2017年新作映画トップ20(10位から1位)

2017年の新作映画の1位から10位を発表する記事です。題名に書いてあるんですけど、どうせ誰もちゃんと読まないので確認です。

 

 

11位から20位の記事です。

 

 

askicks1248.hatenablog.com

 

ワースト5の記事です。

askicks1248.hatenablog.com

 

10位より上は本当に迷って何度も入れ替えてたんですが、段々飽きてきたのでもういいです。全部1位なので。今日の気分だけで全部順位は決めてます。人を選ぶ作品もありますが、基本的にはメチャメチャに楽しい映画ばかりです。面白い映画は面白いので皆さん見ましょう。

2018年は100本以上新作映画を見ておきたいです。新潟じゃ無理なので都内で。車で片道40分かけて週2で映画館に行くのマジで無理なので。

 

では10位から。

 

 

10位 パターソン

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『パターソン』本予告 8/26(土)公開

 

2017年、一番目立っていた俳優は誰だったか?「ELLE エル」のイザベル・ユペールや「バーニングオーシャン」「パトリオット・デイ」のマーク・ウォルバーグ、「ブレードランナー2049」「ナイスガイズ!」のライアン・ゴズリングも捨てがたいんですが、個人的には2017年はアダム・ドライバーの年だった気がします。

スター・ウォーズ/最後のジェダイ」もこの人が映ってるシーンはメチャメチャ気合入ってたし、ソダーバーグ復帰作「ローガン・ラッキー」や、スコセッシの「沈黙」、アメリカでの公開は2014年なんですが、去年の暮れにDVDリリースされた「ヤング・アダルト・ニューヨーク」なんていう作品もありました。その中でもこの「パターソン」はアダム・ドライバーが本当に良い役者だというのが俺みたいな浅い映画ファンにも分かるくらいの、素晴らしい演技をしていました。

毎日が掛け替えのない日々で、その何でもない1日の価値を最発見する、っていうあらすじだけ書くと、どこにでもありそうな感じの映画になっちゃうんですが、この映画が他の映画と何となく違う点って「不穏な感じがずっと奥底にある」って所だと思うんです。

劇中は淡々と繋いでいく日常の風景の連続なんですが、ふとした所から、その日常が少しずつ崩れていきそうな"綻び"がそこかしこにある、っていう見せ方が多いっていうか。そこの路地裏からすぐジェノサイドが飛び出してきそうな、そんな感じのショットが結構あるんですよね。

実際に中盤終盤になると、ひとつひとつ繋いでいけたはずの日常が、ある日突然無に帰る、あるいは帰りそう、みたいなシーンがかなり立て続けに続くような所もあって。奥さんとの一見上手くいってそうな関係も、突然メチャメチャにぶっ壊れるんじゃないか、みたいな予感だけはある。確かに「幸せ」はあるんだけど、そのすぐ横にある「不穏さ」の方が強く感じられるんですよね。俺たちの生活も、もう少し俯瞰した視点から見れば、もしかしたらそういう危うさがそこら中にあるのかもしれない。この映画の主人公は、最終的には自身の好きなモノに対する情熱で、もう一度「日常」に戻っていく訳ですが、自分だったらどうなるか?と考えると、ちょっと背中がブルッと来る。だからこそ、1日1日は毎日が違う日で、意味があって、っていう所にすごく価値を見出すような映画だとも思うんです。

 

 

9位 ナイスガイズ!

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ライアン・ゴズリングといえば今年は「ラ・ラ・ランド」となっちゃいがちですけど、個人的には「ナイスガイズ!」の方を断然推したいです。今が旬な俳優が出つつ、テーマ性もあり、だけど決して重くはならずにバンバン人が面白おかしく残虐に死んでいくバディムービー。それが「ナイスガイズ!」。ある程度力は抜けながら、笑えて、アクションがあって最後は善が悪を倒す、もうコレ以上の何もいらないっていう所にプラスして「悪趣味な血みどろ殺人描写」も入るって、カレーに目玉焼きとから揚げが乗ってます。そういう映画です。最高のヤツ。

主演2人が凄く楽しそうに演技してるのが凄く印象的です。ライアン・ゴズリングの「ファック!」「ジーザス!」(全部裏声)も今思いだしてもニヤけてきますし、ラッセル・クロウも愛嬌のあるコメディ演技してて、このアンサンブルはずっと見てたかったですね。敵キャラクター3人も、それぞれに「顔が青い」「黒人で少し強い」「白人でメチャメチャ強い」と段階を踏んでレベルアップして襲い掛かってくるのが、また楽しい。

