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…そんなバカな!どう考えてもウソだ! 私たちがいくら足が遅く運動神経が無いからドッジボールで【デブの女子】→

WIiUが欲しい。

幻影異聞録というゲームがずっと気になっていて、今年に入ってからは松屋で夕飯を取るまでの道すがら、わざわざ遠回りしてまでGEOによって「中古で買えば3万6000円くらいだから…でもオークションとかで買えばもう少し…イヤ…」と悩むだけ悩んで結局買わずにビビンバ丼を食って帰る、という一連の行動をもう何度も繰り返している。
もう1ヶ月ほど前職を続けていればそれくらいは稼げていたはずだが、今となってはもう遅い。鉄板を15枚ほど洗わずに済んだと考えるしかない。
 
 
考えてみれば小さい頃からこうやって「新作のゲームが欲しい…けどお金ないし買えない…」と悩んでいる気がする。
一番最初に私の物欲が向けられたのはニンテンドー64だ。
当時はインターネットもそんなに普及していなかったから、コロコロコミックのカラー数ページくらいでしか前情報が得られず、それが逆に私たち仲間内での「俺たちの想像するニンテンドー64象」の妄想をドンドン膨らませていった。
 
 
そんな中で「64のコントローラは持つ所が3つあるから2人で使うんじゃないか」という私の新説に私たち足の遅い組がザワザワしてると、隣のクラスからやってきて聞き耳を立てていたらしい中田くんが近付いてきて「ニンテンドー64ならウチにある」と言う。
 
 
「なんで!?」「どうやって!?」と、当然質問攻めにする私たち足が遅いので給食の時の【いただきます!】の号令を当番でもないのにさせられる組。聞くと「家の隣にある工場でアルバイトをしていてお小遣いを沢山貰った所、父が任天堂の社員の友達なので『発売日前だけどニンテンドー64を売ってあげてもいい』という話になった。なので定価よりも凄く高かったが、全財産を叩いて買ったから、今家にある。」要約すると、そういう様な事を言われた。
 
 
…そんなバカな!どう考えてもウソだ!
私たちがいくら足が遅く運動神経が無いからドッジボールで【デブの女子】→【足が遅い男子】→【運動神経のいい女子】の順に狙われるので足が速い連中が我々をどの様に思っているか何となく分かり始めたからといって、それくらいのウソは見抜ける。
「ソフトは何!?」「コントローラーはいくつ持ってんの!?」「今度遊びに行くから見せろ!!」と質問攻めにすると、途端に「よく分からないけどマリオのヤツ…」「試作品だからまだ完全に出来てない…」「今朝3Dスティックが折れた…」とあたふた。「じゃあ折れた3Dスティックでいいから学校に持ってこいよ!」と、とどめとばかりに山口くん。顔を真っ赤にしながら「もう全部捨てた!!」と言って、中田くんは自分のクラスに戻っていった。
 
 
それから。私は発売から数ヶ月後、無事にニンテンドー64*1手に入れて、じっくり64bitを堪能しつくし更に数年後、世間はPS2XBOXだと騒ぎ出し、ニンテンドー64の勢いもすっかり落ち着いた頃、一緒に中田くんを詰問した山口くんが、最近中田くんの家に始めて遊びに行ったという。
 
 
「なんかゲームとか遊ぶ物も全然無くて、どうしていいか分かんなかったよ、部屋にテレビも無かったし。」と山口くん。
山口くんに教えてもらった中田くんの家を、家族で買い物に出掛ける時に車で通り過ぎる事が何度かあった。何年も何年も、破れたままの障子が窓ガラス越しに見えた。ボロボロのハイエースが1台止まっていた。近所に工場なんて無かった。風の噂で中田くんの家にはお母さんがいないという事も聞いた。私は「あの時言い過ぎたのかもしれない」と少しだけ、本当に少しだけ自分を恥じた。
 
 
その後、中田くんは小学校の卒業文集に「夏休みにはお父さんとキャンプに行って木を切り倒してログハウスを作り、枝をナイフで削って作った弓で鳥を撃ち落として食べた。楽しかった。」と書いた。私は「そんな訳ないだろ」と少し笑った。直後、中田くんのパンチが鳩尾に入った。
放課後担任の上村先生が中田くんと私を呼び出した。上村先生が中田くんに「なんでエスキくんをパンチしたの?」と聞いた。中田くんは「ストレス解消」と答えた。
 
 
私は恥じた自分を恥じた。

*1:父が「会社の後輩からニンテンドー64マリオカートを貰った」というので「やった!」と喜んだ数瞬後の「3万でいい」の父の言葉で混乱しながら