう感じなんですけど、性懲りもなく2016年の新作映画の感想記事、今回が最終回です。前回、前々回と、3回に分けて今年俺が見た映画を紹介させてもらった訳ですけど、最終回はベスト10の最高映画とワースト3の最低映画の紹介とさせて頂きます。

 

askicks1248.hatenablog.com

 

askicks1248.hatenablog.com

 

やっとここでまで来れたって感じなんですけど、ただ辛いことは先に片づけてしまおうって事で、ワースト3は先にやっちゃう感じです。もう本当に見なくても読まなくても全然いいんで。この辺は。

俺はもう「俺だけこんな嫌な想いしたのはおかしいでしょ」以外の気持ちは全くないです。ワースト作品の感想が一番長かったりするんですけど、もうそっちは読んでも読まなくてもマジでどっちでも良いので。ゲロに自分から鼻近付けていって「クッサ!!」って喜んでるみたいなもんですから。こんなのは。

 

49位 エクストラクション

ポスター画像

 

もうこの辺のはアレなんですよ。「俺が悪かったのか?」って見ててなるんですよ。もう話が進んでるのか戻ってるのかさえ分からなくて。意味が分からないから、終始狐につままれたような気分になって。で、見始めて数十分経つじゃないですか。「イヤこれ狐近くにいるわ!蟲師でこんなん見たわ!」って人ならざるもの達への疑念が確信に変わって、外に出ようとするじゃないですか。お団子かな?お団子渡せばいいのかな?つって。そしたら丁度エンドロールになってるくらいな、そんな感じです。

 

何を考えてるのか全く分からない主人公と、「デッドプールに出てきた中ボスの骨の太い女優が何考えてるか全く分からないヒロインが出てくる普通のD級アクション映画でした。
一応ブルース・ウィリスがキャストの2番目か3番目くらいにクレジットされてて、レンタルショップでも「ダイ・ハードを匂わせるPOPが出てたりして、パッと見の映画のルックは良いんですけど、本当にそれだけです。詐欺と言われても仕方ないくらい。

 

誰に感情移入したらいいのか、全く分からないんですよ。そもそも演出がド下手なんで「俺が何か見落としてるのか…?」となって見返してみたりするんですけど、何故コイツは今ここにいるのか、何故コイツはこんなことをしたのか、もうさっぱり分からなくて。
国の在り方を変えてしまうくらいの重要機密をブルース・ウィリスひとりに運ばせて当然テロリストに捕まるっていう物語の導入とか、どう見ても肩幅がレスラーくらいあるヒロインが敵に捕まっても、どう見ても手下よりヒロインの方が強そうだから安心とか、事務員だった主人公が表に出た途端に何の前触れもなく見ず知らずの人間を顔色一つ変えずに拷問していく感じとか、違和感しか無い脚本でもう足の踏み場が無いんですけど「ああ、俺はF級を見てる」っていう不思議な高揚感がありました。これぞ!みたいな。後味もメチャメチャ悪いし。ブルース・ウィリスは好きな俳優なんで、マジでこういう小銭稼ぎするだけみたいなゴミ映画には出てほしくないっていう気持ちは少しあるんですけどね。
ただ、この映画メチャメチャ良い所が一つだけあって、上映時間が80分しか無いんですよ。1週間後には見た事も忘れる様な中身の無さも相まって、ここだけは本当に良かったです。携帯を弄って5分映像を見ていなくても、物語に置いてけぼりになる事に変わりは無いんで。

 

 

50位 シーズンズ 2万年の地球旅行

ポスター画像

 

確か映画館で上映されたのが2月とかだったと思うんですけど、もう「今年のワースト映画決まった…」と鑑賞直後は確信していました。


この映画って作り手側の演出が凄く感じられるドキュメンタリーなんですよ。それがもうとにかく不自然で、しかも説教臭くてとにかく嫌でした。
嫌だったのが、終盤に人間の少女が出て来て「人間の手によってドンドン自然は消えていく、なんと愚かなことよ…」みたいな感じで森の木々を悲しげに見やるっていうシーンがあるんですけど、映画中盤くらいに人間たちが登場してきた時代の再現があるんです。で、その少女がそこに出てくる原始時代の人間の少女にメチャメチャ似てるんですよね。

もう一つ挙げると、人間たちが段々と「道具を使う」っていう事を覚えだして、家屋を作る為に森の木々を倒し始めた時期があるんですね。そこで熊が映って「人間たちが木々を倒して餌が取れなくなった為に、熊は不慣れな山での生活を余儀なくされました」って、アルプスみたいな山地で熊がウロウロしてる映像が長回しされるんですよ。


これらって完全に人間の手が加わった演出じゃないですか。っていうか、動物たちは必死に暮らしてるのかもしれないですけど、人間だって同じ様に、自分たちがよりよい生活が出来るようにって、それこそとんでもない時間をかけてとんでもない数の人間の労力が払われてきた訳じゃないですか。

それに全く目に向けずに、自分たちの思想に現実味を持たせる為だけにこういう他人をバカにしたとしか思えない演出を何故選択出来てしまうのか、マジで理解できないんですよ。とんでもない山地でウロウロしてる熊とか、何なんですか?数千年前からずっとこの地域の熊は「餌がない餌がない」って、代々に渡って山でうろついてるって事ですか?っていうか、完全に人間の脚本があるのに「野生の動物たちを追ったドキュメンタリー」って銘打ってるんですよ。もう前提からしてメチャメチャなんですよね。


こういう動物たちの生態を追っていくドキュメンタリーで「動物は必死に生きてるのに現代人が彼らの生活を脅かしている!」みたいな落とし所にするのって、それこそ人間のエゴの塊をぶつけられた気がして、凄く嫌な気持ちになりました。イヤ、お前らがそういう風に考えるのは別にいいけど、それを動物たちの生態を自分たちの思想の為のプロモーション映像に使ったり、脚本が当たり前の様に存在する演出で『ドキュメンタリー映画』を謳うんじゃねえよっていう、そういう感じです。個人的にはメチャメチャ嫌いな映画です。

 

一応こっちでも感想を書いています。

 

askicks1248.hatenablog.com

 

 

51位 エクスポーズ 暗闇の迷宮

ポスター画像

 

確実に誰も見てない映画なんですよ。みんな大好きキアヌ・リーブスが一応出てはいるんで、レンタルショップで手に取ってはみたんですけど。人生で見てきた映画の中でも1、2を争うくらいの駄作でした。


コレはあんまり映画本編とは関係ない話なんですけど、ちゃんと定期的に映画館に通う様になったのがここ数年で、最近は面白くない映画なんてこの世には存在しないんじゃないか?って本当に思うんですよ。「インデペンデンス・デイ リサージェンス」とか、俺の去年のワーストにした「96時間 レクイエム」とか、好きとは死んでも言えない映画って沢山あるんですけど、例えば誰かと見に行ったりTwitterで感想書いたりして「ココがダメ、あそこがダメ」って言い合ったり思ったりするのって、それ自体が結構楽しかったりするじゃないですか。
1つの話題で他人の意思と触れたり、自分の考えを整理したりすると、自分がどういうジャンルが好きで、どういう描写が苦手なのかってのが理解できたりして、それって凄く貴重な事だなって今更ながらに思うんですよ。高校生みたいな事言ってますけど、最近本当に面白い映画だけ選んで、面白い映画だけ見て、趣味の範囲ですら自分のテリトリーから出ようとしないのって、貧しい考えなのかもなってマジで思うんですよね。だからどんな映画だって価値はあるし、時間の無駄、金の無駄なんて事は無いんじゃないかって考えるようにしてるんです。どんな事があっても。


で、この「エクスポーズ 暗闇の迷宮」なんですけど。
マジで時間の無駄以外の何者でもねえよ!オイ!!最悪の映画だったよ!!見てなんの得もねえよ!!!どうなってんだコレ!!!!!殺すぞ!???


前振りはこんなんなんですけど、本当に、本当に、イヤ本当に駄作でした。「駄作」っていうのが他のちゃんとした駄作(ちゃんとした駄作?)に申し訳ないくらいの完成度の低さ。今年見た旧作も含めてもう文句なしで2016年の個人的ワースト映画です。
イヤ、もうね、一応刑事物っていうかミステリーなんですけど、そもそもミステリーとしても成り立ってないんですよ。もうどうせ誰も見ないと思うんで、これから思いっきり、いつも以上にネタバレします。っていうか全部書きます。どうせ誰も見ないと思うんで。


主人公は20代くらいのメキシコ系なのかな?のアメリカ人で、パーティ終わった~つって地下鉄で帰ろうとして駅に向かうんですね。で、そこで彼女が目にしたのは、駅のホームで宙に浮かぶ男だったんです。
家に帰ってから「昨日駅のホームで浮いてる男がいたのよ!」「アレは天使かも!」って女は騒ぎ出すんで、「何を言ってんだコイツはもう…」みたいなテンションで嫁に入った家族に呆れられるわ笑われるわって感じなんですけど。なんかこの女の様子が変だぞ?っていう描写だけは途中途中で入って。なんかよく分からないドレス着た白塗りの怪物?を街中で見たりとか。そしてどうやらその怪物は主人公の女にしか見えてないぽかったりとか。


「駅のホームで宙に浮いていたの男は一体何者なのか?」っていうのは映画の最終盤で明らかになります。もうコレこの映画の核心部分なんですけど、主人公の女は、実は地下鉄のホームで男にトイレに連れ込まれてレイプされてたんですよ。で、主人公は男が隙を見せた一瞬を狙ってナイフで背中を刺して、駅のホームに突き落とすんです。それからちょうどやってきた列車にその男は轢き殺されるんですね。レイプされたショックでもう始めっから主人公は精神に異常を来していた!っていうのが物語のオチなんですよ。だから「宙に浮いた男」なんてのを見ていたんですね…。イヤ、「はあ?」って感じでしょ?俺の説明読んでて。でも大丈夫。書いてる俺も文字に起こしてまた「はあ?」ってなってます。