映画のテーマ的な所でも、ちゃんと映画的な良い見せ方をしていました。映画始まってすぐの最序盤に少年がエロ本読んでるんですけど、突然家に車が飛び込んでくるんです。で、その運転者は丁度そのエロ本で裸になってた巨乳の女で、服も丁度いい感じに破れて息も絶え絶え。で、少年は興奮しながら胸に手をかけようとするんだけど…「イヤここは」つって、女に上着を掛けてあげるんです。

ここは事件のちょっとした発端をお見せしますよ、という体の序盤5分なんですが、(もうこの少年も映画には出てこないし)こういうちょっとした所で「ダメな人間でもここぞという時は誰かの為に”正しきこと”をやるんだ」っていうこの映画全体のメッセージをもう明らかにしていて、脚本として凄く上手く出来てるなと思いました。

 

8位 サバイバルファミリー

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「サバイバルファミリー」予告

若干去年より不作気味だった邦画なんですが、個人的には2017年のベスト邦画です。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖監督の最新作なんですが、監督のどの作品よりもブラックな作風になった1本だったと思います。基本コメディなんですけどね。

ある日家中の電化製品が使えなくなって「停電か?」なんて思うんだけど、まあすぐ復旧するだろ!なんて思って街に出てみたらどうやら様子がおかしい…みたいな感じで始まるんすが、この作品の面白いのは「情報の出し入れがメチャメチャ上手い」っていう所だと思うんです。

何かがおかしい、何かがおかしい…と混乱してる所から始まって、この映画はずっとずっと手探り状態で物語が進むんです。「とにかく何でもやってみるしかない」「噂で聞いたんだけど…」みたいな、明確なゴールが無いまま、主役となる一家は右往左往するんですが、それって物凄く非映画的じゃないですか。もしある日突然、こういう目にあったら、やっぱり現実は映画じゃないから「とりあえず」の連続で動く事しかできなくて。そういう意味で「あそこ行けば安全らしい」「ここに居てはいけないらしい」のらしい”だけで進むこの映画からは、ずっと身に迫る不安感を感じました。ありえない様な設定で始まるのに、最終的には自分が今この身を置いている日常の不確かさを確認させられる。

それでいて、決して説教臭くならずに、誰が見ても楽しめるエンタメ映画として成立させてるという所に偉さも感じるんですよね。いくらでも「やっぱロハスな生活最高!」的な落としどころにしようと思えばいくらでも出来そうなんですけど、そこはサラッとしてる。あくまで今の現代人の生活を否定しつつ、だけど面白おかしくブラックに肯定もしている描き方が個人的にはメチャメチャ好きです。

 

 

7位 新感染 ファイナル・エクスプレス

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本当にみんなが面白いと思った物を改めて「面白いですよ」という事に意味があるのか?って感じなんですけど、そういうヤツです。メチャメチャ最高。

 

世界中で大ヒットを飛ばした韓国のゾンビ映画です。いわゆるジャンルムービーなんですけど、新幹線っていう舞台設定が凄く新鮮でフレッシュでした。密室空間の中でのVSモンスターがありつつ人間ドラマを見せていく、っていうと「ミスト」なんかが挙げられると思うんですが、ミストでの舞台となったスーパーマーケットよりずっと"ゲーム的な見せ方"をしていた印象でした。

1つの車両を1ステージとして、その途中途中で隠れられる場所(安全地帯ってヤツです)があって、新幹線ならではのギミックを使いつつ、物語の進行と共にゾンビの習性を主人公たちが学習していきそれを逆手に取ったり…ってな感じで、最初の場面でチュートリアル的な展開がちゃんとあって、段々と主人公たちが前に進んでいく感じが、凄く丁寧な作りのアクションゲームをやってる様な感覚がありました。

電車内外におけるアクションにおいても、それに付随してくる"ステージのクリア条件"をちゃんと提示してくれるのも良かった所です。序盤は「とにかく逃げる」の一辺倒なんですけど、中盤での途中下車を経て、ゾンビがうろつく車両から車両へと移動しながら女性キャラクターたちの救出劇を描いたパートでも、ゾンビの習性を登場人物たちが学習しながら、そして我々観客にも今回のゾンビはどういうタイプのモノなのかを一通り見せてから、主人公たちが展開を打破していきます。「イヤなんでそんな方法をわざわざ取るんだよ」みたいなストレスは全くないんです。その切り抜け方にもちゃんとロジックがあるんで、「バイオハザード」みたいに「とにかく俺が銃撃ったら大丈夫なの!!大丈夫なの!!!!」みたいな、そういう力業は殆ど無い。

