リメンバー・ミー

忙しくてブログの更新が…みたいな文面ってよく見るじゃないですか。僕の場合は面倒臭いだけですね。謝る気もないのにこうやって文字上だけでそういう謝るみたいな気持ちを出すのって凄く不誠実だと思いませんか?僕は思いません。皆さん申し訳ありませんでした。これからは気が向いたら文字列を書きます。

 

リメンバー・ミー

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監督 リー・アンクリッチ

共同監督 エイドリアン・モリー

製作 ダーラ・K・アンダーソン

製作総指揮 ジョン・ラセター

原案 リー・アンクリッチ

制作国  アメリカ

上映時間  105分 

解説
トイ・ストーリー3」でアカデミー賞を受賞したリー・アンクリッチ監督が、陽気でカラフルな「死者たちの世界」を舞台に描いたピクサー・アニメーションの長編作品。日本におけるお盆の風習にあたるメキシコの祝日「死者の日」を題材に、音楽を禁じられたギター少年ミゲルの冒険や家族との強い絆を、数々の謎と音楽を散りばめながら描いた。物語の鍵を握る劇中歌「リメンバー・ミー」の作詞・作曲を、「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー ありのままで」を手がけたクリステン・アンダーソン=ロペス&ロバート・ロペスが担当。第90回アカデミー賞では長編アニメーション賞および主題歌賞を受賞した。天才的なギターの才能を持つ少年ミゲルはミュージシャンを夢見ているが、過去の悲しい出来事が原因で、彼の一族には音楽禁止の掟が定められていた。ある日ミゲルは、憧れの伝説的ミュージシャン、デラクルスの霊廟に飾られていたギターを手にしたことをきっかけに、まるでテーマパークのように楽しく美しい「死者の国」へと迷いこんでしまう。ミゲルはそこで出会った陽気で孤独なガイコツのヘクターに協力してもらい、元の世界へ戻る方法を探るが……。

 


映画『リメンバー・ミー』日本版予告編

 

 

70点

 

 

世界最高にして最強のアニメスタジオ、ピクサーの最新作が今作の「リメンバー・ミー」です。ピクサーといったら3Dアニメ作品の革命的な作品をジャンジャカ排出してきた、確実に映画の歴史に残っていくであろう制作会社な訳じゃないですか。「ウォーリー」で何度泣かされたか分からないし、「トイストーリー3」は技術の進歩も勿論そうなんですけど、ストーリーラインではまさかの主人公たちに疑似的な死の場面をも体感させる訳じゃないですか。

そもそも「トイストーリー」を公開する前までは3Dアニメで劇場公開なんか成功する訳がない!っていう当時の世評の中で大成功を収めて、今日のアニメーション映画における第一歩を担っているという歴史がもうあったりして。もうピクサーの映画というだけで、見るこちら側としては「面白いに決まってるでしょ」という意識で席に座ってる。そして「そうです 面白いですよ」っていうマジの名作を毎回毎回排出してるのがピクサーっていう会社なんですよ。

こんなにハードルが上がりきった中でも、それに100%の力をもって、ディズニー買収後も変わらず素晴らしい作品を作ってくれている訳です。もうそういう歴史があるというだけで、ピクサー作品を見るという事は楽しい2時間の確約とほぼ同義な訳ですけど。あんまりコレまで映画を見てこなかったのでピンと来ない人もいると思うんですけど、例えていうならアトリエかぐやと同じくらいの安定感があるのがピクサーって感じですね。

 

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今作でも、アニメーション技術の発展をこの会社がすべて担っているといっても過言ではない、と言ってしまってもいいくらいの「え!何コレ!」があるんですよ。主人公ミゲルが死者の国に行ってからの建築物の煌びやかさ一つ取っても非常に魅力的。日常から離れた「もう一つの世界」を描く映画において、その別世界をどれだけ魅力的に見せるか、映画の主軸として生かすかというのはその作品の完成度を左右する大きなファクターになるのですが(Destiny 鎌倉ものがたりはそういう意味では非常に不満が残りました)この作品ではとにかく舞台となる死者の国が”楽しい”。