物語の流れとしては、列車に轢き殺された男っていうのは実は停職中の刑事で、その元相棒だったキアヌ・リーブス役の刑事が事件を追って行くのと、もう頭おかしくなってる女に起きる不可解な出来事を交互に見せてくっていう感じなんです。で、この映画110分くらいあるんですけど、110分の内に犯人を追う側であるはずのキアヌが持ちうる手がかりが「男が死ぬ直前に何故か隠し撮りしてた2枚の写真」しか無いんですよ。


こういうのって数珠繋ぎで、最初の手がかりを探していったら次の手がかりが見つかって、その次の手がかりを見つけたらその次の…って感じで物語が進むじゃないですか。
この映画にはそういうの一切ないです。列車の運転手に話を聞くとか、駅にいた目撃者を探すとか、駅に監視カメラは無かったのかとか、2枚の写真以外に手掛かりを探したり、男の死因をしっかり調べる事もないし、交友関係をもう少し洗ってみたりとかもないです。手掛かりがメチャメチャ少ないんで、当然捜査も行き詰まります。「この写真に映ったヤツに見覚えはあるか?」って聞くだけなんですよ、コイツの捜査。で、「………無いですね~」「うーん、行き詰まった…」つってるんですよ。お前マジか!??って俺が何回言ったと思います?もうなんなんだよコイツ。辞めちまえ。退職金放棄しろ。寄付して過ごせ。

 


一応、頭のヤバくなった女に「コイツなんか掴んでそうだから聴取してえ~」みたいなシーンはあるんですけど、何故接触しないかというと「前に同じように話を聞いたヤツがその直後に地元のギャングに殺されたから危ない」っていうクソ理由で。
で、最終的にキアヌはどうするかというと、コイツ諦めるんですよ。上司に「あの死んだお前の元相棒だけど、なんかアイツ実はレイプもしててヤバイ奴だったっぽいからこのまま無かった事にしてくれや」って言われて「わかりました…」つってもう捜査側の人間の話はマジで終わるんですよ。死ね。マジで全員死んでくれ。もう終わりにしてくれ。終わりだよ終わり。意味がねえよこんなの。


追われる側の立場であるはずの主人公のパートも、追う側がマジで機能してないんで、っていうか追ってないんで一切緊迫感が無いんです。ただただ精神に異常を来してる女の身に起こる不可解な出来事を並列に見せてくだけなんで、何を見せたいのか一切分からない。
どうせマジで誰も見ないし見る事もないだろうから、全部書きます。もうね、終わり方とか最悪の最悪ですよ。主人公の女が働いてる保育園?なのかな?で、ネグレクトされてるっぽい女の子がいたんですね。で、なんか家から逃げてきたって言うんで、実家で保護したんです。そしたらね、同居してる主人公の父親にその女の子がレイプされそうになったから、女の子守る為に父親殺したら女の子は主人公にしか見えない架空の存在だった!!っていうのが最後のオチなんです。
あのさ、もうコレさ、序盤から続いてきた事件と一切関係ない話ですよね??俺がこれまで頑張って見てきた110分は何だったんだよ。っていうかなんで主人公の女パートとキアヌのパートを交互に見せる作劇なのに物語の最後の最後までこいつら一切交わらないんだよ。このお腹の子どもだけでも祝福してあげて!!じゃねえんだよボケ。もうさ、もう、楽しい事だけ考えて生きていこうよ。みんなでさ。苦しいのとか辛いのとか、もういいじゃんか。俺たち頑張ったよ。な?もういいじゃんか?な。


テーマが不快!とかカメラワークが不親切!とか位置関係がわかりにくい!とか、そういう以前の問題の映画ってあるんだなと、本当にタメになる1本でした。
良かったのが、事件が起きた地下鉄のホームまで続くトンネルですね。地獄への入り口って感じで、良いロケハンが出来ていたんじゃないですかね。
主人公パートの日常が崩れてく展開もまあそんなに悪くは無かったんで、もっと早めに「キアヌが主人公の女に目を付けて事情聴取しに行く」とか「地下鉄の駅のトイレに被害者の体液が発見された」「男の死体の肉片から指紋付きのナイフが見つかった!」とか、俺みたいな素人でも辻褄が合う様な展開が思い付くんだから、もっと何とか出来たと思うんです。普通に役者陣は良いんだから、サスペンスとスリラーをやっておけばいいのに何か深淵なテーマを含ませようとして失敗してしまった感じなんですよね。開脚前転しか出来ないのに何故か前方倒立回転飛びやろうとして普通に首の骨折ってるんですよコイツ。一生見学してろバカ。

 

 

 

あっ、スイマセン。じゃあやっとここからが本番みたいな物なので。お辛い気持ちにさせてしまって申し訳ありませんでした。

 

では、今年のベスト10の発表です。

 

 

10位 ヘイトフル・エイト

ポスター画像

 

タランティーノの新作って聞いて映画館に行かない映画ファンはいないと思うんですけど、タランティーノの新作です。
この人の映画って、とにかく喋るヤツが劇中で最強っていうよく分からないルールがあって、今作も例に漏れず喋れば喋るほど生存率が高まってくサミュエル・L・ジャクソンが主演なんですけど。とにかく今更ながらこの人の芸達者ぶりに驚くし、それを堪能する3時間でもあったと思います。俺はサミュエルを全部の映画でファックファック連発して喋りまくる屈強な偏屈黒人の役やっててほしいってマジで思ってるんで、100パーセントの濃度の「俺が見たかったサミュエル」がしっかりファックファック連発してくれます。人もバンバン殺すし。


この映画、好きな所沢山あるんですけど、やっぱり序盤数分が好きで。「ズートピアの序盤もメチャメチャ好きなんですけど、この映画の序盤の凄い所は「何も起きてない」所なんですよ。もうRPGだったら中盤で絶対死ぬ、元々は歴戦の戦士だったけど年取って指揮官側に回ったプレイヤー父親の親友のおじさん的な「生ける伝説」みたいな称号が与えられてても全然おかしくない巨匠エンニオ・モリコーネの、重低音効かせた、体の芯から震えさせる劇盤がかかる中で少しずつ遠くから馬車がゆったりゆったり画面のこちら側に向かってくる、っていうだけの序盤なんですけど、もうコレがたまらなく好きで。
「これから俺は一体どんなとんでもない物を見るんだろう…」というか、怖いだけどその分楽しみ!っていう映画を初めて見た時の子どもみたいな気持ちに戻る序盤数分だったんですよ。物語の進行上においては、「馬車で移動してる」ていうだけなんですけど、この序盤があるから、これから向かう事になる山小屋がパッとスクリーンに映るだけでとんでもなくゾクゾクするし、「何も起きてない」っていうのを強烈な演出にまで昇華させてしまってるこの序盤数分が、この映画のテンションを最後まで高く引っ張っていってくれてると思います。


あまりネタバレしない様に書きたいんですけど、宣伝で「タランティーノ初のミステリー!」みたいな文句がありますけど、コレ全然ミステリーじゃないんですよ。フィルモグラフィー的にいえば初監督作品の「レザボア・ドッグス」が近いと思うんですけど、レザボアがミステリかって聞かれたら全然そんな要素無い訳じゃないですか。単純に「バイオレンス」と「みんな早口で字幕に追いつけない」と「タランティーノっていうジャンルで見た方が腑に落ちるかとは思います。自分の正義に最後の最後まで忠実だった人間が、死ぬ間際にちょっとしたご褒美を貰えたっていう、メチャメチャ後味の悪くてバカな映画っていえば映画なんですけど
何か深淵なテーマがありそうでそんなに無いっていうのもいつも通りのタランティーノではあるんですけど(そんなの狙ってもないんでしょうけど)一見バカがバカ乗されて計算結果とんでもない数のバカになった!っていう話のツイストに次ぐツイストの果てに、ああいう本当にささやかなご褒美で満面の笑みを浮かべるサミュエルを見ると、何故か「俺はいい映画を見ている」って心から信じられるんですよね。

 

 

 

9位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー

ポスター画像

 

面白かったっすね~~。この前WOWOWで「モンスターズ」見たばっかりだったんですけど、この後にゴジラ撮ってスターウォーズ撮ってますからね。ギャレス・エドワーズ高橋由伸みたいな出世街道ですよね。
欠点の全くない完璧な映画っていう訳ではないんですよ。登場人物一人一人の掘り下げも薄かったりするし、彼らがチームとなっていく共通の体験とかも特にないまま、最終決戦まで行ったりするんで。事態が特に動かないまま同じ所を行ったりきたりしていて、なんか重たいテンポで序盤は進むんですけど。


ただやっぱりこの映画の醍醐味っていったら、終盤の最終決戦シーンからラストシーンまでの熱さですよ。最終決戦っていうか本筋はまだ始まってもないんですけど。
とにかくもう泥臭いんですよね。一人一人が死力を振り絞って、それぞれは小さな力だけどその小さな力が受け継がれて受け継がれていった先に大きな勝利があるはずだ!っていうのを、台詞だけでなくて、彼らの命の灯火その物が「受け継がれていく」っていうのを体現していくんです。スター・ウォーズって、アナキンの話であり、ルークの話な訳じゃないですか。そういうヒーローたちの物語においては語られる事の無い、「持たざる者」たちの戦いって、つまり俺の事ですからね。ドニー・イェンも俺だったんですね。実はね。
序盤はあんまり…って書いたんですけど、好きなシーンはいっぱいあるんですよ。主人公が幼少期の頃に、家にやってきたクレニックとストームトルーパーが横一列になって家囲むシーンとか、「ああ…」って感じですよね。とんでもない2時間が始まるぞ…みたいな。あと俺ことドニー・イェンね。最高。シネマハスラー宇多丸が「あんな強いジェダイはいねえ」って言ってたのには笑っちゃいましたけど。

 

 

 

8位 シン・ゴジラ

ポスター画像

 

まさかこんな面白い映画になるなんてって感じですよね。多分特報が出た時点でこの映画を信じてた人間って日本で15人くらいしかいなかったんじゃないかと思うんですけど。
東京の破壊シーンとか、会議シーンの気持ちいいテンポの良さとか、見所が沢山ある映画でした。個人的に好きなのがゴジラの東京破壊シーン後の「日本の意地見せたるわ!!」の流れなんですけど、あそこから一気に「こうでありたい俺たち」みたいな感じになっていくじゃないか。2部構成の後半って言ってもいいと思うし、コピーの「現実対虚構」っていうのもここの構成の事を指しているんでしょうけど。

