2018年新作映画ベスト20(1位から10位まで)

2018年新作映画ベスト20の1位から10位までを発表する記事です。タイトルに書いたんですけど、どうせ誰も読まないのでもう一度書いてみました。

2018年の映画総まとめ的な記事も今回で最終回。っていうかマジでもう順位なんてどうでもいいんですよ。悩みに悩んでさっきまで順位どうしようかずっと迷ってたんですけど、もう飽きたので何でもいいです。全部良い映画なのは間違いないので、冬休みにレンタルショップに出かけた時の参考くらいにしてもらえれば幸いです。

 

20位と11位までの記事です。この辺もマジで面白いヤツのヤツです。

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ワースト10の記事です。もうどうでもいいです。

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 では10位から発表です。

 

 

10位 海を駆ける

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パッとみた感じだとロハス系っていうか、ディーン・フジオカのアイドル映画ぽい所がありそうな印象がありそうなんですけど、個人的にはホラー7割、青春3割ってバランスの恐怖映画だと感じました。似た様な映画を挙げるとすれば去年の「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」が近いです。もう少し今作はホラー寄りだと思いますけど。

 

舞台はインドネシアの小さな街。ここに日本からやってきた少女を中心に、恋愛や友情といった青春映画の側面と、インドネシアがオランダから植民地にされていた過去であったり、津波による災害被害であったりと、「人間が抗えないモノ」にまつわるエピソードとが平行して語られていきます。人生を謳歌している少年少女と、津波で自分以外の家族を失ってから毎日川に遺体を探しにいくおじさん、とかっていうのを物凄くシームレスに見せたりっていう描き方が多いんです。

 

なんかコレって、ただ単純にえげつない描写を見るよりよっぽど残酷で意地悪な描き方じゃないですか。どんな人間にも「死」は必ず近くにあって、そして必ず一続きになっている。そこインドネシアの大らかで過ごしやすそうな街で描くからこそ、余計に残酷さが増す感じがして。俺はこの映画から「命は尊い」っていうメッセージは受け取りましたけど、それと同じくらい「命は呆気なくて無意味」っていう真逆のメッセージも感じてしまって、もうずっと途方に暮れてるんですよ。”凄く美しいし凄く意地悪”っていう不思議な感覚の1本で、どうしてもこの映画のラストシーンが脳裏から離れないんですよ。

 

役者陣もみんな凄く良かったです。『日本語がかなり話せる現地の俳優かと思ったらバリバリの日本人だし知ってる俳優だった』っていう太賀も凄く良かったんですけど、やっぱディーン・フジオカも良かった。「抗えないモノ」のメタファーとして、"海から突然やってきた謎の男"をフジオカが演じているんですけど、正直彼がここまでいい役者だったとは全く想像していませんでした。安心感と不気味さが入り混じった、神にも悪魔にも見える彼の佇まいだけでも一見の価値はあると思います。

 

 

位 タクシー運転手 ~約束は海を越えて~

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1980年に韓国で起きた"光州事件"を題材にした映画です。簡単な説明すると、1980年の5月17日に韓国の軍部が政権を掌握するために戒厳令を出したんですけど、『また国家が軍事政権になるのはおかしいでしょ!』つって学生たちを中心にデモが起きたんですね。で、それの鎮圧のために戒厳軍が民間人144人の死者を出すまでの一連の蜂起が「光州事件」と呼ばれています。

 

正直、この映画を見るまで光州事件っていう名称くらいは何となく聞いたことがあるくらいで、詳細は全く知りませんでした。劇中でも、ソン・ガンホ演ずる主人公は同じ国に住んでいながらも、メディアの情報規制で事件の全貌が分からないという背景もあるんですが、基本的には「親から金もらって大学に行ってるボンボンのお遊びでしょ」っていう馬鹿にしたスタンスでしかデモを捉えていないんですね。

 

