黄色い半裸クマを許すな

毎回毎回同じような話をしている様な気がするのだが許して欲しい。だって私が言いたい事なんて「後悔してます」の一つしか無いのだから。

生き方において「何故自分はこの人生、あの地点で躓いてしまったのか?」「どういう準備をしてさえおけば、あんな事にはならなかったのか?」という記憶を持っている人間は恐らく恵まれている。

いや私もこのブログで散々に、身に覚えがある『過ち』を、金魚のフンの様にダラダラ垂れ流す様に書いてきた。

書いてきたが、私の場合は人生に躓き、その勢いでバランスが崩れたおかしな体制のまま空中に放り出され、さながら宇宙空間を彷徨う様に、何処かへ飛ばされてしまった様な感覚がある。真っ暗闇の空間にフワフワと浮かびながら「あっ、何故か8歳の時の嫌な事と、15歳の時の嫌な事を今思い出したぞ」と、何の脈絡もなく書き連ねてきただけだ。『過ち』や『失敗』が多過ぎて、一体どれが私の人生、私の人格に多大な影響を及ぼす出来事であったのか、判断する事ができない。

『あっ、やってしまったぞ これは後々尾を引くぞ』と自覚できるダメな出来事というのは、弱みにドンドン付け込み『ここぞ!』とばかりに借金の催促をしてくる悪い中学時代の友達の如く、一つ良くない事が起こるとそれに連なって次々と飛来してくる物で、例えば『あるあるネタ』みたいな所で言うと「小学校で足が遅いグループに所属しているだけでクラスでは蔑ろに扱われ、中学校では幼少期にすくすくと育てられたコンプレックスも花を咲き、他人と満足に会話する事も不可能になり、高校では電車に乗れば『絶対にあの女子の集団は私の見てくれが気持ち悪いと悪口を言っているぞ』と思い込み、その内に街中で自分を通りすがって行く人間全員が自分の事を笑っていると思う様になり、コンビニにも入る事が出来なくなる」という『ばよえ~ん』的な超連鎖はきっと確かに存在する訳だ。

…イヤ、違う。最初に私は『あるあるネタ』と言った。これは私の体験談ではなく、『よくある事』みたいな事であると思うし、皆さんもきっと子どもの頃におばあちゃんから聞かされた戦争体験談とかでこういう話は聞かされただろうし、小学校で読んだ道徳の教科書にもこういう「苦しんだがくせい」とかそんなタイトルで朗読させられたはずだ。

そういう話をしたかった訳では無くて、話を戻せば、そう、足が遅い、ただソレだけで、何度も何度も『人生が良くない方向に向かっていく事になるターニングポイントな瞬間』がやって来ているのだ。

しかもコレはほんの一例である訳で、『弁当箱が他の園児に比べて私の物だけ異様にデカかった事から始まる、昼休みいつもひとりぼっち超連鎖あるある』や『父親がテレビ台を私の部屋に買い与えなかったせいで始まる、地べたに置かれたテレビを見れば見る程に背筋の猫背化超連鎖あるある』などなど、良くない人生が始まっていく事になる原因が、私たちの日常には普通にそこら辺に転がりまくっている。皆さんも勿論ご存知の様に。


良くない人生の入口ばかり、私が生きてきたこの道には設置されていたのだから、一体どこの入口を潰しておけば是正されたのか、検討もつかない。
どの入口から入っても良くない人生。
どこから入場しても「この人生はどちらからでも破綻します」。
どこへ入学しても「お前にやる様な単位は1つも無い」と入口受付で暴言を吐かれ、どこに入隊しても私が「守ろう!」と決意したせいで「コイツに守られるくらいなら無くなった方がマシ」と国は滅び、どこから入園しても人生テーマパーク内のネズミ型マスコットには常に命を狙われる。『海底2万マイル』に入れば「水泳が苦手すぎてクラスで私だけ養護学級の同級生と一緒に授業を受けさせられた思い出」を脳内に詰め込まれ、『プーさんのハニーハント』に入れば「小学生の時に学校行事として行われた1泊2日のキャンプ授業でクマ避けの鈴を日中ずっと列の先頭で鳴らさせられた思い出」をシャツだけ着た半裸クマが朗読してくれる。どうしてこんな事になったのか、どうしてそんな子どもになってしまったのか、どうしてそのまま大人になってしまったのか、分からない。思い当たる節が多すぎる。


「イヤ自分も苦しんでいますよ!キツイ人生でしたよ!」などと声高々に叫ぶ事の出来る人間が、このインターネットではチヤホヤされやすい訳ではあるが、そういう『大手を振って披露できる不幸な話』を持ちネタとしてしっかり持てている人間は、やはり強い。
私の様な「遊戯王カード盗まれた」だの「体毛が濃い」だの「妹の方が年収が多い」だの、そんな事はインスタグラムに傷跡でズタズタの手首の写真がスッとアップされれば、一瞬で吹っ飛んでしまうゴミだ。私の手元に今あるのは奨学金返済猶予通知くらいだが、これをアップしても少しインパクトに欠ける。

『この人といえば、両親が失踪して借金を背負わされ、執事としてお屋敷で働く事になった不幸な人間!CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU!』とかそんな『この人と言えばこの不幸!』みたいなのが私も欲しかった。
「良くない人生」に入口があるのならば、出口も必ずどこかにあるはずなのだが、このテーマパークは広過ぎて、一体ここが出口付近なのか、それともまだまだ入口付近であるのかすら、よく分からない。そういえば両親が離婚する前、最後に遠出したのが東京ディズニーランドであった………あっ!コレ結構良いヤツじゃないか?来たんじゃないかコレ。インターネットにいる不幸鑑定士の皆さん、こういう家族関係の路線は、どうでしょう?