 


前半部分は3・11のオマージュが凄く多くて、ゴジラっていう存在自体が理不尽な災害そのものであって。俺たちが暮らす現実っていうのは、ゴジラが破壊の限りを尽くして後に眠り着いたあの瞬間で立ち止まっている訳じゃないですか。そこから、せめてフィクションの中だけでもその理不尽さに打ち勝とうとするし、そしてその理不尽さに実際に勝利してみせるっていう流れになっていくんですよね。トラウマに虚構の中だけでも完勝するっていう。3・11を体験した日本人でしか作り得ない作品になっていて、「怪獣映画」の枠の向こう側を見た様なそんな作品だったと思います。怖いし、でもしっかり娯楽作品としてエンタメしてるし。

 

 

 

7位 ヒメアノ~ル

「ヒメアノール 映画」の画像検索結果

 

非常にキツい(良い意味でですけど)映画でした。
何と言っても森田役の森田剛が凄まじかった。段々と日常がこの森田に侵食されていく様子が本当にイヤでショッキングで、ちょっと長い間引きずってしまいました。結構バイオレンス色強めなサスペンス映画に分類されると思うんですけど、学生時代に裏切ってしまったり、疎遠になってしまった友達を連想させる映画なんですよ、コレ。


例えば、一体俺は学生時代に何人のクラスメイトとすれ違って傷付けてここまで大人になってしまったのだろうか、なんて事を考えれば、多分途方もない数の人間たちが浮かんでは消えていくんですけど。
でもそれは俺がマジでクズな人間なんじゃないかっていうのっは置いておいて、「学生時代の忘れたい思い出と罪悪感」なんて誰しもが持ってる訳じゃないですか。でも、数十人数百人の不特定多数の人間と、何千時間も「学校」っていう同じ空間で過ごしてきた事を考えれば、それって凄く普遍的な罪の意識だとも思うんですよ。「あの時こうしていれば、ああしていれば」なんて子供だった頃から皆が感じていたと思うし、ずっとずっと後悔してたんだと思うんですよ、今も昔も。


俺が過ごしたあの3年A組の教室の中にも、森田が生まれていたかもしれない。場当たり的に何の感情も無く淡々と殺人が犯せる森田の様な人間が生まれる土壌で、俺は育って、それで大人になっていったのかもしれないと考えると、本当にゾッとするんです。サスペンス映画なんですけど、後味が本当に悲しくて、10代の自分について、学校っていう空間について考えさせられて。こういう視点があったか!っていう、一括りに残酷映画とは言えない凄みのある1本でした。
映画本編については、序盤とそれ以降のメリハリの効きがマジで凄まじいですね。濱田岳ムロツヨシを中心としたコメディタッチで中盤辺りまでは進むんですけど、このコメディタッチの柔らかい展開の中でも、やっぱり明らかに異質な存在として出てくる森田剛の「コイツ、マジで関わらない方がいい」っていうイヤな感じが緊張感を保たせてて見応えがありました。
こういうヤツ、高校にいましたもん。話が通じないっていうか、もう人の話を言語として認識してないし、する気もない感じ。それ以降のバイオレンス描写も、なんというか、俺の部屋の隣で起きてそうな感じっていうか、俺の日常の延長線上に殺人がありそうな感じっていうか。撮り方がマジで嫌な感じなんですよね…。イヤ、最高なんですけど。

 

 

6位 COP CAR コップ・カー

ポスター画像

 

ケビン・ベーコン最高ですよねマジで。死体を引きづるベーコン、呆然と佇むベーコン、物に当たるベーコン、色んな角度から色んなベーコンが楽しめるってだけで大変価値のある映画です。


見る前のイメージとは全然違った映画でもありました。ジュブナイルなんですよ。この映画。「スタンド・バイ・ミーって映画ありましたけど、アレって子供たちが「死」その物を至近距離で見てしまったが故に、生にはいつか終わりが必ずやってくるっていう事を頭ではなく心で理解してしまった事で大人に成らざるを得なくなった、っていうジュブナイルであり結構悲しくて辛い話って思ったんですけど、それに近い物をこの作品では感じました。


「コップ・カー」、つまりパトカーですよね。その正しさの象徴を劇中で追うのは、自身の「正しくなさ」なんて全く信じてもいない人間で、相対するのは自身の「正しさ」が何なのかもまだ理解していない人間で。
またこの正しくない人間が世間的には上手い事やってて、良き人間として過ごしてるっていう描写が嫌な所なんですけど。
俺たちが信じてきた「正しさ」を簡単に揺るがせてしまう日々が、また俺たちの生活のすぐ近くにあるのかも…っていう怖さを、凄く端的に描写しながらも、それをジュブナイルと絡ませていて、今まで見た事がない映画を作ってしまってるんですよ。
そして死や痛みを覚えて子どもたちは行って帰ってきた」っていう爽やかウィゴ映画ではあるんだけど、多分こいつら生涯に渡ってケビン・ベーコンのどうかしてる表情がメチャメチャちらつく」っていう。リドリー・スコットの「悪の法則」っていう映画がありましたけど、少しそこにスタンド・バイミーのエッセンスを注入した感じというか。


自分がどういう風にスクリーンに映っているのか、それを完全に理解しながら、作り手としてこういう今までにあまり無かった物を作っていくっていう映画人として凄く優れてる人間なんだなあ…と改めて思いました。ケビン・ベーコン
この世の理不尽さをその出で立ちだけで描写してしまってるんで、このベーコンが。この男が。この映画のラストシーンも凄く好きなんですよ。真っ暗闇の中を朧げだけども何とかライトを照らしながら…。マジで好き。ベーコンに理不尽な事されてベーコンが理不尽な目に合う新作が毎年見たい。

 

 

 

5位 太陽

ポスター画像

 

入江悠監督の最新作ですね。
邦画で近未来SFって、まあ安藤ロイドくらいしか思い浮かばないし上手く行くようなイメージが全く無かったんですけど、こういう撮り方があるのか…と、すごく感心しました。
「かつては存在していたが今や廃れてしまった風習」を描く事で、逆に未来感の演出として機能させているんですよね。街ではなく「集落」と化してしまった人間の暮らす地域に、ほんのちょっとした近未来的なガジェットであったり、文化的な違和感を抱かせるキャラクターを配置するというだけで、とにかく今では無い「いつか」の演出になっていたりして。スパイク・ジョーンズの「her 世界でひとつの彼女」っていう大好きな映画があるんですけど、ちょっとそれを連想しました。ちょっとしたアイテムで「今でなさ」の演出をバッチリ決めちゃってる感じというか。


個人的にはこの映画は「肉体と精神、どちらが人間が人間である為に必要な器官であるのか」っていう所の話だと思っていて。人間が人間である以上、この肉体と精神っていう檻の中から人間はいつまで経っても出る事が出来ない訳じゃないですか、当たり前の事言ってますけど。
肉体と精神の檻の中にいる以上、人間である事は証明できるが、人間でいる事のまず大前提として、最後には「死」は待っているし、そこまでにはいくつもの「理不尽な不幸」は必ず存在していて。ただ、それでも何とかして生きていかなければならない、この肉体と精神の檻の中にいる限りは永遠に耐えていかなければならない、っていう大変辛い物語でもあるんですけれど。この「太陽」っていう作品は。


ただ、そんな中で「誰かを守りたい気持ち」であるとか「誰かを心の底から愛する気持ち」とか、そういう凄く単純で真っ当な誰かへの愛情みたいな物が、貴重で、尊くて、本当に儚くて小さい小さい今にも消えてしまいそうな灯りだけれども、それでもこの灯りを頼りに生きて行くしかないじゃんか…っていう凄く弱くて強い希望の話にもなっていると思うんですよね
この映画のラストシーンが本当に好きなんです。「太陽」っていう物に永遠に縛られながら、今にも終わりを迎えそうな旅路の中でも、ここではない何処かへ行きたい、いや、行かなければならないんだ今すぐにっていう、凄く爽やかなラストショットがずっと心の中に残っています。「SRサイタマノラッパー」も好きですけど、こっちもメチャメチャ好きです。

 

 

 

 

4位 永い言い訳

ポスター画像

 

辛みと笑みの豪華2本立てみたいな感じでした。
本編はかなり重いテーマから始まるんですけど、主人公がとにかくクズなんですよね。主人公は小説家で、本業は落ち目な感じなんですけど、テレビにはそこそこ出てるみたいで。物語は奥さんが不慮の事故で亡くなる所から始まるんですが、コイツ奥さんが亡くなった時は別の女と自宅で寝てたっていうだけでもアレなんですけど、奥さんの葬式でテレビカメラの前で嘘泣きしつつ、車の中では即鏡で自分の髪型気にして、それから「自分の名前 可哀想」とかでグーグル検索してる描写が入ったりして。思い付く限りの「人間が取れるクズ行動」が山盛りなんですよ、マジで。


セリフも心にグサッと来るのが多くて。
主人公は奥さんを亡くした時に初めて「俺ってもしかして誰も愛せない人間なんじゃねえの?」って自覚するんです。で、奥さんはどうやら地元の友達と旅行の道中にバスの事故で亡くなった、と。まあなんやかんやあって、そのお友達には遺された旦那さんと子供がいて、旦那さんはトラックの運転手やってるから子供の面倒がなかなか見れない。そこで主人公は変わりに子供の面倒を見てあげるって事になるんです。
台詞には無いんですけど、明らかに主人公は子供の面倒を見るっていう事で、自分の中に今まで無かった「愛情」を見出そうとするんですね。しかもそれは他人の子供を使って。「ありがとう!」「マジで良いヤツだよ!」なんて旦那さんにベタ褒めされて「そう?」「困った時はお互い様だよ?」なんてツーブロックの本木雅弘が得意気になって言うんですよ。なんかお前よく分かんねえけどどうしようもねえクズだな!ってなるんですけど、後にこの人がマネージャーに浴びせられる言葉が本当に辛辣で。

