今更ではありますが、先月の5月に久々の書き下ろしが出ました。

もうすでに発売され今更ではありますが、先月5月に久々の書き下ろし、『AT限定免許しか持ってないクセに「車の運転が下手なオタクにロクなヤツはいない」と宣うオタク』が出ました。前作の『プリント用紙をレジュメと呼ぶブスを全員殺す』が大体4年前でしたから、かなり間が空いてしまいました。


実際に書き始めたのは去年の夏頃からなのですが、GEOや蔦屋書店で4人組で行動する声の甲高いオタクの会話内容からAT免許しか持っていない人間を見つけ殺したりしながら内容を考えていたのはそれよりずっと前で、その頃の私はまだ兼業作家でした。
当時勤めていた会社では赤道ギニア支社と連携しながらの部族向け胎児用ペニスケース開発の大きなプロジェクトが終わったばかりのタイミングで、資料集めにと、毎日何百何千の胎児のおちんちんに囲まれていた日々は、今でもはっきり覚えています(笑)。


本作『ATオタク殺す』には、その頃の時事ネタをいくつか盛り込みました。


一つ目は、かなり大きなニュースになったので皆さんも記憶に新しいと思うのですが、小学校からの友達である山口君が250万の車を買いました。一括払いだそうです。
私が山口君と仲良くなったキッカケは、彼が「学校から家まで車道の真ん中だけを通って帰る!」と言い出して、面白がってそれに付いていったのが始まりでした。また、彼は小学生にしてエヴァンゲリオンカーボーイビバップのLDを親御さんに買ってもらう様な、いわゆる小金持ちだったので、ずっと「バカ」か「カネ」の印象しか無かったのですが、「毎月少しずつ貯金してやっと買えた」と彼から聞き、とにかく寂しい気持ちになりました。


二つ目は、朝青龍の引退です。
私は相撲に詳しい訳では無いのですが、朝青龍関のキャラクターとしてのヒール感がたまらなく好きでした。
ただ、紙面をよく騒がせる人でもあったので、引退報道が出た時は驚きもありましたが、「これからどうなるんだろう」と、少し悪意のある好奇心を持って、その報道を眺めていました。
しかし、その後は日本での活動も激減し、TBSのオールスター大感謝祭での1コーナー、ローションを身体中に塗りたくって相撲を取る『ローション大相撲』での解説でチラっと見た程度で、もう今はテレビで姿を見かける事は殆ど無くなってしまいました。


モンゴルから遠く離れたここ新潟で、私が朝青龍関の為に出来る事など無いに等しいのですが、それでも、「彼を支えたい」という気持ちは本物でした。
心のどこかに朝青龍のスペースを常に作っておく事、あの強かった朝青龍の勇姿をずっと焼き付けておく事が、今の私に出来る精一杯の応援の様な気がしています。


という訳で、本作を書き始める際は、この「友達の250万の車」と「朝青龍」が当時の私の流行でした。
強く頭の中にあったキーワードでしたから、何度書き直しても「どんな物でも指定の場所まで確実に届ける運び屋の主人公が、マフィアに依頼された車のトランクを開けると縛られた朝青龍と『可愛がってください 今の年収です』の書き置きと250万が入っていた話」「中古車で朝青龍を轢いたら『どこで朝青龍轢けるの!?』と話題になり車が250万に価値が上がったので、朝青龍轢き事業の立ち上げを狙い両国国技館を武装占拠、解放の条件としてモンゴル政府に朝青龍の遺体を要求する話」のどちらかに必ずなってしまうので、かなり苦労しました。両方のプロットとも、担当の編集者にはボツを貰いましたし(笑)


いつもと同じように自分の好きに書いた作品ですが、やはり書き上げてみれば気になるのは読者の反応です。
作家たるもの、自身の最新作が最高傑作だと信じて皆さんのお手元に届けたい。そういう思いがあったので、結局、この話は去年から書いていた文章は全部消して、今、私が一番好きな「捻くれた男子高校生が主役の青春学園ブコメ」のパクリになりました。
友達のいない朝青龍が痩せた女と繰り広げるラブコメとなっています。自分でも満足している物が書けたと思っていますので、手に取って頂ければ幸いです。