そういうストーリーも勿論楽しいんですけど、映像的な見せ場でも、今まで見たことが無いような画作りがあったりして、本当に志が高い映画だなとも思うんですよ。「ワールド・ウォー・Z」の唯一にして最大の発明だった雪崩ゾンビのパワーアップバージョンとかもあったりして。本当に見せ場の連続って感じになってます。

ただ、今作における最大の悪役の殺され方がちょっと食い足りないっていうのはあるんですけどね。マジであの小太りには四肢もがれて苦しみながら喰い殺されて欲しかったんですけど、せめてもう少しドラマチックな死に方を見せてほしかったな…っていうのは、唯一ありますね。

あと全然関係ないんですけど、コレ劇場で吹き替え版で見たんですよ。主人公の声優が中村悠一だったんで、劇中で主人公が警官隊の盾を拾ってゾンビをブン殴るシーンで思わず笑っちゃいました。これがやりたかったからこのキャスティングなのか…?

 

 

6位 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

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ガチのホラー映画ではない分、ホラー苦手な俺にとってはいい塩梅というか、素直に感動して泣いてしまった映画でした。

割合としてはホラー2割、ジュブナイル4割、コメディ4割っていう感じなんでしょうか。ペニー・ワイズという「子供にとっての恐ろしいモノの代弁者」を軸にしつつ、彼ら少年少女たちの成長譚として、登場人物一人ひとりが己の恐怖と向き合い、そして克服していくという描写が丁寧に折り重さなっていて、子供が大人になっていく通過儀礼としてのホラー描写という感じがありました。ルーザーズクラブへようこそ。

ただ、やっぱりやる時はやるというか、ここぞという場面ではしっかりと恐怖描写を入れて、ペニー・ワイズが恐ろしい怪物であるという刷り込みをさせているから、「絶対に適わない相手にそれでも向かっていく」という登場人物たちの選択に胸を打たれるんですよね。子供であってもバンバン殺していくし、四肢欠損描写も結構あるし。

ホラーとっしてハッとする描写を抑えつつ、コメディとして思わず笑ってしまう描写もありつつ、そして最後には皆がたくましく成長していく姿に涙し、感動するという。映画のルックとは違って、誰が見ても楽しめる映画になってるのがまた偉いと思うんです。本当に。

いつも多くて10人くらいの地元の映画館でこの映画を見に行った時の雰囲気の良さも相まって、凄く好きになった映画でもあるんです。中高生が結構多めで30人くらいの入りだったんですけど、素直な反応がそこかしこで起きる様な、そんな感じで。やっぱりホラー映画、しかもこういうバランスの映画は多人数で見てこそだなっていう、映画館ならではの楽しさを感じられた1本という事で、凄く楽しめた作品でもありました。映画館で見られて本当に良かった。

 

 

5位 ハクソー・リッジ

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なんでメル・ギブソンは人間的にはゴミみたいな感じなのに、こんな立派な映画が撮れるんですかね。

凄く立派な戦争映画だったと思います。人間の尊厳を守りながら、戦場シーンではしっかり人間の死体や、今まさに人間から肉塊に変わった様を見せつけるような残虐なシーンで「痛み」もちゃんと見せるし、それでいで決して陰鬱さが全面に出るではなくて、楽しいエンタメ映画としても成立させていました。

ただただ死体!爆発!だけではなくて、例えば幼少期に主人公が父親からベルトを使った体罰を受けるシーンを見せながら、大人になったシークエンスではそのベルトを使って怪我人を助ける所から始めたりと、説明セリフを持ちえない「道具の使い方」だけで主人公が何を学び何を心情にし生きているかを明らかにさせている。この辺りの手腕は素晴らしいとしか言いようがないじゃないですか。人間的にクズでも。

こういう「U・S・A!U・S・A!」になりそうな映画だと、日本兵の扱いって本当に野蛮な動物くらいにしか描かれない事って多いんですけど、今作ではそこらへんもちゃんとケアしてる感じもあったのが好印象でした。字幕なしでしたけど、ちゃんと聞き取れる日本語を言わせていたし。

前半の訓練プラス法廷モノのな感じのテイストも楽しかったですし、どこを切り取ってもそれぞれで完成度の高さを伺わせる、一級品の戦争映画になっていたと思います。メルギブにはマジで3年に1本くらいでいいから定期的に映画撮り続けてほしいですよね…。

