スキーが上手なのでスキーの強豪校に転校が決まっていて、どこの人なのか分からない。
よく空想する癖がある。
子どもの頃からそうだった。友達に「
私の母は、物を貸し借りするのが嫌いな人間で、
ただ、
それが今回の準備期間は、
ただ、”言葉”だけでは効果は薄い。もっともっと、リアリティのある設定を考える必要があるが、ここで例えば「雑誌で見た」「近所の○○君から聞いた」などという証拠の提示を促される可能性のあるウソの言い訳など、私から言わせれば愚の骨頂以外の何物でもない。母の知らない人物、知らない土地、知らない情報源の入手が絶対条件だ。「先週の委員会で初めて6年生と喋った」「その6年生は名前も分からないしスキーが上手なのでスキーの強豪校に転校が決まっていて、どこの人なのか分からない」「その6年生が近所にあるゲーム屋で小学生に無料でゲームのお試しレンタルサービスをやっていたのを見た」「6年生に『今日はトレーニングがあるから1日だけゲームを預かってくれ』と頼まれた」「そして今、こうして嫌々なんだけど新作のゲームが手元にある。」…今考えると無理な言い訳だらけだ。委員会ってなんだ?小学生がスキーの強い学校に転校するって何だ?なんでその6年生はやる気も無かった新作ゲームを学校に持ってきてるんだ?っていうか6年生って誰?
だけど、当時の私は「完璧な理論だ!」と自身満々だった。これで騙せる。件の6年生は背が高くてガッシリしてて、青のシャツを着ていて、近所のゲーム屋にはかっこいいマウンテンバイクで通っていて、見たこともないゲーム機を何台も持っていて、お父さんが任天堂の社員で試作品が家にあって…ドンドンドンドン膨らんでいく架空の設定を、言おう言おうと何度も復唱し、その時を待った。
しかし、とうとうその機会が訪れる事は無かった。無かったのだ。
ただ私はその後、「あんなに細かく考えていたんだから、本当にどこかで無料お試しサービスをやっているのでは?」
先日、そのゲーム屋の前を久しぶりに車で通る機会があった。
どうやらゲーム屋自体は数年前に閉店してしまったらしく、老人ホームとして店舗だけが買い取られ利用されていた。マウンテンバイクを探しに探したあの駐輪場も潰され、新しく作られた駐車場には送迎用のミニバンが何台も置かれていた。
ただ、私はその時、車の窓ガラス越しにその店を見ながら、「なんで私にだけゲームを貸してくれなかったんだろう…?」と憤慨していて、その2秒後に「…イヤ、アレ空想だ!!」となった。私はそういう子供で、そのままそういう大人になった。