2018年上半期で見た変だけど気に入ってる新作映画まとめ

2018年も半分が終わりました。僕は雪国に住んでるんですけど、こういう時期は「あと何日で梅雨明け」とか「あと何日でお盆休み」とか、夏の到来を楽しんたり嘆いたりしてる事が1個もなくて、ただただ「あと5カ月で雪が2m降る」っていうのを毎日毎日延々と考えてはゲロ吐いてます。皆さん、今日も暑かったですね。

 

コレを書いてるのが7月12日なんですけど、ここまで2018年は新作映画は大体60本くらい見てるはずで、(旧作含めると多分100本くらいです)去年よりはいいペースでここまで来てる感があります。で、多分俺が死んでなければ今年も年末か年始にTOP20とワースト5を発表するんですけど、1年の半分終わると「メチャメチャ良くもないしムカつくほど悪い映画でもないんだけど、忘れられないくらい変な映画」みたいなのがちょいちょい出てくるんですね。良い映画と悪い映画、それぞれに楽しめる部分は勿論あるんですけど、それとは別に「俺には理解できないだけで誰かには刺さるのかもしれない映画」みたいなのを、軽く紹介できればなって感じもあって。映画レビューサイトの星の点数だけで見る映画を決める、っていうのでは絶対に出会えない映画を知ってほしいってアレですね。

 

という事で、「2018年上半期で見た変だけど気に入ってる新作映画まとめ」、始めていきたいと思います。こいつら多分「スリービルボード」とか「万引き家族」よりも友達少ないと思うんで…。

 

 

海を駆ける

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焔の錬金術師ことフィーン・ディジオカ主演の日本、フランス、インドネシア合同制作の映画です。コレ僕はメチャメチャ好きで面白かったです。

インドネシアの小さな街が舞台なんですが、ディジオカがこの街の海で生き倒れていた不思議な力を持つ正体不明の男を演じてるんですね。で、このディジオカを、インドネシアの時代背景、オランダからの植民地支配であったり、津波による自然災害であったりだとか、そういう「抗えない力」のメタファーとして扱ってるんです。そしてその中で、主役となる若者たち4人の友情や恋愛であったりを物凄く自然に、かつ絶妙な距離感で並列に見せていきます。

 

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 ディジオカはいわば神みたいな物なんで、本当にランダムにかつ、そして一切の悪気もなく、命ある物から生命を奪ったり、または逆に与えたりしていくんです。で、その30cm隣くらいで日本から来た女と現地の青年が心を通わせていく。「死」の概念のすぐそばで、人間の若さの一瞬の煌めきみたいなのをちゃんと眩しくて羨ましい物として撮っている、っていうコントラストが独特な映画です。

物凄く意地悪な青春映画といっていいと思います。意外に死人が結構出るし。たけど、「青春映画見たさ」みたいなのバイオリズムって、映画好きなら絶対あると思うんですよね。普通の邦画のティーン向け青春映画に飽きてしまった人、人間が四肢断裂する映画のインターバルとして爽やかな映画をちょっと見ておきたい人、そういう人には凄くオススメしたい1本です。「人はいつか死ぬしな…」その物みたいな映画なので「人はいつか死ぬしな…」ファンの方には是非オススメですね。

 

 

 

北の桜守

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吉永小百合の主演120本目となったのがこの「北の桜守」です。こういう感じのルックなので、手堅い親子の絆で泣かせるヒューマンドラマかな…と思うんですけど、マジでどうかしてるってくらい変わった映画でした。

基本的には1945年のパートと1971年のパートとで交互に見せていくっていう過程なんですけど、途中で舞台での演劇パートが唐突に入ってきます。普通の家屋で阿部寛吉永小百合が演技をしていると思ったら、急に暗転して劇団四季みたいな肉体の躍動で自然現象を再現する、みたいな演劇が始まるんです。この演劇パートは基本的に吉永小百合演じる”てつ"が記憶を思い起こす場面で使われるんですね。で、"てつ"は物語が進むに従って、夜中に公園の桜の木に墨汁を塗ったり、八百屋で会計を通さずに野菜を持っていってしまったりだとかで、段々と認知症の症状が激しくなっていきます。

