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微妙にバレンタインな話

バレンタインと言えばチョコレート、チョコレートといえばバレンタイン。そう、つまり今日はバレンタインデー。今日、もしくは平日の明日には家庭で、学校で、職場で多くのチョコレートが宙に舞うのだろう。


僕の地元ではバレンタインデーにはちょっとした風習があったものだった。バレンタインデーにチョコレートを一つでも貰えた男子には、自分そっくりの等身大チョコが市から配られた。なんと、その自分1/1ジオラマチョコ(略してIIGC)は、将来年老いた時に、病気で死に至る原因となる臓器が無い。神霊的なモノで分かるのだそうだ。


本当に、本当に怖いので、僕はどうにかチョコを貰わないように必死になっていたのを思い出す。思い出すだけで忌々しい。


と、ここまでホラを吹いたところでやめにしておく。だって書いている内に本当に怖くなってきたから。


ただ、小学生や中学生の頃くらいまでは、からかわれるのが嫌で本当にほとんどの男子が「チョコなんぞを女子からもらうなんざ愚の骨頂」とも言わんばかりに硬派男子を気取っていたものだった。特に僕らモテないチームは特にそう。


一番ショックだったのはとある年のバレンタインデー。いつもの様にチョコももらえそうにも無い僕らグループで、毎年のように傷を舐めあっていたあの日。隣のクラスの実家がそろばん教室の御久保くんと「チョコが欲しいなんざ男である資格なしである!」「そうだそうだ!」と本当は欲しくてたまらない気持ちを抑え喋っていた。そういえば、と彼から教科書を借りようと思い、ちゃんと許可をとって、移動教室の授業で誰もいなくなった教室のそいつのロッカーから、教科書を抜き出そうとした時のこと。


「あれ、なんかひっかかってるな?」と思い、力を込めてその教科書を引っ張ると、同時に落ちてくるのは包装されたチョコレート。「あっ」と思った時には時遅し。リボン付のチョコは小汚い板の床にあらわになった同時に、叩き付けられた衝撃で包みから聞こえる、パキッ、という音。


僕は、そっと、真っ二つに割れたであろうそのチョコレートを御久保くんのロッカーに戻した。勿論、彼には何か言える訳が無かった。


彼と、真っ二つに割れたチョコをあげた彼女とが、それから、一体どうなったのかは知るよしも無い。ただ、一つ、僕がバレンタインデーで一番心に残っていること。それは「建前って大事だよな」ということだ。そんな小6の2月14日。