 


「どんなに人間のクズみたいなヤツでも子どもを作ると、それを忘れさせてくれるし、それを分からなくさせてくれるし、最高の逃避ですよね。逃げる事は悪い事じゃないですよ」みたいな事を言うんですよ。お前、そんな事を例え思っても言うなよ!っていうか言語化すんじゃねえよ!ってもう映画館で笑いそうになっちゃったんですよね。
なんで俺からすごく遠い位置にあるこの映画がこんなにも面白く感じたのか、また俺の話になるんですけど、俺に子どもなんていないし、結婚なんか多分しないで死ぬんだろうなっていう予感だけはメチャメチャあるんです。20代後半にもなって人を心から愛した事が無いんです、多分。アトリエかぐやと裸足少女があればもういいや、っていう感じで。

そういう、自分の中にある「愛情」の存在すら自分で疑ってかかってるような人間にとって、自分の分身である「子ども」っていう存在ならば、どこからともなく「愛情」っていうヤツが、空から美少女が降ってきた!的なイメージでやってくるかもしれないじゃないですか。そこをさ、俺の唯一の拠り所を「無条件の愛情があるから自分のどうしようもなさを見ないで済む」なんて説明されたら、俺もう膝とか曲げられそうにないんですけど。もう生きていけないでしょ。無理だよ無理。本木雅弘偉いよ。あんな事、年下の男に言われても膝曲げて自転車漕いでんだから。歩行補助車でも俺無理だよ。


「愛情って何処からやってきて、どうやって見つければいいんだ?」っていう映画だと思うんです。ある日突然自分の中に芽生える物なのか、自分の心の中で少しずつ育てていく物なのか。
主人公は妻っていう存在を喪失して初めて、自分の心には欠落があるっていう事を知るんです。その欠落はどうすれば塞がるのか全く検討も付かないまま、なんとか他人の子どもで埋め合わせしようとする姿が可哀想ではあるんだけど、可愛らしいみたいな部分もあって。主人公は結婚もしてて不倫もしてて、っていう俺自身とは凄く遠い位置にいる人間のはずなのに、凄く身近に感じてしまう部分が多々あって。「失う」っていう事を通してでないと愛情って分からなかったり、忘れてしまったりっていう事だと思うんですよ。
あらすじだけ読むと、正直物語にどれだけ乗っていけるか不安だったんです。前評判も良かっただけに。だけど、この映画は愛情だとか自身の才能だとか、そういう「今までの人生で積み上げてきた物を取り戻す話」では無かったように思えるんです。逆に自分の中の喪失とか欠落に自覚を持って、そしてもう取り戻せない物がある事を知って、人生の中で愛情を実感できる回数には必ず限りがある事を知る映画だったっていうか。自分の中の欠落した部分をちゃんと見ようとするっていう、凄く普遍的で、特に俺みたいな貯金8万の人間にはメチャメチャ刺さる話だったんですよね。

 

 

 

3位 この世界の片隅に

ポスター画像

 

最高アンド最高。もう最高以外の最高が無い。
スクリーンの向こう側にね、生活があるんですよ。生きている人たちがいて、暮らしがあって、感情があって。っていうか俺が見てたのはスクリーンでは無かった気がします。なんか特殊な、4次元的なアレです。
良い映画って、映画館に入った時と出てきた時で今まで見ていた景色を全く別物にさせてくれるじゃないですか。俺の好きな映画って今パッと思い浮かぶのは「グラン・トリノと「ダークナイト」なんですけど、この2本を見終わった時も映画終わって街に出ると、世界が全然変わってしまった気がして。この世界には星の数ほどに「理不尽な悪」っていうのは人間が生きる限り絶対に存在するって映画じゃないですか。2本とも。
今この瞬間にもこの世界のどこかには、その悪に屈しようとしてる人間もいるけれども、自分が出来る事なんてごくごく限られてはいるけれども、それでも自分が信じる正義を糧にしてこの世界を生きていくしかないし、そうやって必死に抗ってるアンタの姿はこの世で一番美しくて尊いんだよ!っていうのをガツンと見せられて。もう俺は見終わった時にグラッグラ来てたんですけど。今作「この世界の片隅に」を見た時も、それと同じくらいの衝撃があって。


好きなシーンは山程あるんですけど。この映画も。
序盤から中盤にかけて日常描写の積み重ねを沢山見せているから、いよいよ戦火が広島にも、っていう下りがよりショッキングに感じてしまったりとか。
ほのぼのとした日々の中でも、俺たち現代人にしてみればいつ何が起きるかを知っているから、「◯◯年、◯月」っていう字幕表記1個で緊張感が序盤からずっとキープされてたりとか。
一見4コマ漫画の登場人物みたいな、デフォルメされたデザインに見えるんですけど、肌や髪の質感が凄くリアルだからメチャメチャ色気がある様に見えたりとか。
能年玲奈マジで最高だとか。「ここ教科書で見たぞ!っていうか教科書で見た景色がアニメーションになってるぞ!!」とか。
空襲警報が日常的に鳴る様になってから、すずの指差し点検が見るからに早くなっていく描写とか。
あるシーンで、すずが空に絵の具を頭の中で散らして「ああ…今、この景色を書けたならな…」って呆然と空中を見やる所とか。
アニメでしか出来ない描写が山ほどあったんですよね。


終盤の終盤に戦争が終わって、呉の街に少しずつ少しずつ明かりが再び灯されていくっていう描写があるんですけど、そこが俺一番好きで。主人公のすずは、もうそれは壮絶な体験をしてきた訳じゃないですか。家族も亡くなった、自身の生きがいも無くした。好きだった幼馴染に会う事ももうきっと無い。
でも、その民家に灯されていく明かりを見た時にハッと気付いたのが、「この灯一つ一つの下全部に、人は確かに生きていたんだよな」っていう事で。勿論コレは映画だから、浦野すずっていう主人公がいて、彼女とその家族が生きてきた日々を観客は追体験する訳なんですけど、彼女たち家族だけが特別に壮絶だったっていう事ではなかったはずなんですよ。
この灯りの下にも別の家族があって、戦争を体験していて、生活はメチャメチャに振り回されてっていうのが、無数に存在していた訳じゃないですか。だからその瞬間に、この映画は浦野すずっていう主人公がいる映画ではあるけれど、本質的には全ての灯りの下にいた家族の話だったと思うんですよね
こういうドラマが全ての家族の下に、無数に存在していたんだろうと考えると、もうね、俺は死んじゃうんだよな。果てしなさもあるし、人間の強さも感じるし、あの時統計取ってたらいくつの理不尽な悲劇があったんだって考えたりすると、もう俺は遠くに行ってしまう。果てしない。この映画は果てしない。

 

 

 

2位 オデッセイ

ポスター画像

 

イヤもう最高ですよ。コレ。もう最高以外の言葉が無い。最高ばっかり言ってますけど、この辺。でももうマジで最高。


もうね、底抜けに人間賛歌なんですよ、この映画。火星に一人取り残された主人公がそれでも何とか生き抜く為に知恵を振り絞る!っていうのが本筋なんですけど、俺が胸を打たれたのが「一人一人が出来る事をしっかりやる」っていう、凄く当たり前の事なんです。
主人公の身に降りかかるのは、本当にキツくていつ心が折れてもおかしくないって感じなんですけど、そういう時に彼が心の拠り所にするのは、あくまでそれまで自分自身が暮らしの中で積み上げて来た知識であったり、ユーモアであったりっていう、俺たちの生活の中にでもそこら辺に落ちてる様な物なんですよ。神や奇跡っていうあやふやな存在ではなく、人間自身が持ちうる力だけで苦難を乗り切っていくっていうその過程がたまらなく好きだったりするんですけど、それより何よりこの映画では、主人公が火星で生活する描写と並行して、地球で主人公を救う為に日夜開発を続けている職員の姿を見せていくんですね。


俺は個人的にはこういう描写を地球と火星とで並行に見せていく過程こそがこの映画の肝だと思っていて、つまり「今日出来る事をそれぞれが一生懸命やる」っていう当たり前の事を当たり前にやって事の偉大さがここにあるんだと思うんですよ。
残業で日中働き詰めだったり、一見何に繋がっているのか分からない作業でもあっても、それが積み重なって積み重なって、いつかは宇宙をも超えて火星にいる人間と確実に繋がっていくんだっていう所が、人間ひとりの小ささ非力さを、貶める事は決してしないし、人間ひとりの小ささ非力さを、神の存在をも超えた物として力強く描いてるのが本当にたまらなく好きなんです。ラストのあの生徒が一斉に手を挙げるあのシーンとかメチャメチャ感動して。一人ひとりの力はこうやって受け継がれ、人間にしか持ち得ない力として、また継承されていくんだなあ…っていう、最高のシーンだったと思います。正直、この作品を映画館で見た直後は「今年の1位出たな…」っていう感じでした。

 

 以前のレビューです。一応参考までに。

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

 

1位 何者

ポスター画像

 

もう文句なしの1位だと思います。
ちょっと前に詳しい感想は別に記事にして書かせてもらったんですけど、やっぱり未だに印象的なシーンはふとした時に思い返してしまいますね。
SNSが凄く重要なファクターになっている作品です。
また自分の話になってしまうんですけど、俺にとってSNSっていうのは心の拠り所でもあるし、人生の汚点でもあるし、でももう無くてはならない物になってしまっていて。それは良い意味でも悪い意味でもあるんですけど。
己の中にある嫌な部分を隠すんじゃなくて、吐き出せる場所があったって気付いてしまったら、もうそこから抜け出す事は簡単な事ではなくて。だから主人公のあの行動は自分の事の様にわかるし、同時にそういう嫌な自分の視線みたいな物って自分にも向けられる物だから、もうぜ全然身動き取れなくなってしまうのもメチャメチャ分かるんですよ。多分主人公が演劇から離れてしまったのも、自分が自分に向ける目線に耐えられなくなったからだと思ってるんですけど。