 

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何故こういう演劇シーンが挟まれるのか?"てつ"には現実が演劇に見える、つまり記憶に1つフィルターがかかっている状態だと考えれば、この「北の桜守」っていう作品は、「認知症患者の脳内をエンタメ風に味付けして可視化させた」っていう事になっていると思うんですよ。実際、終盤では認知症が進めば進むほど、脳内での演劇シーンが派手になっていってましたし。ビョーク主演の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」っていう映画がありましたけど、個人的には結構似てる所があると思います。

最後のシーンは演劇シーンに戻って、壇上で吉永小百合と今は無き夫役の阿部寛や息子たち全員が揃って歌を歌って大量の紙吹雪が舞いながら幸せいっぱい!みたいな感じで終わるんですけど、個人的には吉永小百合が現世で生きる事を辞めて自分の記憶の中だけで生きる事を決めた様にしか見えなくて、「俺は今何を見ているんだ…?」って感じでした。多分ビョークも死ぬ寸前はこういう映像が頭を過ぎってそう。

 

 

息子を演じる堺雅人が、何故か母におにぎりを握らせて、ひとりで「うまい!」つって泣きながら自分の店で商品化したら普通に失敗したりとか、中盤で本社から偉い人が視察に来るその日にお母さんと旅行に行っちゃったけど今までの話の流れ全部無視した展開で勝手にお偉いさんが店に感動して何となく上手くいったりだとか、70代の吉永小百合に50代の佐藤浩市と30代くらいの男が「先輩、あのいい女、ふたりでヤっちゃいませんか?笑」とか会話してて、完全なるおばあさんを女として見てたりとか。変な所山ほどある映画ではあるんです。基本、全編通して吉永小百合の逆ハーレムですし。ただ、ぶっ飛んでるっていう意味では今年一、二を争う作品なのは間違いないので、なんか嫌いになれない映画です。

 

 

 

CINEMA FIGHTERS

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 EXILEのHIROが率いるLDHっていう、EXILEとか三代目とかE-girlsとかが所属してる会社と、俳優の別所哲也(1年に1回くらいゴチになります!でゲストで出て大声を出す人です)が代表の「short short」っていうブランドがタッグを組んで作成されたのが今作です。

6本のオムニバス映画になっていて、LDHの楽曲をモチーフにした15分の短編×6って感じになってます。楽曲がまずあって、作り手たちがそこに寄せていくっていう作り方ですね。簡単に言っちゃうと、物凄く「世にも奇妙な物語」にありそうな作品がメチャメチャ多いです。TVサイズっていうか、映画館で見る意味があんまり無いような作品もあるんですけど、個人的には最初の「パラレルワールド」と「snowman」がまあまあ良かったですかね。最後の「SWAN SONG」も良かった。

ただ役者の力に頼る所が大きい感じもあって、「パラレルワールド」は山田孝之が主演なんですけど、高校生の役をやってんですね。天体観測が趣味で、学校でも天文部に所属してて、すごく大人しいような人物像なんですよ。そんなヤツが大人になって感傷に浸りながら「大好きだったこの曲を聞くと、彼女と一緒に星をみたあの日々を思い出す…」みたいな感じでラジカセをオンにすると、当然EXILEのATSUSHIのあま~い声の楽曲が聞こえてくる訳じゃないですか。どうなんですかね?僕には分からないですけど、こういうクラスで地味で星を見るのが好きなヤツがEXILE聞きますかね?

