クラスメート一人一人への印象についてアンケートを取って一覧にし、発表するという地獄の様な50分があった。

小学5年生くらいだった頃のせいかつの時間に「この人は○○が得意!」という様なコーナーがあって、クラスメート一人一人への印象についてアンケートを取って一覧にし、発表するという地獄の様な50分があった。


こちとら日々の生活の中でもクラス内カースト制度で最下層に位置してるのを、遠足の時に速く歩いたり、給食を速く食べ終えたりして誤魔化し誤魔化し生きているのに、何故授業内のせいかつでもそれを再認識させられなければならないのか理解に苦しんだが、「嫌だな」と思った2秒後に隣の席の熊倉くんと「今日の夕方お前の家でやるカスタムロボ、違法パーツ禁止な」「嫌だ」「なんで」「嫌だから」の会話にすぐ夢中になったので*1気が付くとアンケートの集計時間になっていた。


「どうせ『ゲームが好き』とか『痩せてる』とか『家が学校から近い』とか『最近父親が設定した成人番組を見る時の暗証番号解読に成功してご満悦』とかそんなんだろ」と思っている中*2、発表されたクラスからの私への印象は「クイズが得意」だった。多分小1とか小2の頃に大好きだったクイズ番組の影響で、マジカル頭脳パワーの過去問題全集みたいな本を何冊か買ってもらってクラスメートにデカい声でクイズを出しまくっていたのを何人かが覚えていたのだろう。


ただ、確かにクイズ番組は好きだったが、もうその頃になれば熊倉くんと「じゃあお前も違法パーツ使えばいいじゃん」「嫌だ」「なんで」「嫌だから」みたいな話しかしなくなっていたので*3、よっぽど書く事が無くて、記憶の奥底から印象を引きずりだした層がメチャクチャいたんだな…と、悲しいのと恥ずかしいので居心地が凄く悪かったのをよく覚えている。
その数週間後に開かれた運動会の全員参加の○×クイズで、「足が速い」との印象をクラスから受けていた大野くんに「エスキってクイズ得意ならみんなエスキの言う方に行こうぜ!」と言われて2問目で全員脱落した時からしばらくクラスの足の速い連中が誰も口を利いてくれなくなったりしたのもよく覚えている。他人の印象というのは、あまりアテにする物ではない。「足が速い」以外は。


因みにアンケート結果の2位はやはり「ゲームが得意」でした。
コレを見た印象足の速い連中のひとりの五反田くんに「ゲームが得意ならこのゲームクリアしなくていいから隠しコインだけ集めてくれ」と言われてゲームボーイドンキーコングを渡されました。足の速い連中に話しかけられてテンション上がった私は「1週間あれば50枚はイケる!!」と豪語しました。


毎日毎日学校から帰るとすぐにゲームボーイの電源を着けました。来る日も来る日も、隠しコインを探しました。
「ここのガケに落ちればワープの樽がきっとあって…」
「KONGを全部集めれば出てくるとかそういう事かも…」
私にもクラスから「ゲームが得意」と信じられている身です。ここで泣き言抜かして「やっぱりダメだった!」となった日は、『ではお前は何の為にゲームをしてきたのだ?』となります。足の速いクラスメイトは何故足が速いかといえば、日頃から汗をかいて走っているからです。勉強が得意なクラスメイトは何故勉強が出来るかといえば、日頃から勉強しているからです。


では自分はどうなのか?自分の積み上げてきた物に、自分が歩んできた道に、価値はあったのか?小学生だった私はゲームボーイの白黒の世界でキングクルールを戦っていたのではありません。ステージのギミックと格闘していたのではありません。紛れも無い『自分自身』相手に、私はドンキーとディデイーを駆使して挑んでいたのです。敗北は許されませんでした。自分の生きる意味を自分で否定する事は出来ないからです。




1週間経ちました。6枚しか集まりませんでした。担任の上村先生に「コインが集まりません…」と泣きつきました。上村先生の頭上に「???」が浮かんでいるのが本当に見えましたが、「まあお互い悪いという事で…」と合間に入ってくれて、私は五反田くんにプレイ時間が30時間ほど増えただけのドンキーコングを返す事が出来ました。私は敗北する訳にはいきませんでした。ので、上村先生のお陰で「喧嘩両成敗」という事で引き分けにして頂きました。


やはり他人の印象という物はあまりアテにしない方が良いですね。カスタムロボで違法パーツ使わないと熊倉くんに勝った事なかったし。

*1:バカだ

*2:3210でした

*3:何度書いてもバカだ