だから、自分で自分をずっと縛りつけている主人公に、終盤の有村架純が「演劇、面白かったよ」ってやっと言ってくれるじゃないですか。あの瞬間に彼を縛ってた視線は若干和らいだんじゃないかと思っていて。何千何万っていう言葉を使って自分を縛り付けて、それで自分を守ってきた言葉より、たった数文字の台詞だけで彼の心は少し解放されたんだなと考えると、自分の事の様に涙がボロッボロ流れてしまったんですよね。
やっぱり俺がこの映画好きなのは、凄く厳しくて辛い自意識についての話なのに、その目線がメチャメチャ優しい所なんですよ。主人公はSNSに書いてきた文字ではなく、凄く凄く遠回りしたけれど、やっと自分の言葉で自分の人生を語り初めて、自分の言葉で生き始めるんだろうなっていう。それも「語る」じゃなくて「語り始める」っていう所が本当に涙が出るくらい優しくて。スタートラインに立つ覚悟を決める人間の話にしているのが、本当に大好きです。もう生涯オールベストとか選ぶんなら絶対入れる作品になったと思います。もう俺の一部です。この映画は。

 

 

こっちでも感想書いてます。

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

 

という事で2016年の年間俺大好き映画第1位は「何者」でした。山田孝之になりたい。

今年は邦画に面白い物が多くて、豊作だったと思います。特にやっぱりサスペンス、暴力映画がメチャメチャ良かったですね。「ヒメアノ~ル」も「ケンとカズ」も。「クリーピー 偽りの隣人」や「ディストラクション・ベイビーズ」とかも凄く良かったんですけど、見たのが今年入ってからだったので。っていうかベスト10とか20とか言ってますけど、全部1位なんですよ。本当は。全部最高。

では、上位20本の順位だけ改めて書かさせてもらって、2016年の映画感想記事は終わりとさせていただきます。終わりとさせていただきますって、2016年はとっくの昔に終わってるんですけどね。タハハ。はい。もう二度とやらねえ。

 

優勝   何者
2位   オデッセイ
3位   この世界の片隅に
4位   永い言い訳
5位   太陽
6位 COP CAR コップ・カー
7位 ヒメアノ~ル
8位 シン・ゴジラ
9位 ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー
10位 ヘイトフル・エイト
11位 シング・ストリート 未来へのうた
12位 ケンとカズ
13位 ハドソン川の奇跡
14位 ズートピア
15位 映画 聲の形
16位 ちはやふる 上の句、下の句
17位 ルーム
18位 デッドプール
19位 SPY/スパイ
20位 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ

 

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

 

 

 

2016年新作映画ベスト50プラスワースト1 ②

本当にバカなんじゃないの…っていうくらいクソ遅いんですけど、去年見た新作映画のレビュー記事の第2回目です。

前回は48位から31位っていう「ゴミって訳じゃないけどもう見たくないヤツ」が半分くらい占めてる読む方も書く方も何のための文字列なのかよく分からない地獄みたいな第1回だった訳ですけど。

askicks1248.hatenablog.com

今回は30位から11位までを供養させてもらう感じです。公開から結構時間経って、レンタルでも相当借り易くなってる作品が結構あると思うので、何かの参考になれば幸いです。家にパソコンが無いんで累計でネットカフェに1万円くらい払ってコレ書いてますからね俺。広辞苑やっと買えた黒人みたいな怪しい文字列を積み重ねて。

 

では30位から。

 

 

30位 スティーブ・ジョブズ

ポスター画像

 

スティーブ・ジョブズの伝記的映画であれば2013年のアシュトン・カッチャーが主演した作品の方がそういうテイストが強いんだと思うんですけど、よりエンタメしてるこちらの方が個人的には好きですね。今作は構成部分で「忠実に見せる」という作劇方法を選ばなかった分、スティーブ・ジョブズという人間の業績を追いつつも、そこをエンタメとして昇華していて、脚本の巧みさが印象に残りました。

 

 

時代を経ながら、3つの新商品プレゼンの寸前40分を並べた構成に最初は驚いたんですけど、今となってはアップルという会社そのものであったり、共に働いていた同僚たちであったり、彼が生きていた時代と彼との関わり合いを表していくにはこれ以外の方法は考えられなかった気がします。1幕目、2幕目序盤での登場人物たちの一挙手一投足が後々の幕目で彼らの心の移ろいを表す伏線にもなっていて、凄く映画を見ている〜俺〜っていう感じだったんですよね。

もう人生を一度やり直すチャンス、成長するチャンスは、人が生きている限りきっとある、というラストの締め方も胸を打ちました。ダニー・ボイル作品は個人的には「127時間」が好きだったんですけど、ブッチ切りで今作かな、と思える程に傑作でした。

 

 

 

29位 スポットライト 世紀のスクープ

ポスター画像

 

神父による児童への性的虐待と、その事実を把握していながらも隠蔽を繰り返してきたカトリック協会のスキャンダルに新聞記者たちが挑む、っていう社会派サスペンスっていうんですか。そういうジャンルの映画でした。

 


日本の山奥に住むオタクには遠すぎる話の様に様に思えるあらすじなんですが、段々と物語が進む内に虐待被害者たちの取材を見せてから、「もしかしたら主人公たちの幼少期でもこうなる可能性は多いにあったのかも…」と匂わせる演出が中盤にあるんです。コレで一気に、実はこの物語は俺の人生の中にも、もしかしたら「運がよかった」っていうただ一点で回避出来ただけで、もしかしたらあの角を曲がらなかったら、人生に深い影を落とす様な出来事があったのかもしれない、っていう凄く普遍的な「理不尽で一方的な悪」を描いていた事に気付いて、山奥に住んでる俺にも物語が一気に身近な物に感じられました。


少しずつ、少しずつカトリック協会の闇が暴かれていくっていう描写になっていくんですけど、それを明らかにしていく手段が「とにかく足を使う」っていう、本当にそれだけなんですよ。
色んな所に行って、色んな人と会って、話を聞いて、会議して、また色んな所に行って、色んな人と会って、会議して…っていう地味な作業の繰り返しての果てに、何かとんでもない所に、いつの間にか足を踏み入れつつあったっていう見せ方が本当に上手だし、丁寧に話が進んでいく分この事件の恐ろしさも存分に味わう事が出来て。
物語の着地が「コレで全て解決」という所ではなく、あくまで問題提起に一つに落ち着かせている所にも、すごく好感が持てました。この事件は本当にあった事で、今も世界のどこかで行われている事件なのかもしれなくて、ノンフィクションとして凄く真っ当な在り方である映画だと思います。

 
 
 

28位  アイアムアヒーロー

ポスター画像

 

ゾンビ映画ってほぼほぼ見た事が無かったんですけど、邦画でここまでゴア描写がキツいアクションエンタメが出来るんだ!って凄く嬉しくなった1本でした。
普通に怖いんですよ。序盤から中盤にかけてまでの日常が少しずつ壊れていく描写が本当に嫌で。大泉洋が彼女の部屋を再び訪れる下りとか、仕事場の玄関から居間の突き当たりまでを主人公の視線を追う形でゆっくりゆっくり見せていくシーンとか、マジで怖かった。


街がゾンビに溢れていくまでの過程を追った前半と、主人公がある地点まで辿りつくまでの後半とで2部構成になっている映画なんですけど、前半終わりと後半終わりとで邦画では見た事が無い絵作りをしていて、クライマックスが複数ある感じなんですよね。
個人的に好きだったのは、やっぱり前半のクライマックスなんですけど。
主人公の生活圏内にドンドン異変が起きてきて、逃げて逃げて逃げた矢先にパッと周りを見たら、もうなんか世界の終わりっぽかった…っていうヤツで。狭い路地の中でカットを切らずにリアルタイムでドンドン人が食われていく描写が入りながら、やっとの事で大きな通りに出れた!と思ったら後ろから更に大物がドン!!みたいな。


多分どこかで編集してるんだと思うんですけど、何が起きてるのか理解できずに呆然と立ちつくしてて食われる人間、家からやっと逃げられた!と思った矢先に扉から出てきた家族に追いつかれて食われる人間、警官に助けを求めに行ったら警官に食われる人間、ゾンビから夢中で逃げていたらトラックに轢かれて死ぬ人間、そういう有象無象の死を主人公のすぐ近くでシームレスにドンドン見せていくんでんです。
前半の違和感が少しずつ少しずつ積み重なって、表面張力ギリギリになった所で、こういう「あと20回見てえ!」みたいな地獄絵図があると、映画としてメチャメチャ引き締まって見えるんですよね。もう2度と見たくないけどもっと見てえ!みたいな。「シン・ゴジラ」の東京破壊シーンもそんな所ありましたけど。もっとミクロの地獄絵図がここにはありました。

 

 

27位 劇場版 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ

ポスター画像

 

2期も終わってもう1ヶ月って感じですね。
アニメシリーズ1期を2時間の劇場版として纏めた、所謂総集編っぽいヤツです。
ただ、アニメシリーズでは吹奏楽部の群像劇っぽい所があったと思うんですが、劇場版では久美子と麗奈の関係性の始まりと構築っていう点を中心にしているので、アニメシリーズを鑑賞済みでもまた違った解釈で楽しめる様になっています。
なんなんですかね、アレ。もう何回も見ているのに橋の上での久美子の「もっとうまくなりたーーーい!!」で涙腺が死んじゃうヤツ。あー叫ぶ叫ぶ、ここで叫ぶ、来るよー…でも泣いちゃうヤツ。こんな感じで死を迎えるとしたらメチャメチャ嫌なヤツですね。あー死ぬ死ぬ、俺ここで死ぬ、あー来るよ、3、2、1…で死ぬヤツ。
ただやっぱり総集編なんで、場面転換での説明としてのナレーションや説明台詞が多めだったりするんですが、最大瞬間風速だけでいえば洋画邦画問わずに今年の映画の中でも相当面白かった1本だったと思います。

 

 

26位 ブリッジ・オブ・スパイ

ポスター画像

 

スピルバーグの最新作です。
公開が去年の1月だったって事もあって、どうしても最近見た映画の方が印象が強くなりがちなんで順位もこんな感じになってしまったんですが、やっぱり傑作だったと思います。スピルバーグ×コーエン兄弟って盤石すぎる布陣ですよね。カカ、セードルフガットゥーゾピルロのダイヤモンド型のミラン全盛期時の中盤編成みたいなね。伝わってますかコレ?


