『無責任な7文字ランキング』が開催されるとしたら

『無責任な7文字ランキング』が開催されるとしたら「努力は報われる」「頑張れ負けるな」「皆仲良し5年生」などはかなり上位に食い込んでくるとは思うが(最後のは私が小学5年生だった時のクラスのスローガンでした)「人生諦めが肝心」はその中でも強豪中の強豪、一気に3回戦くらいまでシードされるだろう。


少年漫画とかだと優勝候補と噂され、「敵は決勝で当たるであろう『努力は報われる』だけ」と嘯いていたら、3回戦で地方予選から上がってきた主人公の新進気鋭「皆仲良し5年生」にセットカウント1ー2でまさかの敗北、優勝候補を撃破した「皆仲良し5年生」に注目を集めさせる為の咬ませ犬キャラに成り下がるのだろうが、そんな漫画は無いので安心して私は安心して「人生諦めが肝心」に憤る事が出来る。




思うに、こういう『人生の先輩からの忠告』みたいな言葉にはロクな物が無い。


少し前にサービス残業の多さとあまりの忙しさ(1つのレジで1日売上60万とか平気で行ったりする。しかも9時間ずっとレジ)で辞めた時給683円の本屋アルバイトでも、労働初日に社員さんから「私もフリーターだった頃があったが、そういうのは『取り組む姿勢』と『心意気』が一番大事。これは社会人になる前の練習だと思って働くように。」と事務所で足を組んで少女漫画を読みながらの体勢で言われた日の夜はうどんしか食べられなかった。


また映画館でバイトしてた時に「接客業は他の従業員との連携が大事なんだから、苦手でも最低限のコミュニケーションは取ろうとしないと」と免許証と実際の顔の目と鼻の位置が全然違って見える先輩から忠告を受けてから周りのウェイ系大学生たちと半年くらいかけてやっと打ち解けてきたと思ったら、ある日休憩室を開けようとドアノブに手をかけると「エスキ、最近調子に乗ってるからシメときましょうか?」との声が聞こえてきたてその日はそのまま丸亀製麺に2時間篭ったりとか、そういう例を挙げればいくらでもポンポン出てくるし、 あんまり思い出そうとすると今日もうどんしか食べられそうになくなりそうだからもう辞める。


私も中学の頃はガリガリオタクの義務として3年間卓球部に所属していたし、件の映画館のバイトは大学生の頃はあんな目にあったのにずっと勤務して4年も居続けたから、当然『後輩』という物もいた事にはいた。


オドオド気弱オタクの弱みに付けこんで、顧問の先生方や支配人なんかに「じゃあこの子に一通り教えてやって」と教育係にさせられた事も何回かあったが、自分が「喋りたがりの目上の人間のウザさ」を知ってる分、あまり過度にコミュニケーションを持とうとはしない様にしていたし、例え映画館のバイトで18歳の新人女の子がお客さんの飲み残しドリンク18ℓを床の上にブチまけて必死にペーパータオルでカーペットをパンパン叩きつけている中でも、例え暖かい笑顔で「失敗なんて誰にでもあるよ!大丈夫大丈夫!」と自分では言ったつもりであっても、なんせ相手は18歳の女の子だから「口の片方を吊り上げて黄色い歯を2本覗かせながら何かブツブツ言ってたみたいだけどなんだろう…怖い…」と次の日サークルで会った憧れの首ストール先輩との相談話ピエロにされる可能性もある事を考えれば、『僕なんかじゃなくてもっと肩幅広くて笑うと笑顔がクシャっとなるリリアン・テュラムみたいなインテリ黒人に励まされた方がきっといいよね ゴメンね』と、湧き上がってくる申し訳なさで身動きが取れず、只々必死になってる女の子をジッと見つめていたのが私だった。


誰にも『理想の先輩像』というのがあるはずで、そういう誰かの理想像をいついつどんな時でも壊す可能性があると考えてしまうと、『目上の人間』として振る舞うなんて事は出来れば御免蒙りたいが、そういう場面を一生に渡って回避し続ける事も、また不可能だろう。ではリリアン・テュラムではない我々ガリガリ元卓球部はどうすればいいのだろうか。私がテュラムより優っている部分を挙げるとするならば、「レジ作業が得意」と「丸亀製麺の美味しさを知ってる」くらいだろう。テュラムも流石にゲソ天は食ったことないと思うし。