そんな彼がドイツからのジャーナリストを自身のタクシーに乗せたことから物語は始まっていくんですが、この無知だった彼が右往左往するコメディ調の前半部があるからこそ、彼が光州に入ってからの後半部のサスペンスが、重苦しく、そして緊張感たっぷりに描かれていて、その落差があるから、余計に見てるこちら側も愕然としてしまう。韓国の歴史に疎い観客も、無知である主人公と同じ目線で物語を体感できるので置いてけぼりな感覚が一切ないんですね。こういう社会派サスペンスはやっぱり日本より韓国の方が1枚上手だなという感じはあります。

 

実際に起きた事件を元にしてる映画ではあるんですが、終盤のタクシーを使ったカーチェイスを含めて、意図的にぶっ飛んだフィクション要素を入れ込んであるのも好きな部分です。軽い導入から、シリアスな実在の惨状を見せ、そして最後にはハリウッド的な超現実的な展開で軽やかに終わらせていくという一連の流れを見ると、誰が見ても面白い映画って何なのか?をちゃんと考えてんすよね。しかもたった30年前に起きた事件を元にしながら。そういう所が、俺が韓国映画が好きな理由だったりしますね。

 

今年の韓国映画も良いのが多くて、今作と若干似たテイストの「1987、ある闘いの真実」でどちらを入れるかかなり迷ったんですが、ソン・ガンホのうどん食いシーンが今でも忘れられないっていう所で、こっちを選んでみました。1987もマジでいい映画なんで、それ込みの順位って感じですかね。

 

 

8位 リズと青い鳥

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インターネットで友達がメチャメチャいる映画だから俺がわざわざ言わなくてもとは思ったんですけど、やっぱり2018年の映画で今作を外さない訳にはいかないじゃないですか。12月頭に今作のレンタルが始まったんで「みんな好きなんでしょ」つって無理してインクレディブル・ファミリーのすぐ下のかなり目立つ所にシリーズ全部含めて陳列してみたら、マジで1カ月で5回くらいしか借りられなかったんですよね。なんかショックだったんで"ふざけるな!"という意味も込めて今年のアニメ映画でベストにしました。精神が一定でない。

 

すごく残酷な映画じゃないですか。少女が自分の限界を知るという事だけでもキツイのに、お互いがお互いを必要とはしているんだけど、でもやっぱり人って"他者"同士でしかないから、どこかで妥協を覚えないと生きていけない。終盤で彼女らは"分かり合えない"という事を理解した、その瞬間に彼女らが子供で良かった時代は終わってしまっていたんじゃないかと思うんです。こんな残酷なことないんですよ。それを俺たちはデカいスクリーンで見ちゃってるんですけど。

 

でも俺がこの映画好きなのって、「分かり合えない」を知った後でも彼女たちの人生はちゃんと続くし、「思春期が終わった後だって全然青春できるんですけど!」っていう、"子供時代を終えられたこと”をすごくポジティブに描いてくれてる所なんです。俺たちだって人間関係において友情恋愛問わず"妥協"を覚えても、ちゃんと好き合ったりできる訳じゃないですか。凄く繊細な描写が多い今作なんですけど、だからこそ終盤でみぞれと希美が別々の道を歩いていく事を示唆させるシーンは凄く開放感がありました。この映画が終わっても彼女らの人生は決して閉じられてなんかいないという終わり方に、作り手側は「子供でいること」、そして「その子供だった頃を終えて大人になっていくこと」の両方に愛情を持ってくれているんだなと強く感じました。

 

一応前作に当たる「聲の形」もそういうニュアンスが強い映画だったと思うんです。漫画と映画でラストシーンとなる場面が異なってるんですけど、映画だと石田が"他者"の存在を受け入れる事ができた、っていう側面が強い終わり方だったと思うんです。自分を受け入れてくれる人間もいれば、イメージだけで酷い言葉を投げかけてくる様な人間もいる。でもその両方をちゃんと"聞けるようになる"というのが、彼が子供でなくなった瞬間で、そしてそこで「聲の形」作品そのものが終わりを迎えるんですよね。(今気付いたけど"聞けるようになった"石田と聴覚障害持ってた西宮でメチャメチャアレしてるじゃん)

 