地味な映画だし、アクションも殆ど無いはずなんですけど、最高にハラハラして最後はスカッとして、良い映画見た~楽しかった~って清々しい気分で映画館出ていける様な、そんな映画でした。シリアスな話なんですけど、やっぱりコーエン兄弟だけあって所々笑ってしまう様なシーンもしっかりあって。「ココのコイツの顔見たいな~リアクション見たいな~」っていう所は絶対ちゃんと見せてくれたりしてて、コーエン好き…って再度確認しました。

 


後はやっぱり「ざまあみろ!!」感が良いんですよね、この映画。序盤でトム・ハンクスが電車内でロシアスパイの担当弁護士だったって事で、明からさまに乗客から侮蔑の視線を向けられるんですけど、終盤に同じ様な構図、同じ様なシチュエーションで、今度は180度違う態度を周囲の人間にされる感じとか。ありがちなんだけれど、こういうの1個あるだけで映画を見てる感じがしてくるというか。
もう少し詳しいレビューは以前書いているので気になる人はそっちも見てもらいたいんですけど、とにかく満足度の高い1本であった事は間違いないです。1月公開だともうレンタルショップでも旧作落ちしてると思うんで、迷ったら是非。

 

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

25位 君の名は。

ポスター画像

 

新開誠のベストアルバムみたいな映画でしたね。
イヤ、でももう良くないですか?この映画。もう何か皆見てるし、Twitterで感想書いて4Pの漫画書いてるし、俺の感想なんかいらないでしょ?この順位なのって今年はアニメ映画で面白かったのが結構あったんでっていうのもあるんですけど、友達が沢山いる映画っていうのもあるし。俺が言わなくても…みたいな所もちょっとあって。凄い好きですけどね。

 

 

24位 レヴェナント 蘇えりし者

ポスター画像

 

去年のアカデミー賞受賞作ですね。「タイタニックがディカプリオの助演男優賞だけノミネートも無かったっていう因縁がありましたから、本人にとっては十数年ぶりに借りを返したみたいな感じなんですかね。


色んな風に読み取れる作品だと思うんですけど、個人的には「水」とか「循環」が凄く印象的に感じた映画でした。最初のカットそのものが流れ行く水だったと思うんですけど、水って延々と循環していく物じゃないですか。川から流れ、海まで辿り着いて、また雲となって川から流れるっていう。この作品では多くの死者が出るし、多くの殺人が行われるんですけど、生まれ、育ち、死に絶え、そしてまた地に帰っていくっていう大きな大きな循環の中には人間ももちろん含まれていて、その循環の中には人間の善悪は全く関係なく、平等に降り注いでいくっていう残酷だけど真っ当なルールがあって

 


思えば前作の「バードマン」も、メチャメチャ特殊な映画で、見た人によって受け取り方が全然違う作品だったと思うんですけど、「表現をする者と表現を受け取る者のズレ」っていう、人間には絶対に抗えない事象についての話なのかなと個人的には思っているんですよ。それを考えれば現代劇と伝記映画っていう前作と今作で全く異なる舞台においても、描いてる事には一貫性を感じるんです。しかもそれについて「諦め」を描く事は絶対にしないっていうのが、俺が「バードマン」も今作も好きになった理由でもあるんですけど。156分っていう長さも「いつの間にか遠い所まで来たんだな…」みたいな果てしなさがあったし、必要な長さだったのかなとも思うんですよね。

 

 

23位 サウルの息子

ポスター画像

 

 

ホロコースト物です。
ユダヤ人の大虐殺が行われていた戦時中に、主人公はホロコーストガス室で「ゾンダーコマンド」と呼ばれるガス室の掃除人として働かされています。機密を漏洩させない為、主人公もいつかは殺される運命にあるんですが、ある日死体の中に自分の息子を見つけ、せめて神父を呼んで正式に埋葬させてやりたいっていう事で、敷地内を右往左往するというのが本筋なんですがとにかく映る情景がことごとく地獄なんです。地獄巡り体感型POV映画って感じなんですが。


撮り方が凄く独特な作品でもあるんです。カメラが主人公の後ろ側に回って肩越しに対象物を見せていく、という撮り方だけでほぼ見せていくんです。主人公の身から近い物に関しては何とか画面に映るんですが、少しでも遠い所にある対象物に関してはピントを合わせないし、俯瞰する様なショットもほぼ無い。視野を狭めるという事で、物語への没入感、緊張感の持続、見ようとする観客たちの想像力を刺激したりっていう狙いがあると思うんですけど、それ以上に「主人公が意識から外していて、もう見ようともしていない物」という演出にもなってるんです。


足元には大量の裸の死体があって、吐瀉物がブチまけられていて、ただ何十人何百人の叫び声だけはどこからか聞こえてきて…っていうのを、他の登場人物の目線で物語を語ったり、フラッシュバック的に回想シーンを入れたりといった「映画的な見せ方」を選択していないという事で、主人公の擦り減ってしまった精神を語らずにして描いてしまってるんですよね。

ボヤけたピントの向こう側でいつ誰がどのタイミングで動くのかとか、何を写して何を写さないべきなのかとか、撮る側のリテラシーの高さが伺えると共に、撮影がマジで神ががってる作品だと思います。

主人公の取る行動が無責任すぎて物語に乗っていけないっていう所もあるんですよ。全編に渡ってあまりに独善的過ぎるし、100パーセントコイツのせいで死人も出てるし。物語で語られてない所で酷い目にあった人もコイツのせいでメチャメチャいると思うんです。ただ、人間としてどうしても守らなければならない一線をその姿から感じるというか「人間辞めたくねえ」みたいなのが切実に伝わってきて、地獄の中に1ミクロンの希望が見えるっていうか。本当に1ミクロンなんですけど。「ハー地獄」っていうため息が2億回出た107分でした。

 

 

22位 葛城事件

ポスター画像

 

気持ち悪い映画なんですよ。登場人物の中に1人も好きになれる人がなくて、救いが無くて、只々最後まで暗い映画なんです。通り魔殺人の犯人家族の話ではあるんですが、明らかに秋葉原の通り魔殺人をモチーフにしてるような所があって。服装とかモロだったし。
家長として一国一城の主でありつづけたいっていう、もう呪いくらいになってる強迫観念に囚われ続けた三浦友和が本当に良くて、「ヘイトフル・エイト」のサミュエル・L・ジャクソンくらいの三浦友和オンザステージ感がありました。

 


こういう「父親というのはかくあるべき」みたいなのの暴走と破滅って、俺はもう自分の父親を連想せざるを得ないんですよ。まあ借金作って母に離婚させられて以来もう10年くらい会ってないっていう、どこにでもある話なんですけど。父は父なりに一家の長として虚勢を張るじゃないですけど、身の丈以上の事をやり切ろうとしていた部分もあったのかなと思う様な年齢に、俺ももうなっていて。

家族がドンドン荒んでいく中で、三浦友和の奥さん役の南果歩に「なんでこんな所まで来ちゃったんだろ」みたいなセリフがあるんですけど、もう他人事とはちっとも思えないんです。いつの間に父は家族っていう入れ物で生活する事を諦めたんだろうとか、なんで俺は無関心を装って見て見ぬフリを続けてきたんだろう家族なのにとか。考えてもどうしようも無い事ばっかりが浮かんでは消えていくんですけど。

 


劇中でも父から一旦逃げて、母が借りたアパートの一室で息子と他愛無い話をしている合間だけは「これから何とか生きていこうね…」みたいな希望の兆しが見えて、文字通り部屋の中に少しずつ少しずつ光が差し込んで来て…っていう中で、部屋を突き止めた父が登場した途端に始まるある演出とか、もうなんか「辞めろ!!!!!」って感じですよ。本当に。メチャメチャ好きな映画だけど、もう2度と見たくないっていうか。
今年の邦画は面白いのが沢山あったんですけど、コレを筆頭に「もう見れない…見たく無い…」っていうテンションになる事がまた多かったですね。嫌な所を抉られて帰るっていう。凄い好きなんですけどね、コレも。絶対見て損は無いんです。

 

 

21位 ロスト・バケーション

ポスター画像

 

美女vsサメって聞くと「アー」って感じのジャンルムービーかと思うんですけど、「どうせサメがドンドン人を食い殺していく中で美女がとんでもない方法でサメを爆裂四散させるんでしょ?」では収まらない魅力ある映画だったと思います。美女がとんでもない方法でサメを爆裂四散させる事はさせるんですけど。


いきなりこの映画ってPOVでサメに喰われていく映像から始まるんですよ。「イントゥ・ザ・ストーム」ってディザスタームービーが最近ありましたけど、ああいう巻き込まれつつある死につつある人間を一人称視点で、しかも「何故この映像は一人称視点で観客たちが見る事が出来るのか」を自然な描写で取り入れるのってもう定番になってますよね。「コイツに食われて死にたくさな」っていうか。「こういう死に方だけは勘弁してほしいよね…」みたいなのが3分くらい続くの本当にキツくて怖くて。
岸は目の前なのに…っていうシチュエーションも歯痒くて凄く良かった。嫌な見せ方をするんですよ、ああもうダメだ…神様!お願い!って視線を遠くに向けても「やっぱり誰もいない」っていう単純な目線の移動にとんでもない絶望感があって。撮り方、特に位置関係の見せ方がメチャメチャ上手かったです。


主演が上手いっていうのも勿論あるんですけど、「今にも満潮で沈みそうな岩の上で知恵を絞る」と「その岩の上からサメと格闘しながら岸へ助けを求めようとする」っていうフェイズの切り替えのテンポが良い事と、フェイズが切り替わる毎に「生き延びる為」っていう目的に直結してる事件がちゃんと毎回発生するんで、物語への興味がずっと続くんですよね。主人公が腕に巻いた時計のデジタル表示で「満潮まであと◯時間」っていう死亡条件をいちいち提示してくるのも、親切設計プラス緊張感っていうか。
この映画って100分も無いんですよ。それが劇中の主人公の命のタイムリミットの短さともリンクしていて、見やすいプラスアルファでその他諸々っていう、上手く設計された1本になってると思います。 単純に「医学の知識のある人間が助けを呼べない状況でサメに負傷させられた時に一体どうするか」っていう所で見たりしても普通に面白かったりするんで。

