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天然パーマを揺らせながらテーブルへと向かっていくその姿が、大会から1ヶ月経った今でも私の脳裏に強く焼き付けられている

ここまでは「MTGはじめての大会運営編」としてお送りしていましたが、今回から一部内容を変更して「性悪デブのプレッシャーに屈す!落ち込むフリーター編」をお送り致します。


9月29日日曜日。いよいよ待ちに待った大会当日だ。今回の大会で使われるプレリリースボックスが届いてから、お手伝いとして一緒に大会運営に参加してくれる事になった同僚の31歳フリーター、業務でミスをして店長に怒られてる時に「タハハ」と言って自分の頭をコツン☆とやったら更に怒られた、で皆さんお馴染みの高橋さんと一緒に何度か打ち合わせを行い、準備は万全。


と、いきたかったのだが、このお母さんを毎週日曜日になると必ず病院に送り迎えをしなくてはならないので一番混む時間帯はシフトに入れなくて収入減、足りない給与分はパチンコで何とか埋め合わせをして今日も何とか生きてます、で皆さんお馴染みの高橋さん、実は全くカードの知識が無い。しかも忘れっぽい。どのくらい忘れっぽいのかと言うと、打ち合わせで私が「いいですか!?今回行われるのはプレリリース・トーナメントという方式です!…違います!『上に参ります・トーナメント』では無いです!ちゃんと聞いて下さい!復唱いきますよ!プ・レ・リ・リー、違います!『俺の良い椅子・コレじゃないけど』じゃないです!ホントお願いします!」とキレながら単語いっこいっこから教えなくてはいけなかったくらいだ。8割5分嘘だ。(でももう4年くらいバイトでお店の大会運営やってるはずなのにカードの知識ゼロなのと忘れっぽいのは本当。今日決まった事を次の日に「アレってどうなってるんですか?」と聞いてくる)


だから件の打ち合わせも「あとは流れで」とかは一切効かない。「高橋さんはまず参加者から参加費3000円を貰って下さい」「それから高橋さんは登録証を見せてもらって下さい」「そしてスコアシートを2枚参加者の方に書いてもらって下さい」「そうしたら高橋さんは参加者を横に移動させて私の方へ誘導して下さい」「横といっても右ではありません。左です。お店の出入り口が右なので左です。お箸を持つ方が右です。お茶碗を持つ方が左」と全部決めておかないと「アレッアレッどうしましょう!?どうしましょう!?」と頭を抱えてしゃがみ込み鼓膜を破る事で外部からの情報を強制的に遮断、コレ以上自身が混乱する事態に陥るのを流血騒ぎで阻止しようとするのが高橋さんだ。高橋さんに期待できる事と言えば「大きな声を出してくれる」「『今の時間は?』と聞くと『16時18分です!』と時計を見ながら正確な時刻を教えてくれる」くらいだと考えた方がいい。結局殆どの準備作業を私が行う事になってしまった。


という事で大会当日。確実に余ると思われる40人分のボックス、通称『赤字の糞山』を机に積み上げ、さああとは大会が始まるだけ、という所まで準備が終わると、聞こえてくるのは足音に次ぐ足音。参加者ご一行様のご到着だ。参加人数は16人。この人数は多いのか少ないのかを高橋さんに聞いてみると曰く「奇数じゃなくてよかったですね!」とのこと。回収した全員分の参加費を手に持った事で少し気が動転してるらしかったが、どちらにしろ目の前に積み上げた『赤字の糞山』は『赤字の出っ張り』くらいにレベルダウンした程度で、数万円の赤字には変わりは無い。数人程度多くても少なくても変わりは無いか、と今し方高橋さんとの「会話」にも満たない「口から発生させた音の出し合い」を終え、ちょっと声を張ってルール説明に入る事にした。


参加者は16人ということで、スイスドローは4回戦。このスイスドローというのは対戦形式の一つで、出来るだけ同じ勝敗数同士の人たちで組み合わせを作り、そうする事で対戦相手に偏りが出ない様に設定された方式だ。MTGは3ゲーム行って、先に2ゲーム先取した方が勝ち。制限時間は50分で、時間内に終わらない場合は延長戦として5ターンが追加され、更にそれでも決まらない場合は引き分けとなる。


