Johnny H. Kitagawa

「料理できる男がモテる!」という雑誌や漫画の情報を真に受けて、学校から帰ると毎晩の様に実家の台所を借りて料理に勤しんでいた頃があった。

料理、といっても作ったのはスーパーで売っていたSMAP×SMAPのワンコーナー、ビストロスマップの料理レシピ本に記載されていた『豚キムチ』だけで、それも「中居クンが作れるのだから自分もできるだろう」&「見る限り材料費もかからず安く作れる」&「もし失敗して不味い飯を食うのはイヤ」という理由だけでその豚キムチばかりをずっと作りっぱなしだったから、勿論飽きるのも早かった。


大体ちょっと考えれば分かる事ではあった。女子との会話で「最近料理にハマってるんだよね」「どんな料理作るの?」って聞かれた時に「豚キムチだけ!」という回答で「アッ、イケメン!抱いて!」って、なると思います?「こういうのはビーフストロガノフの一煮込みでも二煮込みでも手馴れたものでチョイチョイと出来る様になってからようやく効果を発揮する物だ」と気付いた時には、もうかなりの額の豚コマ代を払う事にもなっていた。書いてて思い出したが、また夜に例の如く豚キムチを作っている時に、普段は全く見かけないはずのゴキブリを台所で見付けて、近くにいた父に報告したら「夜に料理するお前が悪い!」と引っ叩かれた事があった。何故父が可愛い可愛い息子では無く、ゴキブリサイドの立場となって物事を見たのか、今でも検討が付かない。

モテないし豚キムチも飽きたしお小遣いも無いしゴキブリも見るし引っ叩かれるしで、私の「料理修行」は良い事など何も起こらなかった。何なら豚キムチの食い過ぎで「口が臭い」と女子に言われた事すらあった。しかもそれも直接女子に言われたという訳では無く、家庭訪問の際に母から「先生からアンタの口が臭いから病気なんじゃないかって歯医者を勧められたよ」という事を聞いて知ったので、想像するに「女子が担任に相談→担任が母に相談→母が私に直接口クサ宣告」というルートで私の元に届いたのだろう。これぞ現代版「母を訪ねて三千里」だ。遠方から遥々と何十日、何百日の時を経て、長い旅を終えようやく私の元に私自身の口臭が届いたのだ。私もこの物語の最終回はマルコと同じ、いやそれ以上に涙を流した。全く彼とは意味の違う涙だったけど。

で、もう今日はコレで終わるんですけど、何故こうも毎回毎回悲しい終わり方で記事が終わってしまうのか、自分でも大変不思議に思う。母から前述の歯医者に行けを聞いた時もショックだったが、今になって何故か心がまた痛くなってきた。私の口臭が今度は何十年という長旅を経て、今日再びようやく辿り着いたという事なのだろうか?とりあえず皆さん歯磨きは毎日しましょう。8020運動ですよ。