「リズ」と「聲の形」、両方とも原作のある作品ですけど、こういった所に山田尚子監督の作家性がある様に感じます。そういうの俺メチャメチャ好きだし。もう山田監督は実写映画含めても国内の信頼できる女性映画監督のひとりって感じになってます。俺の中では。

 

 

7位 デッドプール2

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楽しい映画は良いですよね。せっかく映画を見るんなら絶対楽しい方がいいじゃないですか。別に俺は毎回毎回カンヌとかで賞取りそうな映画ばっかり見たい訳じゃないんだよ。わざわざ一番近場の映画館まで車で40分かけて困った映画を見て複雑な気持ちになりたいですか?って話じゃないですか。

 

確かにかなりバランスが悪い映画なのは分かります。序盤で恋人がいきなり死ぬのはまだ良いんですけど、主人公であるデッドプールが恋人の死をどういう風に受け止めて、「恋人の死」と「ヒーロー活動にちょっと本腰入れだす」がどうリンクしたのかはかなり不明確でした。この映画における"芯”は一体何なんだ?ってのは結構あやふやですよね。前作がデッドプールが何故底抜けに明るいのかっていうのを、彼の壮絶な過去をちょっとしたセリフ等で描写することで、彼は自分の良いことなんて全く無かった人生になんとか意味を与えようと、笑い飛ばそうとして延々とバカな話をしてる。悲しくて、でもその分誰よりも優しい彼がやっと出会えた運命の人を守るために、敵のアジトに単身乗り込むっていうストーリーが単純明快だし、だからこそデップーのキャラクターに好感が持てたと思うんです。

 

でも考えたんですけど、この映画ってデッドプールじゃないですか。もうね、いいです。デッドプールでバランスの整ってる映画が見たかったのかって聞かれたらそんな事も無かったです。とにかくイチイチ笑える所ばっかりだし、不謹慎極まりなく人間がバッタバッタ死んでくのも最高。エンドロール後のおまけ映像も、俺は初めてマーベル映画で「おまけ映像見てよかった!」ってなりましたよ。本当にライアン・レイノルズは役者続けてよかったよな…グリーンランタンから十何年後にやっと本物のヒーロー映画撮れたんだから…。

 

映画館で見た時の雰囲気とかもメチャクチャ良かったんですよ。結構外国人のお客さんが多かったんですけど、カナダをとにかくこき下ろすネタで大爆笑してたし、あんなにあちこちで笑い声があがる映画体験は今までありませんでした。もう本当にね、俺見てて「終わるな!」って叫んでました。マジで終わってほしくなかった。デッドプール2をTOP5に入れなかったのはもう一つ理由があって「楽しいのに終わる」という点です。なんで終わる?なんで?

 

 

6位 万引き家族

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今作に限らず、是枝作品はなんとなく感想を言えば言うほど野暮になってしまう感じがあるので、まだ見てないなら「いい加減にしろ!」で全然終わりでいいんです。いい加減にしろ。

 

「三度目の殺人」の感想でも同じことを感じたんですけど、やっぱり人と人との分かり合えなさを前提に作品を作ってる監督だと今作で改めて思いました。打算的な所があったとしても、自分の都合を実は優先してしまっていたりしても、例えば家族同士の繋がりって、そうかもしれないけど、そうじゃないじゃないですか。

 

この作品の家族は凄く特殊な繋がりで、主に金銭的な理由で一時的に同居しているだけかもしれないけど、血が繋がっていても「金銭的な理由で一緒に同居してるだけ」って家族なんて普通にいる訳で。家族って「実は他人同士が集まっただけのコミュニティなんじゃないか」という、身も蓋もないドライな描写が本当にメチャメチャあるんですけど、それでも彼ら彼女らが互いを思いやって、家族でいられた瞬間は確かにあって。作り手側からの「血の繋がりだけが家族の証明になり得るのか?」っていう、恐ろしくもあり、だけど温かみもあるメッセージが物凄く濃い作品だなと感じます。

 