 

 

4位 パトリオット・デイ

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バトルシップ」でお馴染みのピーター・バーグ監督の実話モノ3部作のトリを飾ったのが今作です。

今年はマーク・ウォルバーグを沢山見た1年でした。今作に「バーニング・オーシャン」に「トランスフォーマー 最後の騎士王」と、1シーズンに1回見てた気がします。

 

正直、見る前は結構舐めてたんです。「バーニング・オーシャン」は確かに面白かったんですけど、言っても爆発が主役な映画だったじゃないですか。今作もまあでもちゃんと面白いくらいにはまとまってそうだし、みたいな。もう俺ね、コレ見たらマジでインドネシアくらいまでぶっ飛ばされました。今ジャカルタのネットカフェでこの感想書いてるんですけど。*1

バトルシップ」を撮った監督が、まさかこんな真っ当な、端正な、それでいてサスペンスフルな、しかも超エンタメな作品を撮れるなんて想像もしてなかったんですよ。ちょっともう俺はイーストウッドの後継者って、もしかしてピーター・バーグなんじゃないか?ってマジで思ってます。

 

バーニング・オーシャン」でもそうだったんですが、この監督は本筋の事件が起きる前の人物描写が凄く上手いと思うんですよね。短いシークエンスで、被害者となる人物たちの人となりをちょっとした会話だけで説明していて、見てる側にもしっかり感情移入させるし、ここがしっかりしてるから終盤の「事件に屈しない市民たち」が凄く生きてくる。

展開を進ませるだけの書き割りではなく、生きた人間として存在が感じられるので、中盤以降の群像劇的な作劇にも深みがあったと思います。

それに加えて、犯人を捕まえるため、または市民を守るために、人々が「やるべきことをやる」っていう描写を積み重ねて見せていた所も凄く好きでした。爆破が起きた後、指示があるまで動かすことのできない身元不明の子供の死体を、傍らでジッと耐える様に保管し続けた警官の苦渋に満ちた表情、そして彼の1人称視点を改めて見せるシーンとか、今思い出しても胸を打ちます。事件には直接関係ないかもしれないが、彼には彼なりの戦いがあった、っていうその視線こそが凄く真摯で志の高い姿勢なんだと思います。

1人のヒーローがすべて解決するのではなく、全ての人間が正しきことをした結果、巨悪を打ち倒すというのもやっぱり胸を打ちますし、中盤以降は主人公然としていたマーク・ウォルバーグを狂言回しのポジションにさせた所も凄く良かったと思います。主人公不在の作劇を取った事で、追う側追われる側の視点を交互に見せていく手法が可能になっていて、いつでも事件の最前線にいる様な感じで劇中のテンションがずっと高いままでした。

お涙頂戴モノの感動ヒューマンドラマにしようと思えばいくらでもできたと思うんですが、それでもちゃんとエンタメしてるのが本当に偉いとも思うんですよ。中盤での犯人グループと警官たちとの戦闘シーンも、カメラのかなり手前で爆弾が何十発も爆発していてメチャメチャ見応えあるし、この市街地で犯人がどこにいて警官が裏からどうやって回って挟み撃ちにして、とかの位置関係も凄く分かりやすいようにしてるし、ここは監督の本性が出たのか?って感じもちょっとありましたね。バーニングオーシャンで火薬余ったから使いたかったのかもしれないですし。

とにかくアクション、サスペンス、ヒューマンドラマ、全部と見ても凄くレベルが高いですし、実際に起きた事件として見ても各方面にリスペクトを感じられる、味わい深い1本だったと思います。

 

3位 哭声/コクソン

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コレを見せられて一体どういう感想を抱けっていうんだ!?っていう感じです。マジで。刑事モノのサスペンスなのか、ホラーなのか、アクションなのか、それともコメディなのか。でも見終わった後はどんなジャンルとも違う、「!?」がギッチリ詰まった1本でした。

監督は「チェイサー」や「悲しき獸」のナ・ホンジン。この人の特徴って、物語の冒頭と終盤とでは作品のテイストが180度全く違うっていうのがあるんですよ。それに加えて、劇中でも物語が二転三転っていうか十七億転十八億転するんで、見てて本当にジェットコースターに乗ってる感じがするんですよね。しかもレールが50cm先からはどこに繋がってるのか見えないヤツ。なんで、自分がどこに連れていかれるのかが全然分からない、しかも物語のテンションはずっと上がったままっていう「ライド感」がメチャメチャ楽しいんですよね。

この「哭声/コクソン」も、そんな振り回されて振り回された挙句、爆弾を投げつけられてそのまま終わるんで、正直コレを見終わった後、自分が一体何を見たのか、さっぱり分からなかったです。そんな映画無くないですか?俺は記憶にない。何?アレ何?