進行としては50×4で大体3時間半くらいで4回戦が消化される計算だ。更にそれに加えて、今回は参加者の人たちからもらった参加費の合計5万円弱の現金を手にして足腰が震え上がってる高橋さんが配ったボックスに同封されたブースターパックを使い、即急で40枚以上のデッキを作ってもらうので、その為の構築時間、40分が構築制限時間として追加される。それに加えて今回は「目標カード」といって裏面にMTGにまつわるクイズが5問書かれた紙がボックス内に用意されているのだが、クイズなんて「中に出す」「外に出す」程度の二者択一くらいしか自信を持って回答できないというのが我々フリーターという人種であるという事で、前頭葉を使ってもらう事に申し訳無さを感じたので、ここは今大会だけのオリジナルという事で「全問正解したらボーナスとしてブースターパック1つプレゼント」という事にした。(コレを発表した時には低く野太い声で「オオ~」という歓声が上がったので「シケモクでも落ちてたのかな?」と思ったが、どうやらコレは私に発せられた物らしかった)


で、一通りルール説明が終わったところで「もし質問があればどうぞ」となったのだが…いや、ここに来るまで少しおかしな部分はあった。なんせ隅っこの方で少し脂肪を体内に常人より多めに蓄えている成人男性の方が、私のルール説明中ずっとそこそこ大きめな声で独り言をしているのだ。聞いてみると、殆どが私のルール説明へのツッコミ。「制限時間は50分でそれでも決まらない場合は延長戦を…」と言えば「なんでエクストラターンじゃなくて延長戦って言うんだなんでエクストラターンじゃなくて延長戦って言うんだ」と来る。チラッとそっちを見れば、私から目を逸らす。「制限時間以内でデッキが完成しない方はペナルティも…」と言えば「そんなヤツはいないそんなヤツはいない」と来る。チラッとそっちを見れば、私から目を逸らす。


今日高橋さんがずっと挙動不審だったのも、サブイベント用にスコアシートを2枚書いてもらう事を伝えると「え!意味わかんない意味わかんない!面倒くさい面倒くさい!意味わかんない意味わかんない!」と叫ばれた事ですっかり怯えてしまい、脳からの情報を処理しきれず自分で鼓膜を破ってしまったのが原因だった。


しかし、何故かこの体内に一般成人男性よりも多くの脂肪を蓄えながらその醜い身体をぶら下げつつ移動や食事、排泄などの常人らしい行為をする、という事に対して「私はこんな図体をしているのに標準的な体型を維持し続ける者たちと同じ『人間』を名乗る事を許されている。こんな事があっていいのか?人間らしい行動を繰り返す、という事が自身が人間であるという証明に、果たしてなるのだろうか?」といった様な羞恥心を一切感じず覚えない図々しい肉塊改め「デブ」、他の参加者たちとは顔なじみの様で「クソデブ(仮名)さん!ちょっとルールで分からない所あるから、ジャッジやってよ!」と周りから頼られている。その時のクソデブ(仮名)さんの「いやジャッジはお店の人だから!ジャッジはお店の人だから!」と言ってすごく嬉しそうな顔で天然パーマを揺らせながら対戦テーブルに向かっていくその姿が、大会から1ヶ月経った今でも私の脳裏に強く焼き付けられている。


そんなこんなで「思ってたのとなんか違う」となんだかガッカリしたり、十数人程度の大人が集まってカードゲームをしてる姿を面白がったDQNが、マクドナルドの紙袋をデュエルスペースに投げてくると高橋さんがしっかり聞き取れる声で「殺すぞ」と呟いたりした所で大会も中盤。そこで休憩時間中にクソデブ君から告げられた衝撃の一言とは…!



…いつの間にかMTG大会レポートからデブへの悪口になってしまっているし、尻切れトンボで急に大会も終わりかけてるが、実際大会は始まってさえしまえば、後は座っているだけだったのだ。忙しい時と言えば、対戦終了後の順位決定の為の計算と景品決めくらいで、後は適当に本を読んだりテーブルを回ったりしてればそれで良かった。(休憩時間を10分としたら手持ち無沙汰になったクソデブ君が「早めに対戦終わっても休憩するという早めに対戦終わっても休憩するという」とずっと独りで喋っていたので、それにイラついててあまり関わりたくなかった、というのも若干あった。)



という事で次回は「MTGはじめての大会運営レポート大会その後と総括編」と「クソデブ許すまじ」の2本立てでお送りする予定です。比重は2;8とかになるかもしれませんそれまで生きてたら。