役者陣も本当に全員良くて。子役2人含めたこの家族も、ちょっとした脇役もハマりにハマっててマジで素晴らしかった。俺は安藤サクラが終盤で池脇千鶴にある質問をされるシーンと、子役の後から家族になった妹が「お兄ちゃんカブトムシ見つけたー!!」って叫ぶシーンでマジで前に飛び出す感じで涙がブワブワ出てしまった。

 

 

 

5位 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

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俺はコレすごく良い青春映画だと思っていて、なんというか『生命の力強さ』をこの映画から感じたんですよね。

 

今作から「フォックス・キャッチャー」って映画を凄く連想しました。兄をコーチに射殺されるまでの元レスリング選手、マーク・シュルツの半生を追ったサスペンスなんですけど、マークもトーニャも引退後に格闘家に転身してる所とかも本当にそっくりで。悲しくて重い話なんですけど、ジャンル的には2本ともダークコメディっていう所も。

 

主人公のトーニャ・ハーディングの半生をフィクションなのかそうでないのか、グレーな部分も含みつつ振り返っていくのがこの作品ですけど、まあ登場人物の殆どがクズばっかりで。トーニャ自身にも自業自得な所はあるので、この映画では悲劇のヒロインって印象は全く感じなかったですけど、母親から人生を奪われて、恋人からは未来を奪われた様にしか見えない彼女が、最後にスケートリンクで魅せたのは「生きることの力強さ」だったんです。"それでも私はここで立っているし、ここで生きている"っていう腕のブン回し。それがこの映画の醍醐味です。30代40代で当時に生きたおじさんおばさんの為の懐古接待映画を一つも二つも超えた素晴らしい映画だったと思います。

 

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4位 ちはやふる -結び-

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この三部作で青春映画の金字塔として、歴史に残っていく作品になったと思ってます。

主要キャラクター全員を魅力たっぷりに描いていること、前2作であった何気ない描写が伏線として今作で回収されていること、肝心のかるたのシーンは「運で勝った」ことは絶対にせずしっかりと「何故勝つことができたのか」のロジックがちゃんと用意されていること、もう良さ…って所しかないんですが、個人的には『何かを受け継いでいくことの尊さ』をしっかりと描いてくれた所が本当に感動しました。

 

この映画では勿論、広瀬すず演じた千早や彼女が所属する競技かるた部のメンバーたちを中心として物語は進んでいくんですが、例えば敗退が決まってしまった他校のかるた部部員の泣きじゃくる様子やそれを見守る教職員の姿であったり、ボランティアでかるた大会の運営に回る大人たちの姿であったりと、青春真っ只中の少年少女を支える側の人間にスポットが当たるシーンが多々あるんです。

 

この”結び"は前2作から2年の月日が経ったという設定なんですが、現実においても2年ぶりの続編でもあるし、この2年で広瀬すず野村周平も新田真剣友も役者として凄い成長したのを感じるじゃないですか。子供たちが成長するにしたがって思うであろう「ああなりたい大人」をこの映画でちゃんと登場させつつ、そしてそれがこの物語の本筋と大きく関わっていくという作劇になっていて。天才的なかるたの才能を持った千早であったり、御曹司で顔も良くってっていう太一であったり、漫画的な表現をしようと思えばいくらでも出来るキャラクターたちだったと思うんですが、「なぜ好きな事を大人になっても続けるのか」「好きな事を続けて、そしてどうなりたいのか」っていう問いって、物凄く普遍的ですよね。

 

やっぱりこういう所があるからこそ、この映画は漫画原作ではあるけれども決してコスプレっぽくならないし、スクリーンの中の世界が現実世界と地続きな所にあると信じられるんです。彼ら彼女らの人生は映画を終わった後のこれからもずっと続いていくし、「ずっとかるたが好きだった」っていう気持ちを胸にしながら人生を歩んでいくんだと思います。

 

 

 

3位 blank13

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2部構成って作りが強調されてる映画です。借金まみれの父が失踪した後、母と子供2人でなんとか生きていく様を見せながら、十数年後に大人になった弟が寿命わずかとなった父と再会するまでを描いたのが前半。父の死後、葬式にやってきた参列者が語る父のエピソード(というか演者のパフォーマンス)を描いたのが後半。前半はシリアス、後半は演者のアドリブっぽい演技が楽しいコメディという感じで、全くテイストが違う映画です。もう葬式っていうかお祭りです。