 

 

20位 シビル・ウォー キャプテン・アメリカ

ポスター画像

 

今のアクション映画の最高峰で最先端を行ってるのがマーベルの新作だと思ってます。しかもそれを毎回毎回更新しちゃってるっていう。
物語はいつもの感じなんですよ。もうお前ら何回自分で自分のケツ拭けなかった話するんだっていう感じで。ここまでずっと足し算足し算でシリーズが続いてるんで、もうそろそろ限界が来てもいい頃だとは思うんですけど、でもやっぱり期待せざるを得ないですよね。「キャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー」くらいから心配してるんですけど、でもマジで何作もこれからの映画史に残るであろうアクションシーン作っちゃってますし。


空港のシーンの一連の流れとか、もう映画館で声を出せない事をこんなに惜しく思った事は無かったですよ。もう本当に楽しくて。あそこだけ応援上映してほしい。「んなバカな!!」って笑いながら生搾りグレープフルーツの飲みたさ。
「正義とは何か」みたいな所に序盤の流れから行くのかな?と思いきや、完全にエンタメに持っていってくれた所とかも凄く好きで。こういう所がDCユニバースとは違う所なんだよなって感じです。

 

 

19位 SPY/スパイ

SPY/スパイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

 

題名通りにスパイ映画なんですけど、主人公が「そこそこ動けるデブのおばさん」っていう、コメディ色かなり強めの映画でした。
主演がメリッサ・マッカーシージュード・ロウ、ジェイソン・ステイサムが脇を固めてるっていう面子的にも相当豪華だったりして、DVDスルーだったのが不思議なくらいでした。


とにかく手数がメチャメチャ多いんですよ。メリッサ・マッカーシーの見てくれからして面白いっていうのはあるんですけど、出てくる度に問題を大きくして帰ってくだけのステイサムの使えなさとか、「えっ、こんな所も弄ってくるの!?」っていうすっごい細かい所の小ネタとか。太ったおばさんに太ったおばさんの変装させる下りとか本当にバカで面白かった。数えてないから分からないですけど体感で1分に1回くらいのペースで笑かしてくるんで、凄く見応えがあるんですよね。


ただ、俺がこの映画好きなのが、そういうコメディシーンのとんでもない手数の多さと並行して、意外にちゃんとスパイ映画してるっていう所なんですよね。序盤のオペレーター目線からエージェントの仕事を見せるっていう演出も結構新鮮で良かったですし、魅力あるキャラクターにコメディさせながら、話がドンドン進んで行くんでそのスピードのまま緊迫感のあるラストまで持っていってくれるんですよね。もう見てる内にキャラクターに愛着が付いてしまって最後の最後まで凄く楽しく見られたし。頑張れ!って言いましたもん俺。見てて。俺が「がんばえー!!」って叫ぶのはプリキュアでなくて太ったおばさんにだったんだね…
スパイ映画として普通に作れば結構面白い作りになってるっていう所に、物語の進行を邪魔をしないコメディシーンがバンバン入ってきてる感じがあって、「見やすさ」と「興味の持続」を両立させていたんじゃないかなと思います。監督のポール・フェイグとメリッサ・マッカーシーのコンビで今年は「ゴーストバスターズ」もありましたけど、個人的にはこっちの方が断然好みでした。

 

 

 

18位 デッドプール

ポスター画像

 

下ネタありゴア描写ありメタネタありっていうかなり規格外のアメコミなんですけど、蓋を開けてみれば凄く真っ当な作りをしていて、とにかく「見やすさ」を第一に考えられた映画になっていたと思います。


下ネタメタネタってまあ当然面白いし好きなんですけど、あんまり乱発すると物語の根幹がグラッグラになりがちじゃないですか。話の運びやテンポがどうしても崩れるし。今作も第4の壁っていうんですか。それを意識したキャラクターなんですけど、デッドプールさんは。ただ、それが作り手側が本当に気を使っていて、物語の邪魔になるどころかドンドンドンドンスピードアップさせていく要因にまで昇華させてしまっているんですよ。


それがその、デッドプールっていう底抜けに明るくてどんな時にも茶化したりふざけたりするキャラクターが、とんでもなく不幸な生い立ちを背負っていてなんとか生きていく為に、自分を守るが故のおふざけである、っていう事が段々と明らかにされていくんですね。ここでちゃんとデッドプールの下ネタメタネタありのキャラクター像と物語の根幹とが凄く上手に相互関係にさせていて、終盤までの見やすさを保証してくれているんですよね。


あと、ライアン・レイノルズ力(ライアン・レイノルズぢから)ですよね、やっぱり。かなりアドリブも多めでやってたって聞きますし、彼の俳優人生の山あり谷ありを考えると、もうデッドプールはライアン・レイノルズそのものとしか考えられないんすよね。ロッキーとスタローンがもう完全に同化してる様に。「レスラー」っていうミッキー・ロークの映画もありましたけど、ああいう実像である俳優と虚像である映画の登場人物が映画の中で完全に一体になったっていうのを見ると、映画でしか出来ない表現を見た気がして、凄く胸を打ちますよね。
あとは、上映時間も短めで本当にテンポ良くドンドン進んでいくんで、しかもそれが心地よいスピード感なんですよ。「見やすさ」だけで言えば、2016年の新作の中では個人的にはトップだったかなと思います

 

 

17位 ルーム

ポスター画像

 

撮り方がマジで上手いんですよね。
何年も監禁されていた親子が脱出し、外の世界に触れていくっていう作品なんですけど、狭い空間を広く見せるっていう「撮る技術」を「主人公の価値観の変化」っていう所に組み込んでしまってるっていうのでもう天才的だと思うんですけど。


監禁からの脱出って聞くと、アクションやスリラーっぽい感じのジャンル映画を連想するし、俺も見る前はそういう部分を期待していたんですけど、見た後に思ったのがこの作品が持つ普遍性みたいな所で。「異物と触れ合う」ってどんな人間でも怖いじゃないですか。そこには自分とは違う他者があって、文化があって。
この映画って本当に後半以降は淡々と静かに進んでいくんですけど、主人公は産まれた時から監禁されていたから、眼に映る物全ては異物であって、その異物との接触を何度も何度も繰り返し見せていくんですね。


そこには勿論映画なんで、自分を愛してくれる人、自分を受け入れてくれる人を最終的には描いていくっていう形にはなるんですけど、俺がこの映画の好きな所って、他者の目線から見た異物、つまり「自分(主人公)」への目線を凄く丁寧に描いてる所なんです。そこには付き合い方に思い悩む人もいるし、何とか対話を積み重ねようとする人もいるし、頭から存在自体を拒む人もいて。
『主人公たちがどうやって外の世界に溶け込んでいくのか?』が本筋ではあるんですけど、「異物をどう受け入れるか」を、逆に主人公に向けた目線として物語に組み込んでいくっていう所で外の世界と触れ合うっていうテーマが凄く多角的に語られていたと思います。
誰にとってもこの世界は異物だらけであるけれど、思ってるよりもずっと世界は生きやすい所なんだよ、っていうのを、静かに上品に見せていくこの映画がもう堪らなく好きですね。「あの部屋に帰りたいんだよ~」って泣く主人公の男の子とかさ、もうそんなこと言うなよ~って俺まで泣けてくるんですよ。髪長い美少年だし。最高ですよ。

 

 

16位 ちはやふる 上の句、下の句

ポスター画像

 

メチャメチャ面白かったです。広瀬すずが本当に良くて実写にするにはちょっとキツそうなコメディ描写も、何故か広瀬すずだと違和感があんまり無かったりするんですよね。ボディバランスの強さですよね。そういう。
こういうのはもう、その俳優にしか持てない天性の物なんだと思うんで、広瀬すずがこれから出る作品は出来る限りチェックしたいな…と思わせる作品でした。「四月は君の嘘」は見てないんですけど。


青春モノと恋愛モノかと思いきや、結構熱めなスポ根モノだったりするんですよ。青春恋愛っていう要素は勿論あるんですけど、何故主人公たちは勝つ事が出来たのか?っていう、一番大事なロジックの部分がちゃんと作り込んであるんで物語にもドンドン乗っていけるし、説得力もあるし、一番の見せ場で空滑りしていない。
しかも主人公ではない、脇役たちの所謂「持たざる者」にもしっかりスポットライトを当ててる所も俺は本当に好きで、「勝ちたい理由」が彼らの中で少しずつ構築されいくその過程が、とにかく熱い。結構食わず嫌いで見ないっていう人が多い作品だと思うんですけど、特にこの「上の句」は青春映画として名を残す作品になっていくと思うので、是非見てほしいです。レンタルショップでももう出てますからね。

 

 

 

15位 映画 聲の形

ポスター画像

 

いや、もうね俺が何回「硝子!!!」って今年叫んだと思ってんですかって事ですよ。本当に。硝子!!!!!お前…本当に…硝子!!!!!!!!!