主人公ミゲルと共に、我々観客も最初は戸惑いながら、でも段々とこの国の魅力に中てられる様に夢中になっていく。この映画を見終わった後に、死者の国の虜になっていない人間はいないと断言できます。

単純にアニメーション技術としても、筋肉の一切ないガイコツ人間のカックカクした歩き方であったり、老人のしわ一つひとつの表現、ちょっとした挙動のみで感情を表してしまう超人的なアニメーション表現の数々に、本当に胸を打たれました。見てて「…イヤこれアニメなんだよな…」と思い出してメチャメチャ驚く感じ。脳が追いついていかない感じを是非映画館で体感してほしい。

 

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ただ、個人的にはメチャメチャ好きなピクサー作品と比べると、脚本的には数段下がるかな…という印象はどうしてもあります。気になったのは、主人公ミゲルの挫折と克服がどこにあったのかという点です。

劇中で何度も語られるのは「夢」と「呪い」っていうテーマだと思うんです。そこに人間の生き死にを絡ませていくというのがストーリーの主軸なんですが、何かに恋い焦がれる事っていうのは、一見して「夢があっていいね」なんて感想を抱きがちなんですが、別の側面からしてみれば「その物事から逃れることができない」っていう雁字搦めの状態でもあったりはして。「ミュージシャンとして成功したいなんて夢物語を追いかけたせいで父は帰らぬ人になった」という呪いが、この主人公一家にはずっと付いて回っている訳ですよね。実際、そういう台詞をミゲルの祖母が強い口調で投げかける場面もあります。

そういった相反する思いを抱えながら、「自分の家系には才能があるらしい」というのが明らかになってからは、自分は家族なんか捨てて成功するんだ、という面持ちで主人公は死者の国に旅立ちます。で、個人的にはここに今作の欠点があると思っています。

 

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要はこの主人公は、音楽という才能の部分で挫折を全く味わっていないままだと思うんですよ。家族から逃げ出したいが為に、自己暗示的な感覚でいた「自分の血筋には音楽の才能がある」は、結局は本当に血筋に才能があったというオチだったし、最終的には家族に音楽を認めさせて和解という形で終わっていく。これだと彼には本当に音楽の才能がある天才だったから丸く収まったという以上の理由が無いじゃないですか。劇中では彼が自分の努力だけで音楽の腕を磨いたという直接的な描写もないですし。

「夢を信じ続けること」と「夢を信じ続けることへの弊害」みたいな所を描いてくれるのか…?っていう期待が序盤の展開から感じたのがちょっとあったので、この点においては食い足りない部分は凄くありました。「天才」と「天才の子孫」が「それでも這い上がろうとした凡才(で犯罪者)」を容赦なく打ち倒していくだけの物語っていう感じがどうしてもあったんです。可能なことなら、その今作の黒幕にもう少しスポットライトを当てながら、才能っていう所を相対化して見せるような作劇があっても良かった気がします。

演出的な所においても、空を飛ぶ"アイツ"でしか主人公を救ってくれなそうなロケーションにおいて、どうやって主人公を助け出すのかな…と思ったら普通に"アイツ"が都合よく来てくれるだけでおわりとか、「アア~」って膝から崩れ落ちる終盤のヘクターの描写を何度もやり過ぎて逆にウザいとかあるんですけど。

 

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まあ散々気に入らない所を書きましたけど、悪い映画では全くないんです。去年見た映画で一番面白かった作品に挙げた「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」をちょっと連想させるような死者への弔い、生者としての死者へのリスペクトという部分だけでも5億点って感じだし(だって俺はKUBOがクソ好きだから)単純にメチャメチャ楽しい作品でもあるし。地元では吹き替えでしか上映が無かったんですけど、もう素晴らしいキャストだったと思うので。見たい人は是非見てくれ!っていう感じですね。終盤は「俺は物語で泣いてるのか老人への悲しさで泣いてるのか分からん」みたいな感じがあるんですけど。どっちかに決める必要なんてなかったね。

 

 

 6月発売なのを今知ってテンションが少し上がりました