 

普通の映画だと、物語を通して主人公や残された家族が父の本当の姿を知っていく、っていう流れになると思うんですが、今作だと「主人公は父の事が余計に分からなくなる」っていう着地になっています。ただ、この映画は「分からない」「理解できない」を全く否定的なニュアンスでは捉えていなかったと思うんです。人間は絶対に完全に理解し合う事はできないけど、お互いに思いやる事はできる訳じゃないですか。愛情の正体って「理解する」ではなくて「理解しようと想像してあげる」ってモノなんじゃないかっていうのを、この映画から感じたんですよね。

 

だからこそ「結局分からない」っていう作劇が、逆に"生きた人間"を感じました。もう死んでんですけどね。葬式と映画って結構似てる部分があると思うんです。観客は画面の向こう側を見守る事しかできなくて、作品が終わったあとはアレコレその作品の事を思い返しながら、物語の後を想像したりして別れを惜しむことしかできない。別れを前提にした集まりってなかなか無いな…とかって思ったりしてます。スカッとする映画は今年も沢山見ましたけど、心に引っかかり続けてる映画はコレだけなんですよね。

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2位 愛しのアイリーン

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クソ好きです。吉田恵輔監督作品の特徴って、日常が裏返る瞬間をいつも物語にしてるって思ってて、「いつも何気なく暮らしている日常も、一枚皮を剥がせば血も涙もない様な恐ろしい世界がすぐそこにあるんだよ」っていう事を毎回やってる監督だと思うんです。

 

それは今作でいえば、人間が勝手に抱いて勝手に裏切られた気持ちになる「愛情」っていう物でもあるし、ストーリーにもっと近い所でいえば、家族を養う為に半ば娼婦として日本に連れてこられる東南アジアの女性たちと、その仕組みで儲けてるブローカーの存在っていう所にあって。30年くらい生きてると誰だって夜の街で「シャッチョサーン」って声かけられた経験絶対あるじゃないですか。

 

そういう地獄と隣り合わせで生きてるのが日常で、実際最初から最後までこの映画って感情移入できるキャラクターが一人もいないんですよ。主人公は42歳で恋愛もまともに知らずに田舎のパチンコ屋で働いてる人間だし、主人公を始めとして、人間の一番イヤな所、我々が日頃見ない様にしてる感情をむき出しにして生きてる人間ばっかりが出てくるんです。誰もが正しくなくて、もう見てるコッチが痛々しい気持ちで死にそうになってくる。多分俺はこの映画見てる間は体中に大穴開いてたと思います。

 

でもこの映画がどこに向かってるかっていうと、誰しもが持つ「愛したい」そして「愛されたい」っていう感情なんです。「俺を一番愛してくれ!」「私を見捨てないでくれ!」っていうメチャメチャ自分勝手な叫び。性的で、エゴイスティックで、バイオレントで、悲しくて、でもメチャメチャおかしくて。俺だって30歳で前の仕事辞めてから結局田舎でレンタルショップで非正規雇用でずっとやってる訳ですよ。世間から見放された様に感じる中で、主人公の「誰か俺を見てくれ!」っていう気持ちは物凄い理解できるんです。

 

正直俺の中でもまだこの映画を消化しきれていない所は全然あります。ただ、この作品を見終わったあとのクラックラする感じが未だに忘れられなくて。とにかく今年の「哭声/コクソン」枠は文句なしでコレ!と自信を持って言い切れる程のカオスな映画である事は間違いないです。

 

 

 

1位 スリー・ビルボード

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2018年の最重要作。本当この映画を見て良かった。素晴らしい映画です。

発端はとある少女が殺害される痛ましい事件から始まり、被害者の母が3枚の看板に抗議の広告を出すことから始まるんですが、まずこの古びた看板を映し出す一番最初のシーンが印象的です。朝もやの中から、3枚の看板を色んな角度から淡々と映していく。この場面でもう「ヤバいヤツだ…」という予感がありました。この角度を変えて…というのがまた良いんですよ。色んな角度から見る事によって、始めて「あっ、こっちから見ると意外に錆とか目立って見えるな…」みたいなのが分かったりする。ここでもうこの映画の本質的なテーマの提示にすでになってるって所が憎らしいですね。