いじめと障害を描いた作品と思われがちだと思うし、そういう要素は勿論確かにあるんですけど、こう何て言うんですか。「俺」と「他者」との関係性ってどういう所に着地していくんだっていう、コミュニケーションとはなんぞや?みたいな所にまで言及していて、単純にコレはこういう映画です。とは言えない作品にまでなっていると思います。


本当、面白かったし見て欲しいんで、出来るだけネタバレをしない様に書きますけど、俺が一番好きだったのは原作の最終話よりも若干前の話の落とし所を、今作のラストシーンに持ってきた所なんですよ。アレって石田が自分っていう存在と他者っていう物の「分かりあえなさ」を受け入れたっていう事だと個人的には思っていて。1人の少年が世界を生き抜く為の自分だけのやり方を見つけたっていうんですか。そういう風な終わり方に思えて、彼は彼なりに子供である事を今辞めたんだなと思えて。ある種の「青春の終わり」を感じさせるラストショットが、嬉しくもあり悲しくもありっていう凄く命名し難い気持ちにさせてくれたんですけど。


ただやっぱり、耳が聞こえようが聞こえまいが、他者の声っていうのは凄く遠くて難しくて、他者の心の内に他者の声が響くなんてのは途轍もなく果てしない事なんだと打ちのめされると同時に、だからこそ、その声を聞く事の尊さっていうんですか。俺たち分かりあえる日は来ないかもしれないけど、でもなんとか手を繋いでやっていこうやっていうさ、大事にしなければならない何かを見た気になった映画でした。


演出もメチャメチャ良いんですよ。仲間と喧嘩別れした後に西宮とのデートですっ転んだ後に差し伸べられた手を掴もうとすると、逆光で陰になった西宮の姿とかさ。「あっ、もう彼女の心はここからは届かない所に行ってしまった…」っていう違和感絶望感溢れる素晴らしいカットだったと思います。音楽も最高ですしね。西宮の聴覚をモチーフにしたノイズ混じりの劇盤は本当に必聴ですよ。もうなんか新しい事だらけで戸惑うんだよこの映画。マジで。


あとコレだけは言っておきたいんですけど、俺この映画長野の映画館まで車で片道1時間かけて通って見たんですよ。そしたら後ろの席にいる「家の方針で中学校行ってません」みたいな4人がもう上映時間130分の内の260分ずっっっっっっと喋ってるんですよ。良いシーンあると携帯で写真撮ってるしさ。もうマジでこういうバカがいるから映画館離れが進むんだよ。もう映画館は観客の首に一定のデシベル以上の音量で喋ると爆発する首輪とかを全員に付けて下さい。お願いします。

 

 

14位 ズートピア

ポスター画像

 

まずもう最初の15分ですよね。人形劇で作中内の世界観を語りつつ、主人公の生い立ちを見せつつ、そして主人公が大人になって都会に出ていくて、っていう過程で、電車の車窓から「多様性のある世界」を魅力たっぷりのビジュアルで次々と見せていくっていう序盤の15分。ここでもうガッチリ心が掴まれちゃうんですよね。俺の「序盤の15分最高賞」の受賞が決定しましたよね、ここで。去年は「海街diary綾瀬はるかが一緒に暮らす事を提案した時にかなり食い気味に『行きます!』って答える広瀬すずだったんですけど、もう今年は完全にズートピアです。最高。


ただ、その多様性の在り方を主人公たちが見て、感じて、それで出した答えって「自己と他者は違う」っていう結論だったじゃないですか。私とあなたは違う存在で分かりあえないかもしれないけど、でもだからこそ私たちならそれを認めあって暮らしていく事は出来んだろ!っていう、違う存在であるからこそ多様性は維持できるんじゃないか、みたいな所に着地したのが、本当に尊い映画になったな~っていう感じでしたね。
ニンジンペンの使い方とか最高だったし、ナマケモノのキャラクターの強烈さとか最高だったし。あの毛穴一本一本まで見えそうな細かさとか、笑う時の顔の筋肉の動きとか、CGも本当に凄かった。

 

 

13位 ハドソン川の奇跡

ポスター画像

 

イーストウッド、良いっすよね~~~~~~~。イーストウッドは良い!良い!俺がどれだけイーストウッド好きだか皆さん知ってます?「グラン・トリノ」とかもう絶対生涯オールベストに入る1本だし、好き過ぎて卒論をイーストウッド映画におけるナンヤラ観とか何とかにしたくらいなんですけど。


この作品もね、本当に良い映画なんですよ。
実際にあった飛行機事故を題材にしているんですけど、まず演出の巧みさですよね。ハドソン川への不時着って、離陸してから本の十数分の出来事だったから再現するにしても、映画にしてはどうしても短いシークエンスになってしまう訳じゃないですか。そこを機長目線、乗客目線、オペレーター目線、救助に当たった隊員目線と色んな角度を付ける事で、物語の骨組みをドンドン強固にしていくんです。ただ、本作は終盤から法廷モノの要素がちょっと入ってくるんですけど、事件の本質に当たる部分は最後の最後まで見せないし、しかもその不自然さには全く気持ち悪さを感じないっていう。


世界的に有名なニュースなんで、救助される事も、奇跡的に死者も出なかったっていうのも知ってはいるのに、物語の骨組みというか土壌が凄くしっかりしてるんで、不時着に成功して病院で「死者はいなかったよ」って報告を受けた時には機長と一緒に俺も「良かった……」って凄く肩の力が抜けたんですよね。
そういう色んな角度からこの事件を反芻するっていう演出を通してに気付くのは全員が全員「やるべき事を一生懸命やった」っていう事で。当たり前の様に事に思えるんですけど、でもそれに尽きるんですよ。コレは「オデッセイ」とかにも通じるですが、1人1人の力は小さいけれど、それが積みさなって協力し合う事で大きな事を成し遂げるっていう過程をこんなに丁寧に見せられると、やっぱ感動しますよね。

 

もうね、良い所ばっかりあるんですよ、この映画。機長の鋭い目つきだけが暗闇の中でブワっと浮かび上がる最初のカットとか光と闇のクッキリした撮り方が、完全にイーストウッド映画っぽくてここ大好きだし、「もし着地に失敗して街に飛行機が墜落していたら…」っていうフラッシュバックも段々と少しずつ少しずつ飛行機が機長のいるビルに向かっていく描写とかマジで最高に怖かったし、あと墜落を確信したオペレーターの流す涙のタイミングとかね。もう本当、「世界で一番信頼できる男、イーストウッドって感じですよマジで。イーストウッドNHKの集金に来たらBS分も喜んで払いますよ。俺は。それくらいの信用度ですね。

 

 

12位 ケンとカズ

ポスター画像

 

主演ふたりの出で立ちがメチャメチャ格好いいんですよ。タイトルがバンと出た時の主演ふたりの立ち姿だけで「この映画絶対面白い!」って確信するし、実際面白いし。ジャンルとしてはノワールになると思うんですけど、「ヒメアノ~ル」しかり「葛城事件」しかり、今年の邦画、特に犯罪映画は豊作だらけでした。未だに洋画しか見たくないとか、邦画は面白くないの多いとか言ってる人間はマジで映画見てないし映画館にも行ってないのバラしてるだけなんで、せめて挙げた3本くらい見てから邦画はどうとか言ってほしいんですよ。邦画は食わず嫌いで見ないっていう人の価値観が絶対に変わる作品が今ドンドン出てきてると思うんで。


編集が凄く好きなんですよね。主人公が覚せい剤の売人っていう立場なんで、どうしても雰囲気としては重くなりがちなんですけど、序盤から中盤にかけてコミカルなシーンも多くて笑える所もありつつ、そういう所でキャラクター描写をドンドン積み重ねていくから感情移入して見られるし。
この映画ってモノローグを恐らく1個も使っていなくて、極力キャラクターの心情を台詞にしないっていう作劇を取ってるんですね。そこで「台詞にしない」という作劇を取る事で、逆にキャラクター自身も劇中で気付いていなかった感情が観客だけに伝わってくるっていうシーンがあって、そこが凄く胸を打って。「語らない」という事こそが、物語を雄弁に語っているんですよ。


浦安で撮られている作品なんですけど、淡々と動いていく物語の中に、小さな犯罪の積み重ねがいつの間にか大事になっていく過程が本当に朧げで今にも消えてしまいそうな希望の中で語られていく所とか、映画を見ている気が全くしないんですよね。俺の街にもケンとカズがいそうな感じがしてくるんですよ。終わりのない地獄から何とか抜け出そうとする2人の悲しさとか儚さとか、そういうの含めて全部が愛おしい作品です。

 

 

11位 シング・ストリート 未来へのうた

ポスター画像

 

映画館で見て本当に良かった作品でした。

過去作「ONCE」「はじまりのうた」とは違って、主人公のスキルがゼロから始まる作品なんですけど、それだけに「始めて作った詩が音楽になった瞬間」のシークエンスがメチャメチャ感動的に思えるんですよね。
主人公の周りには誰かの勝手な都合だらけでどうにもならない事ばかりが巻き起こるんですけど、でも音楽をやってる合間だけは何も考えなくてよくて、ここでは無い何処かへ行けて…っていうのが、まず主人公たちバンドが演奏するオリジナルの楽曲が凄く良いという所で、そこにも説得力が出てきて。「夢を持つこと」「芸術を生み出すこと」を死ぬまで信じ続けるのであろう少年少女たちの傑作ジュブナイルだったと思います。


あとは、「芸術が産まれる瞬間」の切り取り方ですよね。主人公たちは劇中で、自分たちで作った曲を好きなバンドの音楽っぽくする為に何とか試行錯誤するシーンがあるんですけど、そこに「音楽をやる醍醐味」に限らず、俺たちが何かに憧れて何かを作ろうとするっていう創作意欲の原点みたいな物を見た気がします。
「桐島、部活辞めるってよ」っていう、俺が凄く好きな映画があるんですけど、劇中に「なんで金にもならないし将来にも繋がらないのに映画なんか撮ってるの?」っていう問いかけがあるんですよ。何の為に好きな事やってるの?っていうか「好き」って何?っていう。「桐島」でもその答えは凄く胸を打つ形で用意されているんですけど、この映画ではまた別のアプローチでこの問いかけに答えている様な気がしていて。金にもならないかもしれない、何の腹の足しにもならないかもしれない、だけれどもそれでも「芸術」っていうのを死ぬまで信じ続け、追い求めていくのであろう少年少女の話として、メチャメチャ好きな映画になりました。

 

 こっちでも感想を書いていたりしてます。

askicks1248.hatenablog.com

 

 

 

という事で11位から30位までの発表でした。
一応順位なんか付けてますけど、この辺のヤツ、特に18位の「デッドプール」くらいより上のは1位でもいいんですよ、マジで。予め順位付けて書いてるのに、未だにどうしようどうしようって悩んでましたからね。そうしてる合間にもネットカフェでの使用料金はドンドン加算されているんですけど。お前らいい加減にしろよ。オイ。
 
 
次回は後編ということで、いよいよベスト10とワースト3の発表です。明日には更新できればと思っているので、よろしくお願いします。