ダンケルク
「ダークナイト」が好きで、Blu-ray発売されてからすぐに買ったんですよ。映画館でバイトしてた時だったんですけど、同僚の女が「何か面白い映画貸してくださいよ~」って言うんでダークナイト貸したんですよ。「ずっと見たかったんです~」とか言ってて。で、1週間くらい経ってどうだった?って聞いたら「怖くて最初の10分くらいで辞めちゃいました笑」つって返されたんで、ちょっと「は?」ってイラッっとした顔したと思うんですよ。俺。
次の日バイトに行ったら「借りた映画怖くて見れないって言ったら怒られた…」つって他の男のバイト全員に言いふらされて、それからクソ無視される様になったんですよね。そういう思い出です。
ダンケルク
解説
「ダークナイト」「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督が、初めて実話をもとに描く戦争映画。史上最大の救出作戦と言われる「ダイナモ作戦」が展開された、第2次世界大戦のダンケルクの戦いを描く。ポーランドを侵攻し、そこから北フランスまで勢力を広げたドイツ軍は、戦車や航空機といった新兵器を用いた電撃的な戦いで英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。この事態に危機感を抱いたイギリス首相のチャーチルは、ダンケルクに取り残された兵士40万人の救出を命じ、1940年5月26日、軍艦はもとより、民間の船舶も総動員したダイナモ作戦が発動。戦局は奇跡的な展開を迎えることとなる。出演は、今作が映画デビュー作となる新人のフィオン・ホワイトヘッドのほか、ノーラン作品常連のトム・ハーディやキリアン・マーフィ、「ブリッジ・オブ・スパイ」でアカデミー助演男優賞を受賞したマーク・ライランス、ケネス・ブラナー、「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズらが顔をそろえている。
監督 クリストファー・ノーラン 「ダークナイト」
脚本 クリストファー・ノーラン
音楽 ハンス・ジマー 「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ 「her/世界で一つの彼女」
出演 フィン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
ジャック・ロウデン
マーク・ライランス 「ブリッジ・オブ・スパイ」
制作国 アメリカ イギリス フランス オランダ
上映時間 106分
予告編です
予告編みたいなヤツです
60点
「ダークナイト」「インターステラー」でお馴染み、クリストファー・ノーラン監督の全世界待望の新作です。
ノーラン初の戦争モノ、というか初の実話ベースの作品でもあります。舞台は第二次世界大戦下の1940年。ドイツ軍に包囲された連合国軍の兵士の一人が市街地から撤退し、なんとかダンケルク海岸まで辿り着く、という所から物語は始まります。
ノーランに好き嫌いあったとしても、映画ファンなら映画館ですぐ見ておかなきゃアレでしょう、っていう感じになってますよね。「ダークナイト」、俺も大好きな映画ですけど、アレが当たったから世界的に注目される事になった監督って感じはあります。「ダークナイト・ライジング」で貯金の2/3は使ってしまった様な印象が個人的にはあるんですけど。っていうか、この映画感想がメチャメチャ面倒な感じのヤツなんで、延々に「ロッキー」と「イコライザー」だけをループで見ていたいんですけど、もうね、義務感だけです。1100円払ったし。他人に見られるっていうモチベーションが無いとすぐ忘れるし。っていうかすぐ忘れるし。
全員見て…
そもそもノーランって一体どういう監督なのか?っていうのもあるんですけど。
「ダークナイト」以外はノーランに別に思い入れもそんなに無いっていんですけど、やはり「リアル志向」の監督では決してないなというのがまずあって。どちらかといえば、まあコレもよく言われてますけど、映像的なビジュアルがまず生えるかどうか、っていう所に拘ってる監督って印象なんですよね。それは決して『リアルな描写』とイコールではなくて。
「ダークナイト」ではそれが上手くハマって、勿論こちらはヒース・レジャー力(ヒース・レジャーぢから)もあったと思うんですけど。でも、次の「ダークナイト・ライジング」でそれが全然ハマらなくて、ノーランの悪い所だけが出た様な作品になってしまった。例えば、ブルース・ウェインがベインに敗北して奈落へと幽閉される展開で、「パワーアップする」っていう過程が心象風景とかモチーフとかでなくて、マジでうんしょ、うんしょと体を鍛えることで奈落(っていうか谷ですよ 汚い谷)から脱出に成功する下りとか、刑務所の囚人と武器をすべて没収されたゴッサム市警の警官たちが直接対峙する展開では、武器もなく圧倒的な戦力差があるはずなのに、囚人と警官との闘いは「クローズ」シリーズみたいな真正面からのぶつかり合いに終始させてる下りとか、何だか偏差値の上がり下がりが凄いんですよね。ノーランの映画って。で、そんな中でやけに高尚な映画を作りたがるんで、そこが若干鼻につく感じではあるんですけど。
