未だに深夜に外出するとテンションが上がる

未だに深夜に外出するとテンションが上がる。


電車で友達と飲み屋にでも出掛ける際に、窓から見える夜の街を見ればよく分からない興奮が湧き上がって来るし、車で一人、最寄りのコンビニや牛丼屋に深夜にブラッと出掛けるのも結構好きだ。(そういえば食ってばっかだ)
只々目的も無く徘徊するのも好きがが、もうそろそろすると私の住む新潟はとんでもない量の降雪に見舞われるから、この楽しみも今年はあと1ヶ月程度で終わってしまうのが心寂しい。少しでも無理をすれば『オタクくん凍死する、の巻』の完成になってしまうから、我慢だ。


大人になってしまった今になれば「自分が大人だと感じる瞬間」は年金事務所や市役所から届く「お支払いの手引き」関係でしか感じられなくなってしまった訳ではあるけど、子どもの頃は『深夜に外出』こそが強くそれを感じられる行動でありイベントだった。


高校生だった頃、実家の近くに夜10時くらいまで開いてる市立の体育館があって、よく友達の山口くんや熊倉くんと一緒に卓球やらバスケやらをしに行った。
私が当時住んでいた土地もとんでもない田舎だったから、夜の9時10時くらいまで遊べる施設は自転車で行ける範囲内には殆ど無く、消去法で選ばれたのがこの体育館だった。
が、そこは童貞スポーツ刈り高校生、只々大声を出しながら身体を動かしてさえいれば何でも良かったし、実際楽しく過ごせた。


学校が終わると熊倉くんのいるクラスまで行って「今日も?」的な軽い言葉だけ交わして家に戻り、自転車で体育館に迎えば、大抵いつもの面子は揃っていた。で、適当に遊んだ後は体育館横の階段に屯って、夜7時に閉店になるコンビニで買ったお菓子を食べながら、日付が変わる時間になるまで、ずっと取り止めもない事を延々と喋り続けた。


学校のこと、家族のこと、部活のこと、ゲームのこと、小林くんが女子に勢いで告白して振られて「自分がいつ告白したのが覚えていない」と言うので皆で肉まんを奢ったこと、何故か「ジャンケンに負けた人間はポルノグラフィティの曲を歌え」という罰ゲーム的な遊びになって負けた私が本当にハネウマライダーの1番を歌って、特に感想なくその日は皆すぐ帰ったこと、熊倉くんが小林くんの書いた挿し絵付きの小説を1000円で買ってテンションが上がってたこと、山口くんがPSのゲーム、『ガンパレード・マーチ』が好き過ぎて「最近ゲームと現実の区別が付かない」と言うから早めに帰らせたこと…。
言っても言わなくてもいい様な事をずっと喋っていたら、いつの間にか周囲の家屋からの灯りは消えていた。


0℃を切る様な極寒の中でも意地になって5時間も6時間も喋り続けてた事もあった。
「俺たちは何をやっているんだ?」
「もう真っ直ぐ歩けない」
「『オタクくんたち凍死する、の巻』の回が遂にやってきたのか?」
などと言いながらフラフラになって家まで自転車を押して帰ったけど、その帰り道に熊倉くんと一緒に自動販売機で買った缶コーヒーはメチャクチャ美味かった。(ただの缶コーヒーだったはずなんだけど、「疲れ」「寒さ」「この行動は高校生っぽいんじゃないか、みたいな自分自身への酔い」が全く別の味に変えていた気がする。)


今も昔もそうだが、昼間でも出来る事をわざわざ深夜にやっているのは「夜」という物の魅力に完全にやられてしまっているからだ。
改装中の小学校の様子だけを見に行って帰ってきたり、歩いて45分かかる最寄りのコンビニに徒歩で向かったり、高校生にして少年ガンガンに付録で付いてきたロイ・マスタング大佐の手袋を嵌めながら誰にも姿を見られない様に近所の酒屋の自動販売機まで力水を買いに行ったり、嬉々としながら意味の分からない行動を当時から繰り返し取っていた。


ただ、件の体育館には70過ぎくらいのヨボヨボのおじいさんが管理人として営業時間内には在中していたんだけど、私たちはテンションの高い日には奇声を上げながら駐車場を走り回ってたりとか平気でしてたから、おじいさんにしてみてばメチャクチャ怖かったんじゃないかと思う。(今考えればよく学校に連絡行かなかったな…)


だから何というか、例えばテレビのニュース等で「深夜になっても帰ってこない中高生たち!」みたいな問題提起めいた物を見ても、例えば深夜に自動販売機前で煙草を吸いながら喋ってる髪をカラフルに染めた方々を見かけても、何か歯がゆいというか「気持ちは分かるけど…」みたいな変な感じになる。夜に当てられて変に気持ちが高ぶってしまう、というのは私にも身に覚えがあるもの。


…じゃあこういうのって誰が注意できる人間としてうってつけなのだろう。年中白夜現象が観測されるグリーンランド人とかか?もしくは狼に攫われ、日の光が届かないくらい深い森の中で育った太陽の眩しさを知らない半獣の女児?(2つ目のは完全に私の趣味だ)まあ当時の私も何が楽しいのか分からずに楽しんでたから、何を怒られてもいまいちピンと来ないのかもしれないけど。