「お客さんに考える事を促すような映画」って、社会派な作品では特に顕著ではあるんですけど、そこそこあるじゃないですか。今年でいえば「三度目の殺人」とか。

本作も一応はその部類に入る作品なんですけど、やっぱりどんな映画とも質が違うっていうか、見終わってもう数カ月も経ってますけど、正直まだ心の整理がついてないです。100人に見せて本当に100人とも感想が全く違う作品だと思うし、予備知識全くなし、プラス他人の意見全く耳に入れずで見た方が絶対いい作品であることは間違いないです。國村準をこれから先どういう目で見ればいいのかもう分かんねえよ俺。

あと、DVDレンタルショップで働いてる従業員だけが投票できるビデオ屋さん大賞っていうのがあるんですけど、そこに店舗の奥まった場所にありがちな韓国映画コーナーですけど面白い映画メチャメチャあるんですよっていうのもあって、1位で投票させてもらいました。*2

 

 

2位 メッセージ

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イヤもう何なんすかね。「好きな映画だけど四肢欠損描写とかがないからマイナス500点」とか平気で言ってるんですけど、こういう映画を2017年のベスト級にしてるっていう所で、ここまでのランキングの正当性がどっか遠くに飛んで行ったと思います。メチャメチャ好きな映画である事は間違いないんですが。

結構人を選ぶ様な所があるんで、全員が全員楽しめるっていう感じの映画ではないです。今年ワーストに選ぶ人もチラホラいる感じですし。分かりにくい感じはあるんで、面白くなかったっていう人がいるのも、分かりますよ、全然。

ただ、俺がこの映画の一番好きな所って、もの凄くSFらしい突飛な設定から始まった先にあったのが、「お前はここで生きていてもいいんだ!」っていう普遍的なテーマで、物語もそこに着地したのが凄く感動したんです。

主人公が宇宙人との会合を経ていく中で、この映画では「コミュニケーションが取れた事への嬉しさ」にフォーカスを当てているんですね。自分の言葉や思いが他者に伝わる、そして相手からもそれが跳ね返ってくる、それを繰り返すことで、お互いがお互いを思いやり労わる事ができる。こういう一見当たり前に見えるやり取りを、物凄くドラマチックに見せてくれるんです。

それは主人公ルイーズと宇宙人たちとのシーンでもあるし、同時進行で語られるルイーズと娘とのシーンも指しているし、もっと言えばそれを映画として受け取る我々観客の事でもあるし。

理解し理解される事の嬉しさって、俺たちの日常生活の中でも見つけられる事でもある訳じゃないですか。「神が人間たちを導いてくれる」みたいなSFはどうも苦手な俺にとっては、誰しもがその人生の中で意識的にも無意識的にも築き上げてきたはずの”理解し理解されてきた”関係にもう一度気付かせてくれるっていう、そういう”メッセージ”がこの映画にはあったのかなと思います。

一直線ではなく、円環構造のような作りの映画でもあって、この映画そのものがヘプタポッドの価値観のとらえ方を追体験できる仕上がりになっているのも素晴らしいです。誰かが誰かの事を心に留めながら生きていけるなら、生物の生き方そのものは円環構造なのかもしれなくて、そうであるなら俺も生きていける意味はあるのでは…とか思ったりして、もう最後の5分くらいはずっと泣いてました。この映画。

 

 

1位 KUBO/クボ 二本の弦の秘密

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1位です。正直今年は「メッセージ」が絶対1位で決まりだとずっと決めていたんですが、今週からやっと新潟でも公開されて、で、本当に今日KUBO見て2017年のランキングを全部決めようと思っていたんです。素晴らしい映像、素晴らしい脚本、素晴らしい演技、どこを取っても作り手側のプロフェッショナルが感じられた作品で、心から「見てよかった」と思えました。本当に感動しました。

パラノーマン ブライス・ホローの謎」や「コロラインとボタンの魔女」のアニメーション制作会社、スタジオライカによる劇場公開作品第4作目に当たるのが、今作「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」です。ライカ作品は「パラノーマン」しか見られていないのですが、今作と共通しているのが「物語を語っていくというのは、一体どういう事なのか?を語っていく物語」という点です。劇中内におけるフィクションであったりだとか、何層にも積み重なられた物語論のような物が劇中のストーリーと密接に関わっていくという作りになっています。

