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小学4年生で自慰を覚えた私にとっては、妹との相部屋というのはとんでもない負担であって

自分の部屋を貰えたのは中学生になってからだった。小学生4年か5年くらいから2年ほどは妹との相部屋だったが、2段ベットの上か下、どっちで寝るかで亜硫酸ガス吸わせ合いの喧嘩が毎晩行われたので、呼吸困難でスコンと妹が死んだ日には「バイヤーに子どもの臓器や角膜を売る際には息子より娘の方が肉付きがいいしきっと高く売れるだろう」という父親の思惑が大きく外れてしまう事になる。懐に入ってくるはずの大金が失われる事を恐れた父が、急遽私と妹の部屋を作り出した、というのが私が自分の部屋を持てる様になるまでの過程であり顛末だ。8割5分ウソだ。


小学4年生で自慰を覚えた私にとっては、妹との相部屋というのはとんでもない負担であって、しかも「息子が自慰を覚えたらしい」との情報をどこからか仕入れた父が毎晩毎晩私たちの部屋にやってきて「布団を掛け直してあげる」という『理想の父親が取る様な行動』を名目とした自慰チェックが行われていたから、1度の射精に途方もない集中力を要する事になっていた。


射精を成功させるに当たっては、まず妹が寝たかどうかの確認を行わなければならない。ここを怠ると次の日の朝食時に「リョウくん(私の本名です)が昨日おちんちんゴネゴネしてたー!」と大変元気良く家族の前でご報告、という事態になりかねない。2段ベットの上で『まもって守護月天!』を読んで時間を潰してる合間に妹が寝息を立て始めたら、シャーペンやハサミなどの先の尖った物体を妹の瞼ギリギリまで近付け、反応が無ければOK。第一関門はクリアだ。


次に私に襲いかかるのは、父の「何としても息子の自慰を発見するぞ!」というウンコみたいなウンコだ。奴は最低だ。「子どもが心配だから毎日布団を掛け直しに部屋に来ている」という言い訳で、ただただ息子の自慰を見たいが為の行動であるのに、そこを例え糾弾したとしても『理想の父親像』みたいな物を押し付けられるだけで結局は「自慰してたお前が悪い」という結論に行き着くのは目に見えている。


しかも今度は「子どもがグッスリ寝ているのを邪魔したくない」という言い訳で、私と妹の部屋に上がる2階の階段をゆっくりゆっくり時間をかけて登ってくる。私が音を殺して自慰をしているのを、真っ暗闇の中で横から強襲したいが為の行動なのに、また登場するのは「自身の行動を正当化する為の理論武装」だ。どこに転んでも「息子と娘の事が心配で部屋を覗いたら、たまたま自慰発見!お父さんビックリ!」との理由付け。そしてやはり最後は「自慰するお前が悪い」で終わり、翌日の同僚との飲み会かなんかで「昨日息子がオナニーしてたのをたまたま見ちゃってさー」と酒の肴にでもされるのだ。しょうもない。


父に自慰を見られない為に、私はあらゆる手段を講じた。電気ストーブの騒音でバレるのを避ける為に、真冬の極寒でも半裸で夜を過ごした。テレビの光でバレるのを避ける為に、ドアの陰になる様に立ち上がりながら自慰を続けた。オナティッシュの存在を隠す為に、学習机の裏に使用後の黄色くなったオナティッシュをドンドン投げ込み続けた。自分の足音が一体どの程度響き渡る物なのか、太りすぎて膝の軟骨がすり減り杖を2本使わないと歩けなくなったおばあちゃんを下の階に在中させて「今の足音は!?聞こえた!?」「………聞こえないよぉー………」「じゃあ……コレは!?コレくらいだったら聞こえた!?」「………聞こえないよぉー………」というやり取りを繰り返しながら調査した事もあった。


だがやはり、自慰を覚えた所で私はまだ「子供」で、相手は「大人」だったのだ。自慰歴数ヶ月の私と、自慰の酸いも甘いも知り尽くした父とでは知識も経験も全く違う。自慰様に毎日使っていたドラえもんの座椅子の黒ずみやシミで、夜更かしして自慰してる事は簡単に発覚した。父が急に私の部屋にやって来て「掃除する!」と言ったかと思った次の瞬間には学習机の裏から隠してたオナティッシュ入りビニール袋を取り出されていたし、オセロ盤の裏側に貼り付ける様にして隠していたBUBUKA(父の本棚から勝手に拝借したんだけど)も何故かすぐバレた。


自慰が見つかった時、オナティッシュが見つかった時、BUBUKAが見つかった時の、父の「あーあ、こんな事してるなんてガッカリだな!」という言葉とその時のとても嬉しそうな顔が、大人になった今でも忘れられない。私がトゥナイト2のAV女優トレーディングカード特集を見ていたのを発見した時なんか、満面の笑みで「こりゃダメだ!隣の家の○○くんにもそのお父さんにも言わなきゃな!」などと今考えてみても全く意味の分からない事を家中に響き渡る様な大声で叫んでいた。10歳だった私は「それだけは辞めてくれ!」と泣いて本気にしてしまっていたが、どう考えてもおかしい。私がこの一件で例えば精神をおかしくして入院する事になったりでもしたら、私の臓器を売る際には評価価格の大変なマイナス事項になっていたはずなのに、だ。


自分の部屋を持てる様になってからは妹の目が無くなったのと、父もいくらなんでも『中学生になる息子の布団を毎晩掛け直してやる』というのは不自然に思ったのか、ドッキリ形式での自慰探索の頻度は少し減った。私の充実した自慰ライフはようやく始まるかに思えた。そう、父の「中学生の私に逆ギレテレビアダプター断絶事件」が起こるまでは…。