 

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劇場版の「20世紀少年」とか「BECK」とか見た時にも思ったんですけど、既存の楽曲を用いて「登場人物が好きだった曲として劇中で曲を流すことで、観客にも感情移入を促す」って凄く難しいと思うんですよね。だって、そういうのって結局好みで、曲に対しての感想なんて当然個人個人で違う訳だから、あまり大きな意味を持たせると「イヤ、聞いたけど…俺はperfumeが好きだから別に…」みたいな感じになる事もある訳じゃないですか。その他5本の作品は、モチーフにしなければならない楽曲をそういう使い方はしていないんです。流石、河瀬監督!って感じがあっただけに、もう少し楽曲の使い方に気を使ってほしかったって感じはあります。EXILEの映画だっつってんのにビートルズとか銀杏BOYZとか流せないのは分かりますけど。

凄く挑戦的なオムニバス作品だと思うし、こういうのがもしウケて、更に所謂ファンムービーの殻を破る事が出来れば、日本映画はまた違った形で発展できると思うんですよ。だから「その意気や良し!」って感じでメチャメチャ応援したいんです。「HiGH&LOW」シリーズも劇場版だけですけど全部見て最高に面白かったですし。

HiGH&LOW THE MOVIE

HiGH&LOW THE MOVIE

 

 

今はこの次回作っていう括りの「ウタモノガタリ」っていうこれまたオムニバス映画が公開中みたいなので、こちらも期待したいです。ただ今作、もうレンタルでリリース済みなんですけど、6作まとめてって形でなくて1本ずつのレンタルっていう形態がちょっと…。1本15分の短編映画に新作360円払うんだったらソシャゲでガチャしよ…みたいな感じになっちゃいそうなのがアレですね。

 

 

 

ピーターラビット

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イヤ、もう変っていうか「何?」みたいな感じです。そんな映画です。

 この映画の一番の特徴は、「実は人間と同程度の知能がすべての動物には備わっており、ときたま人間に明確な殺意を持って襲い掛かることもある」みたいなのを、結構"どったんばったん大騒ぎ"くらいの軽いノリで描いてるって点ですね。本作ではピーターラビットを始めとした動物たちは、人間の畑を荒らしまくる害獣なはずなんですけど、その障害になりそうな人間を平気で抹殺しようとしてくる。

こういう映画って、例えば最近あった「僕のワンダフルライフ」みたいな映画だと、動物間でだけは言葉は通じる、とか、一方的だったはずのコミュニケーションがふとしたきっかけで思いが伝わって、絆がより強固になるだとか、そういうのが普通じゃないですか。でもこの映画って、本当に動物たちは人間と同じように言葉を喋る事ができて、人間と同じように自分たちの都合の悪い障害は排除してくる、っていうのを”証明させる”のがゴールになってるんですよ。「まあ、アナタ本当に私たちの言葉がわかるのね!」じゃないでしょ。人間社会の終わりの始まりですよ。

 

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そういう、人間が狂う寸前の所を攻め続けてるって感じが、マジで見てて頭クラックラしてくるんですけど、スタメン全員の頭へ死球狙いで没収試合狙いで勝つ!みたいなのが、一周回って結構好きだったりします。児童文学の映画化なんですけど、カルトムービーになってく感さえある。マジで人間を殺しちゃって、ピーターラビット殺人罪で起訴、法廷で争うみたいな次回作とか絶対面白いんでやってほしいですよね。現場に残された手袋を証拠品として検察側から嵌める事を強要されるんだけど、ピーターの手には手袋が小さくて全然入らないみたいなヤツ。

 

という事で、以上4本の紹介でした。変な映画ばっかりで、上手くいってない映画もあるんですけど、それを飛び越えて伝わってくる物も沢山ある作品たちなので、もしレンタル等で手に取る機会があったら是非見てみてほしいですね。それと合わせて、やっぱり前評判を聞けないっていう状態で映画館に行く楽しさ、そういう事故的なシチュエーションでしか味わえない楽しさみたいなのもきっとあると思うので、みんなドンドン映画館に行ってほしいとも思います。