クソ野郎と美しき世界

この映画のチケット買うときなんですけど、近所の映画館(車で40分)は機械相手にチケットを買うヤツじゃなくて、売場の店員さんに口頭で映画のタイトルと時間を伝えてチケットを買うシステムなんですよ。俺の担当だった人、新しく入ったっぽい女の人だったんですけど、「クソ野郎と美しき世界、19時の回でお願いします」って言うじゃないですか。「ンニュ野郎と美しき世界ですね」みたいな感じで、ちゃんとクソって言ってくれませんでした。俺は女の「クソ野郎」という発音が聞きたかった。

 クソ野郎と美しき世界

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監督  園子温 

            山内ケンジ

    太田光

            児玉裕一

企画     多田琢

            山崎隆

            権八成裕 

製作宣伝  新しい地図

出演 浅野忠信満島真之介馬場ふみか、でんでん、神楽坂恵野崎萌香冨手麻妙、スプツニ子!、稲垣吾郎中島セナ古舘寛治香取慎吾尾野真千子新井浩文健太郎草なぎ剛

制作国 日本

上映時間 105分

解説
元「SMAP」の稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾が出演するオムニバス映画。監督・脚本には、「愛のむきだし」「新宿スワン」の鬼才・園子温、舞台「トロワグロ」で岸田國士戯曲賞を受賞した山内ケンジ、お笑いのほか文筆業などマルチな才能を発揮する「爆笑問題」の太田光、CM界で活躍する気鋭の映像ディレクター・児玉裕一という4人を迎えた。監督:園子温×出演:稲垣吾郎のエピソード1「ピアニストを撃つな!」、監督:山内ケンジ×出演:香取慎吾のエピソード2「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」、監督:太田光×出演:草なぎ剛のエピソード3「光へ、航る」、そして「クソ野郎★ALL STARS」が出演し、すべてのエピソードの物語がつながる児玉裕一監督の「新しい詩(うた)」という4つのストーリーで構成される。

 


「クソ野郎と美しき世界」予告編!

 

60点

 

映画って、作品その物と同じくらいに、その作品に関わる作り手側のバックグラウンドが知れるとより面白く見られる媒体だなと思いました。

ジャニーズ事務所を退社し新しい地図として独立した元SMAPの3人が独立後、2週間限定公開という形で上映されたのが今作「クソ野郎と美しき世界」です。SMAPの解散云々に関しては、小さい頃は「SMAP×SMAP」の初回放送がどうしても見たくて、眠気で気絶寸前になるまで居間で家族に隠れて見てたり、メンバー単独の出演でしたけど「うたばん」は欠かさず毎週見てたりとか、アニメと同じくらいバラエティ番組を幼少期に見ていた俺としては、まあそこそこショックな出来事でもあったんですけど。ただコンサートに行ったり、CD買ったりとかはしなかったんで、そこまでのファンという立場でもなくて、悲しくて悲しくても止まる涙は持ち合わせていない様な、そんな感じです。SMAP解散で涙が止まらなかったブログを読みたかった方は「女 SMAP どうして」で検索して下さい。よかったですね。

ただ、そんな"なんとなく"のファンだった俺がこの若干見に行きにくい期間限定公開だったこの作品を見に行ったのかっていうと、毎週聞いていた"ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル"でゲストとして登場した稲垣吾郎の「映画と銃」特集を聞いて、マジで稲垣さんの事が好きになってしまったので…っていうのがメチャメチャあって。ラジオCLOUDとかでまだ聞けると思うので、稲垣吾郎大好きになる音声を是非聞いてみてほしい。

 

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で、今作の感想なんですけど、正直映画そのものの面白さという意味では、今年公開されて映画館で見る事のできた作品の中ではかなり下の方でした。4つのオムニバスで各パート20~30分という構成なんですが、良かったと思えるパートは2つ目の香取慎吾主演の「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」くらいで、他3つは正直、かなりキツかったです。

2つ目の何が良かったかというと、コレって凄くメタ的な視点を持つ短編なんですね香取慎吾役で香取慎吾が出てきたりするのもそうなんですが、この作品では「歌喰い」という"人間の歌を喰う事で生きていかざるを得ない少女"の存在によって、主人公である香取慎吾や周囲の人間が歌を歌えなくなる、というのが主なストーリーとなっているんです。コレって、今のSMAPの歌が歌えなくなった"新しい地図"のメンバーの現状そのものな訳な訳じゃないですか。

2018年4月にしか見ることのできない「今」感もあるし(だって例えDVDになっても、その時にSMAP周りのアレがどうなってるのか分からないじゃないですか)、この作品を映画にする意味みたいなものを凄く感じ取れて、個人的には凄く楽しめた短編でした。

 

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 ただ、やっぱりソレと比べてしまうと、その他の3つのエピソードには多少なりともキツさを感じてしまって。特に太田光監督で草彅剛主演の「光へ、航る」は、テレビバラエティっぽいボケとツッコミをそのまま映画でやってるのがマジで無理でした。最初の頬に血しぶきがかかった草彅の顔のアップから始まるカットはマジでエモかったんで、凄く期待していたんですけど…。野球ボールを巡る展開も最初から最後まで「何ソレ?」って声に出てしまう感じが続いて、全く乗れませんでした。

4つ目のエピソードの「新しい詩(うた)」も、実は各エピソードの裏側ではこんな事が起きていたんですよ~っていう種明かし的なアレをやってるんですけど、「昨日俺が食べたラーメンの麺の硬さ、何だと思う?少し柔らか目だよ」くらいのサプライズしかないので、メリハリが全然ない感じがありました。ストーリーラインにおいて、この映画の集大成!っていう風には全然機能していない。

 

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でも、この作品を単なる「つまんないアイドル映画」とは全然思えないのは、やっぱり彼らが独立して全く新しい人生を今正に歩もうとしているっていう現状と、その決意みたいな物がひしひしと感じられるからなんです。

2つ目のパートはもうそのままなんですけど、全てのパートが終わってから流れる「地球最後の日」っていう歌も、彼らの今をメタ的に捉えられる歌詞だったりして、"新しい地図"の彼らは彼らなりに、今自分たちが陥っている現状を、なんとか娯楽作品に結び付けられないかと模索しているんじゃないのか、みたいに感じられたんです。準備期間も殆ど無かったっぽいんですけど、それでもその試みが"少しだけ上手くいった”っていうのがこの映画だった様な気がします。何とか足掻こうとしている人間の足掻きそのものみたいな映画を嫌いになれる訳ないじゃないですか。

 

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上映時間105分、誰が見ても全編を通して楽しめる映画です!とはマジで全く言えない作品ではあるんですけど、番組内で謝る機械にさせられた姿とかを経て、彼らのこういう姿を見ると、マジで頑張ってほしい!!っていう気持ちいっぱいになる映画である事は間違いないんです。

この映画を経て、例えば彼らメンバーがそれぞれで単独で映画を主演したらどんな感じになるんだろう…みたいな妄想が今改めて出来るような感じもあるので(俺は例えば香取慎吾は2枚目の主役よりかは、今作みたいな全編通して無気力寝不足の不健康人間みたいなキャラクターか100%底抜けのクソバカみたいなキャラクターで見たいなって思いました)「今でしか見られない」という意味で、絶対映画館で見る意味のある作品になっていたと思います。

クソ野郎と美しき世界 THE BASTARD AND THE BEAUTIFUL WORLD -Original Soundtrack-

クソ野郎と美しき世界 THE BASTARD AND THE BEAUTIFUL WORLD -Original Soundtrack-