ライジング、心象風景的なアレとかモチーフとかではなくてマジで身体を鍛えて谷の中からの脱出を試みる下りが馬鹿以外の何物でもないので多分ノーランは実際は素朴な人なんだと思います
— ずず瀬広 (@Alktixi) 2017年9月12日
本当は生姜焼き定食ご飯大盛り食べたいのに周りの目を気にして焼き魚定食食ってそう
で、それを完全にフィクションの世界観の中で成立させてきたこれまでのフィルモグラフィとは一線を画す訳じゃないですか。「ダンケルク」は。
地元に唯一あるシネコンではIMAXなんて当然ないんで、この映画を100%楽しめる環境には無かったんですけど、率直に言って「戸惑った」っていうのが一番の感想でした。
ただただ「撤退する」というのだけで106分の映画を成立させているのは、本当に凄いとは思いますよ。陸、海、空と、3つのストーリーラインを時系列を前後させながら見せていく事で、「興味の持続」で物語のテンションを保とうとしていますし、「逃げる」もしくは「逃げるのを手伝う」だけでアクションが構成されている物語の展開上、こういった仕掛けは何かしらの形であれ、必須だったと思います。
ただ、この3つのストーリーラインを見せていく過程で、あるラインにおいて、もう2つのラインが交わったり交わらなかったり、っていうのがちょいちょいあるんですね。で、そこで他のラインにおける展開を少し先取りしてチラ見せしてたりしてるんで、いざそのチラ見せがあってラインのパートに行っても、「イヤ、俺さっきこの後どうなるのかちょっと知ってるけど…」ってなるに決まってるじゃないですか。
で、ここからがこの映画の映像や音響の他にあるもう一つの長所でもあり、短所でもあると思うんですけど、それに加えて、今作の登場人物が一体どういう人間で、一体どういうドラマがあって今この戦場の立っているのか、という様なドラマは殆ど無いんですね。この映画では徹底的に登場人物からは距離を取って、意図的に観客にどの登場人物にも感情移入させない作りになっているんです。
なので、正直、ドラマ、ストーリーはこの映画ではある様でない様な感じなんですね。一応ドラマらしいものというか、「ここが感動所です」というシーンの盛り上がり所はあるんですけど、ここまでそれぞれの登場人物から徹底して距離を取るという作劇なので、イマイチ盛り上がりに欠けるのは仕方ないですよね。映像的な美しさ、または音響の豪快さは田舎のシネコンで見ても感じたし、そこは凄く楽しめました。ただ、VR的なアトラクションとしての楽しさという点でも、例えば「ゼロ・グラビティ」を上回ったかと聞かれれば、そんな事はなくて。
やっぱりそれは、『この後どうなる?』のクリフハンガーが全然生きてないっていうのがあると思うんですよ。この映画の「3つのストーリーラインをバラバラに見せ、その中で別のラインのストーリーを少し先取りして見せる」というのがあるせいで、その演出に慣れてしまった後半になってしまうと、次の展開へのドキドキ感はもうほぼ無いじゃないですか。そこがVR的な楽しみ方という点においても、少し食い足りなさを感じた要因になっていると思います。
このビックバジェットで、こんな実験映画を作るっていうその心意気は凄い偉いとマジで思うんですよ。俺はノーランちょっとやるじゃんやっべえみたいな感じはメチャメチャあるんです。
誰にも感情移入させず、敵兵の姿を見せず、敵兵を殺すシーンも見せず、唯一の長尺の戦闘シーンであるトム・ハーディ扮するパイロットによる戦闘機同士の空中戦も、「照準を真ん中に合わせる」「当たると煙が出て墜落させられる」「で、勝つ」以外にドラマチックな演出は出来るだけ省いて、カタルシスは最小限に抑えていたし。
で、それが「本物の戦場体験をさせる」為の演出だというのはよく分かります。本物の戦場においてはヒーローなんて物は存在しないし、どこまでも兵士たちにドラマを用意させない事で最後まで彼らを有象無象として扱ったのも、ある1つのストーリーラインではそれっぽい音楽と共に感動的な結末を迎えられたと思っていた矢先に、別のストーリーラインではその幸せな結末が数秒後に最悪の形で打ち破られるのを見せるのも、「戦争における命の軽さ」の演出として凄く説得力がありました。
ただ、それらが「映画の面白さ」に直結していたのか?と聞かれると、どうしてもそういう感じはしなくて。やろうとしている事は分かるし、良かった部分もあるんだけど、全体的な印象としては「味が薄い」「食い足りない」っていうのが一番強かったです。IMAXで見ればまた違った感想が出てくるのかもしれないんですけど、「ダンケルク」が「ゼロ・グラビティ」を上回る体験型映画になるとは、今のところちょっと思えなくて。まあ本物の70mmIMAXって大阪にある以外は台湾とか行かないと無いんでしたっけ?
これからもノーランの最新作が公開になれば、すぐ映画館に行くのは間違いないし、本作でも意図していた事の半分くらいは理解できるんですけど、若干消化不良気味に感じた1本でした。今年ワーストとかっていう感じでは全くないです。ただ期待していた分、これなら俺はスパイダーマンをもう1回見たい。