何故人々は物語、つまりフィクションである「お話」を常に必要とし続けるのか?「お話」を語り続けるとは、一体我々にどういった意味をもたらすのか?という所を主題にしつつ、近しい人の別れ、死別といった、より普遍的なテーマをも同時に語っているのが今作の肝だと思います。「始まり」があれば「終わり」がある。物語にも、そして命にも。

 

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ただ、決してウェットな作りに傾きすぎないのが個人的には凄く好きな所で。難しいこと抜きで、見ていて単純にメチャメチャ楽しいんですよ。この映画。

仲間との出会いや、母との別れ、見るにも悍ましい敵キャラクターの造形など、見ていて本当にドキドキする冒険活劇としても一級品に楽しいですし、パペットを使ったストップモーション・アニメっていうなかなか見る機会のない映像作品ならではの、良い意味での異物感が段々と心地よくなってきたりもして。実写では勿論、CGアニメでも絶対に味わえないような質感があって、本当に全部が美しい。美しいんです。このアニメ。甘美っていう言葉がここまで似合う作品無いんです。もうマジで一体化したい。俺は。この作品と。

フィクションの中のフィクション、という様に何層にも折り重なられて作られている作品だとさっき書いたんですけど、この映画の本当に凄い所はこの映画の「外側」をしっかり意識させる作りであるという所だとも思うんです。最後の最後で、このKUBOというお話を本当に必要としていた、このお話を語っている存在っていうのが、朧気ながらも我々観客に提示されるんですね。それは劇中で主人公のKUBOが母親からずっと聞かされて、街の人々を楽しませらるようにデフォルメされた物語と、我々観客がここまで見てきた物語が”同価の存在”だったというのが明らかになるんです。

このKUBOという物語を反映させたような、物凄く辛い現実に直面しながらも「始まり」と「終わり」を噛みしめるように何度も何度も作っては消化し、作っては消化する。大切な人、だけどもうここにはいない人、もう会えない人を絶対に忘れないために、「おしまい」の言葉を紡ぐ。最後まで劇中では不在の”彼”の存在を考えるだけで、もう胸が張り裂けそうになりました。

 

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だけど、決して内に籠ったまま終わっていく作品でもないんですよ。

自分にはまだ未来があるし、生きていく理由もあるっていうのはちゃんと提示されるんです。今だけ1度振り返るけれど、彼らと旅した日々はもう戻ってこないけれど、次に進む為の「おしまい」で。映画が終わった後も、彼の未来は続いている様な、そんな終わり方が最高に好きですね。

何度も何度も劇中で「武器が弾き飛ばされた→拾えるのか、相手の攻撃が届いて殺されるのか、どっちが速いか」の描写が多いのも、この物語を我々に語ってる”彼”のどこか人生においての大事な局面で”間に合わなかった”っていう事があったからなのか…?とかっていう見方もできたりして。意外にあっさりしてる描写があるのも、全部補完して考えられるっていう所も含めて、凄く間口の広い映画になってると思います。

 

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以上、2017年新作映画ベスト20とワースト5でした。最後に改めてベスト20の順位と面白かったので書いておきたい作品まで書いて、終わりにしたいと思います。

 

 

1位 KUBO/クボ 二本の弦の秘密

2位 メッセージ

3位 哭声/コクソン

4位 パトリオット・デイ

5位 ハクソー・リッジ

6位 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

7位 新感染 ファイナル・エクスプレス

8位 サバイバルファミリー

9位 ナイスガイズ!

10位 パターソン

 

11位 マンチェスター・バイ・ザ・シー

12位 ザ・コンサルタント

13位 スパイダーマン ホームカミング

14位 アシュラ

15位 ベイビードライバー

16位 Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower

17位 夜は短し歩けよ乙女

18位 三度目の殺人

19位 キングコング: 髑髏島の巨神

20位 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2 

 

21位 22年目の告白 -私が殺人犯です- 

22位 アトミック・ブロンド 

23位 HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY 

24位 マイティ・ソー バトルロイヤル

25位 バリー・シール/アメリカをはめた男

26位 怪物はささやく

27位 MASTER マスター

28位 ドリーム

29位 ムーンライト

30位 ラ・ラ・ランド

 

2018年も映画を見ましょう。面白い映画は面白いので。

*1:人口は960万人です。

*2:俺の書いたコメントが帯に採用されたみたいなんで。掲載はまだまだ先なんですけど