 

何を取っても物凄く多面的、多層的な映画だったと思います。シリアスだったり、バイオレントなシーンの中でも、つい笑ってしまう馬鹿馬鹿しさであったりだとか、くだらなさみたいなのを入れ込んであったり。かと思えば、逆にどうみてもコミカルな場面なのに、笑顔のすぐ後ろではゾッとする様な悲劇性だったり怒りであったりを見え隠れさせていたり。ジャンルがシーン毎というか、登場人物がちょっと喋ったり、ちょっとした挙動を見せたりってだけで、どんどん映画自体のジャンルが変わっていく様な、不思議な感覚が劇中ずっとありました。ジャンル自体がノージャンルというか、温かみのあるヒューマンドラマにも見えるし、惨劇の予感を感じさせるスリラーにも見えるし、ブラックな笑いが散りばめられたコメディにも見える。「どういう映画なの?」と聞かれると、もしかしたら少し困る系統の映画かもしれません。

 

じゃあなんでこんな作劇を取ったのかというと、この話そのものが人間の感情の移り行きを主題とした映画だからだと思うんです。「人は変われるのか?」「誰かを許す事はできるのか?」といった感情の変化、贖罪と言い換えてもいいですけど、そういう問いが主なテーマの映画だったと思うんです。ノージャンルだからこそ、キャラクターの内面をより色んな角度から描く事ができた。この先どういう風な展開になっていくのかが全く予想がつかないという物語その物が持つエンターテイメント性、興味の持続も含めて、メチャクチャ良く出来た脚本だと思います。小さな街で繰り広げられるこんな小さな話なのに、最終的には「赦し」はこの世に本当に存在するのか?っていう世界の話になっていく。こんな映画、少なくとも俺は見たことがありません。

 

印象的なシーンも沢山あるんですが、「ストローの向きを変えてあげる」ってだけで涙腺が刺激された事なんか無いですよ。ああいう小さい小さい優しさの積み重ねが人間を変えていくキッカケの一つになり得るっていう、物凄く暖かいシーンでしたよね。役者陣も本当に素晴らしくて、終盤のサム・ロックウェルとかもうヤバイでしょ。役者、脚本、演出、美術、どれを取っても超一級品の大傑作でした。

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という事で今年の1位は「スリー・ビルボード」でした。ウディ・ハレルソンの今年の収入の1厘でもいいから欲しい。(っていうか今年は誰の年かって聞かれたらウディ・ハレルソンかもしれないですね。)今作もアカデミー賞取ってるし、俺が1位とか言わなくても…って昨日まで思ってたんですけど、もうアイツ殺しておいたんで大丈夫です。またTOP30くらいまでまとめておいて、2018年の映画レビューは締めですかね。

 

1位 スリー・ビルボード

2位 愛しのアイリーン

3位 blank13

4位 ちはやふる-結び-

5位 アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

6位 万引き家族

7位 デッドプール

8位 リズと青い鳥

9位 タクシー運転手 ~約束は海を越えて~

10位 海を駆ける

 

11位 映画 クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~

12位 悪女

13位 15時17分、パリ行き

14位 イコライザー

15位 恋は雨上がりのように

16位 ミッション:インポッシブル/フォールアウト

17位 いぬやしき

18位 君の膵臓をたべたい

19位 カメラを止めるな!

20位 search/サーチ

 

21位 君の名前で僕を呼んで

22位 ザ・スクエア

23位 ボヘミアン・ラプソディ

24位 ウィンド・リバー

25位 若おかみは小学生!

26位 ブリグスリー・ベア

27位 フロリダプロジェクト 真夏の魔法

28位 1987、ある闘いの真実

29位 レディ・バード

30位 未来のミライ

 

2019年も面白い映画を見ましょう。面白い映画は面白いので。